1. 概要
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、出社禁止や在宅勤務推奨などの措置に踏み切り、テレワークを導入する企業が一気に増えました。Slackなどのチャットツールや、Zoomなどのビデオ会議ツール導入による働き方改革の流れは今後も進みます。
面と向かってのコミュニケーションは五感をフルに使い、実は無意識のうちにたくさんの情報や感情をやりとりを行います。それがチャットツールで文字やスタンプのみに限定されると、やりとりできる情報は質量ともにぐっと限定されます。
どこにいても仕事ができる、と歓迎される一方で、懸念されるのは意思疎通が不十分になることによる誤解やトラブル、ビジネスへの悪影響です。場合によっては人間関係が悪化する可能性もあります。
テレワークに欠かせないチャットツールで不快感や誤解を与えず、効率的かつスムーズに仕事を進めるために、心がけておきたいポイントを以下10点にまとめてみました。職場やコミュニティごとに状況や使い方は千差万別ですが、ひとつの議論の材料にしてもらえると嬉しいです。[Link]
今回の話題は仕事において「結果にコミットする」「自己研鑽をする」「言うべきことは言う」というのは前提での話です。
2. 内容
2.1 相手に対するリスペクトを持つ。
相手の才能・地頭の良さを十全に信じ、その人の個性・性格の長所を尊重することが重要だと思います。その下地を持った上でコミュニケーションを行うと、よい人間関係が築きやすいと肌感覚で感じます。
教える時は相手に知識やスキルが乏しいようであればリスペクトをした上で教えてあげましょう。出来るようにすることで会社はもっと成長します。
相手を否定する場合もクッションワードを用い、かつ上から物を言わないように、提案ベースで伝えることを心がけましょう。
2.2 感謝の念を相手に伝えるようにする。
メッセージやスタンプを通じて相手に感謝の念を伝えられるようにしましょう。
2.3 賞賛・敬意の念を相手に伝えるようにする。
リモートワークの有無はあまり関係ないかもですが、そもそも社会人は「褒められることが少ないゆえに、褒められることに飢えている」なと知り合いの話を聞いていて感じます。トピックを2.2と2.3で分けたのも、2.2はできている人が多くても2.3ができている人がほとんど見当たらないためです。「いいと思ったタイミングで積極的に褒める・尊敬の念を相手に伝えるようにする」ことは重要で、それにより尊敬ベースの人間関係を築きやすいなと感じます。
とはいえ、「じゃあ、具体的に何を褒めたらええねん」「褒めるところなんて一個もないやんけ」「でも、相手のいいところを見つけたい!」と思う方もいると思います。その場合の解決方法の1つとしてはネガポ辞典があります。
これはネガティブなワードをポジティブに言い換える辞典で、「じゃあ、具体的に何を褒めたらええねん」「褒めるところなんて一個もないやんけ」と思ってる人ほど効果を発揮する優れものです。例えば、「マイナス思考」は「思慮深い」と言い換えられますし、「飽きっぽい」のは「気持ちの切り替えが早い」と言い換えられます。この夢のような辞典を使い、相手の個性・特性を見極められるようにしましょう。
また、相手の強みを見つけ、賞賛・敬意を伝えるコツとしては、普段から相手との対話・観察を繰り返すことや、その上位概念として人間心理やパーソナリティ、仕事のしんどさのあるあるを体系的に理解することが重要です。警戒心の強いタイプはジョハリの窓を意識した褒め方・敬意の評し方をするといいでしょう。
しかし、褒める場所やタイミングを間違えると、「こいつ俺を褒めてコントロールしようとしてるな?」と思われたり、「相手への媚びにつながって舐められる恐れ(力量が少ないと特に)」があり逆効果になるので、そこは間違えないようにしましょう。
そして、あくまでゴールは「チームが働きやすくすることであり、組織の成果物の質・量の最大化を図ること」です。伝える側はそこを意識して相手に自分が感じる敬意を伝えられるようにしましょう。(参考)
2.4 テキストコミュニケーションにおいて感情を大袈裟に表現すること。
主にチャットツールでのテキストコミュニケーションにおいて「了解です。」「ここの箇所おかしいのではないでしょうか。」など「。」の句読点のみで無感情のまま会話を展開する人は珍しくありません。これは句読点を用いたテキストコミュニケーションは日本語の正しい運用方法であり、かつビジネスの場なため一定の理があると私も思います。
しかし、顔や声色がわからないリモートワーク下において、上記のようなコミュニケーションを行うと冷たい印象を受け、温和なコミュニケーションの妨げになる恐れがあります。現にZ世代(1990年代後半から2000年生まれの世代)は、句点の付いたメッセージに恐怖を感じるとあります。これは自分の中でも共感できる内容かつ肌感覚で理解できる内容だなと思います。
