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最大公約数と最小公倍数の定理の証明

Last updated at Posted at 2018-06-03

最大公約数と最小公倍数の定理について、自分の理解を深めるために(参考文献の行間を埋めるかたちで)証明を再現してみた.参考文献は「代数と数論の基礎」(中島匠一).

bがaで割り切れて, かつaがbで割り切れる ⇔ a=b

$a|b$ かつ $b|a$ ⇔ $a=b$
が成り立つことを示す.

$a|b$という表記は「$a$は$b$の約数である(=$b$は$a$で割り切れる)」ことを意味する.
これは「$b=ak$となるような整数$k$が存在する」と言い換えることができる.

$a|b$より
 $b=aA$となるような整数$A$が存在する.

$b|a$より
 $a=bB$となるような整数$B$が存在する。

$a=bB$を代入して
 $b=bBA$
両辺に$\frac{1}{b}$をかけて
 $BA=1$

したがって
 $A=1$
 $B=1$
$a=bB$に代入して
 $a=b$

逆は自明.

a,bの任意の公倍数は最小公倍数の倍数である

$a,b$の任意の公倍数を$m$とすると
 $lcm(a,b) | m$
が成り立つことを示す.

$L = lcm(a,b)$とする.
$m = Lk + r (0≦r<L)$とする.

これを$r$についての式にすると
$r = m - Lk$
ここで$m,L$は$a,b$の公倍数であるので、$r$も$a,b$の公倍数である.

なぜそう言えるのかを以下に説明する。
まず, $m,L$が$a$の倍数であることに注目して
$m = aM$
$L = al$
とすると
$r = m - Lk = aM - alk = a(M - lk)$
これで、$r$を$a$の倍数として表現できた.
同様にして$r$を$b$の倍数として表現できる.
$r$は$a$の倍数としても$b$の倍数としても表現できる数なので, $r$は$a,b$の公倍数である.

しかし, $r$が$a,b$の公倍数であるとすると, $L$の最小性と矛盾する(最小公倍数の定義は「0でない公倍数のうち最小の自然数」なので, $r<L$となるような自然数$r$の存在は$L$の定義と矛盾する).したがって$r = 0$.

$r=0$を代入して
$m=Lk + 0$
$m = Lk$

ここで各変数の意味を確認すると, $m$は「$a,b$の任意の公倍数」である.$L$は「$a,b$の最小公倍数」である.$m = Lk$より「$a,b$の任意の公倍数は, $a,b$の最小公倍数の倍数である」と結論できる.

a,bの任意の公約数は最大公約数の約数である

$a,b$の任意の公約数を$d$, 最大公約数を$G$とするとき
 $lcm(d,G) = G$
が成り立つことを示す.

$d,G$の最小公倍数を$l$とすると

$lcm(d,G) = l$

公倍数の定義より$G≦l$

$d|a$ かつ $G|a$ より $a$は$d,G$の公倍数.$d,G$の公倍数が$a$, 最小公倍数が$l$ということは$l|a$(「任意の公倍数は最小公倍数の倍数」を利用した)

$d|b$ かつ $G|b$ より $b$は$d,G$の公倍数.$d,G$の公倍数が$b$, 最小公倍数が$l$ということは$l|b$(「任意の公倍数は最小公倍数の倍数」を利用した)

$l|a, l|b$より, $l$は$a,b$の公約数であることが示された.
$G$の最大性より, $l≦G$である.

$G≦l$ かつ $l≦G$ から、$l = G$

$lcm(d,G) = l$
$l = G$を代入して
$lcm(d,G) = G$

gcd(a,b)=gcd(b,a)

$gcd(a,b) = gcd(b,a)$ が成り立つことを示す.

 $G_1 = gcd(a,b)$
 $G_2 = gcd(b,a)$

とする.
$G_1$は$a,b$の公約数なので「最大公約数は任意の公約数の倍数」であることより

$G_1|G_2$

と表せる。
同様に, $G_2$は$b,a$の公約数なので「最大公約数は任意の公約数の倍数」であることより

$G_2|G_1$

と表せる.

$G_1|G_2$ かつ $G_2|G_1$ より $G_1=G_2$

gcd(a, b+ac) = gcd(a, b)

 $gcd(a, b+ac) = gcd(a, b)$
が成り立つことを示す.

