オリジナルの公開場所: https://www.nocobase.com/ja/blog/shimano。
チェコ工場のZdenekの物語
自転車に乗ったことがある方なら、きっとSHIMANOの製品に触れたことがあるでしょう。
スムーズなギアチェンジや軽やかなペダル操作。その一つ一つは、SHIMANOが舞台裏で培ってきた技術によって支えられています。
Photo by streetsh on Unsplash
世界中の何億人ものサイクリストにとって、SHIMANOはサイクリングに欠かせない存在です。
グローバルな製造拠点を持つSHIMANOは、世界各地で生産活動を行っています。 その中でも、チェコ共和国にある工場は20年以上にわたり稼働し続け、グローバル生産ネットワークの中核を担っています。
この工場では、精度と効率が文化として深く根付いています。あらゆる工程、そして一つ一つの部品に至るまで、標準化されたワークフローと細部への徹底したこだわりをもって製造されています。
そして今回の物語の主人公は、長年このチェコ工場で働いてきたベテラン技術者・Zdenekです。最近、彼は新たな開発スタイル——ノーコードの導入に挑戦し始めました。
Zdenek, the Engineer at SHIMANO
Zdenekのノーコード挑戦記
Zdenekの肩書きは組立ラインの工程監督だが、実際の業務はそれにとどまらない。
プロセスエンジニアとして、彼は工場全体の継続的な改善に取り組んでおり、デジタル化の推進、生産性の向上、安全性の強化など、多くの分野で中心的な役割を担っている。
以前はIT部門と連携しながら、社内システムの開発や業務フローの改善を進めていた。
しかし、工場がSAPへ全面移行してからというもの、ITチームのリソースはインフラ維持に集中するようになり、現場で必要とされる細かなツールは後回しにされてしまった。
「やりたいことは山ほどあったのに、ITは手が回らなくて……結局、何も変えられなかったんです。」
——Zdenek
散らかったExcelや非効率な手作業にストレスを感じたZdenekは、自ら動き出すことを決意する。
コードを書かずに誰でもツールを作れる――そんな可能性を求めて、ノーコードプラットフォームの導入を模索し始めたのだ。
最初に試したのはPower Apps。
Microsoftの公式ツールとして期待していたが、実際には使い勝手が悪く、UIの仕組みはわかりにくい上、権限設定が複雑で、ちょっとした変更にもITの承認が必要だった。
現場が求めていたのは、スピーディで自由に動ける環境だった。
そんなときに出会ったのがNocoBaseだった。
ライセンス費用も不要で、複雑なIT構成もいらない。Zdenekは、システムを自分の手で作り、変え、育てていく力を手に入れた。
アイデアをその場で形にできる。それも、一行もコードを書くことなく。
Excelから現場主導の業務システムへ
Zdenekが最初に取り組んだのは、ISO監査プロセスの効率化という、非常に具体的な課題でした。
NocoBaseを使って開発した最初のシステムが「監査アプリ」。証拠収集から完了処理まで、監査の流れをひとつのアプリで一貫して管理できるようにしたのです。
当初は監査項目の記録と追跡に留まっていましたが、運用が進むにつれ、次々と機能を追加していきました:
- 責任者に自動で通知するアラート機能
- 現場からリスクを直接報告できる公開フォーム
- 報告業務の委任設定により、タスク完了率を大幅に改善
「今では誰が何をやるかが明確で、人を追いかけ回す必要はありません」とZdenekは語ります。
——Zdenek
この成功体験をきっかけに、Zdenekの視点は大きく変わりました。
「一つ作れるなら、他も作れるのでは?」
そう考えた彼は、工場内でExcel管理されていたさまざまな業務を、次々とNocoBaseに置き換えていきます。
数週間のうちに、以下のようなシステムを立ち上げました:
- 部品の入出庫と在庫変動を管理する予備部品管理システム
- 回覧フローを標準化する文書承認システム
- 担当者ごとに作業を割り振り、進捗を管理できるタスクリストモジュール
- 設備の使用申請と承認を一元化する設備承認システム
- スマートフォンでの入力・提出が可能なモバイル点検フォーム
「驚いたのは、その使いやすさ。研修がほとんど要らないほど、誰でもすぐに使えたんです」
——Zdenek
NocoBaseの柔軟な構成と役割ベースの権限設定により、各部門の業務に合わせたUIが実現可能でした。
中でも圧倒されたのは、ワークフロー自動化の仕組みです。
タスク期限前のリマインダー、監査中の責任者通知、異なるフォーム間のデータ連携など、複雑な処理が簡単に組み込めたのです。
こうしてZdenekは、これまで放置されてきた現場の業務ニーズを、コードなしで実用的なシステムとして次々に形にしていきました。
「最初に触れたときの感想は“すごい”でした。入力も処理も、驚くほどシンプルなんです」
——Zdenek
現場のスタッフもすぐに慣れ、フォーマットミスやファイルの紛失に悩まされることもなくなりました。
直感的なUIと細やかな権限設定、モバイル対応により、ツールが業務の一部として自然に根付き始めたのです。
また、管理側からは監査ログや項目単位の制御、ワークフローの自動化などにより、プロセスの安定性とセキュリティが確保されました。
現在、Zdenekと同僚たちはさらに多くの現場向けツールの開発を計画中です。
生産スケジューリングや設備保守といった領域にも拡大し、「プログラミングできないから無理だった」業務が次々と解決されようとしています。
ポイントまとめ
Zdenekは限られたリソースの中で、軽量・効率的かつ自分たちで完全にコントロールできるデジタル化の方法を見つけ出しました。
開発者ではないにもかかわらず、彼のノーコードによる取り組みは、SHIMANOチェコ工場の内部管理のあり方を確実に変えていったのです。
この物語が示しているのは、真のデジタル変革は開発者から始まるのではなく、現場を知る人が自ら改善に取り組めるようになった瞬間にこそ始まる、ということです。
まさにこれこそが、製造業におけるNocoBaseの典型的な活用スタイル。
業務を熟知した現場の人々が、自分たちの手でプロセスを“使えるツール”に変えていける。そんな変革を支えるプラットフォームなのです。
記事の表紙画像は、Unsplash 上の David Dvořáček によるものです。
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