東大松尾研の中山氏が、AI人材育成の関する海外の活動や彼らの取り組みについてまとめられていたので、皆さんにも紹介します。
要点
・中山氏は、AI関連の最新研究に追従できる若手研究者、職員が大学や研究コミュニティでの業務でも時間を取られ、負荷が増大していることを危惧している。
・最新のAI分野の教育では実際にプログラミングすることが重要だが、教員の不足に加え教材の作成やGPU環境構築など多くの障壁がある。
・海外では産官学を挙げて一体的にAI材育成に力を注いでいるケースがいくつかある。
・カナダのベクター研究所は、年間1,000人のAI修士号を持つ学生を排出することを目標に、国・州・民間企業が合計17,000万カナダドルの支援を行って設立した教育・研究機関である。
・イギリスのアラン・チューリング研究所は2014年に英政府が5年間で計4,200万ポンド(約72億円)を計上し、今ではイギリスの8大学に拠点を設けているデータサイエンスとAI技術の研究機関である。企業にとってはリスクの大きい先端的な分野での挑戦的な研究を引き受けている他、先端的なデータサイエンス・AIに関する人材育成も行っている。
・パリとシリコンバレーにある「42」やシリコンバレーのホルバートンスクールのように、教師を明確に配置しない、いわゆる「教師のいない学校」というものも広がっている。明確な教師や講義が無い点、プロジェクト学習を重視している点で共通しており、コミュニティの中で次々に作成・拡張されていくコンテンツを利用して学習していく。
・これらから、AI分野においては明示的に産と学の間をつなげる・その間の壁を取り除く役割を担う機関や場が重要な役割を果たしていくだろうと言える。
・東京大学でも、演習・競技形式の宿題・プロジェクト・相互補助などコミュニティ全体としての学習方法を取り入れた「コミュニティ型のAI人材育成」を実践している。
・MOOCの問題点として修了率が低いことが挙げられるが、中山氏の考えでは、受講者を絞ることが重要である。
・今後このような活動をより広げるには、若手教員に講義を担当してもらうための工夫、柔軟な授業運営(博士学生を重用など)が必要である。
・更に、教育から研究、そして社会実装までをつなげる仕組みが日本においても社会全体として必要とされてくるだろう。