 $G_1 = gcd(a, b+ac)$
 $G_2 = gcd(a, b)$
とする。

 $a = G_2A_2$
 $b = G_2B_2$
 $b+ac = G_2B_2 + G_2A_2c = G_2(B_2 + A_2c)$

$G_2$は$a,b+ac$の公約数であることから 
 $G_2 ≦ G_1$

 $a = G_1A_1$
 $b + ac = G_1B_1$
両辺から$ac$を引いて
 $(b + ac) - ac = (G_1B_1) - ac$
 $(b + ac) - ac = (G_1B_1) - G_1A_1c$
 $b + (ac - ac) = G_1(B_1) - G_1(A_1c)$
 $b = G_1(B_1 - A_1c)$

$G_1$は$a$と$b$の公約数であることから
 $G_1 ≦ G_2$

$G_1≧G_2$ かつ $G_1≦G_2$ より
 $G_1=G_2$

gcd(a/d,b/d) = gcd(a,b)/d

$d|a, d|b$ のとき
 $gcd(\frac{a}{d},\frac{b}{d}) = \frac{gcd(a,b)}{d}$
が成り立つことを示す.

 $d' = gcd(\frac{a}{d},\frac{b}{d})$
 $d'' = \frac{gcd(a,b)}{d}$

とおく.

方針としては
 $d'|d''$ かつ $d''|d'$
を示すことで $d' = d''$ を証明する.

まず $d'$ に注目する。

 $d' = gcd(\frac{a}{d},\frac{b}{d})$

「任意の公約数は最大公約数の約数である」より
 $d'|\frac{a}{d}$ かつ $d'|\frac{b}{d}$

$d$ をかけて
 $dd'|a$ かつ $dd'|b$

「任意の公約数は最大公約数の約数である」より
 $dd'|gcd(a,b)$

$\frac{1}{d}$をかけて
 $d'|\frac{gcd(a,b)}{d}$

以上より $d'|d''$ が示された.

つぎに $d''$に注目する.

 $d'' = \frac{gcd(a,b)}{d}$

両辺に $d$ をかけると
 $dd'' = gcd(a,b)$

「任意の公約数は最大公約数の約数である」より
 $dd''|a dd''|b$

$\frac{1}{d}$ をかけると
 $d''|\frac{a}{d} d''|\frac{b}{d}$

「任意の公約数は最大公約数の約数である」より
 $d''|gcd(\frac{a}{d}, \frac{b}{d})$

以上より $d''|d'$ が示された.

$d'|d''$ かつ $d''|d'$ より $d'=d''$

$gcd(\frac{a}{d},\frac{b}{d}) = \frac{gcd(a,b)}{d}$ が示された。

gcd(a/g,b/g)=1

$d$が$a,b$の公約数であり $g=gcd(a,b)$とするとき
 $gcd(\frac{a}{g},\frac{b}{g}) = 1$
が成り立つことを示す.

$gcd(\frac{a}{d},\frac{b}{d}) = \frac{gcd(a,b)}{d}$
に $d=g$ を代入する.

$gcd(\frac{a}{g},\frac{b}{g}) = \frac{gcd(a,b)}{g} = \frac{gcd(a,b)}{gcd(a,b)} = 1$

gcd(ac,bc)=gcd(a,b)c

$d'=gcd(ac,bc)$
$d''=gcd(a,b)c$
として $d'=d''$ が成り立つことを示す.

まず $d'=gcd(ac,bc)$ に注目する.

「最大公約数は任意の公約数の倍数である」より
 $d'|ac$ かつ $d'|bc$

$\frac{1}{c}$をかけて
 $\frac{d'}{c}|a$ かつ $\frac{d'}{c}|b$

「任意の公約数は最大公約数の約数である」より
 $\frac{d'}{c}|gcd(a,b)$

$c$をかけて
 $d'|gcd(a,b)c$

以上より
 $gcd(ac,bc)|gcd(a,b)c$

つぎに $d''=gcd(a,b)c$ に注目する.

$\frac{1}{c}$をかけて
 $\frac{d''}{c}=gcd(a,b)$

「最大公約数は任意の公約数の倍数である」より
 $\frac{d''}{c}|a$ かつ $\frac{d''}{c}|b$

$c$をかけて
 $d''|ac$ かつ $d''|bc$

「任意の公約数は最大公約数の約数」より
 $d''|gcd(ac,bc)$

以上より
 $gcd(a,b)c|gcd(ac,bc)$

まとめると
 $gcd(ac,bc)|gcd(a,b)c$ かつ $gcd(a,b)c|gcd(ac,bc)$ より

 $gcd(ac,bc) = gcd(a,b)c$

gcd(a,b)はgcd(a,bc)の約数である

$gcd(a,b)|gcd(a,bc) (c≠0)$
が成り立つことを示す.

