最初に
本記事では、私のように忘れっぽかったり、飽きっぽかったり、積読が多かったり、読書中に集中力が途切れてしまう人に向けて、ちょっとした読書テクニックを紹介します。今回は具体的な技術的手法ではなく、より広範な読書法について焦点を当てています。今回紹介する読書テクニックが、技術書を愛するエンジニアの方にとって、少しでも役立つことを願っています。
なお、筆者は読書術に関する書籍を読んだことがないため、類似する書籍や記事があってもそれらとは無関係です。あらかじめご了承ください。
なぜあなたは読書を先延ばしにしてしまうのか?
セールなどで面白そうな技術書をまとめ買いしたものの、書籍の第一章や第二章を少し読んだだけで手が止まり、「また時間ができたら一気に読もう」と放置してしまう人って実は多いのではないでしょうか。KindleやPDF、CEDECの講演資料、さらには面白そうなブログ記事など、世の中には好奇心を刺激する情報が数多く公開されています。
私自身も日々、積読本を消化する忙しい毎日を送っています。「読書時間を作れない!」と感じる読者の気持ちは、痛いほど理解できます…。
以下のような経験はありませんか?
- 「毎日少しずつ読もう」と決めたのに三日坊主
- 連休前に「あの本を読むぞ!」と意気込んだが、結局本を開くことすらなく連休終了
- 読み進めていたが、途中で理解できない箇所が出てきてしまい、心が折れてそのまま積み本状態に
これらは、読書のハードルが高くなると起こりやすくなる現象です。
では、読書を難しくしている要因は一体何でしょうか?
-
完璧主義:
「最初から最後まで完璧に理解しないと」「一字一句を逃さず読まなきゃ」といった完璧主義的な思考を持つと、読書が重い負担になってしまいます。 -
集中力のキープ:
長時間集中するのが苦手な人は、読書中でも気が散りやすく、ついTwitterやYouTubeを見てしまうことがあります。 -
時間の確保:
仕事や家事、友人との予定がある中で、まとまった読書時間を確保するのは難しいものです。忙しい日常の中では、どうしても読書の優先順位が低くなりがちです。 -
理解の難しさ:
技術書や専門書の場合、内容が難解且つ複雑で、理解が難しい場合もあります。一度理解できない部分にぶつかると、次に進む意欲が失われ、そのまま積本状態になってしまうことも稀によくあります。 -
読書の目的の曖昧さ:
「なんとなくためになりそうだから」といった曖昧な動機で本を選ぶと、結果的にその本が自分の興味やレベルに合わず、読むモチベーションの維持が難しくなります。 -
読書環境:
例えば、暗い部屋で明るすぎる画面を見続けたり、座り心地の悪い椅子で読書をすると、腰痛や眼精疲労が原因で、読書という行為自体がストレスになってしまいます。
これらすべてを解決することは難しいですが、ひとつひとつを小さい問題に分割して対応していけば、意外と読書習慣が継続しやすい状況を作り出すことができます。
読書環境の構築
先に挙げた読書のハードルの中から、改善しやすい要素に取り組んでみましょう。
まずは、読書環境の整備です。
夜間モードをオンにする
Windowsには「夜間モード」、MacやiOSには「Night Shift」という機能が備わっています。Android端末にも同様の機能があるはずです。これらの機能をONにすると、画面が暖色系に変わり、目に優しくなります。眼精疲労は肩こりや頭痛にもつながるため、普段からスクリーンを長時間見る人には特におすすめの機能です。
次のような本を読む際には、夜間モード機能の使用をお勧めします。
- 活字がメイン
- 図やイラストが暖色系に変化しても、読書に支障をきたさない本
- 手順や操作方法を説明する図やスクリーンショット
- 差し絵
- 色が重要な情報とならない画像
一方、次のような本を読む際は、夜間モード機能をオフにしておく方が適切です。
- 色が重要な要素となる本
- グラフィック系の技術書
- イラスト関連の本
- テクスチャ作成に関する本
夜間モードは「何時から何時までONにする」と時間を設定することも可能なので、自分の生活リズムに合わせてぜひ活用してみてください。筆者は、ほぼ24時間この機能をONにしていますが、そのおかげで眼精疲労が軽減し、頭痛もかなり和らぎました。
読書する場所と姿勢の選定
正直なところ、自分が心地よいと感じる場所や姿勢であれば、どこでも構いません。
カフェ、海辺、自宅のベッド、デスクの前など、人それぞれに好みがあります。ですので、特にこれが最適とは一概には言えません。ただし、他の人の読書環境が気になるという方のために、私のお勧めを紹介します。
- 音楽:
読書中の音楽には、Lo-fiやJazzなどのジャンルがお勧めです。できるだけ歌詞のないものを選ぶと良いでしょう。また、雨音や電車の音、町の雑踏などをミックスした動画も人気があり、Spotifyではこのジャンルのプレイリストをたくさん見つけることができます。 - 場所:
ベッドの上や作業デスクなど、普段から集中できる場所が最適です。もし、人の目がある状況の方が集中しやすいのであれば、読書会に参加したり、誰かと作業通話をするのも良いでしょう。筆者は、Discordサーバーを活用して、自由に出入りできるボイスチャンネルを作り、他の人と無言で作業を共有する環境を整えています。 - 姿勢:
