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開発者必見!LLM活用を加速する4大フレームワークとは?

Last updated at Posted at 2025-06-27

目次

はじめに

近年、生成AI技術の導入が急速に進んでおり、それに伴い LLM(大規模言語モデル) の進化が進み、さまざまなプロジェクトでの活用も加速しています。代表的な LLM(大規模言語モデル) フレームワークとしては、LangChain、LangGraph、CrewAI、AutoGen などが挙げられます。

しかし、実際のプロジェクトで数ある LLM(大規模言語モデル) フレームワークから最適なものを選定するのは容易ではありません。適切なフレームワークを選択できなかった場合は、開発工数が増えてしまうなどの恐れがあります。そのため、各フレームワークの特性や導入メリットを正確に把握することが重要です。

本資料は、代表的な LLM(大規模言語モデル) フレームワーク である LangChain、LangGraph、CrewAI、AutoGen を詳しく解説し、選定時のポイントを明確にすることで、各案件におけるフレームワーク選定を支援することを目的としています。

代表的な LLM(大規模言語モデル) フレームワーク

① LangChain

image.png

LangChain は LLM(大規模言語モデル) アプリを“積み木”のように、「LLM × 外部ツール × メモリ」を自由に組み合わせて構築でき、業務システムにも組み込みやすい“定番”の Python/JavaScript フレームワークです。

特徴
名前の通り、LLM(大規模言語モデル) 呼び出しとツール(DB、検索、API)をシンプルなチェーン状に連結されます。これにより、ステップ順序を定義できるため、挙動が読みやすく、テストし易くなります。

メリット

  1. 統合性が高い
    • 公式が多数のモデル、ベクトル DB、クラウド API を取り込み、100 種類以上をサポートしています。
  2. 開発のハードルが低さ
    • わずか数行のコードで、RAG やマルチツールエージェントなどのプロトタイプを素早く作成できます。
  3. 実装の差し替えが容易
    • 基盤技術を変更してもビジネスロジックをほぼそのまま使えるため、移植が容易です。また、LangSmith による可視化でデバッグ作業も効率的です。

デメリット

  1. コンテナサイズが肥大化しやすい
    • 依存パッケージが多く、更新頻度も高いため、予期しない破壊的な変更に遭遇することがあります。
  2. ネストが深くなると追跡が困難
    • ChainCallback を多段に重ねると処理の流れが複雑になり、トラブルの追跡が難しくなります。SDK を直接利用する場合と比べてパフォーマンスがやや低下する場合もあります。
  3. 高度な並行・分岐は不得意
    • 高度な並列処理や条件分岐は不得意で、複雑なワークフローを扱う場合は LangGraph などと併用する必要があります。

② LangGraph

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LangGraph は、LangChain をさらに発展させたグラフ型のオーケストレーション・フレームワークです。Python と JavaScript SDK を備え、分岐・並列・ループなどを視覚的に設計できるほか、スケールを目的とした LangGraph Platform も提供されています。

特徴
処理の各ステップ(LLM呼び出し、ツール使用、判断ロジックなど)を「ノード」として配置し、ノード間を「エッジ」でつなぐことで、複雑な分岐や並列処理、ループ処理を直感的に構築できます。さらに、各ノード間で状態 (State) を共有する仕組みがあるため、中間結果や履歴を保持しながらワークフローを管理できます。

メリット

  1. 分岐・ループに強い
    • LangChain が苦手な条件分岐や繰り返し処理を自然かつ直感的に扱えます。
  2. 状態を一元管理
    • 各ノード間で共有する State オブジェクトによって、中間データや処理履歴を安全かつ簡単に受け渡せます。
  3. LangChain との親和性
    • LangChain をベースとして作られているため、LangChain で作った Chain やツールをそのまま LangGraph のノードとして再利用できます

デメリット

  1. 学習コストが高い
    • グラフ思考と状態遷移の概念を理解する必要があるため、シンプルな LangChain より習得難度が高いです。
  2. 状態肥大によるオーバーヘッド
    • 制御のないループやサイズが大きすぎる状態データを扱うと、処理速度が低下したりメモリを圧迫したりすることがあります。
  3. パフォーマンスのばらつき
    • 複雑化したワークフローでは追加の調整・最適化が不可欠。小規模タスクなら SDK 直叩きの方が軽量な場合もあります。

③ CrewAI

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CrewAI は、Python だけで手軽に使えるオープンソースのマルチエージェント協調フレームワークです。役割や目標を持った複数の AI エージェント(クルー)を順序や階層的なフローで連携させることで、調査や分析、文章作成などの複雑なタスクをチームワークによって自動化できます。

特徴
複数の AI エージェントを「Crew」(チーム)として編成し、順序・階層・並列といった柔軟なフローで協調作業を実現できる、純 Python 製の軽量フレームワークです。導入は pip コマンド一行だけで済み、好きな LLM(大規模言語モデル)を自由に切り替えて、手軽に複雑なタスクを自動化できます。

