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ふりかえり手法をふりかえる(KPT, LeanCoffee, Fun/Done/Learn, Timeline, +/Δ)

Last updated at Posted at 2019-12-04

この記事は チームスピリット Advent Calendar 2019 の3日目の記事です。

TL;DR

2018年〜2019年に自分のチームで試してきた、ふりかえり(スプリントレトロスペクティブ)の手法をふりかえります。

これまで試した手法は以下の通りです。

  • KPT
  • Lean Coffee
  • Fun/Done/Learn
  • Timeline
  • +/Δ

自分のチームについて前提

  • 1チーム5人〜10人程度です(時期によって増減します)
  • 2週間スプリントのスクラム開発です

ふりかえり手法のふりかえり

KPT

2018年はだいたいこれでやっていました。

これは何か/どうやってやっていたか

スプリントの中で気づいたことを、K(Keep: 今後も続けるべきこと)、P(Problem: 問題だったこと)、T(Try: 次にやること)の3つに分けて記入する、というものです。
screenshot-teamspiritdev_atlassian_net-2019_12_03-20_48_44.png
↑の例だと、K(うまく行った点)1とP(改善すべき点)を並列に書いて、その中でTとしてチェックボックスを挿入しています。

やってみてどうだったか

よかったこと

シンプルなフレームワークなので、とりあえずやってみるのには向いています。
また、ふりかえりというとだいたい「よくなかったこと」が話されがちですが、「今後も続けるべきこと」を書くことを意識的にできるのはよいですね。両方とも書くことで、内容が網羅されやすいです。
また、Tryを書くことで、次のアクションに結びつけやすいです。

難しかったこと

書く量や粒度に制限をつけないと、内容が無制限に 長くなりがち です。
(当時はとくにチームが拡大していく時期だったので、人数が増える毎に顕著に時間が延びがちでした…)
それにより、ひとつひとつの話題に使える時間が少なくなり、本当に重要な話題について話しきれなかったり、といったことが増えるようになってきました。

まとめ

シンプルなので「ふりかえり、とりあえず何かやりたいけど何やっていいかわからない!」という場合には導入しやすいです。
ただ、これを使ってどのようにふりかえりの場を運営するかについてはあまり規定がないので、人数が増えるほどファシリテーターの負担が増えます。ふりかえる対象が少ない、1on1のような場でやるのに向いていそうだと感じました。

Lean Coffee

2018年12月くらいから導入しはじめました。
チームの拡大がいったん落ち着いてきた頃だったと思います。

これは何か/どうやってやっていたか

話題を起票したあと、それぞれの話題に投票を行い、票数の多い順に話し合っていきます。1つの話題あたりに制限時間を設けていますが、制限時間内に話し終わらなかった場合は、過半数が手を上げれば時間を少しだけ延長することができます。
以下のリンクが詳しいです。
Lean coffee - SlideShare
議論に集中できる! Lean Coffee を使った ふりかえり(リモートチーム編)

弊社でも紹介記事があります(この手法を実際にやっているのを見て、良さそうだったので自分のチームにも取り入れた、という経緯です)。

自分たちのチームでは、リモートで参加するメンバーも多いため、紙ではなくConfluence上で擬似的に起票・投票しました。また、「必ず次のアクションを書く時間を設ける」など、独自のアレンジを入れています。
screenshot-teamspiritdev_atlassian_net-2019_12_03-21_16_37.png

やってみてどうだったか

よかったこと

「制限時間×起票された話題の数」で必ず終わるので、確実に時間通りに終わらせることができます。
また、投票で決めた重要度順に話すことができ、必要な場合は時間を延ばすこともできるので、時間が制限されている中でもしっかり深堀りして話すことができます。

難しかったこと

  • 人数が少なすぎるとあまりやる意味がない
    • この手法を導入した理由が「人数が多くて話題も多いため、時間がなくて話しきれない」であったことから、逆に人数が少なすぎたり、話題がとくにない、という状況だとやる意味が薄いです。
    • このふりかえり手法にしてしばらくしてから、スクラムチームの分割が行われたのですが、チーム分割後は課題の起票が少なすぎて話すこともなくなってきたため、別のふりかえり手法で補強することになりました(後述)。
  • この方法だけでは気づけない問題がある
    • 実はKPTのときも同じ課題を抱えていたのですが、課題の起票は各人の気づきに任せられているため、「問題であると本人が気づいていない問題」は起票されることがなく、話し合うことが出来ません。これはLeanCoffee自体の問題ではなく、「このスプリントで何をやってきたか」についてふりかえる時間をとっていなかったことが原因でした(このことに気づくのにはけっこう時間がかかりました…)。
  • よかったところ(KPTにおけるKEEP)への気付きが不足しがち
    • 問題点を探すだけだとモチベーションも下がるし、KEEPするためのTRYも不足する(その場限りになりやすい)ことになりがちです。
    • 多くの場合、良いところよりも良くないところの方が目に付きやすいので…
  • 優先度の付け方が参加者の投票に託される
    • 個人としての優先度と、チームとしての優先度が異なる場合、「チームとして重要な話」の優先度が下がりやすいです。

