はじめに
この記事はLIFULL Advent Calendar 2022の21日目の記事です。
今回は、みんな大好き UX に関する成熟度モデルのお話を書きます。
UX成熟度モデルとは
一言で表現すると、組織のUXに関する長所と短所を評価するためのフレームワークです。
概念自体は2000年初期頃から存在していましたが、統一規格は無く幾つかのモデルが定義されていたようです。
代表的なモデルは、2006年に Jakob Nielsen(ニールセン)が定義したUX成熟度モデルです。
弊社での取組み
弊社では数年前から独自のUX成熟度モデルを策定し運用しています。
組織全体に対して定期的なアセスメントを実施し、各組織のUX成熟度を把握した上で、組織毎にカスタマイズしたリサーチ支援活動や啓蒙活動に活かしています。
UX成熟度モデルの社内運用を開始して1年程で評価結果の適切性や運用コスト等々の課題に直面したため、モデルと運用フローのチューニングを始めました。
業界調査を進める中で、当時参考にしていた2006年版ニールセンUX成熟度モデルが2021年に改定されている事に気付きました。
UX成熟度 ニールセン2021バージョンの特徴
UX成熟度 ニールセン2021バージョンの特徴は、4ファクターを軸にした評価と、6段階の評価結果から構成されています。
- 評価軸 4ファクター
- Strategy(戦略): UX のリーダーシップ、計画、リソースの優先順位付け
- Culture(文化): UX の知識と UX キャリアの育成と実践者の成長
- Process(プロセス): UX の研究とデザイン手法の体系的な使用
- Outcomes(結果): UX 作業によって生み出された結果を意図的に定義し測定する
- 評価結果 6段階
- Stage 1: Absent(不在)
- Stage 2: Limited(限定的)
- Stage 3: Emergent(新興)
- Stage 4: Structured(構造化)
- Stage 5: Integrated(統合的)
- Stage 6: User-Driven(ユーザー主導)
※ 参照: nngroup.com
UX成熟度6段階の特徴
それでは早速、UX成熟度6段階の特徴を見ていきましょう。
成熟度1: Absent(不在)
- UXに気付いていない/必要ないと考えている
- UX活動が計画されていない
- UXが組織のビジョンに組み込まれていない
- UXに関する予算や投資は無い
UX活動行われていない状態です。
この段階から前進するには、UX認識の構築に注力する必要があります。
先ずは小さな取組を始める事が重要です。
役立つ記事の共有、昼食会で少数のエンドユーザーからフィードバックを収集して洞察会を催す等から始めてみましょう。
成熟度2: Limited(限定的)
- 一部のメンバーがUXを認識/UX活動をしている
- UX作業は日常的に行われていない
- UX戦略が計画に組み込まれていない
- UXの優先順位は低い
- UX専用の役割、プロセス、予算は無い
UX活動が小規模で行われている状態です。
この段階から前進するには、UXを取り入れた開発を実施し成功体験を積む事です。
逆算的思考にはなりますが、成功体験を生む為の適切な開発施策でUXリサーチを活用する事を心がけると良いです。
ユーザビリティテストや検証型インタビューの活用がおすすめです。
1つ1つの成功体験が、周囲の開発メンバーを巻き込み、経営者への予算投資判断の決め手になります。
成熟度3: Emergent(新興)
- 組織内のより多くのメンバーがUXへ興味関心が高まっている
- UXの計画を考慮している
- UXに関する予算をもっている
- ただし、UXへの取組みは組織ポリシーではない
- マネージャーのイニシアチブに基づく
- UXの役割を担う人がいるが、十分とはいえない
- 体系的UXプロセスが整備されていない
- まだUXは重要な戦略として理解されていない状態
組織全体を通してムーブメントが起こりつつある状態です。
中心的な人物や複数の小規模チームがUXを活用した取組みが出来ている状態です。
この段階から前進するには、UX活動が出来ていない組織への導入サポートや、属人化したUXプロセスの標準化が必要になります。
組織全体のUXへの期待と価値が認識されることで次のステージに進みます。
成熟度4: Structured(構造化)
- 組織がUXの価値を認識している
- 完成されたUXチームが存在している
- 大凡のプロダクト・ライフサイクル全体の中でリサーチが実施されている
- 組織全体の中で一部のプロセスでUXの導入ができていない
- UX中心の開発プロセスを使用してはいるが、効率的且つ効果的な結果を生み出す事に苦戦している
組織全体へのUX定着が進んだ状態です。
この段階から前進するには、UX活動に苦戦している組織への丁寧な導入サポートや
組織全体を通してのビジョンとUX戦略の紐付けと理解を促す必要があります。
成熟度5: Integrated(統合的)
- 組織のUX活動は包括的かつ普遍的なもの
- 組織内のほぼ全てのチームは、効率的かつ効果的な方法でUX関連の活動を行う
- UXの方法とプロセスに革新がある
- UX分野全体への貢献もある
- 組織の重要な成功指標がUXに焦点を当てている
戦略、文化、プロセス、結果において高い水準で効果が出ている状態です。
この水準に達する事が1つの大きなマイルストーンという程に、難易度が高く、多くの企業がこの水準に到達したことのないレベルと定義されています。
成熟度6: User-Driven(ユーザー主導)
- UXが標準、習慣的、再現可能な状態
- 組織に関わる全ての人間がユーザー中心の設計について十分に理解している
- 開発にはユーザー中心の反復設計が含まれている
- 組織に関わる全ての人間が日常業務でUXを意識している
- リサーチを通じてユーザーのニーズを理解することは、組織戦略とプロジェクトの優先順位付けの主要な原動力だと組織内全てのメンバーが理解している
- ユーザーリサーチに依存して新しい投資と市場を推進している
UX成熟度の究極的な目標であり、この段階に達している企業はほぼ無いそうです。
まとめ
UX成熟度 ニールセン2021バージョンは如何でしたか。
読者の皆様は自分の組織がどの段階に当てはまるのか、測定してみたいと思ったはずです。
そう、測定できるんです。ニールセンならね。
UX Maturity Quiz
所要時間は10min程度、合計13設問のクイズに答えるだけで測定可能です。
クイズに答えて自分の組織のUX成熟度を把握し、長所と短所に向き合いながら次の段階に進むにあたっての参考になれば幸いです。