メリット

  1. 統合性が高い
    • Crew・Flow・Agent が標準で用意されており、設計-実行-ログ管理までひとつの仕組みで完結するため、ツール間の“つなぎ込み”コストを削減できます。
  2. 開発ハードルが低い
    • pip install crewai を実行するだけで、外部フレームワークにほとんど依存しない純 Python 製なので、すぐにサンプルを動かして試すことができます。
  3. 複数エージェントの協調による高効率化
    • 役割付き AI を「Crew」に編成し、順次・並列・分岐・ループ などの複雑な処理フローを、ローコードでデータ収集 → 要約 → 検証といった一連の作業を手軽に自動化できます。
  4. ロール(専門性)の再利用性が高い
    • 一度作ったエージェントの定義をそのまま別プロジェクトへコピー&ペースト可能。CrewsとFlows がタスク間の接続を抽象化しているため、既存のエージェントを組み合わせるだけで新しいプロジェクトを迅速に立ち上げられます。

デメリット

  1. プロジェクトが若く、エコシステムが未成熟

    • CrewAI はまだ新しいプロジェクトであるため、変更やアップデートが頻繁に発生しています。また、LangChain のように公式プラグインやコネクタなどのエコシステムも充実していないため、実際の導入後はラッパーを自分で作ったり、変更への追随作業が必要になることがあります。
  2. 大規模運用時の負担が大きい

    • 並列処理やスケジューリングが簡易的で、本格的なジョブ管理や分散処理は外部に依存します。また、監視・可観測性が限定的で、ログやメトリクス基盤の構築も必要です。さらに、マルチエージェント化に伴うトークンコストの最適化もユーザー任せで、スケールするほど運用設計の負担が増大します。
  3. セキュリティ & ガバナンス機能の不足

    • RBAC や Secrets 管理、監査ログなどの企業向けのセキュリティ機能が標準では提供されていないため、導入企業は 外部サービスと組み合わせて自ら設計・実装する必要があり、運用上のリスクとなります。

④ AutoGen

image.png

Microsoft がオープンソースで提供する Python 製のマルチエージェント協調フレームワークです。

特徴
複数の AI エージェント(AssistantAgent/UserProxyAgent など)をチャット形式で連携させ、コード実行やツール呼び出しな、人間のフィードバックをも取り入れながら、タスクを自律的に遂行できます。

メリット

  1. 会話駆動で柔軟なマルチエージェント
    • AssistantAgentUserProxyAgent など複数のエージェントが非同期メッセージで協力し合い、リサーチ → コーディング → テスト のような複雑フローを数十行で構築できます。
  2. ツール・コード・人とのやり取りを統合
    • 任意の Python 関数を「FunctionTool」 化して LLM(大規模言語モデル) から呼び出しできます。API やローカルコードも簡単にワークフローへ組み込めます。
  3. 最新バージョン (v0.4)で拡張&見やすくなった
    • 非同期メッセージ駆動方式や OpenTelemetry によるトレーシング機能が追加され、大規模環境でも運用しやすく、動作ログの確認やデバッグも容易になりました。
  4. ノーコード画面「AutoGen Studio」
    • 画面でエージェントや流れをドラッグ&ドロップ → そのまま Python スクリプトとしてエクスポートできます。手軽に試作が可能です。

デメリット

  1. 成熟度・エコシステムの未熟さ
    • 現在はまだバージョン0.x系のため、頻繁に変更やアップデートがあり、そのたびにコードを修正する可能性があります。また、Python 3.10 以上に限られているため、既存のプロジェクトに取り入れる際にはバージョン調整の手間がかかることがあります。
  2. 企業向けの安全機能が薄め
    • RBAC(役割ベースアクセス制御)や Secrets 管理、監査ログ機能がオープンソース版には搭載されていないため、Vault など外部サービスを利用して補完する必要があります。
  3. 大規模運用には別途ツールが必要
    • 本格的なジョブ管理や細かいメトリクスは標準で提供されていないため、本格的に運用する場合には外部ツールとの組み合わせが前提となります。

比較

フレームワーク メリット デメリット 向いている用途
LangChain - 豊富な外部連携
- 手軽にローコードで開発
- コンテナが肥大化
- 複雑な並列・分岐が苦手
ローコードで素早く PoC やプロトタイプを作りたいとき
LangGraph - 複雑な分岐・ループに強い
- 状態管理が柔軟で視覚的
- 習得コストがやや高い
- 状態肥大時のパフォーマンス低下
複雑で長時間のマルチエージェント処理を安定的に運用したいとき
CrewAI - 導入が簡単で軽量
- ロールの再利用が容易
- エコシステムがまだ若い
- 大規模運用や企業向け機能が不足
軽量なチーム単位の協調処理をすぐに試したいとき
AutoGen - チャット駆動で直感的にエージェント協調
- 人間のフィードバックや GUI 連携
- API変動が多く安定性は途上
- 大規模運用用の補助ツール必須
人間を交えたチャット形式の協調作業を手早く試作したいとき

まとめ

「まずは幅広い連携をローコードで試したい」 → LangChain
「分岐やループを含む複雑な長時間フローを視覚的に管理したい」 → LangGraph
「軽量・高速にマルチエージェントを動かし、ロールを使い回したい」 → CrewAI
「チャット形式で人間も交えた協調や GUI での素早い試作が欲しい」 → AutoGen

生成AIのフレームワーク選定は、プロジェクトの成功を大きく左右します。本資料の各フレームワークの特徴、比較ポジショニング、選定ポイントを参考に、最適な選択を行いましょう。

参考資料




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