1. 思いがけない嬉しい出来事:公開2日目で初の有料ユーザーが
1ヶ月前、私はある決断をしました——ブラウザ拡張機能を作ることにしたのです。
そして、その判断は今振り返っても本当に正しかったと思います。
さらに驚いたのは、「NoTab」という名前のその拡張機能がChromeウェブストアに公開された翌日に、なんと初めての有料ユーザーが現れたことでした。
その瞬間は、興奮と戸惑いが入り混じった不思議な気持ちでした。
「自分の作ったものにお金を払ってくれる人がいる」という喜びと、「これからユーザーが増えたらどう対応しよう?」という不安が同時に押し寄せてきました。
この拡張機能は、アイデアを思いついてから最初のバージョンを公開するまで、わずか3日しかかかっていません。
短い時間でしたが、この経験から学んだことは本当に多かったです。
2. NoTabの誕生:自分自身の悩みを解決するために
NoTabの基本機能はとてもシンプルです。
リンクにマウスカーソルを合わせると、そのページの内容を新しいタブを開かずに、今見ている画面上でプレビューできる、というものです。
このアイデアは、まさに私自身が開発者として日々感じていた不便から生まれました。
仕事中は大量の技術ドキュメントを読む必要があり、APIのページから別のリンクをクリックすると新しいタブがどんどん開いていきます。読み終わったあと、また元のタブに戻って続きを読んで……と繰り返していると、午前中だけでタブが10個以上開いてしまうんです。
気づけばメモリも消費してるし、「さっきどのページを見てたんだっけ?」と混乱することもよくあります。
技術系のフォーラムでも同じです。気になる投稿をクリックすると、新しいタブが次々に増えて、気づけば「どれが最初だったか」すらわからなくなる…。
この不便さをなんとかしたい、と思ったとき、ふと「今見ているページ内でそのままリンク先をプレビューできたらいいんじゃないか?」とひらめいたんです。
情報をすぐに確認できて、しかも閲覧の流れを邪魔しない。それって理想的じゃないか、と。
既存の拡張機能もいくつか調べてみましたが、機能が重すぎたり、動作が遅かったりでしっくりくるものがなかった。
だったら、自分で作ってみよう——そう思って開発を始めました。
3. 超スピード開発:MVPから改善までの3日間
1日目:MVP(必要最小限のプロトタイプ)を作成
最初に決めたのは、「3日以内に公開する」という厳しいルール。
そのためには、機能をできる限り絞って、最も重要な部分だけを実装する必要がありました。
初日の時点では、リンクにホバーすると小さなプレビューウィンドウが表示されるだけ。見た目のデザインも何もありませんでしたが、まずはこれでOK。
2日目:基本的な体験を改善
コア機能ができたので、次は使い勝手の改善へ。
- プレビューウィンドウの表示位置を自動調整(画面外にはみ出さないように)
- 読み込み中の表示
- 最低限のスタイル調整
3日目:パッケージ化&リリース
最終日は以下を行いました:
- 簡単な使い方説明を書いて
- スクリーンショットを数枚撮って
- Chrome開発者アカウントで(以前登録済)ログインし
- 拡張機能をパッケージ化して審査に提出
その日の夜、「NoTab」は正式に公開されました。
公開後の改善
ユーザーの声をもとに、以下のような実用的な機能も追加しました:
- 複数リンクの同時プレビュー(比較がしやすい)
- ドラッグで即翻訳
- ドラッグで即検索
- カスタマイズ機能(プレビューウィンドウの大きさや表示位置など)
これらの多くは、最初の計画にはなかった機能ですが、実際のユーザーの声から生まれたものです。
4. 個人開発者へのアドバイス
私自身の経験から、以下のことはとても大切だと感じています。
1. 本当にニーズのある「痛み」に着目すること
NoTabがスムーズにユーザーを獲得できたのは、「頻繁に起こる本物の困りごと」を解決していたからだと思います。
本当に役立つアイデアは、意外と自分の日常の中にあります。
「毎回これ面倒だな」と感じることがあれば、それがチャンスかもしれません。
2. 完璧を目指すより、まずは最小の形にして出すこと
完璧にしようとすると、いつまでも公開できません。
私の最初のバージョンなんて、設定画面すらありませんでした。でも、最小限の価値が伝われば、それで十分です。
そのあと、ユーザーの声が「次に何を作るべきか」を教えてくれます。
3. ユーザーの声を取り入れて進化させること
NoTabの多くの人気機能は、ユーザーからのフィードバックで生まれました。
メールでも何でもいいので、簡単なフィードバック窓口を用意しておくといいと思います。
ただし、すべての要望に応える必要はありません。複数のユーザーから同じリクエストがあった場合、それが真に必要とされているサインです。
4. 課金モデルの考え方
NoTabは基本機能を無料、高度な機能は有料(買い切り)というFreemiumモデルを採用しています。
「試して納得した人だけが払えばいい」というスタイルは、開発者にとってもユーザーにとっても納得感があります。
価格は一度きりの5.9ドル、正直かなりリーズナブルだと思います。
最後に
今、NoTabには毎日数百人のアクティブユーザーがいます。
もちろん、これだけで生活できるわけではありませんが、「個人開発でも、価値を生み出し収益を得ることは可能だ」という確信を与えてくれました。
何より、この経験を通して一番感じたのは——
「すごいアイデア」を待つ必要はない、ということです。
自分の小さな不便を丁寧に解決するところから始めて、素早く動いて、ユーザーの声を取り入れながら育てていけば、十分「価値ある製品」になる可能性があります。
もし、あなたにも「いつか作りたいもの」があるなら——
今日、まずは一番シンプルな形でいいので、作ってみることをおすすめします。
完璧より、まず完成。
そして、現実世界のフィードバックこそが、何よりの学びになります。
最後に、もしNoTabを使ってみたくなったら、こちらからどうぞ!