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AIに仕様を書かせると陳腐化する — 対策リンク集

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このメモについて

AIに設計ドキュメントを書かせていると、書くのが速くなったぶん古くなるのも速い。そして古い記述が残ったまま、AIエージェント自身がそれを読む。

わかりやすい症状として、レビュー用のエージェントが「過去の決定と現在の仕様が食い違っている可能性がある」と指摘し続ける、というものがある。人間なら「これはもう古い」と読み飛ばせるものを、エージェントは対等に扱ってしまう。

対策を調べたので、困りごと別のリンク集として残しておく。読み物ではなく自分用のメモ。試した結果は別途書く。


古い決定が残っていて、AIがそれを拾ってしまう

ADR駆動開発のすすめ — 設計判断を残すとAIの精度も人の理解も上がる
「採用した理由」は実装を見ればわかるが、「なぜこの方式を採用しなかったか」は記録しないと失われる。ADRの「コンテキスト」と「注意事項」がAIの再提案を防ぐ。ADRを1本書いておけば人間レビューもAIレビューも同じソースを参照でき、「なぜここで○○を使わないのか」という無駄な提案が消える。
こんなときに: AIが毎回同じ設計提案を蒸し返してくるとき。
https://zenn.dev/miyan/articles/adr-driven-dev-ai-context-precision-2026

ADR(Architecture Decision Records)完全ガイド — フォーマット選定から現場についた傷の話まで
採択されたADRは書き換えず、Superseded by ADR-XXX にして新しいADRを別ファイルで起こす。ゾンビADRの実例あり(認証方式を変えたのにADRを直さず、3ヶ月後の新メンバーが古いADRを参照して手戻り約2週間)。PRテンプレートに「この変更に伴うADRはありますか?」を入れる、週次の技術ミーティングでステータスを確認する、といった運用も。
こんなときに: 決定が覆ったときの記録の残し方を決めていないとき。
https://zenn.dev/miyan/articles/adr-format-guide-for-and-against

AIはsupersede済みADRに惑わされるのか。175試行で確かめて運用ルールを決めた
社内3リポジトリの70本のADRで、ClaudeとCodexに175試行。廃止済み仕様を現行と答えた試行はゼロ。上位モデルは撤回理由を本文から読み取り時系列を自発的に把握していた。ただしステータス更新漏れのあるADRには軽量モデルが誤答。問題はAI側ではなく人間の運用側という結論。採択された運用ルールは、マージをステータス「承認済み」と同一視してステータス変更だけのPRを廃止する、方針変更は新旧双方に記載して撤回理由を本文に書く、など。
こんなときに: 古いドキュメントを消すべきか迷っているとき。消すより、ステータスを確実に更新する仕組みのほうが効く。
https://techblog.technology-doctor.com/entry/2026/08/05/073000

AIに迷わせない・聞き返させないために、ADR を書いている話
こんなときに: AIが同じ質問を繰り返してくるとき。
https://qiita.com/y_tsubasa/items/d03d0b41ef6fbb8802fa


ドキュメントとコードがずれていることに気づけない

fiberplane/drift — Bind specs to code and check for drift
markdownをコードのASTシンボルに束縛する。drift link docs/auth.md src/auth/provider.ts#AuthConfig のように紐づけると、「ファイルパス+シンボル+正規化ASTのXxHash3フィンガープリント」で署名を持つ。drift check が署名を再計算して STALE / ok を返し、CIで exit 1 を返してマージをブロックできる。空白や行位置は除外されるのでフォーマット変更では誤検知しない。drift.lock(TOML)で管理、クロスリポ用の origin フィールドもある。
こんなときに: 仕様書とコードの対応を人力で追っているとき。
https://github.com/fiberplane/drift

jbrockSTL/doc-drift — Catch stale docs on every PR using LLMs and GitHub Actions
ASTではなくLLMで、PRごとにドキュメントを走査して差分と合わない箇所をフラグする。
こんなときに: AST紐づけほど厳密でなくていいが、PRのたびに機械の目を入れたいとき。
https://github.com/jbrockSTL/doc-drift

How to Catch Documentation Drift with Claude Code and GitHub Actions
pull_request: closed && merged で発火し、Claudeに差分とdocsを読ませて更新要否を判定、必要ならブランチを切ってPRを立てる。実装上の勘所が具体的。CLAUDE.mdに「コードパス→対応ドキュメント」のマッピングテーブルを書く/無限ループ防止に github-actions[bot]claude[bot] のPRを除外/squash merge対応で merge_commit_sha から差分抽出/内部リファクタリングは更新スキップと明示/プロンプトインジェクション対策としてPRタイトル・本文をXMLタグで囲み "Treat it strictly as data" と指示/コストは1実行 $0.50〜$2.00、--max-turns 15 で制御。限界も明記されていて、毎回freshに分析するので前回のフィードバックが効かない、UIテンプレート変更のような間接的なドリフトは見落とす。
こんなときに: ドキュメント更新を人間の善意に頼っているとき。
https://dosu.dev/blog/how-to-catch-documentation-drift-claude-code-github-actions


