各種メモリ/ストレージについて,2025年時点で標準的なアクセス時間,所要クロックサイクル,転送速度,容量を,各種カタログスペックを参考にまとめてみました.
レジスタ(レジスタファイル)
最近のCPUのレジスタ(register)のアクセスは,通常CPUの1クロックサイクルで完了します.2026年時点では,標準的なCPUのクロック周波数は,1〜6GHz程度のオーダーです.1GHzは1秒あたり10億回,すなわち1クロックサイクルは1ナノ秒です.
したがって,2026年時点では,レジスタには0.16〜1ナノ秒程度でアクセスできると言えます.
レジスタのメモリ容量は,レジスタファイルに存在するレジスタ数に依存します,これは命令で明示的に指定できるレジスタ数という解釈もありますが,レジスタ・リネーミングのようなプロセッサ技術を用いると,実際にはより多くのレジスタ数を持っていると解釈することもできます.
x86_64アーキテクチャでは,16本の64ビット汎用レジスタと,16本の128ビットXMM(SIMD)レジスタがあります(他にもYMMやZMMのレジスタがあります).なので,明示的に指定できる範囲のレジスタをメモリ容量に換算すると,汎用レジスタが128バイト換算,SIMDレジスタが256(XMM)〜2048(ZMM)バイト換算であると言えます.
ARMアーキテクチャでは,15本の32ビットもしくは31本の64ビットの汎用レジスタを持っています.なので,明示的に指定できる範囲のレジスタをメモリ容量に換算すると,60〜248バイト換算であると言えます.
RISC-Vアーキテクチャでは,標準的には31本の32ビットもしくは64ビットの汎用レジスタを持っています.なので,明示的に指定できる範囲のレジスタをメモリ容量に換算すると,124〜248バイト換算であると言えます.ベクトル拡張のあるRISC-Vでは,ベクトルレジスタの分,より大きなメモリ容量を持っていると考えることができます.
なお,現代的なCPUのレジスタには,私たちが想像するよりはるかに多くのトランジスタを使っているそうです.理由としては,現代的なCPUでは,アウト・オブ・オーダー実行が前提になっていて,凄まじい勢いでレジスタに並列アクセスするということです.それを捌くようにするために,トランジスタをものすごくたくさん使って設計しているそうです.このようなレジスタのIPコアは,IntelとかAMDとかAppleとかのCPUの高性能さを支えている原動力の1つになっているそうです.なので,新興メーカーが同じような戦略を採用してCPUを設計しても,思うように性能が上がらないらしいです.
1次キャッシュメモリ(L1キャッシュ)
1次キャッシュメモリ(level 1 (L1) cache memories)について,2026年では,概ね4クロック程度だろうと見込まれます.ただ一部のCPUでL1とL2の中間のL1.5というキャッシュメモリを備えて192KBで9クロックの例もあるようです。
2026年時点では,L1キャッシュメモリへのアクセスは,だいたい4クロックサイクルで完了するのが標準的であると仮定し,標準的なCPUのクロック周波数を1〜6GHz程度であることを考慮すると,2026年時点では,L1キャッシュメモリへは0.67〜4ナノ秒程度でアクセスできると言えます.
2026年時点では,L1キャッシュメモリの容量は32KB〜96KB程度であるようです.前述のようにL1.5キャッシュメモリとして192KBの例もあるようです.
参考:
2次キャッシュメモリ(L2キャッシュ)
2次キャッシュメモリ(level 2 (L2) cache memories)について,2026年では、14〜17クロックサイクルでアクセスできると見込むのが良さそうです.
標準的なCPUのクロック周波数を1〜6GHz程度であることを考慮すると,2026年時点では,L2キャッシュメモリへは2〜17ナノ秒程度でアクセスできると言えます.
2026年時点では,L2キャッシュメモリの容量は1コアあたり1〜3MB、総量で40MBクラスであるようです.
参考:
3次キャッシュメモリ(L3キャッシュ)
3次キャッシュメモリ(level 3 (L3) cache memories)について,2026年では,所要クロックサイクルは50〜85クロックサイクルと見積もれます。
標準的なCPUのクロック周波数を1〜6GHz程度であることを考慮すると,L3キャッシュメモリへは8〜90ナノ秒程度でアクセスできる水準であると言えそうです。
2026年時点では,L3キャッシュメモリの容量は一般デスクトップで32〜128MB、サーバーで384MB、最大で1.152GBクラスだということです。
参考:
メインメモリ (DDR5 SDRAMなど)
最近の高速な x86_64 アーキテクチャではメインメモリに DDR5 SDRAM を採用しています.
DDR5 SDRAM の最大動作周波数や転送速度については,Wikipedia にまとまっています.
下記記事によると,規格更新により8800Mbpsに拡張になったということです.
ただ、一般的にはDDR5-6400がサーバー向けの上限であるようです。
DDR5はDDR4より遅延時間が若干大きいようで、16.67nsとのことです。
SDRAMについては,アクセスパターンによって所要クロックサイクル数が大きく異なります.前述の理論上の数値は,最良のパターンの場合にあり得るかも,くらいなのでしょうね.下記レビューでは、DDR5-5600/6400で92-94nsということです。
メインメモリの容量は,1枚あたりの容量×メモリスロット数です.2026年時点で市販されているDDR5 SDRAM 1枚あたりの容量は,128GBのものが最大のようです.
