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【第3章】K8s/Webサーバーへ安全展開:Ansible Atomicデプロイ戦略

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Last updated at Posted at 2025-12-04

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安全なデプロイが設定ドリフトを防ぐ最後の砦

現役エンジニアのHITOSHIです。前章では、DB SSOTから設定ファイルを生成するPythonエンジンを構築しました。しかし、生成された設定をサーバーにコピーするだけでは、真の自動化とセキュリティは実現できません。設定を適用するデプロイメントパイプラインこそが、設定ドリフトを防ぐための最後の砦です。

これは第2章で解説した「SSOT生成エンジン」の成果物を、安全に運用へ橋渡しする工程です。

本章では、第2章で生成した設定ファイルを安全に、かつ確実にWebサーバーやKubernetes(K8s)に送り届けるためのAnsibleデプロイ戦略を解説します。特に、秘密情報の安全な扱いと、サービス停止リスクを最小化するAtomicデプロイの手法に焦点を当てます。

🔑 Ansibleデプロイを支える秘密情報管理:Ansible Vaultの適用

SSOTシステムでパスワードやAPIキーといった秘密情報を扱う際は、DBに平文で格納するのではなく、分離して管理することが鉄則です。ここでは、Ansible Vaultを使って秘密情報を安全にデプロイする方法を解説します。

DB SSOTと秘密情報の分離原則

原則として、DB SSOTには機密性の低い公開可能な設定情報のみを格納し、パスワードなどの機密性の高い情報はVaultなどの専用ツールで暗号化して管理します。Ansible Vaultは、デプロイ時に複合した秘密情報と、DBから取得した設定情報を組み合わせて使用し、安全なAnsibleデプロイを実現します。

H3: Ansible Vaultによる秘密情報の暗号化手順

Ansible Vaultは、機密情報を暗号化されたファイル(Vaultファイル)として管理します。

  1. Vaultファイルの作成と暗号化

    # 秘密情報を格納するファイルを作成し、暗号化
    ansible-vault create vars/secret.yml 
    
  2. Playbookでの利用
    Playbook実行時に--ask-vault-passオプションでパスワードを入力するか、--vault-password-fileでファイルを指定することで、暗号化された変数を自動で複合し、タスク内で利用できます。

    ※ 複数環境(dev/staging/prod)を扱う場合は、--vault-id を用いた環境ごとの分離管理を推奨します。

⚙️ Ansible実行モデルの選択:Push vs. Pull

Ansibleデプロイには、実行元からターゲットサーバーに接続するPushモデルと、ターゲットサーバーが実行元から設定を取得するPullモデルがあります。

モデル 特徴 SSOTデプロイにおける優位性
Push 中央(Generator)から即時実行。シンプル。 緊急性の高い変更に迅速に対応可能。
Pull サーバー側が定期的にPlaybookを取得。 大規模環境での負荷分散。実行環境をサーバー側に用意する必要がありますが、実行権限を限定でき、セキュリティ境界を明確化できます。

※ PullモデルはcronとGit経由が基本で、Pushのような即時実行には向きません。非同期な定期実行が必要な場合に強力なモデルです。

🛡️ 設定ファイルのAtomic更新とRollout戦略

設定ファイルを直接上書きすると、デプロイ中にサービスが設定ファイルを読み込み、部分的な設定で動いてしまう競合(Race Condition)が発生するリスクがあります。これを防ぐのがAtomic(不可分な)デプロイ戦略です。

Atomic Renameを活用するPlaybookとFS依存性

Ansibleのcopyモジュールはデフォルトでアトミックに近い挙動をしますが、一時ファイルに書き込み、最終的にmvコマンド(Atomic Rename)で移動することで、サービス停止リスクを最小化します。

- name: 設定ファイルを一時的にコピー
  ansible.builtin.copy:
    src: "{{ playbook_dir }}/configs/{{ inventory_hostname }}_nginx.conf"
    dest: "/tmp/nginx.conf.tmp"
    mode: '0600' 
    owner: root
  # copy後に、設定ファイルディレクトリに移動/リネームするコマンドを実行
- name: 設定ファイルを本番環境へアトミックに反映
  ansible.builtin.command: mv /tmp/nginx.conf.tmp /etc/nginx/nginx.conf
  notify: 
    - restart nginx 

Atomic Renameの特性: mvがアトミックになるのは、同一ファイルシステム内でのrenameに限られます。また、NFSやSMBといったネットワークファイルシステム上では、その特性が保証されない場合があります。

差分に基づくサービス反映(Rollout戦略)

Ansibleのタスクが差分なしchangedではない)と判断した場合、notifyされたハンドラ(サービス再起動など)は実行されません。これにより、設定変更がない場合に不必要なサービスリロードや再起動を防ぐことができ、デプロイメントの安定性を高めます。

🌐 Kubernetes ConfigMapへの橋渡しと注意点

DB SSOTで生成した設定ファイルをKubernetes環境へ適用する手法として、ConfigMapへの橋渡しを解説します。

ConfigMapを活用したK8sへの設定反映

第2章で生成したファイルをConfigMapのソースとして活用します。

  1. 生成ファイルをConfigMapソースとして利用

    # 生成されたファイルを使ってConfigMapを作成
    kubectl create configmap web-config --from-file=configs/web-01_nginx.conf 
    
  2. ConfigMapの制限と専門的な判断
    ConfigMapはリソース上限が1MiBに設定されています。大規模な設定ファイルやログファイル全体を格納するには向かず、その場合はSecretVolumeの利用を検討する必要があります。

    ※ また ConfigMapは基本的にテキスト用で、バイナリファイルは扱えません。この制限を理解し、適切なツールを選択することが重要です。

  3. GitOpsとの連携
    生成したConfigMapのYAMLファイルをGitリポジトリ(GitOps)にコミットし、KustomizeやArgo CDなどで自動適用することで、SSOTの情報をK8sクラスター全体に反映させることができます。

🤝 まとめ:信頼性を築くデプロイメントパイプライン

本章では、SSOT設定ファイルを安全に展開するためのAnsibleデプロイ戦略を解説しました。

  • 秘密情報の分離:Ansible Vaultと--vault-idを使い、機密性の高い情報を安全に管理する手法を採用しました。
  • Atomicデプロイ:一時ファイルとリネームコマンドを組み合わせ、FS依存性といった注意点も明確にしました。
  • K8s応用:ConfigMapの活用法と、専門的な運用判断に必要なサイズ制限やバイナリ制限といった注意点も補足しました。

この章のデプロイ戦略は、数台の小規模環境から企業規模のKubernetesクラスターまで、統一された運用設計を可能にします。

  • 第4章では、SSOTの心臓部であるデータベース自体のセキュリティに焦点を当て、アクセス制御監査といった、システム全体の堅牢性を高めるための対策を深掘りします。

※本記事は筆者が所属する株式会社 十志での研究開発知見を一般化したものであり、特定製品の宣伝目的ではありません。

個人的な感想:デプロイメントパイプラインを設計する作業は、まるで複雑な機械の歯車を組み上げるようです。一度、Ansibleデプロイのロジックが完成すると、コードや設定を静かに、しかし確実にシステム全体に行き渡らせるこの工程には、技術者の細やかな配慮と、高い信頼性を実現した達成感が詰まっています。そして、この自動化の恩恵は、多様化する働き方やテレワークの可能性を大きく広げると、私は考えています。

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