総研大 Advent Calendar 2025&総研大 統計科学コース Advent Calendar 2025 1日目の記事です.
こんにちは.総研大 統計科学コースの5年一貫制博士課程に在籍するとりです.
総研大と統計科学コースの紹介記事を書きました.より詳しい内容はホームページなどを参照してください.
総研大とは
総合研究大学院大学(総研大,SOKENDAI)は国立の大学院大学です.
大学院大学とは修士・博士課程のみを有する大学です.
国立の大学院大学として,総研大,北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST),奈良先端科学技術大学院大学 (NAIST),政策研究大学院大学 (GRIPS) が存在します.
総研大には現在,筆者が所属する統計科学コースを含む20コースが設置されています.修士課程もなく,博士課程のみを有すること,学生は各コースに対応した国立研究機関(基盤機関)で研究生活を送ることが主な特徴です.また,学生は基盤機関に所属する研究者から研究指導を受けます.
一部のコースは,3年制の博士後期課程に加え,修士課程+博士課程に相当する5年間をかけて博士号の取得を目指す5年一貫制博士課程が設置されています.
| コース名 | 基盤機関 | 5年一貫制博士課程の有無 |
|---|---|---|
| 人類文化研究 | 国立民族学博物館(大阪府吹田市) | 無 |
| 国際日本研究 | 国際日本文化研究センター(京都府京都市) | 無 |
| 日本歴史研究 | 国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市) | 無 |
| 日本文学研究 | 国文学研究資料館(東京都立川市) | 無 |
| 日本語言語科学 | 国立国語研究所(東京都立川市) | 無 |
| 情報学 | 国立情報学研究所(東京都千代田区) | 有 |
| 統計科学 | 統計数理研究所(東京都立川市) | 有 |
| 素粒子原子核 | 素粒子原子核研究所(茨城県つくば市) | 有 |
| 加速器科学 | 加速器研究施設・共通基盤研究施設(茨城県つくば市) | 有 |
| 天文科学 | 国立天文台(東京都三鷹市) | 有 |
| 核融合科学 | 核融合科学研究所(岐阜県土岐市) | 有 |
| 宇宙科学 | 宇宙科学研究所(神奈川県相模原市) | 有 |
| 分子科学 | 分子科学研究所(愛知県岡崎市) | 有 |
| 物質構造科学 | 物質構造科学研究所(茨城県つくば市) | 有 |
| 総合地球環境学 | 総合地球環境学研究所(京都府京都市) | 無 |
| 極域科学 | 国立極地研究所(東京都立川市) | 有 |
| 基礎生物学 | 基礎生物学研究所(愛知県岡崎市) | 有 |
| 生理科学 | 生理学研究所(愛知県岡崎市) | 有 |
| 遺伝学 | 国立遺伝学研究所(静岡県三島市) | 有 |
| 統合進化科学 | 統合進化科学研究センター(神奈川県葉山町) | 有 |
国文学研究資料館・国立極地研究所・統計数理研究所は建物が同じで,国立国語研究所もすぐ隣にあります.分子科学研究所・基礎生物学研究所・生理学研究所は互いに隣接しています.素粒子原子核研究所・物質構造科学研究所と加速器研究施設・共通基盤研究施設も互いに隣接しています.
各コースの詳細については,各基盤機関のホームページを参照してください.
入学するためには
総研大に入学するには,各コースが実施している入試を受けて合格する必要があります.入試の内容は各コースごとに異なるので,募集要項を参照してください.5年一貫制博士課程は筆記試験が実施される場合があり,一部のコースは過去問を公開しています.合格体験記もいくつかあり,参考になるかもしれません.
また,研究室訪問にかかる交通費が支援される場合があります(アクセス支援プログラム).詳細は各コースのホームページ等を参照してください.
入試説明会
各コースで入試説明会に相当するイベントが実施されています.詳細は各コースの基盤機関のホームページなどを参照してください.
