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量子AIは古典AIと何が違う? オセロ読み切りの量子AIのアルゴリズムに挑戦してみた

Last updated at Posted at 2025-11-16

オセロ読み切りの量子AIの概念図.png

 こんにちは。くろこんです。今回は量子AIについてです。

 量子AIと現在使われているAI(量子AIから見て古典AI)とはどのような違いが考えられるでしょうか。現実世界に学習で利用できる量子計算がないため、思考実験となります。

注意
あくまでも記事の著者による思考実験のため、情報の真偽性など、取り扱いには注意してください。

 前提として、ある程度量子コンピュータがリソースとして自由に使えることを仮定しています。例えば、量子コンピュータにビットコイン署名鍵を処理させるための方程式の構築の事例は下記のようなものになります。

量子AIと古典AIの違い

 量子AIと古典AIの最大の違いは、最適化方法です。

量子AIと古典AI
 量子AI → 最適化が効果的にできる
 古典AI → 最適化は微分計算で予想してなんとなくやる

 量子コンピュータでは従来の計算機と比べ物にならないほど最適化できる、ということです。

量子AIと古典AI_001.png

 右側は従来の計算機によるAIの学習のイメージです。現在いる地点の傾きを考えて、向こうに行ったらもっとかしこくなるだろう、と予想してAI自身を更新します。図ではしっかり安定する場所に向かっていますが、複雑な地形などでは、安定することは保証されません。

 左側は量子コンピュータによるAIの学習のイメージです。地形の傾きなどは考えず、完全な条件となる地点にテレポートするように最適化されます。(地形の傾きなどは考えず、としましたが、学習の方法で傾きを考慮するようにもできます。量子コンピュータ上で微分するような方法も出てくるかもしれません)

 あくまでも最適化の性質が異なるということです。そのため、現在世間で流行している ChatGPT の元となった Transformer のタイプのモデルを量子コンピュータで扱うことも理論的には可能です。

量子AIの学習

 ただ、ろくに量子コンピュータが現実で使われていない現状では、もう少しスマートなモデルを考えます。

PSHA256 \left( params, bytes \right)

 今回は$SHA256$を元にした関数、パラメトライズド $SHA256$($PSHA256$とします)を使います。$SHA256$はハッシュ関数と呼ばれる関数で、ハッシュドポテトのハッシュの名の通りまぜこぜする機能を持つ関数です。入力されたデータを他のデータに結び付け、その結びつけに規則性があまり無いように設計されています。

 $PSHA256$は、単に$SHA256$が持つ定数パラメータ($SHA256const$としています)を変数パラメータに変更しただけのものです。

PSHA256 \left( SHA256const, bytes \right) = SHA256 \left( bytes \right)

いいパラメータ($params$の部分)を探せば、$SHA256$と同じ構造でありながら、よい性質を持つ関数ができるというイメージです。

量子AIの学習 オセロを対象とする場合

 $PSHA256$ をオセロに適用する場合、単純には $bytes$ の部分に盤面の情報を入力します。例えば、盤面を白、黒、空白の3通りの64個分の情報を表すバイト列 $bytes$ に変換して入力とします。出力結果を合法手の数の$mod$演算で、次の手に変換する、のようにオセロAIとして扱います。

 古典AIを $classic$ とした場合、以下のようになります。

byte_{i+1} = classic \left( byte_i \right)
byte_{i+2} = PSHA256 \left( params, byte_{i+1} \right)
maximize \left( score \left( byte_{60} \right) \right)

 今回はパスなどを考慮していない数式で、$byte_{60}$ は大体の場合でオセロが終わるタイミングであるため、スコア算出に使っています。上記の $byte_{60}$ は $classic$ の関数のため、上記の最大化する関数が勝ちになる(自分の石の数が33以上になる)なら、完封勝利したことになります。

 これは簡単に言うなら古典AIが最強でないならば、相手を負かす手を計算します。今回は相手を負かすであろう$SHA256$と同じ構造の関数を計算します。

 $classic$ は量子コンピュータ上での古典AIのシミュレーションです。例えば Transformer を使うなら、Transformer の推論処理の論理の処理(for if 四則演算など)を量子コンピュータ上でシミュレーションして処理を再現します。オセロの場合、30手ぐらい処理するので、量子コンピュータのビット数に、Transformer の容量の30倍ほどを要求します。なかなか高い要求となり、実現はかなり先のこととなります。

量子AIの効果 その1 完全読み切りを判定できる

 ここで量子コンピュータの強力な側面がわかります。古典AIが最強でないならば、相手を負かす手を計算できてしまうということです。言い換えるなら古典AIが最強かどうか判定できるとなりますし、最強でない場合、最強になるヒントを得られるとも言えます。

 従って、一度量子AIの学習ができるようになったら「負かす手」を計算して改めて古典AIを学習することで、古典AIを強化できます。強化したら、また量子AIの学習で「負かす手」を計算します。……これを繰り返していくといずれは最強のAIが出来上がります。

 オセロの場合は石を置く回数は絶対に60回以下のため、この強化手続きの強化速度は十分な速度になることが予想されます。これで全手順を読み切ったAIの完成です。

 一方で他の似たようなゲームで、チェス、囲碁、将棋などでは、ループするパターンがあり、この強化速度はオセロほどうまくはできなくなることが予想されます。

人間とAIがオセロで対決するイメージ画像_001.png

量子AIの効果 その2 超小型AI

 もう一つ、生成された$PSHA256$がAIとして強力な性質を持ちます。非常にサイズが小さいということです。

 $PSHA256$のパラメータは16進数の3桁程度で人間にも暗記できるレベルです。フラッシュ暗算ができる方であれば、学習した$PSHA256$を暗記することで、最強のオセロプレーヤーになることも現実的になります。あまりに小型すぎて人間の思考に計算で直接アドバイスする可能性すらあるのは大きな特徴でしょう。

 ただ、この場合は、古典AIではなく $PSHA256$ を最強のAIになるように学習しなければならず、手間がかなり増えます。とはいえ、あまりに効果が強力なため、実現が視野に入る状況になれば、大きく研究が進む可能性があります。

 以上で今回の記事は終わりになります。より計算機科学のことを知ってもらえればよいかなと思います。

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