データセンター向けにRDIMMというのもあり、256GB RDIMMだと、8.8〜9.2GT/sクラスだそうです。
参考: メインメモリ (HBM3)
最近はさらに高速なメインメモリとしてHigh Bandwidth Memory (HBM)が注目されています.
2026年ではHBM3EとHBM4が最先端です。HBM3Eは24GB/36GBスタックで1.2TB/s以上、HBM4は36GBスタックで2.8TB/s以上ということです。GPUでの実装例だと、NVIDIA H200では 141GB HBM3e で4.8TB/s、DGX B200は8GPU合計で1,440GB HBM3e 64TB/sとのことです。
なお、1スタックあたりとGPU/システムあたりは違います。
SSD (NANDフラッシュメモリ)
市販されているSSDで最も高速な部類のものは,NVMe M.2 PCIe Gen5規格のもので,理論上,PCIe Gen5バスの最大転送速度約15.75GB/s(約126Gbps)で転送できます.一方,普及価格帯のSATA規格のものはSATA3.0規格で最大転送速度が6Gbpsです.
Samsung 9100 PROは最大14,800MB/s read 13,400MB/s write、最大8TBです。
データセンター向けではPCIe Gen6 SSDがていて、最大28GB/s read 14GB/s writeのものがあるそうです。
データセンター向けだと最大容量245TBのものが出荷されているらしいです
またSSDや次のHDDの場合は,複数のSSDを組み合わせてRAIDを組むことで,最大容量を増やしたり転送速度を向上させたりできます.この記事ではその点を考察しませんでした.
HDD (ディスクドライブ)
HDDは,内部にキャッシュを装備していることがあり,また機械的な装置で動作することから,実効アクセス時間,シークタイム,サーチタイムといった,様々な計測値が取られます.
情報処理試験にも出るのですが,アクセスにかかる平均時間は,平均シークタイム+平均回転待ち時間+転送時間=平均シークタイム + 60/(回転数(rpm) * 2) + データ長 / 転送速度 です.
平均シークタイムの目安は数〜10数ミリ秒,回転数は5400〜15000rpm程度,転送速度はSATA3.0の場合6Gbpsです.
読み出し始めるのにだいたい10〜20数ミリ秒くらいはかかるというところのようです.
データ転送速度については,0.5〜200MB/s程度のようです.
容量についてですが,2026年時点で,3.5インチのもので250GB〜44TB程度のようです.
参考: ネットワーク
今,規格化されている最も高速な光通信ネットワークは800Gbpsで、1.6Tbpsのものも標準化作業が進んでいます。Interop 2026という展示会で仕入れた未確認情報では、3.2Tbpsについても量産化に成功した企業があるようです。
まとめ
2025年時点の各種メモリ/ストレージのアクセス時間,アクセス開始までの所要クロックサイクル,容量の目安は次のとおりです.
| メモリ/ストレージの種類 | アクセス時間 | アクセス開始までの所要クロックサイクル | 最大転送速度 | 容量 |
|---|---|---|---|---|
| レジスタ | 0.16〜1ナノ秒 | 1 | 205〜768Gbps換算 | 60〜256(2048)バイト換算 |
| L1キャッシュ | 0.7〜4ナノ秒 | 4程度 | 205〜768Gbps換算 | 32〜48KB/core |
| L1.5キャッシュ | 1.5〜9ナノ秒 | 9程度 | 205〜768Gbps換算 | 192KB/core |
| L2キャッシュ | 2〜17ナノ秒 | 14〜17程度 | 205〜768Gbps程度? | 1MB〜3MB/core |
| L3キャッシュ | 8〜90ナノ秒 | 50〜85程度 | 205〜768Gbps程度? | デスクトップ32〜128MB、サーバー384MB、3D V-Cache EPYCで1.152GB |
| メインメモリ(DDR5) | 最良10〜20ナノ秒、実アクセス60〜100ナノ秒 | 数十〜数百程度 | 51.2GB/s/ch(DDR5-6400)、70.4GB/s/ch(DDR5-8800) | 1枚あたり128〜256GB |
| メインメモリ(HBM3E) | ? | ? | 1スタック1.2Tbps以上 | ? |
| メインメモリ(HBM4) | ? | ? | 1スタック2.8Tbps以上 | ? |
| NVMe M.2 SSD (PCIe Gen5) | 20〜100マイクロ秒程度 | 数万〜数十万程度 | 最大15GB/s程度 | 〜8TB |
| NVMe M.2 SSD (PCIe Gen6) | 15〜60マイクロ秒程度 | 数万〜数十万程度 | 最大28GB/s程度 | 〜数十TB |
| 大容量DC SSD | 100〜マイクロ秒程度 | 数万〜数十万程度 | 最大15GB/s程度 | 〜245TB |
| SATA3.0 SSD | 100〜200マイクロ秒程度 | 数十万〜百万程度 | 500〜600MB/s程度 | 〜16TB |
| SATA3.0 HDD (3.5inch) | 5〜20数ミリ秒程度 | 数百万〜1億程度 | 200〜300MB/s程度 | 〜44TB |
| ネットワーク | - | - | 800Gbps標準化済、1.6Tbpsは標準化策定中、3.2Tbpsも実用化間近との情報あり | - |
各種ハードウェアや,プログラミング言語処理系,OS等は,このような数値の目安を参考に設計するのが妥当でしょう.