はじめに
前回のAIF/MLAでは、AWSクラウドでのAI活用の入り口から、Bedrock/SageMakerに至るまでの大枠を押さえてきました。では、より高度な機械学習(深層学習を含む)や大規模データの取り扱い、モデルのチューニングや最適化など、専門性をさらに深める道 はどこにあるのか。そこで注目したい資格が 「AWS Certified Machine Learning – Specialty(MLS-C01)」 です。
MLOpsや機械学習のアルゴリズム周りの知識、ガッツリつきます!
MLSをキッカケにG検定やE資格を取るのも良いでしょう。
MLSは 2年以上のAWSクラウドでの機械学習開発実務経験 を推奨する、いわば「スペシャリスト向け」の資格。各種フレームワークやAWSサービスを駆使しながら、ビジネス課題を解決する機械学習ソリューションを設計・構築・運用できる力を証明します。
一方で、本資格では大規模言語モデル(LLM)を中心とした問題は出題されません。公式試験ガイドでも “LLM” の記載はあるものの、実際には他の機械学習アルゴリズムと同列の扱いで、LLMに特化した高度問題は出ないと明記されています。 AIFを踏まえたうえで、AWSのAI活用をさらに深いレベルでマスターしたい方はぜひご覧ください。
試験の基本情報
MLSは、AWS上での機械学習ソリューションに深く関わるエンジニアやデータサイエンティストを対象とした資格です。データエンジニアリングや深層学習の基礎、評価指標やベストプラクティスなどを幅広く問われます。
項目 | 内容 |
---|---|
試験名 | AWS Certified Machine Learning – Specialty (MLS-C01) |
試験内容 | データエンジニアリング、探索的データ分析、モデリング、機械学習の実装と運用 (深層学習含む) |
試験時間 | 180分 |
問題数 | 65問(うち一部は評価用の非採点問題) |
合格点 | 750点 / 1,000点 |
公式の試験ガイドでは「AWSクラウドでの機械学習ワークロードまたは深層学習ワークロードの開発・設計・実行における2年以上の実務経験」を推奨としています。ここでのポイントは、高度なネットワーク設計やDevOps関連は範囲外 である一方、基本的なMLアルゴリズムやデータ前処理、深層学習フレームワークなどの経験が強く求められることです。
試験範囲の概要
MLSの試験範囲は、以下の4つのドメインに分類されます。それぞれの出題割合と内容は、公式試験ガイドで明示されています。
ドメイン | 主な内容 | 出題割合 |
---|---|---|
第1分野: データエンジニアリング | - データリポジトリの設計(S3、EFS、EBSなど) - バッチ/ストリーミング取り込み (Kinesis, AWS Glue, EMR など) - ETLやMapReduceによる機械学習向けデータ変換 |
20% |
第2分野: 探索的データ分析 | - データのサニタイズ (欠損値・外れ値・ラベリング不足の対策) - 特徴量エンジニアリング (ビニング、次元削減、ワンホットエンコーディングなど) - データ可視化と統計的分析 (相関、時系列解析、クラスタリング) |
24% |
第3分野: モデリング | - 問題の特定とモデル選択 (教師あり/教師なし学習、分類、回帰など) - モデルのトレーニングとチューニング (学習率、最急降下法、正則化) - モデル評価指標 (AUC, F1スコア, RMSEなど) |
36% |
第4分野: MLの実装と運用 | - 可用性・スケーラビリティ・耐障害性を備えた構築 (Auto Scaling、ロードバランシングなど) - SageMakerエンドポイント、A/Bテスト、デバッグとトラブルシューティング - IAMやS3バケットポリシー、VPCなどを活用したセキュリティ |
20% |
公式の試験概要PDF
MLSで得られるメリット
1. 深層学習を含む高度なMLアルゴリズムを体系的に学べる
MLSではCNNやRNNなどのニューラルネットワークを扱う深層学習も、しっかり試験範囲に含まれています。理論的な理解はもちろん、AWS上でいかに効率よく学習・推論を回すかを具体的に押さえることで、高精度が求められるAIプロジェクト において頼れる人材として評価されるでしょう。
2. 大規模データ処理とETLのベストプラクティスを習得
AIFやMLAに比べて「データエンジニアリング」の要素が強く、大規模データや複雑なETL(Extract, Transform, Load) に関する理解を深められます。Amazon EMRやAWS Glueなどを使って、ビジネス上の膨大なデータを効率的に機械学習向けに変換するテクニックを学べる点が強みです。