読書の場所に応じて、姿勢も工夫しましょう。座って読書する場合は、できるだけ姿勢を正すか、疲れた時は背もたれを少し倒してリラックスできる姿勢が良いです。もし腰痛が気になるなら、しっかりした椅子を購入するか、腰のサポーターを使用することをおすすめします。
メモするメリット
読書をするときにぜひお勧めしたいのは、得た知識を「メモ」することです。メモを取ることで、以下のような読書のハードルを解決する助けになります。
- 完璧主義
- 集中力のキープ
自分がどんな知識を得たのかをメモすることには、次のようなメリットがあります。
- 忘れたころに効率的に復習ができる
- 将来的にアウトプットをする際に、初心者がどこでつまずきそうか、過去の自分を通して予測が立てられる
- メモを残すことで記憶が定着しやすくなる
では、実際にメモを残すに当たって、どのようなツールを使えば良いでしょうか?
おすすめツール
世の中には多くのメモツールが存在します。
- Obsidian
- Evernote
- Microsoft OneNote
などが代表的です。
私のおすすめは、Notionというメモとタスク管理を両立できるオールインワンのツールです。
記録した内容はクラウド上に保存されるため、スマホ、PC、ウェブブラウザからいつでもアクセスできます。また、画像、動画、PDFファイルなどもアップロードしてメモに埋め込むことが可能です。
無料プランではアップロードできるファイルのサイズに制限があるため、私は個人的にプラスプランの利用をお勧めします。プラスプランでは、アップロードサイズの制限がなく、気兼ねなくさまざまなファイルを追加できます。
Notionは動作も軽量で、ストレスなく使えるため、自分への投資だと思って活用してみてください。私は読書メモとしてだけではなく、TODO管理や、副業でのドキュメント作成にも活用しています。
メモを取るためのツール活用
ここからしばらく、Notionでメモを取る際の使い方を記載します。
ですが、どのメモツールでも大抵は似たような機能を持っていると思うので、これから紹介するテクニックを、あなたが普段使いしているツールでも試してみてください。興味がない場合は「読み方のコツ」を紹介する箇所がこの先出てきますので、そこまでスキップしてください。
ボードビューの追加
まず、ルートとなる親ページとして「読書用ページ」を作成しましょう。
次に、実際にメモを取るページを追加していくための土台を用意していきます。
おすすめは「ボードビュー」を追加することです。リストビューでも問題ありませんが、ボードビューにしておくと視覚的に整理しやすくなります。
これでボードビューが完成したので、さらに読書メモ用にカスタマイズしていきます。
タイトルは「📖Books:list」に変更しておきましょう。
また、右上のページメニューから「左右の余白を縮小」をONにすることもお勧めしておきます。
最終的には以下のような形を目指します。
状況カテゴリの作成
読みたいけど読んでいない本、読んでいる最中の本、読み終わった本で整理ができるようにしてみましょう。リストの三点リーダーからメニューを開き、プロパティ>ステータス を選択します。
以下のようなステータスを編集する画面が出てくるので、ここで「読みたい本」、「読んでる最中」、「読み終わった本」というステータスを作成します。
こうしてステータスを設定すれば、リストが次のように表示され、どの本を現在読んでいるかが一目でわかるようになります。
次に、各本のページを作成したあと、そのページに本の表紙画像を貼り付けた場合に、その画像がプレビュー画像として表示できるような設定にします。
三点リーダーからメニューを開き、「レイアウト」を押して、レイアウト編集画面に変更してください。「カードプレビュー」という項目があるので、こちらを「ページコンテンツ」に変更してみてください。
この設定を行うと、ページ内に貼り付けた画像がプレビュー画像として表示されます。これで、どの本のページかが、一目で判断しやすくなるでしょう。
本のジャンル付け
次に、読んだ本が増えてきたときにジャンルごとで整理できるよう、各ページに本のカテゴリを追加しておきましょう。
リスト内のページどれでも良いので開いてください。
そのうえで、プロパティの編集メニューを開きましょう。
プロパティの編集画面から、「セレクト」または「マルチセレクト」を選択します。
プロパティの名前を「カテゴリ」に変更します。
これで、カテゴリの追加や選択が簡単にできるようになります。
知見のリスト化
次に、本から得た知識をまとめるリストを作成します。
このリストは、本のページを作成する際のテンプレートとして用意します。Notion以外のツールを使用している方も、ページに子ページを追加できる機能があれば、そちらを活用しましょう。
まず、先ほど作成した読書ページリストの右側にある「新規」ボタンの横にある下矢印ボタンをクリックし、「新規テンプレート」を作成します。
その後にページが開かれます。ここで編集した内容がテンプレートとして登録されます。
このテンプレート内に、本から学んだ知識を記録するためのリストを作成しましょう。
