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「おじいさんおばあさん、AutoHotKey ってなぁに?」

2020年現在、日本の AutoHotKey(L) は見る影もない。
日本語ネットの世界を覆わんとしていたかつての勢力は
既に衰え今や風前の灯。
そう、2010年。今から10年前のあのとき、
AutoHotKey は我が世の春を謳歌していた。
これを語るには、それが何かを説くと同時に、
どのように興りそして廃れたのかも伝えなければならない……。

AutoHotKey とは何だろう。

それは、キーボード即ち鍵盤の機能を好き勝手にいじることができる
大変に便利なものだ。
たとえば君が運命の悪戯でちょいと、
右手の小指を失ってしまったと仮定してごらん。
もう君の生涯の辞書から
・「Enter(エンターキー)」
・「BS(バックスペース)」
・「Del(デリートキー)」
という大切な3項目が無くなってしまった。
しかし!そんなときでも下のような呪文をメモ帳に書いて
AutoHotKey に頼めば、君の辞書は元通りになるのだ。

・無変換キー :: BS
・シフトキー+無変換キー :: Del
・変換キー :: Enter

(正確にはちょいっと違いますがだいたいこんな感じ)

これ……とくに説明しなくてもどんなことが起きるのか……想像できますよね……?
そんな馬鹿な!
いいえこれが本当なのです。
代償として貴方の人生から無変換キーと変換キーは失なわれてしまうが……
え?もともとそんな項目無かった?それは結構!ますます好きになりますよ!

あれ?これひょっとして右手の小指を失う前から
こっちの方が良かったんじゃない?
っていうか今までどうして小指で主要編集キーを推してたの?
なぜ小の指にむざむざ主要キーを充てていたの?

AutoHotKey 団による AHK 革命の狼煙

そう!淑女紳士の賢明なる諸君らは!全く洗脳されている!
今こそ我らが AutoHotKey 団がより正しい習慣と常識を指導し
悪しき因習を断固打破するのである!!

それが若かりし AutoHotKey 同志たちの夢であった。
貧しく暗い部屋の隅で彼らが微笑んでいたのは何故だろう。
それは必ずしも狂気に支配されての笑顔ではなかった。
同族、友朋の明るい未来が我らの肩にかかっている。
自らの塗炭の苦難が世界を照らす光となる。
その遠い憧れの正義を目指す魂から漏れ出づる希望が彼等の笑顔になった。

だが現状を振り返れば!
憧れた正義とは裏腹に穢らわしい爛れた世界が
この日本にまだ貼付いたまま離れない。
その未来は遠かったのか?いや違う。
その原因は……。

ようこそ AutoHotKey の世界へ

AutoHotKey 同志は、子供を作るのが下手だったのだ。
肉体が……という意味ではなく、ソフトウェアの互換性と言う意味で……。
いやまあそう言っちゃあそうなんだけどそんな下世話な話はあたしゃ御免蒙るよ。

何という呪われた運命!
正義を広めんと犠牲にした己の身の上の因果は
彼等自身、ひいては同族の未来に報い応えてしまった。
仕舞った!
そう嘆いてももう遅いことに気付いた時には
既に10年の歳月が失われて了った。

かつて同志たちは一生懸命 AutoHotKey の使い方を記述し、教え、広めていた。
鍵盤配列勢や特殊IME教の者とも交流を重ねて自己研鑽に没頭していた。
それが正義だと信じていたからだ。己を犠牲にし鍛え戦いに挑む。
戦士(サムライ)としてあるべき姿だ。嬉しいことだ。
鍛え抜かれた鎧の AutoHotKey スクリプトは
野も越えれば山も越え!行く先向う所正に敵無し!
「応!AHKだ!
要らぬ鍵は要る鍵へ!無駄な鈕の一つも無し!
能率!能率!」
勇敢なる彼等の声を耳にすれば激しい疲労に洗脳された労働者たちも
屹度革命の心を取り戻しその腕に再び力を取り戻したものだ。
だが時は無情にも流れを止めぬ。言葉もぞやがて変わりぬる。

信じた AHK が AHKL に豹変!?

『き~らンに~ちわぁ~ン!』
(えっ!?)
『AHKL、一緒に行くンだよン!』
(ええ!事情はよくわかりませんが、AHKに違ひは在りませぬわ!)
(然うだね!)(イヱース!)
「「「行っけェエー!!」」」
「私達の!」『いいねぇン』
「色の!」『すンごぉ~いン』
「鍵盤配列!」『ひゅぅンひゅぅ~ン』
振り咲け見れば春日なる、越えて見せられなかった山……。

(AHK に、何が、あったのかな……?)

刻々進む超異世界!見せてあげるわたしの脳内映像!欲しいモノには形無し!

六つかしい話は省くが兎に角、平たく言えば、
古い老人言葉は、手続き命令で文字列型を読んでいたのに、
若者言葉だと、関数命令で変数型を読むようになって了った。
つまり AHK ちゃんもとい AHKL ちゃんは、
カナから漢字を使うようになったのだコンピュータ的に。
それは後に、実はもっと高次元の鍵盤配列世界へ旅立つための
ときめきシンギュラリティの一環であると判ったのだが
しかし当時の AHK 戦士たちには到底理解の及ばないことであった。
増してや使い熟すことなど。
果たして! AHK に一体何があったのか!?
私、あんな姿の AHK、見たこと無い……。
これは只事じゃないよォ!バグかはたまたイメージチェンジか!?
次回! AHKL が謎の!大変身!でぃよ~ン。

昨日の私はもうそこにいないよ

手段を磨くのに血道を上げるのは楽しく素晴らしいことだ。
でもね、クルクルと求められるものは変わる。
旧悪を破るため未来革命を目指すなら、
今の古い革命活動にすらわざときつい言葉を言わねばならない。
もっと凄いと確信しているから……。
なにより、立つ場所で映り方も移り変わるから……。

しかし自己犠牲と自己批判と総括!の嵐の中でやがて彼等は、
その厳しさに耐えかねて絶望に彷徨って真っ暗で孤独でいるうちに、
力の全てを大衆と言う名の「運命の女(ファム・ファタール)」に奪われてしまった。

だからね。
大切なのは鍛えることではない。
大切なのは夢を追うこと、夢を忘れないことだ。
「こんなに凄い技術がある!」
それは楽しいことだけど、それを嬉しがってはいけない。
貴方の夢は叶いましたか?
叶った?それは嬉しいですね。
叶ってない?それならまだまだ楽しめますね。
面白いじゃない、ゆめ!(泣きながら)

辛くないと言えば嘘になるけど、幸せです

やはり僕たちの AHK 活動は残念だけれど何か
大切な処で道を間違えたようですね。

私はまた今更 AutoHotKey L の復権に立ち向います。
便利なソフトを究極に研ぎ澄ますような使い方ではなく、
指を失くした人、不便に喘いでいる人、肩凝りに悩む人のために。
パソコンを使いこなしたい人のためではなく、
もうパソコンなんか触りたくない!という人のために。
言語の仕様が変われば失われてしまうような精緻さのためではなく、
パソコンが苦手だけれど少なくとも心は僕より健康な人たちのために。

追伸
私が今でもこの惨めな AutoHotKeyL にしがみついているのは、
小指を失くしてしまったことと関係があるかもしれません交通事故で。
私の夢?ちょびっとだけ、叶いましたよ。ええ。

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