はじめに
より良いUI・UXをつくることはプロダクト作成時にだれもが考えることです。
これは、プログラミングと違い「これが絶対」というものはありません。だからといって、センスだけで成り立っているものでもありません。
センスやなんとなくでつくるのではなく、
・科学的にどうすればより良いプロダクトとなるのか、
・どうすればユーザーに望んだアクションをとってもらえるのか
そんなtipsを本記事にまとめました。
心理学、行動経済学、認知科学での研究結果でUI・UXに応用できそうなものをまとめましたので、サービスをつくる際の参考になれば幸いです。
より良いプロダクトを!!
ユーザーの達成を後押しする
ゴールに向かって若干の前進を感じたときに、人はよりゴールに向かうモチベーションを上げようと努力します。これは「エンダウド・プログレス効果(endowed progress effect)」と呼ばれています。
これからわかるのは
「進捗を提示すること」で、ユーザーにとってのゴールがある場合に、それを達成するモチベーションをあげることができる、ということです。
応用
個人情報の入力画面で進捗を表示することは有効でしょう。
LinkedInやFacebookでみられるように、ユーザーに情報入力が進んでいることを示すことでプロフィールを充実させるモチベーションを高めています。
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理由を付けて依頼されると承諾しやすい
ユーザーに通知や、カメラ使用などの許可を求めることがあると思いますが、その際は理由をちゃんと伝えるようにしましょう。許諾率が大きく変わります。
<実験内容>
A:「先にコピーをとらせてもらえませんか」
B:「急いでいるので、先にコピーをとらせてもらえませんか」
C:「コピーを取らなければいけないので、先にコピーをとらせていただけませんか」
Aの場合は、承諾率が60%。
Bの場合では、94%
Cの場合では、93% (不自然な理由づけであるが、違和感が大きくない理由付けも効果がある)
→ 理由を付けることで承諾率が30%上昇する
応用
プッシュ通知、カメラ機能の使用などユーザーに許可をお願いする場合は
”なぜ”そうする必要があるか"理由"を明確にしましょう。
画像を載せて説明するのも良いでしょう。
ダメな例
❌「通知が毎日送られます!」みたいな理由のないものはNG
途中で終わらせて記憶に焼き付ける
人は達成できなかった事柄や、中断している事柄に対して、より強い記憶や印象を持ちます。
(心理学用語ではツァイガルニク効果と呼ばれます)
例えば恋愛で、フった側は、恋愛を完結させたことでスッキリしますが、フラれた側は続けたかった恋愛が"未完"に終わってしまったことで、強く記憶に残ります。
ツァイガルニク効果|仕事や勉強に役立つ「続きが気になる」心理学
→ 物事は完了させるよりも、中断された方が記憶力を向上させる
応用
例えばタイトルをつける時には、虫食いや質問型にして、読み手にとって未完の状態を作るようにすることでユーザーの印象に残りやすくなるでしょう。また、一部だけ無料で公開したり、ある一定期間だけ「〜できる」といった手法も効果的です。
・プッシュ通知の文言
・記事タイトルの文言
・課金システム
・動画の見せ方
などに利用できるでしょう。
一方で、申し込みページや購入ページといった「ユーザーの意思が固まり、そのフローを邪魔したくないとき」は、他に興味が映らないように、別コンテンツやリンクの表示はない方が良いでしょう。
プライミング効果
プライミング効果は連想ゲームのようなもので、何らかの刺激を受けたことにより後の刺激に対する反応に影響が出ることを意味します。
⬇︎プライミング効果では以下の実験が有名です。
ジョン・バルフらの実験では、学生たちに5つの単語のセットから4単語の短文を作る課題を行ってもらった。このとき、ある群には高齢者を連想させるような単語を混ぜておいた。この後、学生たちには他の実験のために別の部屋に移動してもらったが、このときの廊下を歩く速度をこっそりと測定すると、高齢者を連想させる単語に触れた群は、他の群よりも明らかに歩く速度が遅かった。
ある行動を考えるだけでその行動を取りやすくなることはイデオモーター(観念運動)と呼ばれるが、この実験後の調査で単語の共通性に気づいた学生が1人もいなかったことから、学生たちは高齢という観念が意識に上らなかったことになる。つまり、意識できない程度の観念の活性化においても、行動を変えるほどの影響力を持っているということである。
→ ユーザーに望む行動や、抱いて欲しいイメージに関係するワード、画像を置くことでユーザーのその後のアクションに影響を与えることができる。そしてそれらの仕掛けはユーザーの意識に上がらなかったとしても効果がある。
⬇︎ほかにはこのような実験もあります。
ドイツの大学で行われた研究では、学生たちに毎分30歩のペース(通常の歩行速度の3分の1)で部屋の中を5分間歩いてもらい、その後で問題を出されると、高齢に関連する単語をより素早く認識するようになった。これは自分の行動がプライムの役割を果たし、その行動に関連する知識や概念が活性化され、後続の情報処理に影響を与えていると考えることができる。
→ ユーザーの行動がプライムになることもある。ユーザーがプロダクトを使用する場面、場所がアクションに影響を与えているかもしれない。
⬇︎また、webサイトでの実験例もあります。
Naomi Mandel氏とEric J. Johnson氏が行った調査では、ウェブサイトの背景を変えることで、消費者の商品選択に影響が出ることが分かっています。この調査では、参加者は1つのカテゴリから2つの商品のどちらかを選択するように指示されます(例えば、トヨタとレクサスのいずれかを選択)。