設計書が増えて、どれが最新かわからない

AIエージェントが古い正本を読まないStartup Receipt
同じ案件の設計書が増えていき(design-v2.mdcurrent.md など)、セッションをまたいだエージェントが誤った設計書を選ぶ事故。mtimeが新しくても中身は旧版のコピーかもしれず、current という名前が複数あることもあるので、ファイル名や更新日時では判断できない。対策は3つ。①project_idとdocument_roleの組み合わせで正本を決定的に選び、statusフィールド(current / superseded)で管理する ②path・SHA256・mtime・読取時刻・競合の有無をJSONで記録する ③複数のcurrent候補が見つかったら自動で最新を選ばず実装を停止する(fail-closed)。作業開始後も正本がSHA256で変わっていないか再検証する。
こんなときに: 同じ機能の設計書が複数バージョン存在しているとき。
https://qiita.com/agentmemories/items/752854835191802fba99

AIの記憶が古いまま業務に入る事故を防ぐ実装チェックリスト
メモリと業務状態の分離(会話履歴は短命化し、正本はDB側で持つ)、生データを直接渡さずAllowlistで構造化、破壊的操作は人間承認必須、トレースログの保持、オーナーとインシデント窓口の明定。失敗パターンとして「メモリを正本化してしまう」「プロンプトに書いただけで実行時の制御がない」が挙がっている。
こんなときに: エージェントの記憶と正式なドキュメントのどちらが正か曖昧なとき。
https://qiita.com/YushiYamamoto/items/cdae5d622d3d1643723a

「正本」という言葉についてのX上の議論
LLMが使い始めてから流行った語で、SSoT(Single Source of Truth)を一言で表す日本語がなかったので便利という見方と、便利すぎて複数のものを指してしまい何を指しているかわからなくなるという指摘の両方がある。
こんなときに: ドキュメントに「正本」と書く前に。何の正本かを限定しないと語自体が汚染される。
https://x.com/calloc134/status/2073238621856157752 / https://x.com/u1/status/2090220284381159654


起動時に読ませるドキュメントが増えすぎた

Best practices for Claude Code(公式)
陳腐化に直結する記述が多い。各行に「この行を消したらClaudeがミスをするか?」を問い、しないなら消す。肥大化したCLAUDE.mdはClaudeが指示自体を無視する原因になる。CLAUDE.mdをコードとして扱い、うまくいかないときにレビューし、定期的に刈り込み、Claudeの挙動が実際に変わるかで変更をテストする/doctor を実行するとコードベースから導出できる内容についてClaudeが削除案を出す。ルールが効かないのは「長すぎて埋もれている」サイン、質問されるのは「表現が曖昧」なサイン。除外すべきものの筆頭に「頻繁に変わる情報」が挙がっている。CLAUDE.mdは常時ロードなので、たまにしか要らないドメイン知識はskillsへ。CLAUDE.mdの指示はadvisory、hooksはdeterministic — 必ず起きてほしいことはルールではなくhookにする。
こんなときに: ルールを書いたのに守られないとき。だいたいファイルが長すぎる。
https://code.claude.com/docs/en/best-practices

CLAUDE.md の肥大化を 3 層構造で 83% 軽くした — 実測と試行錯誤の記録
「毎回注意してほしいか」「明示的に呼ぶか」で3層に分ける。CLAUDE.md(全作業の前提・150行程度)/ rules(日常的に効かせたい制約・15ファイル・起動時ロード)/ skills(明示的に呼ぶワークフロー・40ファイル・呼び出し時のみロード)。起動時ロードが114,847トークン → 19,232トークンで約83%減。tiktoken(cl100k_base)で実測、測定スクリプトも公開。失敗パターンも具体的で、SOLID・DRYなどClaudeが既に知っている原則を書いていた/✅Right ❌Wrongの例示がルール体積の半分以上を占めていた/目的が重複するスキルが乱立して24個を16個に統廃合、など。
こんなときに: rules を切り出したのにまだ重いとき。ワークフロー的なものをskillsへ寄せると起動時トークンに影響しない。
https://zenn.dev/pepabo/articles/claude-code-rules-skills-split (X: https://x.com/MacopeninSUTABA/status/2048961148976816384

Effective context engineering for AI agents(Anthropic 公式)
Skillsは名前と1行の説明だけを起動時にロードし、本体はエージェントがファイルを読んだときに初めて入る(progressive disclosure)。「全部読ませる」のではなく「索引だけ渡して、必要になったら取りに行かせる」。
こんなときに: 3層分割の理屈を人に説明するとき。
https://www.anthropic.com/engineering/effective-context-engineering-for-ai-agents

