概要
ASUS Chromebook CX34 Flipを購入したので、簡単にITエンジニア観点でのレビューを書いてみました。
総合評価
個人的には今使っているXPS13 9380(Windows11)の満足度を100とすると、いくつかマイナス面もあるものの、何より快適に利用できる点が大きいので総合的にはより満足度が高いと考えています。
以前使っていた製品やユースケース次第ではありますが、十分メインマシンとして利用できるのではないでしょうか。
(実際、今もメインで利用しています)
ハード、ソフトともに想像以上に快適に利用できるように慎重に配慮されていますし、Linux環境も制約が大きいものの、特にストレージへアクセスする際の性能面でWSL2よりも著しく高速です。
※Visual Studio codeでにコードを見る際にWSL2環境よりも快適なのはこれが原因ではないかと考えています
CPUはCore i3 1215U、メモリはDDR4 8GiB、ストレージはPCIe接続で128GiBと、額面上のスペックはWindowsで言えばミドル〜ローエンド程度となります。
しかしながら、その分米国軍用規格準拠の堅牢性、快適なタッチディスプレイ、タッチペン、キーボード、タッチパッドなどのインターフェースに加えて、タッチ操作のための折りたたみ機構、高品質なスピーカー等の要素をそなえていることから、総合的なコストパフォーマンスは悪くないと考えられます。
※ASUSのWindowsかつflipカテゴリの2in1 PCの値段を確認しましたが、本製品と同じような価格帯、スペックであり、複雑な折りたたみ機構やタッチ操作、筐体の堅牢性の強化は高コストになってしまうと考えられます
より安値な製品はたくさん提供されていますが、例えば以前購入したChromebook C425TAは応答性が悪く、筐体の堅牢さ、各種インターフェースが値段相当で品質が良くなく、とてもではないですが普段使いは難しく感じたので、それら安値な製品よりも満足度は高いと考えられます。
※要するに値段相応の品質しかないということです
前提条件
- 普段はWindowsユーザーです
- Windows meから利用しています(つらい記憶しかない...)
- 仕事では10、個人としては11を主に利用しています
- Macは数年前に仕事で一年ほど利用していました
- スマートフォンはAndroidをずっと利用しています
- 個人でのPCの主な利用用途は以下のとおりです
- Webサーフィン
- 音楽、動画鑑賞
- メモ、ドキュメント、スライド、表計算等の利用
- Kindleでの読書
- Visual Studio Codeを利用したソースコード閲覧や一部プログラムの作成
比較`
以下、主に現在利用しているXPS13 9380(Windows11)との比較となります。
ChromeOSについて
ChromsOSの利点(Windows11との比較)
- 初回ログインから即利用できること
- ログインすればChrome部分は即利用可能です
- どういうロジックかわからないですが、いくつかのAndroidアプリは勝手にインストールされるようでした(アプリの利用率などをみている?)
- Androidアプリをそのまま使える
- Windows向けは作り込みが甘かったり、そもそも提供されていないものも多い
- Kindle, Panecel, jetAudio+, Amazon Photo, FitBit etc..
- Windowsアプリでありがちな、毎回入力を求められる認証関係もAndroidのVMで一元管理されるので、ログインなども快適(Androidと同様に自動入力される)
- Windows向けは作り込みが甘かったり、そもそも提供されていないものも多い
- Androidスマートフォンとの統合が強力
- 最近開いたWebページ、アプリ、画像などを見ることが可能
- ロック解除に利用できます
- タッチへの最適化
- Androidアプリをタッチでスムーズに操作できますし、OSのウインドウの切り替え、タッチの滑らかさなども優れています
- Linux環境のストレージアクセスがWSL2と比べて著しく高速
- fioによる単純なベンチマークでの比較ではスループット、レイテンシーが十数倍異なり、明らかにハードウェアのスペック以上の差が発生しています
- OSの提供する機能、GUIが非常にシンプルで一貫性があること
- Windowsは膨大な数のサービスや設定などが存在し、過去数十年分のGUIのlook and feelが混在していますが、ChromeOSは設定が非常に簡潔で、かつ一貫性があります
- Windowsと比べて少ないストレージ容量の消費で動作すること
- 手元環境ではWindowsフォルダだけで4x GiB、他にMS提供のユーティリティプログラム類がGiB単位で存在するのに対して、ChromeOSではシステムの消費は3x GiB程度です。
- アプリの消費容量も少ないですが、Web/Androidアプリのいずれを利用することから、ローカルファイルを正としてデータを溜め込む作りになっていないのではないか(クラウドのキャッシュとしての利用が基本)
- おそらくこの事象を回避できることにより(?)、MicrosoftのWebサービスへアクセスする際のRESET connectionエラーの多発が起きなくなった
- CPU、メモリ、ストレージアクセスなどのリソースの枯渇起因ではない、謎の応答性の低下が起きないです
- OSの終了と起動が非常に高速です
- Windowsではファイルの開放待ちで終了に時間がかかることが多いように感じているので、ローカルのファイルシステムに依存したWindowsのアプリと、リモートのサーバー上にデータや設定を保存し気軽にローカルのキャッシュをクリアしてしまうAndroid/Webアプリとの違いが大きいのではないか。
ChromsOSの欠点(Windows11との比較)
- Windowsアプリを利用できないです
- OfficeについてはWeb版を利用できますが、ネイティブアプリ版の豊富な機能を使いこなしている場合には代替品として利用することは難しいと考えられます
- Linuxアプリについても制限があります
- 制限が多いので、フルスペックのLinux環境を期待している場合には要注意!