Psychology Todayによると、「背景が緑色(=米ドル紙幣の色)で1セント硬貨の絵が描かれたサイト、つまり「お金」というプライムを与えられた参加者は、「安全」というプライムを与えられた参加者に比べ、価格情報を見る時間が長いという結果になりました。同様に、「心地良さ」というプライムを与えられた参加者は、「お金」というプライムを与えられた参加者に比べ、心地良さに関する情報を見る時間が長いという結果が出ています。」
マーケティングの心理学:人間の行動を紐解く10の法則
→ 言葉や画像を利用することでユーザーの注意、選択を方向付けることが可能なことがわかります。連想するということが影響を与えているので、音、触覚といったものも利用できるでしょう。
みんながやっているからやる
これはソーシャルプルーフや社会的証明の原理と言った言葉で表されます。
みんながやっている → きっと正しい、信頼性のあるものだろう という心理です。
例えば、路上パフォーマーに対して他の人がお札を多く入れていたらお札を入れる人がおおくなりますし、コインがばかりだとコインをいれる人が多くなります。このような他の人のチップの額に影響を受けることはシードマネー効果と呼ばれますが、これもソーシャルプルーフの一例です。他の人の行動が社会的証明となっているのです。
応用
たとえば記事のシェア数やアカウントのフォロワー数が表示されるSNSボタンを設置してみるのがよいでしょう。複数の人からシェアされていれば、たまたまその記事にたどりついた人がシェアしてくれる可能性は大きく高まります。
社会的証明をユーザーに想起させるのも効果的でしょう。
⬇︎「売上を倍増」させた、テレビ通販の呼びかけセリフ
A.オペレーターが
お待ちしております!
→ ガランとした部屋でオペレーターたちが暇そうに電話を待っている印象
B.電話がつながらない時は
おかけ直しください
→ 電話がひっきりなしに鳴っていて他の利用者も商品を買いたがっている印象
→ 売上2倍
ワードデザイン1つでユーザーへの影響に違いが出ます。ユーザーはあなたのプロダクトを使っている時どんなことを考えているの想像してみましょう。
ユーザーが意思決定をタイミングをねらう
バナーやプッシュ通知でイベントやキャンペーンの告知をお知らせしすることがあると思います。
目的としては告知を見たユーザーに「購入」や「参加」などの意思決定を促したい訳ですが、ではユーザーが意思決定をするタイミングはいつなのでしょうか?
ヘンチェン・ダイらの研究では
・新年の第1週目
・連休明け
などのタイミングで向上や変化を求めて行動を始めることがわかっています。
(特に運動、健康、生活向上に関して)
また、オールター、ハーシュフィールドらの研究では
・9で終わる歳(19、29、39、etc)
のタイミングで人生の大きな決断をする可能性が高いことがわかっています。
応用
告知のタイミングを上記のタイミングに合わせるようにして見ましょう。
ユーザーの生年月日がわかっているならば、「9」の歳の人だけに告知を打ってみても良いと思います。
続・インタフェースデザインの心理学 ─ウェブやアプリに新たな視点をもたらす+100の指針
性別で変わる好み
カタリナ・ライネケ、クライストフ・ガジョスが行った研究では以下のことがわかっています。
この研究では、多様な背景の約4万人の被験者からデータを収集し分析をしています。
全体的なデザインを決める上で参考となるでしょう。
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アンカリング効果
アンカリング効果とは、最初もしくは同時に提示された情報(特徴や数値(価格))が印象に強く残ってしまい、意思決定や判断に影響をおよぼす傾向のことです。
また、最初にみる数字と後に見る数字に関係性がなくてもアンカリング効果が働くことがわかっています。
応用
例えば価格を表示するUIを考える際に、ユーザーの購入価格をあげたい場合は価格が多きものから並べるのが良いでしょう。サービスや商品の価格が高いものから並べられていると購入価格が高くなる傾向にあることがわかっています。(トベルスキーとカーネマンの研究)
商品価格を見せる前に購入者数、お気に入り登録者数などの大きな数字を見せるのも良いでしょう。より多くのものを買ってくれるようになるでしょう。
人の目効果
視線追跡データに基づいた研究から、人の視線は写真に映る人の視線や、矢印の方向に影響を受けることがわかっています。
(以下の論文が参考になります :
Eye gaze cannot be ignored (but neither can arrows). = 視線や矢印は無視できない)、
ヒトの視線と矢印記号による視覚的注意喚起
また、見るだけではなく、そこからアクションまでつなげるにはどんな画像が有効なのかを研究したものとして、Conversion Voodoo社のジョン・コレルのA/Bテストがあります。
この実験では、「人に行動させるには、ある場所を見させるよりも感情を伝える方が効果的である」という仮説の検証のため、人の写真だけを変更したLPを10パターン準備し、15万人の閲覧者に対して実験を行いました。
その結果わかったこと
(CTAとはサイトで訪問者を、とってもらいたい行動に誘導することを意味し、多くの場合はボタンやリンクの形で表示される。)
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おわりに
心理学、行動経済学の実験は興味深く、探求心をくすぐるものが多いですね!
より良いプロダクトを作っていきましょう!!