はじめに
今回は野球についての記事です。
野球の魅力は色々なものがありますが、その中に多くの種類の記録が楽しめる点があります。
打率、ホームラン数、打点といった打撃記録、奪三振、防御率といった投手記録、またそれらをチームとして合計したチーム記録など様々な角度からの記録があり、野球ファンの間でも多く議論されています。
今回扱う記録は個人の打撃記録である打点(Run batted in: RBI)とホームラン(Home Run: HR)数についてです。
下記は2023年のセリーグの規定到達打者のホームランと打点の記録です。
(順番は打率の降順)
選手 | ホームラン | 打点 |
---|---|---|
宮﨑 敏郎 | 20 | 71 |
西川 龍馬 | 9 | 56 |
サンタナ | 18 | 66 |
牧 秀悟 | 29 | 103 |
大島 洋平 | 0 | 23 |
大山 悠輔 | 19 | 78 |
坂本 勇人 | 22 | 60 |
近本 光司 | 8 | 54 |
中野 拓夢 | 2 | 40 |
大城 卓三 | 16 | 55 |
岡林 勇希 | 3 | 31 |
岡本 和真 | 41 | 93 |
秋山 翔吾 | 4 | 38 |
木浪 聖也 | 1 | 41 |
坂倉 将吾 | 12 | 44 |
佐野 恵太 | 13 | 65 |
佐藤 輝明 | 24 | 92 |
関根 大気 | 4 | 31 |
菊池 涼介 | 5 | 27 |
村上 宗隆 | 31 | 84 |
吉川 尚輝 | 7 | 36 |
オスナ | 23 | 71 |
細川 成也 | 24 | 78 |
桑原 将志 | 7 | 35 |
石川 昂弥 | 13 | 45 |
ノイジー | 9 | 56 |
長岡 秀樹 | 3 | 35 |
データを見るとHRが多いほど打点も多い事が何となくの傾向として分かります。
次の図は過去10年分のセパ両リーグの規定到達打者のHR数と打点数のプロットです。
この図でも打点はHR数と相関があるように見えます。
ではHR数に対してどれくらいの打点数が妥当なのでしょうか。
3倍打点理論
この疑問に一つの仮説を立ててくれたのが3倍打点ニキです。
彼によると、打点はHRの3倍以上ないといけないそうです。
3倍打点ニキの理論をここでは3倍打点理論と呼ぶことにしますが、3倍打点理論によれば2023年セリーグHR数トップの岡本和真はHR数41に対し打点93とHR数の3倍未満のため評価が低いことになります。
先程の図に3倍打点直線(打点=3*HR数、緑線)と線形回帰した直線(青線)を追加してみます。
HR数が少ない打者については3倍打点直線の上側(3倍打点ニキ満足ゾーン)にほとんどの打者が位置しますが、HR数が20本を超えたあたりから3倍打点直線の下側(3倍打点ニキ不満ゾーン)に位置する打者が増えていきます。
これは、野球の性質上打点を稼ぐにはHR以外の方法もあるため、HRが少ない打者は必然的に3倍打点ニキ満足ゾーンに位置しやすくなります。(線形回帰の切片も0では無く約33となってる)
一方HRが多くなってくると、3倍打点を超えるためには3ランHR、満塁HRを打っていく必要があるため3倍打点直線を超えることが難しくなってきます。
以上の理由などから3倍打点理論は多くの批判があるのですが、個人的には3倍打点ニキは「何となくHRが多い打者は打点も多い方が望ましい」という野球ファンの考えを定量的にモデル化したパイオニアとして一定のリスペクトを持っています。一度モデル化がなされればモデルの改良やそもそもモデルの妥当性の議論はどんどん進みます。したがって上記のような、HR数と打点数の比率を打者の優劣の指標とするのは適切ではないという考えが出てくるのですが、このような議論ができるのもその礎として3倍打点ニキが新たな理論を世に出してくれたおかげであると思っています。
まとめ
3倍打点理論は、必ずしも打者を評価するのに適切ではないかもしれないが、その理論を検証することで様々な考えにたどり着く可能性があります。