ここでは、第二量子化について自分用にまとめておきます。
非相対論的量子力学
量子系がN個の同種粒子から成る時、非相対論的なシュレーディンガー方程式は、次のように書けるのでした。
\begin{align*}
i\hbar\partial_t\psi(\vec{x}_{\sigma_{(1)}},\vec{x}_{\sigma_{(2)}},...,\vec{x}_{\sigma_{(N)}};t)=\sum_{i=1}^{N}\Big(-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2_i+V(\vec{x}_i)\Big)\psi(\vec{x}_{\sigma_{(1)}},\vec{x}_{\sigma_{(2)}},...,\vec{x}_{\sigma_{(N)}};t)
\end{align*}
ここで$\sigma$は、1からNの任意の置換であることに注意してください。
粒子がBoson的に振る舞うのなら、
\begin{align*}
\psi(\vec{x}_{\sigma_{(1)}},\vec{x}_{\sigma_{(2)}},...,\vec{x}_{\sigma_{(N)}};t)=\psi(\vec{x}_1,\vec{x}_2,...,\vec{x}_N;t)
\end{align*}
という関係を満たし、Fermion的に振る舞うのなら、
\begin{align*}
\psi(\vec{x}_{\sigma_{(1)}},\vec{x}_{\sigma_{(2)}},...,\vec{x}_{\sigma_{(N)}};t)=(-)^{\sigma}\psi(\vec{x}_1,\vec{x}_2,...,\vec{x}_N;t)
\end{align*}
という関係を満たします。 $(-)^{\sigma}$は、$\sigma$が偶置換の時1、奇置換の時-1となる記号です。$sgn(\sigma)$とも書いたりします。
さて、復習をしたところで別のアプローチから同種粒子系の記述を考えてみます。
1粒子系の再記述(同ポテンシャル中を運動するN粒子系)
まず1粒子系を「別のアプローチ」から記述していきましょう。1粒子系のシュレーディンガー方程式は、
\begin{align*}
i\hbar\partial_t\psi(\vec{x};t)=\Big(-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+V(\vec{x})\Big)\psi(\vec{x};t)
\end{align*}
でした。ここで、
\begin{align*}
\{\psi_r(\vec{x})\}_{r=1,2,...} \\
\int d^3x\psi^{*}_{r}(\vec{x})\psi_{s}(\vec{x})=\delta_{rs} \\
\sum_{r}\psi_r(\vec{x})\psi^{*}_r(\vec{y})=\delta(\vec{x}-\vec{y})
\end{align*}
という規格完全直交関数を考えます。つまり今、量子状態はこの直交関数を使って、
\begin{align*}
\psi(\vec{x};t)=\sum_{r}a_r(t)\psi_r(\vec{x})
\end{align*}
ただし$a_r(t)$は、
\begin{align*}
a_r(t)=\int d^3x\psi_{r}^{*}(\vec{x})\psi(\vec{x};t)
\end{align*}
であることに注意してください。さて、展開した状態を元のS.eqに代入してみましょう。
\begin{align*}
i\hbar\partial_t\sum_{r}a_r(t)\psi_r(\vec{x})&=\Big(-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+V(\vec{x})\Big)\sum_{r}a_r(t)\psi_r(\vec{x}) \\
i\hbar\sum_{r}\psi_{r}(\vec{x})\partial_ta_{r}(t)&=\sum_{r}a_r(t)H\psi_r(\vec{x})
\end{align*}
ここでデルタ関数の性質を思い出すと、$f(\vec{x})=\int d^3y\delta(\vec{x}-\vec{y})f(\vec{y})$ より、
\begin{align*}
H\psi_r(\vec{x})&=\int d^3y\delta(\vec{x}-\vec{y})H\psi_r(\vec{y}) \\
&= \int d^3y\sum_{s}\psi_s(\vec{x})\psi^{*}_s(\vec{y})H\psi_r(\vec{y}) \\