デフォルトで作成されたページをマウスで選択して一括削除しておきます。
このように設定できればOKです。
これで、テンプレート用のページおよび本をメモするためのページ作成が完了です。
スクショのコピー
電子書籍やオンライン上で記事を読む方も多いと思います。そんなときに役立つのが、スクリーンショットを撮るためのショートカットキーです。
ワンボタンやワンタップでスクリーンショットをクリップボードにコピーできるようにすれば、読書メモをスクラップブックのように保存することができます。
例えばこんなふうに↓
PC
キーボードにショートカットキーを追加しても良いですし、多ボタンマウスを使っている場合は、いずれかのボタンにショートカットキーを割り当てることをお勧めします。
Windowsでは「Win + Shift + S」を使うことで、指定した範囲のスクリーンショットを撮影し、クリップボードに保存できます。自分専用の読書メモを取る場合、この機能とペースト機能(Ctrl + V)を活用して、Notionにメモとして保存したい箇所を貼り付けましょう。
スマホ
スマホでもスクリーンショットをクリップボードにコピーできます。Androiddeの方法には詳しくありませんが、iPhoneでは、スクリーンショットを撮った後に表示される完了ボタンを押す際に「コピーして削除」を選択すると、スクリーンショットをファイルとして保存せず、クリップボードに一時保存することが可能です。
読み方のコツ
読書メモの作り方を紹介したところで、次は、私なりの読書のコツを紹介させて頂きます。
人によっては参考にならない部分もあるかもしれませんが、もし読書に集中できない時があれば、ふと思い出して試してみてください。
優先度を付けて読むものを決める
あれもこれもと手を付けてしまうのは、誰にでもよくあることだと思います。
そんな時にはまず、自分が今求めているスキルや資格、仕事で使う技術は何かを考えてみましょう。その中で最も優先度が高い要素を一つ選び、その要素に関連する本や記事を積極的にピックアップしてください。目的やゴールが明確になると、読書に対するモチベーションも保ちやすくなります。
もちろん、熟読する時間が取れないこともあるでしょう。その場合は、本の目次を見て、今自分に必要だと思う章を先に読むことをお勧めします。物語形式の本でない限り、ほとんどの本は章を飛ばして読んでも支障はありません。また、興味のある章だけを読み終えた時点で、あなたにとってのゴールは既に達成されたと言えます。
この記事の趣旨と矛盾しているように感じるかもしれませんが、「最後まで読み切らなければならない」と無理に考える必要はありません。自分のペースで本を読むことを大切にしてください。あなたの読書体験はあなただけのものです。それに、プレッシャーを感じずに読んだ方が、結果的に本を完読できることもよくあります。
まずは本を開いてみる
こんなテクニックを聞いたことはありませんか?
「勉強のやる気が出ないときには、まず机に向かって教科書を開いてみる。それだけで、少しだけ勉強してみようかな、という気持ちになる」
これは読書をする時にも有効です。疲れてる時や、やる気がでない時、なんとなくTwitterやゲームを立ち上げるその前に、開くだけでもいいので本を手に取ってみてください。たとえ結果的にあまり読み進められなくても問題ありません。この行動を続けていれば、少しずつでも読み進めることができ、もしかすると10回に1回は長く読めるかもしれません。
読書スキルはトレーニングによって鍛えることができます。この行動が癖として自然にできるまで続けることで、10回に1回の成功率が、やがて3回に1回、さらには2回に1回と上がっていくかもしれませんよ。
もし本を読むハードルが高いと感じるなら、内容が少なめで興味がある技術記事を選んで、そこから始めるのも良い方法です。
「自分にとって参考になった個所」だけをメモする
先程、メモを取るための環境を整えました。
実際にメモを取る際は、本の内容すべてを細かくメモする必要はありません。自分にとっての新しい発見や、後で読書メモを読み返したときにチェックしたいポイントだけをメモとして残していきましょう。
例えば、技術書を読む場合、自分の仕事に役立ちそうな部分や、これから学びたいスキルに関連する箇所だけをメモに残すことで、メモに再度アクセスした際、必要な情報だけを効率よく再確認できます。
もしかしたら、最初のうちは、本の内容すべてが自分に必要な情報として見えてしまうかもしれません。そんな時は章末のまとめを読んでみましょう。そこには筆者がその章で何を伝えたかったのかが簡潔にまとめられているはずです。その中から自分にとって必要だと思うポイントをピックアップして、そこに関するページを読み、詳細を読書メモとして残すのが良いでしょう。
何が自分にとって必要な情報かを取捨選択するスキルは、読書スキルと同様、経験を積むことで鍛えられます。なので日常的に上記のようなテクニックを少しずつ実践しながら、取捨選択スキルを伸ばしていきましょう。情報を取捨選択するスキルは読書だけでなく、日常生活や仕事でも非常に役立ちますので、ぜひ身に付けてみてください。
目を滑らせない工夫
読書中、集中力が続かずに、ページをただ目で追うだけになってしまうことはありませんか?