まとめ

「大量の課題を、重要度の高い順に、時間内で話し合う」というユースケースにぴったりです。
ただ、「そもそも課題が出てこない」という場合はやっても意味がないので、課題を見つけるためのフレームワークを導入して補強すべきです。

Fun/Done/Learn

2019年の4月〜8月ごろにやっていた手法です。

当時のチームには以下のような課題がありました。

  • これまで8〜10人ほどだったチームを2つに分割したためLeanCoffeeの手法だけだと上手く行かなくなってきた。
  • 「〇〇月までに○○をやる!」などの具体的な目標が一旦なくなり、調査・検討が必要なタスクや性能改善系のタスクが増えてきたため、自分たちのモチベーションが見えにくい
  • チーム内で、いま誰が何をやっているのか分かりにくくなってきた

これらを踏まえ、「誰がいま何をやっていて、どう感じているか」を振り返るための手法が必要だと感じたため、これを導入しました2

これは何か/どうやってやっていたか

スプリント内にあったできごとを、Fun(楽しかったこと)/Done(やったこと)/Learn(学びを得たこと)に分けて起票していく方法です。
ファン・ダン・ラーン(FDL)ふりかえりボード

弊社ブログでも紹介されています。
http://teamspirit.hatenablog.com/entry/2019/06/11/145619
↑は自分たちのチームがそのまま紹介されているので、やり方は記事にある通りですが、

  • スプリント内にあったできごとを起票して、Fun/Done/Learnに分類する
  • 起票したFun/Done/Learnを見ながらふりかえる
  • より深堀りが必要な内容があれば、LeanCoffeeで議論する

という感じでやっていました。

screenshot-cacoo_com-2019_12_04-11_49_33-2.png
リモートワークのメンバーも参加できるように、途中からCacooに移行しました。(画像右側の、モザイクのかかった大きい四角は議事録です)
Cacooは複数人での同時編集が可能で、動作もスムーズなので、リモートのメンバーにもとくに違和感なく使ってもらえているみたいです。

やってみてどうだったか

よかったこと

  • 現在のメンバーのモチベーションが可視化されるので、スプリント毎に試した施策がうまくいったかどうかが分かりやすい
  • 「よかったこと」ベースでふりかえる
    • KPTで言うKEEP寄りの気づきを得やすい
    • メンバーのモチベーションも上がりやすい
    • 「Learn」があるおかげで、「このスプリントを経て、新たな知見を得た」ことがはっきりわかる
  • 前回のLeanCoffeeと比べると、「自分が気づいた問題」よりも「実際にあったこと」が記入されるので、「本人が問題と気づいていないこと」にも気づきやすい

難しかったこと

  • 起票してから問題を抽出するまでが難しい
    • 「書いて貼ってもらう」までは簡単ですが、そこからどうやって深堀りし、次のアクションに結びつけていくのかについては、かなりファシリテーターの手腕に任されるところが大きいです。
    • 実際のところ、Fun/Done/Learnから次のアクションに結びつけていくのは毎回手探りでやっていました。
    • これまでの手法のなかでも、最もファシリテートが難しいと感じています。
    • 時間もかかるため、大人数には向きません。
  • 「具体的な問題がすでに見えていて、それについて深堀りしたい」というケースには向かない
    • 自分のチームでは、別途LeanCoffeeを組み合わせていました。

まとめ

スプリントを通して得た学びや気付きを共有しやすい、という点は気に入っています。これまでのふりかえりの中でもかなりポジティブ寄りで、やっていて楽しいです。
とはいえ、具体的なアクションに結びつけるのは非常に難しく、高度なファシリテート能力を要求されていると感じました。

Timeline

2019年9月頃から現在まで使っています。

この頃に「アジャイル レトロスペクティブズ」を読んで、

  • ふりかえりの手法そのものがいろいろあること
  • ふりかえりには「データの収集」「アイデア出し」「意思決定」「終了(まとめ)」というフェーズがあり、それぞれのフェーズに合った手法があること

ということに気づき、「今までのふりかえりでは『データの収集』はあまり出来ていなかったな」と思ったので、その部分を補強するために、Timelineを導入することにしました。

これは何か/どうやってやっていたか

「スプリント中に起こった出来事」を時系列順に並べます。
(詳細は「アジャイル レトロスペクティブズ」を読んでください。本に載っているだけでもいくつかバリエーションがあります)