&= \sum_{s}\psi_s(\vec{x})\int d^3y\psi^{*}_s(\vec{y})H\psi_r(\vec{y}) \\
&= \sum_{s}\psi_s(\vec{x})H_{sr} \\
\Big(H_{sr} &:= \int d^3y\psi^{*}_s(\vec{y})H\psi_r(\vec{y})\Big)
\end{align*}
となるので、変形したS.eqは、
\begin{align*}
i\hbar\sum_{s}\psi_{s}(\vec{x})\partial_ta_{s}(t)&=\sum_{r}a_r(t)\sum_{s}\psi_s(\vec{x})H_{sr} \\
\sum_{s}\psi_s(\vec{x})\Big(i\hbar\partial_{t}a_s(t)&-\sum_{r}a_r(t)H_{sr})=0 \\
\therefore i\hbar\partial_{t}a_s(t)&=\sum_{r}a_r(t)H_{sr}
\end{align*}
となります。状態の振幅が満たすべき方程式となりました。両辺複素共役を取ることで、
\begin{align*}
-i\hbar\partial_{t}a_s^{*}(t)&=\sum_{r}a_r^{*}(t)H_{sr}^{*} \\
\therefore -i\hbar\partial_{t}a_s^{*}(t)&=\sum_{r}a_r^{*}(t)H_{rs} \\
\Big(H_{sr}^{*} &= H_{rs}\Big)
\end{align*}
も導かれます。もう少し見通しの良い形にしたいですね。ここで、さらにエネルギー期待値を定義してみます。
\begin{align*}
<H> &:= \int d^3x\psi^{*}(\vec{x};t)H\psi(\vec{x};t) \\
&= \int d^3x\sum_{r}a_r^{*}(t)\psi_r^{*}(\vec{x})H\sum_{s}a_s(t)\psi_s(\vec{x}) \\
&= \sum_{s,r}a_r^{*}(t)\Big(\int d^3x\psi_r^{*}(\vec{x})H\psi_s(\vec{x})\Big)a_s(t) \\
&= \sum_{s,r}a_r^{*}(t)H_{rs}a_s(t) \\
\end{align*}
先ほど導かれた振幅の方程式より、
\begin{align*}
\partial_{t}a_s(t)&=\frac{1}{i\hbar}\sum_{r}a_r(t)H_{sr}=\frac{1}{i\hbar}\frac{\partial}{\partial a_s^{*}(t)}\Big(\sum_{s,r}a_r^{*}(t)H_{rs}a_s(t)\Big) \\
&= \frac{1}{i\hbar}\frac{\partial <H>}{\partial a_s^{*}(t)} \\
\end{align*}
が導かれます。また$\pi_r(t):=i\hbar a_r^{*}(t)$ とすると、
\begin{align*}
\partial_{t}a_r(t)&=\frac{\partial <H>}{\partial \pi_r(t)} \\
\partial_{t}\pi_r(t)&=-\frac{\partial <H>}{\partial a_{r}(t)}
\end{align*}
となります。物理学科の人ならこの式、親の顔より見ましたね。これは古典系における、正準座標$a_r(t)$と共役運動量$\pi_r(t)$の満たすハミルトン方程式と全く同じ形をしています。ここまでで何が言いたいのかというと、1粒子系量子系でも、基底に対応する振幅が満たす方程式は古典力学におけるハミルトン方程式であるということです。
さてボルン規則より、1粒子が状態sで見つかる確率$p_s$は、
\begin{align*}
p_s&=|\int d^3x \psi_s^{*}(\vec{x})\psi(\vec{x};t)|^2=|\int d^3x \psi_s^{*}(\vec{x})\sum_{r}a_r(t)\psi_r(\vec{x})|^2 \\
&=|\sum_{r}a_r(t)\int d^3x \psi_s^{*}(\vec{x})\psi_r(\vec{x})|^2=|a_s(t)|^2=a_s^{*}(t)a_s(t)
\end{align*}
となります。つまりN粒子系の場合でも、N粒子全てが同じポテンシャル中を運動する時、それぞれの粒子が状態sで見つかる確率は、$a_s^{*}(t)a_s(t)$ です。つまり演算子として、
\begin{align*}
N_s(t):=Na_s^{*}(t)a_s(t)
\end{align*}