 $G_1=gcd(a,b)$
とすると
 $a=G_1A$
 $b=G_1B$
 $bc=G_1Bc$

$a,bc$は$G_1$を公約数とするため, 「任意の公約数は最大公約数の約数」より
 $G_1|gcd(a,bc)$

以上より
 $gcd(a,b)|gcd(a,bc)$

ユークリッドの互除法の証明

$a$を$b$で割ったときの商を$q$, 余りを$r (0≦r<b)$とする.
このとき$gcd(a,b) = gcd(b,r)$が成り立つことを示す.

$G_1 = gcd(a,b)$
$G_2 = gcd(b,r)$

$G_1 = G_2$ を証明する.

証明の方針

  • $G_1$が($a,b$の最大公約数であると同時に)$b,r$の公約数でもある.
  • $G_2$が($b,r$の最大公約数であると同時に)$a,b$の公約数でもある.

以上から, $G_1 = G_2$であることを示す.これを示すために

  • $r$を$G_1$の倍数として表現する.
  • $a$を$G_2$の倍数として表現する.

「$a$を$b$で割ったときの商を$q$、余りを$r$とする」は

 $a÷b = q … r$

と表せる。$a,r$についての式で表すと

 $a = bq + r$
 $r = a - bq$

となる.さらに, $a,b$の最大公約数は$G_1$なので、$a=G_1A$ $b=G_1B_1$として
 $r = a - bq = G_1A - (G_1B_1)q = G_1A - G_1(B_1q) = G_1(A - B_1q)$

この式から「$r$は$G_1$を約数としてもつ」と言える.
さらに$G_1$は$b$の約数でもあるので「$G_1$は$b,r$の公約数である」と言える.

まとめると

  • $G_1$は$b,r$の公約数である.
  • $G_2$は$b,r$の最大公約数である.

最大公約数は「公約数のうち最大のもの」と定義されるので
$G_1 ≦ G_2$
が成り立つ.


$b,r$の最大公約数は$G_2$なので, $b=G_2B_2$ $r=G_2R$として

$a = bq + r = (G_2B_2)q + G_2R = G_2(B_2q + R)$

この式から「$a$は$G_2$を約数としてもつ」と言える.
さらに$G_2$は$b$の約数でもあるので「$G_2$は$a,b$の公約数である」と言える.

まとめると

  • $G_1$は$a,b$の最大公約数である.
  • $G_2$は$b,r$の公約数である.

最大公約数は「公約数のうち最大のもの」と定義されるので
 $G_1 ≧ G_2$
が成り立つ.

$G_1 ≦ G_2$ かつ $G_1 ≧ G_2$ より $G_1 = G_2$

g=gcd(a,b) l=lcm(a,b) とするとき lg=ab

 $g=gcd(a,b)$
 $l=lcm(a,b)$
とするとき 
 $lg=ab$
が成り立つことを示す.

$ab$は$a,b$の公倍数である.

「任意の公倍数は最小公倍数の倍数である」つまり $l|ab$ なので
 $ab=ld$
と表すことができる.

$ab=ld$ の両辺に $\frac{1}{b}$ をかけて
 $a=\frac{ld}{b}=\frac{l}{b}・d$
$ab=ld$ の両辺に $\frac{1}{a}$ をかけて
 $b=\frac{ld}{a}=\frac{l}{a}・d$

このことから $d$ は $a,b$ の公約数であるといえる.

「任意の公約数は最大公約数の約数である」より
 $d|g$
が成り立つ.

つぎに $\frac{ab}{g}$ について
$\frac{ab}{g}=a・\frac{b}{g}=b・\frac{a}{g}$

このことから $\frac{ab}{g}$ は $a,b$ の公倍数であるといえる.

$\frac{ab}{g}$ に $ab=ld$ を代入して
 $\frac{ld}{g}$

「任意の公倍数は最小公倍数の倍数である」より
$l|\frac{ld}{g}$

$g$ をかけて
 $gl|ld$

$\frac{1}{l}$ をかけて
 $g|d$
が成り立つ。

$d|g$ かつ $g|d$ より $d=g$

$d=g$ を $ab=ld$ に代入すると $ab=lg$

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