| コース名 | イベント名 | 実施日(2025年) |
|---|---|---|
| 人類文化研究 | 人類文化研究コースオープンキャンパス | 09/19 |
| 国際日本研究 | 入試試験説明会 | 10/22 |
| 日本歴史研究 | 大学院説明会 | 10/19 |
| 日本文学研究 | 入試説明会 | 10/05 |
| 日本語言語科学 | 国立国語研究所オープンハウス | 07/05 |
| 情報学 | 大学院説明会 | 11/12 |
| 統計科学 | 統計数理研究所オープンハウス | 05/23 |
| 素粒子原子核 | 総研大先端学術院-KEK大学院説明会 | 05/10 |
| 加速器科学 | 総研大先端学術院-KEK大学院説明会 | 05/10 |
| 天文科学 | 天文科学コース入試ガイダンス | 04/26 |
| 核融合科学 | 入試説明会 | 05/16 |
| 宇宙科学 | 体験入学 | 08/27 |
| 分子科学 | オープンキャンパス | 06/14 |
| 物質構造科学 | 総研大先端学術院-KEK大学院説明会 | 05/10 |
| 総合地球環境学 | 入学試験説明会 | 07/19 |
| 極域科学 | 極地研探検2025 | 09/27 |
| 基礎生物学 | 大学院説明会 | 03/28 |
| 生理科学 | 生理学研究所オープンキャンパス | 04/12 |
| 遺伝学 | 大学院一日体験会 | 04/19 |
| 統合進化科学 | オープンキャンパス | 11/08 |
統計科学コースとは
統計科学コースの基盤機関は東京都立川市にある統計数理研究所(統数研)です.統計科学コースを含む一部のコースには5年一貫制博士課程が設置されています.
学生数と教員数について
統計科学コースの学生は,統数研に所属する教員を指導教員として研究指導を受けます.一般的な大学の博士課程における各専攻の学生数・教員数と比べると,学生数は少なく,教員数は多いと思います.指導学生を複数もつ先生もいれば,指導学生が1人もしくは指導学生をもたない先生もいます.
在学生の状況はここから確認できます.社会人学生は多いです.2025年は28人が統計科学コースに在籍していますが,内15名は社会人学生です.また,5年一貫制博士課程の学生は少なく,現在は5人です.
講義など
普通の大学院と同様に,卒業要件として一定数の講義の履修が要求されます.コースの専門科目は幅広いです.また,学生数は少ないため,受講者数も少なくなりがちです.受講者が1人だけということもあります.その分とても充実した講義を受けることができます.
また,筆者はまだ経験していませんが,他コースの専門科目を履修することもできます.一部の科目は履修期間中にメールで案内があります.この前は人類文化研究コース(京都,国立民族学博物館)の「資料保存学」の実施案内が届きました.面白そうで気になっています.
様々な輪読が実施されているのも魅力の一つです.学生のみで行うものもあれば,先生方が行なっているものに参加させていただけることもあります.筆者が現在参加している輪読は以下の通りです.今年度で佐藤 (2024) と吉田 (2021) は一段落して,別の輪読が始まると思います.
Hall (2015). Lie Groups, Lie Algebras, And Representations
佐藤 (2024). 多様体上の最適化理論
Van der Vaart (1998). Asymptotic Statistics
吉田 (2021). ルベーグ積分入門
学生生活
統数研には学生室が3部屋あり,個人のスペース(机や棚など)が与えられます.ほとんどのフルタイム学生は同じ部屋にまとまっています.
同期はいない?
2024年度は5年一貫制博士課程の合格者はいませんでしたが,2025年度は筆者を含めて3名が入学し,2026年度は合格者が4名いることを確認しています.筆者の入学年度から受験者の人数も3倍ほど(とはいっても7人前後)に増え,何かが変わってきています.もしかすると同期がいないという心配はしなくてよくなるかもしれません.短くてもこれから5年ほどは学生室は賑やかだと思います.
他コースや他大学との交流
統数研は国立極地研究所,国文研究資料館,国立国語研究所が隣接しています.いずれも総研大の基盤機関です.国語研や極地研の学生と交流する機会は比較的多いです.また,キャンパスが近い一橋大の学生とは今年から定期的に交流を始めました.
最近,総研大は他コースや他大学との交流を重視しており,今年9月には学生交流イベントが開催されました.また,そのような活動の諸経費を支援する制度も整ってきています.
受験について
合格体験記がいくつかあるので参考にしてください.また,過去問が公開されています.
5年一貫制博士課程 2023年度入学
5年一貫制博士課程 2025年度入学
5年一貫制博士課程 2026年度入学
博士後期課程
統計科学コースに少しでも興味を持ったならば,ぜひ統計数理研究所オープンハウスに一度訪れることを勧めます.とても勧めます.5月下旬から6月中旬のどこかで実施されています.統数研に所属するほぼすべての学生と研究者がポスター発表を行います.指導教員を選ぶ参考にもなりますし,学生から現場の声も聞けます.絶対訪れるべきだと思います.また,統計科学コースの進学説明会もあります.
おわりに
総研大,統計科学コースに興味を持った方は他の記事もぜひ読んでみてください.特に,総合研究大学院大学5年一貫博士課程のすすめは色々書かれていて,とても参考になります.筆者も受験に際して,またこの記事を書くためにとても参考にしました.
以降の記事もぜひお楽しみください!