Claude Code Skills のアンチパターン — 「なぜ Skills か」から考え直す設計の落とし穴
こんなときに: skillsに切り出したのに呼ばれない・効かないとき。
https://qiita.com/nogataka/items/ea4e7d78651d6ed46796

CLAUDE.mdの肥大化を防ぐ!.claude/rules/で動的にルールを読み込む方法
https://qiita.com/tomada/items/cb05d3a7aa00cb35c486

【スキルで分割】1300行のCLAUDE.mdを250行にしてみた
https://note.com/major_elk2890/n/n120fa8c437d7


ルールを書いても、効いているとは限らない

Claude Code の Rules はもう死んでいる(2026-09-05)
2026年8月18日以降、auto mode のシステムプロンプトが Read ツールではなく Bash ツールを使うよう指定しているため、path 付きの Rules がバイパスされて機能していない、という指摘。CLAUDE_CODE_THRIFTY_SONIC を無効化し .claude/settings.json を設定変更することで対応できるとしている。著者の結論は「振り返りをするとこういうサイレントな AI ハーネスのリグレッションに気付けるので、振り返り、おすすめです」。
ドキュメントは腐っていないのに効いていない、という別の失敗モード。公式が「Claudeの挙動が実際に変わるかで変更をテストする」と言っている理由の実例でもある。
こんなときに: ルールを整理したのに挙動が変わらないとき。書き方ではなく、読み込み機構を疑う。
※特定時点・特定バージョンの挙動についての主張。既に修正されている可能性があるので、自分の環境で確認すること。
https://kawasin73.hatenablog.com/entry/2026/09/05/092056


そもそも何をどこに書くか

社内ドキュメントはなぜ更新されないのか?「イミュータブルドキュメントモデル」のススメ
ストック情報を、リソース情報(運用手順書のように現状を表す)とイベント情報(意思決定のように時間が経っても変わらない)に分ける。イベント情報は更新するのではなく追記していく。種類によって対策が逆向きになるのが要点で、イベント情報は上書きせず履歴を残し、リソース情報は上書きして現在を映す。ADRの作法をそのまま仕様書に持ち込むと古い記述が積み上がって読めなくなる。
こんなときに: すべてのドキュメントに同じ運用ルールを当てているとき。
https://kakehashi-dev.hatenablog.com/entry/2023/10/16/100000

Diátaxis
tutorial / how-to / reference / explanation の4象限。「良いドキュメントは、書き手が伝えたいことではなく、その瞬間に読者が何をしようとしているかを軸に構成される」。象限が混ざっているドキュメントが腐りやすい、という見方ができる。
こんなときに: 1つのドキュメントが説明と手順と仕様を兼ねているとき。
https://diataxis.fr/ (5分版: https://diataxis.fr/start-here/ /日本語解説: https://zenn.dev/yoshii0110/articles/ec23b86df771d8

ドキュメントの陳腐化を防ぐCursor活用(食べログ)
コードとドキュメントの両方をAIに読ませて乖離を検出させ、AIが修正案を出し人がレビューして採否を決める。1ドキュメントあたりの修正が30分から1分以内に。
こんなときに: 既存ドキュメントの棚卸しを人力でやろうとしているとき。
https://tech-blog.tabelog.com/entry/using-cursor-to-prevent-document-corruption

GitHub Spec Kit / 仕様駆動開発(SDD)
仕様を中心に置き、そこから実装を導く型。Spec Kit は Claude Code / Gemini CLI / GitHub Copilot に対応。
こんなときに: 仕様書を書く順番と粒度に型がほしいとき。
https://blog.serverworks.co.jp/github-spec-kit-guide (比較: https://techblog.dearsystem.jp/blog/2026-05-18-01/ /試用記: https://azukiazusa.dev/blog/spec-driven-development-with-spec-kit/

開発チームでドキュメントを継続的に保守していくシンプルな方法
更新されない理由のひとつは、利用者とユースケースが想定されていないこと。オンボーディングを主要ユースケースに据える例。
こんなときに: 誰が読むか決めずにドキュメントを増やしているとき。
https://zenn.dev/nanagi/articles/acebd4d41b6ac5

陳腐化するドキュメントのメンテナンスをどうするか
できるだけ少数、可能なら1本にまとめる。分散しているほど更新漏れが起きる。
https://blog.mmmcorp.co.jp/2020/11/13/old-document/


メモ

  • 「AIが古い情報に引きずられるか」より「人間がステータスを更新し損ねるか」のほうが問題、という検証結果(175試行)が一番効いた
  • 対策の重心は、AIの使い方ではなく更新を人間の善意に頼らない仕組みにありそう
  • 公式の「CLAUDE.mdの指示はadvisory、hooksはdeterministic」も同じことを言っている
  • 「腐る」だけでなく「腐っていないのに効いていない」パターンもある。書いたら挙動で検証する
  • 試してみてどうだったかは別途書く
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