従って、主にチャットツールにおいて伝える側は、文面が冷たくならないように句読点だけでなく、「!」や絵文字を効果的に使い、悪意がないことを相手に伝える努力をする必要があると考えています。しかし、使いすぎると幼稚に見えてしまうため、その場その場の状況に応じてバランスを考えながら使っていくのが重要かなと思います。立場や会話内容にもよりますが、私は相手の文面のテンションに合わせてテキストコミュニケーションをすることが多いです。
そして、「テキストコミュニケーションにおいて感情を大袈裟に表現すること」の長所を述べてきましたが、「怒」の感情は抑えるようにしましょう。「怒」の感情で行うコミュニケーションは良い結果に繋がらないことが多いです。
また、様々な職場やコミュニティを経た上での意見ですが、エンジニアは「怒」の感情を出す(≒無意識的に出てしまう)パーソナリティをお持ちの方が比較的多い傾向にあると思います。そして、そういった方はスキルが伴っている方も多いため、上記のコミュニケーション手法を意識するだけでもとっつきやすさが変わり、組織の心理的安全性においても、組織全体の最終的な成果物の質・量においてもプラスになるのかなと思います。
2.5 文章はコンパクトにわかりやすく。
日々大量の情報に目を通さなければいけない相手のことを考えましょう。(参考)
2.6 レスポンスは迅速に。
チャットツール上で提案や質問を発する側や、業務を依頼する側は、相手や周囲に何らかの反応を求めています。長い間反応がないと、その間、投げかけた側はやきもきしながら過ごすことになります。
同意なのか、不同意なのか、承諾するのか、拒否するのか、可能なのか、不可能なのか、そもそもその投稿を見たのか、まだ見ていないのか。
まずは「確認」「賛成」「承知」といったことだけでもスタンプや絵文字で反応することを習慣づけましょう。既存のスタンプに加え、コミュニティ内で盛り上がるようなカスタムスタンプを新たに作成し活用するのもありです。
2.7 会話に相手の名前を入れる。
会話に相手の名前を入れるように会話を行うと、入れない時に比べて印象が良くなります。すると「好意の返報性」により、相手も自分に好印象を持つようになります。好印象でリスペクトし合う土壌が信頼につながり、ひいては心理的安全性の高い組織にすることができるのかなと思います。
チャットツールを使っている場合は相手の名前を模したスタンプを作り、会話の中で定期的に使うと、組織の居心地が良くなり、帰属意識を持たせることができるため、長期的に人材が居つきやすくなると思っています。
総じて、相手の自己重要性を満たすことが大事です。これは仕事に限らずあらゆる人間関係において有用です。
2.8 zoomなどのオンライン通話を活用する。
上記の通り、テキストコミュニケーションは完璧ではありません。伝えられる量であったり理解度などがしんどい場合は遠慮なくオンライン通話を使っていくのが一番いいなと思います。
2.9 政治・宗教・ジェンダーについての会話は避けること。
上記3つはデリケートかつ信念を持つ人間が多い傾向にある話題です。仕事においてこれらを話題に出し、敢えてトラブルの種を撒いたり、地雷を踏んだり、対立・敵対する必要はないかなと思います。話題に上がってても流すのが得策です。沈黙は金です。
2.10 あまりパーソナルな領域に踏み込みすぎない。
パーソナルな領域に踏み込むことに加え、パワハラやセクハラなどはしている側は無自覚で気づかない傾向にあります。そして、現代社会は共感社会であり、立場が弱いと思われる側・被害者側が権力を持つ社会です。そしてどこからが指導でどこからがパワハラ・セクハラなのか、どこからがいじりでどこからがいじめなのかなどのボーダーは被害者側の匙加減であり、それを見極めるのは事実上不可能です。そして、一度加害者認定された場合、パーソナルな領域に踏み込んだことをSNSで晒されたり、社内で噂が飛び交ったりすることで、悪い印象を持たれます。最悪首が飛びます。
特にチャットツールは証拠が残るものです。このメンバーなら信用できると思い、プライベートチャンネルやダイレクトメッセージで悪口・陰口・パワハラ・セクハラ発言を行なっていたとしても、一度発信されたメッセージはテキストとして残ってしまいます。後で思い直して削除や編集をしたとしても同様です。スクリーンショットなどで拡散されてしまう可能性は常につきまといます。プライベートチャンネルやダイレクトメッセージといったクローズドな場でも、バブリックチャンネルと同じような運用方法がいいでしょう。
仕事での人間関係は「所詮仕事での関係と割り切ること・ステークホルダーとしての付き合いに終始すること・必要以上に介入しないこと」が重要ではないかと思います。
2.11 できるだけ機嫌よくいるようにしましょう。
メンバーの心理的安全性などから、メンタルをできるだけ平常に保ちコミュニケーションを図るのはビジネスマンとして重要なことかなと思います。体調が優れない時や追い込まれた時などの対応は僕もまだまだですが、その辺りもコントロールできるといいですね。やっていきましょう!