特に脳や目が疲れているときに、目が滑ってしまい、内容がしっかりと頭に入ってこないことは、私にもよくあります。
これを防ぐために、いくつか簡単な工夫を試してみましょう。たとえば、指やペンで行をなぞりながら読むと、自然にリズムが生まれ、読み進めやすくなります。また、紙や定規を使って、読んでいる行のすぐ下を隠すのも効果的です。
1ページ読み終えたら、すぐに次のページに進むのではなく、少し一息入れましょう。そのあとに、まとめ部分をじっくり読み、章全体を振り返ってみることも、理解を深めるために有効です。
大人になっても効果的な読書感想文
小学生の頃、読書感想文が苦手だった人もいると思います。
だとしても、X(旧Twitter)や自身のブログに、本の感想や学んだことを投稿するのはお勧めです。簡単な感想でも良いので、読書メモと一緒に投稿してみてください。他の人の目がある場所で投稿し、公開することで、自分のモチベーションアップにつながりますし、他の人にとっても、その本を知る良いきっかけになります。
また、ささやかでもアウトプットをすることで、「自分はこの本を読んだ」という記憶が残りやすくなります。こうした「読了した本」の記憶を積み重ねていくことは、意外と大切です。何か問題が起きた時や、ド忘れしてしまった時に、解決策を調べるための引き出しが多ければ多いほど、効率よく思い出したり再学習することができます。
一度で覚える必要はない、大事なのは「繰り返し」の学習
読書は、一度読んで終わりではありません。
必要な時に何度も繰り返し学習することが大切です。特に技術書の場合は、内容も濃密で一度ですべてを理解することは非常に難しいです。時間をおいて再度読み返してみると、最初に読んだときには理解できなかったポイントが、すんなりと頭に入ることもあります。
そういった「繰り返し」の学習のとっかかりを増やすためにも、読書メモをリストとして用意する提案を先ほどしました。読書メモのプレビュー画像によって読んだ本が目に留まりやすくなりますし、検索機能やカテゴリー分けによって再度読み返したい本を簡単に探せるようになりました。
あなたの時間とエネルギーは、有限です。学習にかかるコストをできるだけ減らし、インプットに集中できるよう工夫していきましょう。
読書会への参加
それでも一人で読書するモチベーションが続かず、読書が難しいと感じる場合は、誰かと読書会を開いたり、参加してみるのも一つの方法です。同じ本を読んでいる仲間がいると、モチベーションが上がりやすくなり、他の人の意見や考えを聞くことで新たな視点を得られます。オンラインで参加できる読書会も多く開催されているので、興味があればそういったイベントを探してみるのも良いでしょう。
まとめ
今回紹介した「脳に優しい読書術」は、読書をストレスなく、楽しく、そして効率的に進めるためのヒントをお伝えしました。読書のハードルは、完璧主義や集中力の持続、時間の確保など、誰にでも起こり得るものです。しかし、少しの工夫でそれらの障壁を取り除き、読書を日常的な習慣に変えることができます。
まずは優先順位をつけて、読むべき本を決めること。目的に合った本を選び、無理に全部読もうとせず、必要な箇所だけ読むことで、読書に対するプレッシャーを軽減できます。さらに、「本を開くだけでもいい」 という気軽なアプローチを採用すれば、自然と読み進めることができるでしょう。
また、メモを取り、読書内容を記録することは、後からの復習やアウトプットに大いに役立ちます。特にNotionなどのツールを活用すれば、メモの整理や検索が効率的に行え、得た知識を無駄なく蓄積することが可能です。
そして、読書の成果を繰り返し学習することで、知識が深まり、技術書や難解な内容でもしっかりと理解できるようになります。モチベーションが下がってしまった時には、 読書会 などのコミュニティを活用して、他の人と一緒に学びを共有するのも一つの方法です。
最も重要なのは、読書を楽しむこと。自分に合った方法を見つけ、無理なく読書習慣を続けていけるように工夫してみてください。