Amazon Bedrock の「Amazon Bedrock Agents」と「Amazon Bedrock AgentCore」はどちらもAIエージェントのエコシステム向けですが、用途が異なります。EKS と Fargate の単純な置き換えという例えは完全には一致しません。以下では、それぞれの役割と選び方、実運用で考慮すべき点を整理します。🔧
主な違い(要点)
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Amazon Bedrock Agents
- フルマネージドなサービスで、インフラ管理や独自コードを書かずに自律型エージェントを構築・設定できます。
- プロンプト設計、メモリ管理、モニタリング、暗号化、利用者権限、API呼び出しなど運用に必要な要素をサービス側で取り扱います。
- API駆動の開発、特定アクションを定義するためのアクショングループ、ナレッジベース統合、設定ベースの実装が主な特徴です。💡
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Amazon Bedrock AgentCore(現在プレビュー)
- どんなフレームワークやモデルでも利用できる、スケール可能で安全なエージェント展開・運用のための一連のインフラサービス群です。
- 動的なエージェントワークロード向けに設計された基盤を提供し、CrewAI、LangGraph、LlamaIndex、Strands Agents といったフレームワークとの連携を想定しています(原文での言及に基づく)。
- AgentCore は、実行ランタイム、メモリ、可観測性、Identity、Gateway、Browser-tool、Code-interpreter といったコンポーネントで構成されます。
どちらが「機能が多い/少ない」というより、管理重視のアプローチか、柔軟性と制御を重視するインフラ提供か、という違いです。🚀
Amazon Bedrock Agents の主な特徴
- フルマネージド:インフラやスケーリングの管理不要
- 設定ベース:コードを書かずに設定でエージェントを組み立てられる
- セキュリティとコンプライアンスへの配慮(認証、暗号化、権限管理など)
- ナレッジベースや外部APIとの統合が容易
- 初期導入やプロトタイピング、運用負荷を抑えたいケースに向く
AgentCore のコンポーネントと役割
- Runtime:エージェント実行のためのサーバーレス環境を提供
- Memory:セッションや長期メモリの管理を担当
- Observability:エージェント実行の可視化(トレース、ログ、メトリクス)
- Identity:AWS やサードパーティサービスへの安全なアクセス管理
- Gateway:外部APIをエージェント向けツールに変換
- Browser-tool:ウェブアプリケーションとの自動操作インターフェース
- Code-interpreter:複数言語で安全にコードを実行する機能
(注:AgentCore はプレビュー段階との記載があり、機能や名称は今後変わる可能性があります。)
機能比較(概観)
| 比較項目 | Amazon Bedrock Agents | Amazon Bedrock AgentCore |
|---|---|---|
| 運用モデル | フルマネージド / 設定中心 | インフラ/サービス群提供(柔軟な統合) |
| カスタムフレームワーク対応 | 制約あり(設定内で完結) | 高い(任意のフレームワークと併用可能) |
| インフラ管理 | 不要 | 提供される基盤を利用して管理・運用 |
| 運用のしやすさ | 簡単(低運用コスト) | 柔軟だが設計・運用コストが増える可能性 |
| 適したユースケース | 迅速な導入、運用負荷削減 | カスタムアーキテクチャ、既存フレームワークとの統合 |
どちらを選ぶべきか — シナリオ別の指針
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Bedrock Agents を推奨するケース
- 迅速にエージェントを立ち上げたい(PoC、プロトタイプ、SMB)
- インフラ運用やスケーリングを外部に任せたい
- 設定ベースでのガバナンスやアクセス管理が優先される場合
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AgentCore を推奨するケース
- 既に CrewAI、LangGraph、LlamaIndex 等のフレームワークで開発済み、あるいはそれらを使いたい
- エージェント実行環境やツールの細かな制御が必要
- 大規模にカスタムエージェントをデプロイして継続的に運用する予定がある
どちらか一方に固執する必要はなく、AgentCore を深く使いこなしつつ、特定の用途では Bedrock Agents のマネージド機能を組み合わせるといったハイブリッド運用も現実的です。⚖️
実装時のチェックリスト(運用/設計上の注意)
- Identity & Access:エージェントがアクセスするサービスの認証・権限設計を明確にする。
- 可観測性:ログ、トレース、メトリクスをどう取得・保管するかを設計する。
- メモリ戦略:セッションメモリと長期メモリの寿命・ストレージを決める。
- 安全なコード実行:Code-interpreter 利用時のサンドボックス制御や入力検証。
- ツール連携:外部APIをツール化する Gateway の設計とレートリミット対策。
- スケーリングとコスト管理:同時実行やバースト時のコストモデルを見積もる。
- ガバナンス/コンプライアンス:データ居住地(data residency)やログ保管ポリシーを確認する。💡
よくある疑問とエッジケース(補足)
- プレビュー中の機能に依存するリスク:AgentCore がプレビュー段階である場合、API や機能の変更に備えた抽象化レイヤーを設計すると移行負荷が下がります。(補足)
- ロックインの懸念:フルマネージドを選ぶと運用負荷は下がる一方で、サービス側の実装に依存する度合いが高くなります。移行パスを早期に検討すると安全です。
- ハイブリッドアーキテクチャの活用例:AgentCore のランタイムでカスタムワークフローを管理し、簡易的なユーザ向けエージェントを Bedrock Agents で公開する、といった混用が考えられます。🔀
実装の短い例(アーキテクチャメモ)
- 小規模プロトタイプ:Bedrock Agents を中心に、ナレッジベースと外部APIを接続して素早く機能検証。
- エンタープライズ運用:AgentCore の Identity と Observability を使い、CrewAI 等で作った複数エージェントをサーバーレスランタイムで実行、中央モニタで統合監視。
まとめ
- Bedrock Agents は「設定で手早く、安全に使える」フルマネージドの選択肢。
- AgentCore は「柔軟性と制御」を優先するエンタープライズ向けまたはカスタムワークフロー向けの基盤群。
最終的には、要件(開発速度、運用負荷、フレームワーク互換性、セキュリティ要件、コスト)に基づいて選ぶのが正しい判断です。📝
(補足リンク)公式情報は Amazon Bedrock のページを参照してください。