Day1: クラウドの歴史を紐解く 〜AWSとAzure、なぜ違うのか?〜
皆さん、こんにちは。エンジニアのAkrです。
この連載は、多くのITエンジニアが悩む永遠のテーマ「AWSとAzure、どちらを選ぶべきか?」について、30回にわたって徹底比較するシリーズです。
「どちらが優れているか?」という問いに絶対的な答えはありません。両者の設計思想、成り立ち、得意分野が根本的に異なるからです。この違いを理解するには、それぞれの歴史を知ることが重要です。
AWSの成り立ち:Amazonの「内なるIT」から生まれた革命
課題の発見:季節変動とインフラの無駄
AWSの歴史は2000年代初頭に遡ります。当時のAmazon.comは、クリスマス商戦などのトラフィック急増に備えて大量のサーバーインフラを保有していました。しかし、オフシーズンには膨大なインフラが遊休状態となり、コストを圧迫していました。
社内プラットフォームの構築
この課題解決のため、Amazonは社内各部署がITリソースを「セルフサービス」で利用できるプラットフォームを構築しました。これが現在のAWSの原型です。
パブリッククラウドの誕生
2006年3月、AmazonはSimple Storage Service(S3)を皮切りに、社内プラットフォームを外部に開放しました。これがAmazon Web Servicesとして知られる、世界初の本格的なパブリッククラウドサービスの誕生です。
AWSの特徴
この成り立ちから、AWSには以下の特徴が生まれました:
- 「部品」の集合体:社内チームが柔軟に組み合わせられるよう、EC2(仮想サーバー)やS3(ストレージ)など、機能ごとに独立したサービスとして提供
- 「開発者」ファースト:CLIやAPIによる自動化を重視し、開発者がコマンド一つでインフラを構築・管理可能
- 「イノベーション」重視:自社ビジネスを支えるインフラとして、新サービスや技術を最速で導入
Azureの成り立ち:Microsoftの「既存顧客」を支えるクラウド
既存資産の活用戦略
Microsoftは長年、Windows Server、SQL Server、Exchange Serverなどのオンプレミス製品で企業向け市場を支配してきました。クラウド時代の到来に際し、「既存顧客をいかにクラウドに移行させるか」という視点でサービスを設計しました。
PaaSからの出発
2008年10月に発表された「Windows Azure Platform」は、当初PaaS(Platform as a Service)に重点を置き、開発者がアプリケーションを簡単にデプロイできる環境を提供していました。その後IaaS(Infrastructure as a Service)機能も強化され、現在の「Microsoft Azure」へと進化しました。
Azureの特徴
この成り立ちから、AzureにはAWSとは異なる特徴が生まれました:
- 「統合」されたプラットフォーム:Active DirectoryやSQL Serverなど、既存のMicrosoft製品との連携がシームレス
- 「エンタープライズ」重視:企業のコンプライアンスやガバナンス要件を満たす機能をサービス中核に配置
- 「慣れ親しんだ操作性」:Windows GUIに慣れたユーザーが直感的に操作できる統一されたポータル設計
なぜこの歴史を知る必要があるのか?
両サービスの歴史的背景は、現在のサービス設計、料金体系、得意なユースケースに深く影響しています:
- Amazon EC2が仮想サーバーを「インスタンス」という独立概念で扱うのは、部品志向の思想の表れ
- Microsoft AzureがMicrosoft製品との連携を強みとするのは、既存顧客のクラウド移行を支援する自然な戦略
この連載について
本シリーズでは、これらの歴史的背景を踏まえ、30の観点からAWSとAzureを徹底比較します。各サービス、料金、セキュリティ、運用といった具体的なテーマで掘り下げていきます。
次回予告:クラウドの最も基本的なサービスである「仮想サーバー」について、AWS EC2とAzure VMを詳細比較します。
この記事があなたのクラウド選択の第一歩となれば幸いです。ぜひ「いいね」と「ストック」をお願いします!