筆者が勤務しているエキサイトのインドネシア現地法人であるPT Excite Indonesiaでは、2013年よりポイントを中心にしたサービスを提供しています。2013年11月に筆者がジャカルタに赴任した後は、サービスの大部分を現地のデザイナー・エンジニアと開発しており、そのなかで経験したインドネシア向けサービス設計の注意点について、順不同で紹介したいと思います。

ロケールに関するもの

言語

インドネシアの国語はインドネシア語です。日本よりは英語に抵抗がない人が多い印象ですが、英語圏ではないので極力インドネシア語でサービス提供したほうが良いでしょう。文字としては英語と同様に特殊記号なしのアルファベットなので、文字コードについて特別な配慮は必要ありません。文章語としては英語よりも単語が長くなる傾向があるので、文言を日本語や英語からインドネシア語に翻訳して表示する場合には表示領域に注意が必要です。

数字

オランダ領であった影響か、日本とは逆に、桁区切りに"."を、小数点に","を使うのが正式です。日本(英語圏)式とインドネシア(オランダ)式が混在してしまうと混乱のもとになるので気をつけましょう。

通貨

通貨単位はルピアで、記号としては"Rp"を使います。オンラインバンキングなどでは、"1.234.567,00"というように小数第2位まで表示されることが多いですが、現在、実際に1ルピア未満が使われることはありません。また、現時点での為替レートで1円が120ルピア程度で日本円よりも2桁多くなりますので、表示領域や変数の型に注意が必要な場合があるかもしれません。
(余談ですが、一番金額の小さい硬貨が100ルピア硬貨なので、100ルピア未満の端数は現金でやりとりすることができません。)

タイムゾーン

インドネシアは東西に広い国で、西部インドネシア時間(UTC+7)、中部インドネシア時間(UTC+8)、東部インドネシア時間(UTC+9)の3つのタイムゾーンがあります。例えば、首都のジャカルタがあるジャワ島はUTC+7で、観光地として有名なバリ島はUTC+8となります。サービスの性質にもよりますが、インドネシアのみに向けたサービスであっても、複数のタイムゾーンを考慮する必要がある場合があります。

ユーザ情報に関するもの

名前

これが非常に分かりにくいのですが、インドネシアではフルネームが一単語ということがあり、公式には姓と名という概念がありません。例えば、初代大統領であるスカルノのフルネームはSukarno(古い綴りではSoekarno)という一単語だけです。一方、スカルノの娘である5代大統領のメガワティのフルネームはDiah Permata Megawati Setiawati Sukarnoputriですが、これは全体でフルネームなのであって、姓と名には分けられません。このため、インドネシア向けサービスのユーザの本名入力欄は、姓と名に分ける必要はありません。ちなみに、フルネームが一単語の人が姓と名の入力欄が分かれているフォームに入力する場合、"Sukarno Sukarno"というように繰り返し入力するようです。

住所

住所の構成は特に変わったところはないのですが、日本と違うのはECの商品配送先に職場の住所を指定する人が多いことです。このため、ユーザに住所を入力してもらうときは、居住地を知りたいのか、商品の送付先を知りたいのか等、目的を明確にする必要があります。

電話番号

実は、この記事で最も重要なのはこの項目です。固定電話番号は個人では持っていない人が多いので携帯電話番号についてのみ触れます。日本の感覚からすると携帯電話番号を取得するのは本人確認書類を提出したり基本料金が発生したりとそれなりにハードルがありますが、インドネシアではプリペイドのSIMカードを道端の個人商店のようなところで本人確認書類なしに数十円から数百円で何枚でも買うことができます。つまり、複数アカウント取得を防ぐためにSMS認証を行ったりするのはほぼ意味がないということになります。アカウント取得のメリットがSIMカードの値段を上回る場合、猛烈に複数アカウントの取得が行われることを覚悟しなければなりません。これについては、通信キャリアに身分証明書を登録しないと電話番号が使えなくなるという流れになっていますが、現時点ではまだ徹底されていません。

携帯電話番号のフォーマットについては、10桁〜13桁を許容するようにバリデーションを行うのが安全です。13桁の電話番号はほぼ見かけませんが、一部通信キャリアにて存在することを確認しています。また、基本的に電話番号の最初の4桁でキャリアの判別は可能です。詳細を知りたい方は、内容の保証はできませんが、WikipediaのTelephone numbers in Indonesiaという記事を参考にしてみてください。

その他

宗教面での配慮

インドネシア国民の8割〜9割がイスラム教徒であると言われており、イスラム教が国教というわけではないのですが、コンテンツや機能の企画の際に配慮が必要な場合があります。ポルノやアルコールは分かりやすいですが、経験上注意が必要だと思っているのがギャンブル的な要素です。以前当社サービス上にくじ引きのような機能を開発しようとしたことがあるのですが、イスラム教徒のプロダクトマネージャーと開発者の間で、その機能がイスラム教の教義上問題ないかどうか議論になったことがありました。宗教的な観点から気にする人がユーザにも自社内にもいるだろうということは意識しておいたほうが良いと思います。

手作業による運用

日本人の場合、単純作業は自分でやるか機械にやらせるのが好きな人が多いと思いますが、インドネシアでは首都ジャカルタでもまだ月の最低賃金が3万円程度で(ただし、毎年上昇しています)、かつその最低賃金で働いている人が多数いるという状況のため、日本であれば自動化するか既存人員で根性で片付けるような単純作業を、そのための人を雇ってやってもらうことができます。その場合、雇った人にやってもらうための定型化や仕組み化が必要になるので、そのあたりを最初から考慮しておくと後でラクになるはずです。

システム連携

こちらはインドネシアに限らずシステム開発の基本ですが、基本的にシステム連携の際にパートナーのシステムやAPIが常に正しく動作することを前提にしてはいけません。残念ながら、金融機関や通信キャリアのシステムであっても、日本の基準よりはかなり低いサービスレベルで運用されているため、何らかの不具合が発生した場合に、それを素早く検知して手間無くリトライできるような仕組みを当初から準備しておかないと、面倒なことになる可能性が高いです。

参考文献

  • 加納啓良 『インドネシアの基礎知識』 めこん、2017年。
  • 西野竜太郎『ソフトウェアグローバリゼーション入門』 達人出版会、2017年。
  • 「インドネシア人の名前」『南極星 No. 49』 PT. JNet Media Indonesia、2015年。
  • "Telephone numbers in Indonesia" https://en.wikipedia.org/wiki/Telephone_numbers_in_Indonesia 2017年12月10日閲覧。
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