3. モデルチューニングと評価指標に関する深い知識が得られる
MLSでは評価指標やチューニングをより体系的に学べるため、過学習(オーバーフィット)やアンダーフィット の対処、ハイパーパラメータの最適化などに強くなります。AWSでの運用を前提に、学習時間とコストをどう管理するかも含めて知見を得られるので、モデルをビジネス要件にフィットさせる実践力 が身につきます。
4. AWSクラウドでのML実装をリードできるエンジニアに
本資格を取得すると、「AWS上で大規模なMLソリューションを設計・運用できる人材」 として社内外で信頼を得ることができます。AIF/MLAで学んだ実務スキルに、さらに深いデータ分析やモデリング理論が加わるため、「AWSクラウドを活用した高度なAIプロジェクト」 を総合的にリードできるようになるでしょう。
試験勉強のポイント
1. AIの基礎知識を踏まえた上でデータ処理/モデリングを重点的に強化
MLSは、基礎的なMLOpsやAWSサービスの知識 がある前提で、さらにデータ分析やモデリングの深い部分を試問してきます。MLAレベルのSageMaker運用を理解したうえで、深層学習や統計分析 の応用知識に注力するのが効率的です。
2. 大規模データセットでの実験や可視化ツールに触れてみる
探索的データ分析や特徴量エンジニアリングが大きなウエイトを占めるので、散布図行列や時系列解析、クラスタリング などを実際に可視化できる環境を用意すると理解しやすくなります。Amazon QuickSightやJupyter Notebookを併用し、大規模データに対してどんな分析を行うかシミュレーションしてみましょう。
3. 深層学習フレームワークとSageMakerの連携に慣れる
TensorFlowやPyTorchといったフレームワークをSageMaker上で動かし、GPUを活かした分散学習やハイパーパラメータチューニング を試してみると、理論とクラウド実装を同時に習得できます。MLSでポイントとなる学習時間の短縮やコスト管理の現場感をつかむうえでも効果的です。
この辺りとか↓
MLSで身につく知識の具体例
MLSでは下記のような知識・スキルを深めることができます。
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データエンジニアリング技術
- AWS GlueやEMRでのETL、データパイプライン構築、ストリーミングとバッチ両対応の取り込み
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探索的データ分析
- 相関分析、外れ値検出、特徴量選択と可視化手法、欠損データ対策
-
モデリングとアルゴリズム最適化
- 教師あり/教師なし学習アルゴリズム、XGBoostやCNN/RNNなど深層学習の運用
- モデル評価指標の正しい選択と活用(ROC、AUC、RMSE、F1スコアなど)
-
機械学習の実装と運用
- Amazon SageMakerでのトレーニング・デプロイ・A/Bテスト
- モデル監視、問題検出、再トレーニングプロセスの設計
- IAMやVPC、スポットインスタンスを活用したセキュリティとコスト最適化
まとめ
MLSは、AIF/MLAで学んできた基礎やMLOpsのスキルを、さらに高度なデータ分析や深層学習、モデル最適化 へと発展させられる資格です。大規模言語モデル(LLM)の問題こそ出題されませんが、CNNやRNNをはじめとする深層学習アルゴリズムの運用や、大規模データセットの取り扱いが一段と重要になる現場での活躍を後押ししてくれるでしょう。
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データエンジニアリングから深層学習まで、AWS上のMLを総合的に理解
大規模データ処理や特徴量エンジニアリングのテクニックを網羅し、高精度なモデル開発に繋げる -
モデリング精度と運用コストを最適化
評価指標やハイパーパラメータ最適化を深く理解し、クラウド上での学習効率やコスト管理を実現 -
高度なMLプロジェクトでチームをリードできる
数理・統計的なアプローチとAWSサービスの運用ベストプラクティスを統合し、ビジネスに直結するAI実装を推進
AIFでAIの全体像を学びより高度な機械学習でスキルを磨きたい」と感じたら、MLSが大きなステップアップになるはずです。
ぜひMLSにも挑戦して、AWSを活用した専門性の高い機械学習エンジニアを目指してみてください!
※MLAはMLSの次に受けましょう!MLSの方が教材は沢山あります。
ちなみにこの様なAWS活用 AI/ML/LLMイベントも定期的に開催していますので開催していれば是非、ご参加ください!
AWSで学ぶAIの第一歩シリーズ