- OSの設定がシンプルすぎて、痒いところに手が届かないです
- タッチパッドジェスチャーのカスタマイズ等
- DELLのCinema Color相当のカラープロファイルを調整する機能もできればほしいです
- 独自IMEを使うことが難しいです
- ATOK!
- Androidアプリが動くかどうかはものによります
- Office系はMSが正式にサポート対象外とし、インストールしても警告が出力されて何もできません
- いまのところ、それ以外に全く動作しないAndroidアプリには遭遇していないです
- タスクトレーのマウスオーバーによるウインドウのプレビュー機能は実装してほしいです
- OneNote Web ClipperでMSアカウントへのログインがうまく行かないです(調査中)
- (今更そんな需要はないのかもしれないけれども)CDのリッピングには対応してほしいです
- 再起動後に前回終了時の画面の明るさを維持してほしいです
- Androidアプリの利用中にIMEの切り替えができないことがあります
- バーチャルキーボードではログイン画面でPINを入力できないです
2023/07/27追記
- resizableでないアプリをタブレットモードで開くと、自動的に横向きに画面がローテーションしてしまうようです
- おそらくタブレットモードではアプリを最大化するものの、resizableでないアプリは縦長なので、画面にぴったりフィットするために自動的に画面が横向きになるのではないか
- Panecal -> Plusは問題なし
- FitBit
- Probability Distributions
- アプリによってはそもそも複数環境からのログインに対応していないものもあります
- LINE -> データを削除しようとする
- Bookshelf -> 他のログイン先は強制無効化
- SpeakBuddy -> ログインしても設定が引き継がれない!?
- アプリによってはtable/resizableにできないものもあります
- 三菱UFJアプリ
- アプリによっては強制的に最大表示されてしまうものもあります
- FitBit
- アプリによってはそもそもストア検索でヒットしないです
- これ洗える?
- 次のアプリはログイン直後の自動インストールされたものはなぜか反応せず、再インストールで問題なく動作しました
- Bookshelf
- アプリについて大雑把に分類すると次のとおりです
- 動くもの
- resizable可能
- Tabletモード時も問題なく動作するもの
- Tabletモード時に画面が横向きになってしまうもの
- Phoneモード固定
- float表示できる
- float表示できない
- resizable可能
- 動かないもの
- アプリストアにそもそも表示されないもの
- インストールできるが、起動直後に怒られるもの
- 感覚的に動くものが9割程度、そのうちresizable可能が9割程度、その中でTabletモードでも画面が変わらないものが8割といった感じでしょうか。明示的に除外、禁止しているもの以外は概ね動くと思われます。
- 動くもの
- 動かないに関しても次の二通りが存在します
- Web/Linux環境の代替手段が存在するもの
- MS Office等
- Web/Linux環境の代替手段が存在しないもの
- Windows/Linux版しか提供されていないアプリ、あるいはハードウェア/VM、サンドボックス環境では要件を満たすことが難しいものが該当すると思われます。
- Web/Linux環境の代替手段が存在するもの
- 動くものに関しても、Web版で十分というか使いやすいものもあることに要注意です
Chromebook CX34 Flipのハードウェアについて
利点
- 極めて強固な筐体
- 米国軍事規格であるMIL-STD-810Hの基準3をクリアしているそうです
- 応答性が高いです
- OSとの相乗効果かもしれませんが、あらゆる操作の応答性がよく大変快適です
- スピーカーの質が高いです
- さり気なくSOUND BY Harman Kardonのロゴあります
- スムーズなタッチディスプレイ、タッチペン操作
- 非常に力が入っているように見受けられました
- 一般的なモバイルPCよりも大きな14インチのディスプレイ
- 長時間利用しても熱くなりづらく、ファンの音も静かです
- ハードウェア起因(CPUの電力効率の向上、大きな筐体でかつ裏面のスリットが大きいことから冷却性能が高い)のか、あるいはソフトウェア起因(AndroidアプリやChromeOS自体の電力制御が優秀)なのかは不明です
欠点
- 本当にごくわずかではあるもの、キーボードの「かちゃかちゃ」という打鍵音が気になります
- 品質が悪いわけではないけれども、液晶ディスプレイの色の階調、鮮やかさがXPS13よりも若干劣る気がします
- 一応サイドバイサイドで写真を比較していますが、画面の品質の計測方法がわからないので、「気がする」といった評価にしています
- 強固さ最優先かつ2in1対応のためか、サイズの割に重いです