自分のチームではこんな感じでした。
screenshot-cacoo_com-2019_12_04-13_27_34.png
(引き続き、リモートワーカーのためにCacooで運用しています。起票された話題に付いている小さな「+1」は、ドット投票(「この話に関心がある!」を表すためのもの)です)

screenshot-cacoo_com-2019_12_04-13_40_34-2.png
自分のチームでTimelineを始めたら他のチームに波及していったのですが、そのチームでさらにブラッシュアップされたものを自分のチームに逆輸入しました。JIRAのバーンダウンチャートを貼ったり、「良かったことは上の方に、良くなかったことは下の方に貼る」「絵文字で気持ちを表現する」などのルールが追加されています。

やってみてどうだったか

よかったこと

  • 事実ベースでふりかえることができる
    • これまでのふりかえりでは、各人の気づきに依存していましたが、ふりかえりの場で「そもそも何が起こっていたのか」を確認できるようにすることで、その事象に関わった人も何が起こったのかについて話すことができるようになりました。
    • 「自分以外が何をやっているのか」は意外と見えにくいので、こういう場で一覧できるようになっているのはとてもいいですね。
  • グラフを追加したり、貼る位置を工夫することで、その時の気分・モチベーションも観測できるようになる

難しかったこと

  • この手法は「データを収集する」ためのものなので、Fun/Done/Learnと同様、深堀りには何らかの別の手法を用意したり、ファシリテーターが気づきを促したりする必要があります。
    • 自分たちのチームでは、ドット投票を併用して、関心の高そうなものにフォーカスして話す、という方法で、重要度の高そうなものから順に時間をかけて考察しています。

まとめ

ふりかえりで得られる情報の多さと、運営難度の低さが魅力的で、今のチームにフィットした手法であると感じています。
ただ、この手法はデータの収集に特化しているので、そこから先については別の手法を混ぜるとさらに良さそうです。

+/Δ

つい最近(2019年11月中旬から)導入しはじめました。Timelineと併用しています。

これは何か/どうやってやっていたか

「プラス・デルタ」と読みます。Timelineと同様、「アジャイル レトロスペクティブズ」に載っています。
+(プラス)は「良かったこと・今後も続けること」、Δ(デルタ)は「次のスプリントではやり方を変えること」を表します。+とΔのどちらかがリストいっぱいまで埋まるか、制限時間に達したら終了です。

自分のチームでは、Timelineでふりかえった後のまとめとして使っています。
screenshot-cacoo_com-2019_12_04-14_00_24.png
(この表が、先ほどのTimelineの下に貼ってある)

やってみてどうだったか

よかったこと

  • Timelineだけだと、「情報はたくさん出たけどまとまっていない」状態になりがちだったので、まとめ用に入れました。
  • KPTよりもさらにシンプルで、かつ記入する数に制限があるので、まとめ向きです。

難しかったこと

まだ始めたばかりなので、とくに問題は感じていません。

まとめ

引き続き経過観察していきます。

全体まとめ

やってみてわかったこと

  • ふりかえりの中にもフェーズがあり、手法ごとにどのフェーズに向いているかが異なる
    • Fun/Done/LearnやTimelineは「データの収集」向き、LeanCoffeeは「意思決定」向き、KPTや+/Δは「終了(まとめ)」向きだと思います。
  • チームに適したふりかえりの手法は、チームの性質・状況によってその都度異なる
    • 人数が多い場合は、時間がかかりすぎないような手法を選んだほうがいいです。
    • チームメンバーが何が得意かによって、不要な手順を省略したり、あるいはメンバーが苦手なところを手法で補ってやると、うまくいきやすいです。
      • たとえば、これまで自分のチームではLeanCoffeeによるふりかえりをやっていましたが、これによって「限られた時間内で深堀りする」のが得意なメンバーが増えたため、最近はLeanCoffeeを使わなくても十分に問題を話し合えていることが多くなってきました。
      • そのため、問題の深堀りにはあまりフレームワークを使わなくてもよくなり、その代わりに問題の洗い出しにより時間を使うようになりました。
  • 今のふりかえりの手法に困っていなくても、別のやりかたを試すことで見えてくるものがある
    • 複数の手法をチームの状況に応じて使い分けられるととても良いですが、そのためにはそれらの手法を実際にやって慣れる必要があります。
    • ホーソン実験 というのもありますが、「いろいろ試せていること」自体がチームにとって益をもたらす可能性もあります。
    • とはいえ頻繁に変えすぎると運営が大変なので、適宜バランスをとってやっていきたいですね。

というわけで、ふりかえりのふりかえりでした。


  1. いまこうしてみると、"Keep" と "うまく行った点" は似て非なるものですね… 

  2. 今にして思うと、ふりかえりの手法を変える以前に、チームとしてだいぶ問題がある状態だったのですが… 

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