を定義すれば、状態sにおける粒子数に関係した演算子となりそうです。N>0なので、
\begin{align*}
A_s(t):=\sqrt{N}a_s(t) \\
A_s^{*}(t):=\sqrt{N}a_s^{*}(t)
\end{align*}
とすれば、
\begin{align*}
N_s(t)=A_s^{*}(t)A_s(t)
\end{align*}
となります。系の合計エネルギー期待値$H_{T}$は、それぞれのエネルギーの和なので、
\begin{align*}
H_T:=N<H>
\end{align*}
とできます。そして先ほどと同様に、$\Pi_r(t):=\sqrt{N}\pi_r(t)=i\hbar A_r^{*}(t)$とすると、
\begin{align*}
\partial_{t}A_r(t)&=\frac{\partial H_T}{\partial \Pi_r(t)} \\
\partial_{t}\Pi_r(t)&=-\frac{\partial H_T}{\partial A_{r}(t)}
\end{align*}
が導かれます。さてこれまでの議論で、1粒子系に対する展開係数が粒子数、ハミルトン方程式と関係付けられることを見ました。ではこの展開係数自体を量子化すると何が起きるのか。それが気になりますね。期待として、$N_r(t)$が粒子数に関する演算子であるなら、量子化した後の$N_r(t)$の固有値は、
\begin{align*}
Boson&:0,1,2,3... \\
Fermion&:0,1
\end{align*}
となってほしいですね。
第二量子化
今回はBosonに関する議論をしていきましょう。まず、量子化する前の$A_r(t)$と$\Pi_r(t)$はポアソン括弧として、
\begin{align*}
\{A_r(t),\Pi_r(t)\}&=\delta_{rs} \\
\{A_r(t),A_s(t)\}&=\{A_r^{*}(t),A_s^{*}(t)\}=0
\end{align*}
のように古典力学と同じ形で与えられていました。これを次の交換関係を満たす演算子で置き換えます(第二量子化)。
\begin{align*}
[\hat{a}_r(t),\hat{\pi}_s(t)]&=i\hbar\delta_{rs} \\
[\hat{a}_r(t),\hat{a}_s(t)]&=[\hat{\pi}_r(t),\hat{\pi}_s(t)]=0
\end{align*}
$\Pi_s(t)=i\hbar A_s(t)$に対応する関係は、
\begin{align*}
\hat{\pi}(t)=i\hbar\hat{a}_s^{\dagger}
\end{align*}
となります。つまり、
\begin{align*}
[\hat{a}_r(t),\hat{\pi}_s(t)]&=i\hbar[\hat{a}_r(t),\hat{a}_s^{\dagger}(t)]=i\hbar\delta_{rs} \\
\therefore [\hat{a}_r(t),\hat{a}_s^{\dagger}(t)]&=\delta_{rs}
\end{align*}
が成り立つこともわかります。
これらの演算子を用いて$H_T$を置き換えると、
\begin{align*}
\hat{H}=\sum_{r,s}\hat{a}_r^{\dagger}H_{rs}\hat{a}_s
\end{align*}
となります。これは、第二量子化されたハミルトニアンです。
場の演算子
場の演算子を導入しましょう。第二量子化は、量子状態の振幅を量子化しました。つまり通常の量子力学における状態に対応するものを、
\begin{align*}
\hat{\psi}(\vec{x};t):=\sum_{r}\hat{a}_{r}(t)\psi_r(\vec{x})
\end{align*}
という演算子で定義するのが自然であるといえます。これは場の演算子と呼ばれます。場の演算子は、次の交換関係を満たす演算子です。
\begin{align*}
[\hat{\psi}(\vec{x};t),\hat{\psi}^{\dagger}(\vec{y};t)]&=\Big[\sum_{r}\hat{a}_{r}(t)\psi_r(\vec{x}), \sum_{s}\hat{a}_{s}^{\dagger}(t)\psi_s^{*}(\vec{y})\Big] \\
&=\sum_{r,s}\psi_r(\vec{x})\psi_s^{*}(\vec{y})[\hat{a}_{r}(t),\hat{a}_{s}^{\dagger}(t)]\\
&= \sum_{r}\psi_r(\vec{x})\psi_r^{*}(\vec{y})=\delta(\vec{x}-\vec{y})
\end{align*}