- 日本では日本語キー配列のみが提供されています
- 仕方がないので、IMEでUS配列 + 日本語(US配列)として利用しています
- スピーカーが筐体底面にあるので、ラップトップモードでは音が若干こもってしまいます
- タッチ主体のモードにすれば問題はないです
各種ハードウェアのベンチマーク
Geekbench6
Linux用バイナリ版の計測結果
Windowsでの同スペックのCPUとの比較でも遜色はないです。
https://browser.geekbench.com/v6/cpu/2028453
Androidアプリ版の計測結果
そもそも実装が異なるのか、Androidを動作させるVMのオーバーヘッドなのか原因は不明ですが、若干スコアが低い傾向があります。
https://browser.geekbench.com/v6/cpu/2028245
参考情報: XPS13 9380の計測結果
ChromsOSのLinux環境と比べておおよそ2/3のスコアです。
https://browser.geekbench.com/v6/cpu/2028270
fio
Linux環境でのfioコマンドの実行結果です。
※ちなみにストレージのハードウェアはこれでした。
https://www.carousell.com.hk/p/foresee-p709f128g-128gb-ssd-m-2-2280-pcie-gen-3-nvme-1238527047/
設定値などは雑ですが、おおよそハードウェアのスペック通りのスループットを発揮していることがわかります。
Jobs: 4 (f=4): [R(4)][100.0%][r=88.7MiB/s][r=22.7k IOPS][eta 00m:00s]
...
Jobs: 8 (f=8): [R(8)][90.7%][r=233MiB/s][r=59.7k IOPS][eta 00m:04s]
...
Jobs: 16 (f=16): [R(16)][100.0%][r=344MiB/s][r=88.0k IOPS][eta 00m:00s]
lat (usec) : 20=0.02%, 50=6.83%, 100=19.61%, 250=51.63%, 500=18.95%
lat (usec) : 750=1.91%, 1000=0.51%
...
Jobs: 32 (f=32): [R(32)][100.0%][r=409MiB/s][r=105k IOPS][eta 00m:00s]
lat (usec) : 20=0.01%, 50=2.59%, 100=13.49%, 250=37.34%, 500=39.90%
lat (usec) : 750=4.70%, 1000=1.02%
...
Jobs: 64 (f=64): [R(64)][100.0%][r=535MiB/s][r=137k IOPS][eta 00m:00s]
lat (usec) : 20=0.01%, 50=0.83%, 100=5.89%, 250=25.94%, 500=46.27%
lat (usec) : 750=12.82%, 1000=3.71%
...
Jobs: 128 (f=128): [R(128)][100.0%][r=605MiB/s][r=155k IOPS][eta 00m:00s]
lat (usec) : 20=0.01%, 50=0.35%, 100=2.11%, 250=11.58%, 500=35.76%
lat (usec) : 750=26.88%, 1000=10.42%
lat (msec) : 2=9.53%, 4=2.37%, 10=0.84%, 20=0.13%, 50=0.03%
XPS13 9380(WSL2)との比較は次のとおりです。
細かい条件は突き詰めていませんが、1スレッドでの読み書きともにスループット、レイテンシーで十数倍の差があることがわかります。
ChromeOS
Jobs: 1 (f=1): [r(1)][85.7%][r=146MiB/s][r=37.4k IOPS][eta 00m:01s]
lat (usec) : 20=11.92%, 50=83.02%,
...
Jobs: 1 (f=1): [w(1)][100.0%][w=139MiB/s][w=35.6k IOPS][eta 00m:00s]
lat (usec) : 20=37.75%, 50=59.10%,
WSL2
Jobs: 1 (f=1): [r(1)][100.0%][r=8268KiB/s][r=2067 IOPS][eta 00m:00s]
lat (usec) : 250=0.20%, 500=43.70%, 750=50.42%, 1000=2.90%
...
Jobs: 1 (f=1): [w(1)][100.0%][w=8792KiB/s][w=2198 IOPS][eta 00m:00s]
lat (usec) : 250=2.18%, 500=83.91%, 750=13.50%, 1000=0.12%