TL;DR
料理の作り方を通してエンジニアリングについて考えてみました。結果として麻婆豆腐のレシピもあります。
エンジニアリングとは
単に麻婆豆腐を作りたいだけならば、市販の麻婆豆腐の素を買ってくればいいだけです。調理も簡単です。
麻婆豆腐の素は決して食べられないわけではありません。むしろ無難な味です。しかし、ただ辛いだけで旨味がなかったり、豆腐にあんかけを絡めたみたいな味付けになったりしてるものが多いです。これは本当に顧客が求めていたものなのでしょうか?あまり味わえない、パンチの効いた麻婆豆腐をスケーラブルに作りたいとは思いませんか?
例えば、こういう記事があります。
これの良いところは本場仕込みの麻婆豆腐の料理法の手順を1つ1つ理由づけて説明してるところです。そして単においしいだけじゃなく、手に入りにくい食材は使わないなど実用性も考えています。しかし、「分量はフィーリングで良い」という発言が気になります。
そもそも、エンジニアリングとはなんなのでしょうか?この人の言う「分量はフィーリングで良い」は料理に熟練した人間だから言えることです。本当に下手な人、経験のない人はフィーリングでとんでもないものを作ってしまいます。私はエンジニアリングとは技術で解決することだと思っていて、職人の経験のような属人的なものに頼るのは下策です。あなたも「運用でカバー」というのは嫌いですよね。それに自分の環境になると動かないコードもダメです。再現性、つまり誰がやってもできることが重要です。いわゆる「おまじない」やコピペコードで走らせたら動いた、みたいな使い方も避けるべきで、工程と目的を関連付けることも大切です。
何度も微調整を繰り返してこのような要件を満たした麻婆豆腐作成法のベストプラクティスを見つけたので公開します。
以下の動画も参考にしています。
https://www.youtube.com/watch?v=USoC8AqirVA
材料・道具
挽き肉(牛肉でも、豚肉や合い挽き肉でもいいです) 100 g
中華スープの素 適量
にんにく大きめの1かけら
生姜1かけら(にんにくと同じくらいの量)
食用油 100 cc
木綿豆腐1パック(350g程度)
にんにくの芽1本または2本
唐辛子・花椒それぞれ1つかみくらい
泡辣醤小さじ1杯
豆板醤小さじ1杯
豆鼓大さじ1杯 (または豆鼓醤 小さじ2杯)
老抽小さじ2杯 (なければ普通の醤油)
砂糖大さじ1杯
片栗粉 適量
ネギ油大さじ1杯
麻婆豆腐は木綿豆腐派と絹豆腐派がいると思いますが、この方法では木綿豆腐が適しています。また、花椒や泡辣醤といった中華料理用の調味料は、近くのスーパーには売ってないかも知れませんが、アマゾンでは買うことができます。
手順
エンジニアリングの観点から、運用でカバーすることはなるべく避けるべきです。中華鍋は効率よく料理できますが、エンジニア個人の熟練に依存してしまうので普通のフライパンとお玉、そして文化包丁だけで作ります。この方法は、豆腐を煮込む場面を除いてじっくり時間を掛けたりしません。あらかじめ材料を用意して、素早くやると良いでしょう。
お玉の容積を測ってください。容積を知っておくことで、あとでスープを投入する時に素早く適量入れることができます。水50ccと100ccを入れたときにどれくらいの水位になるかを覚えておいてください。
麻辣味を調整するために刀口辣椒を作ります。唐辛子を2~3個にちぎって、中の種を取り除きます。フライパンに油を引いて、唐辛子と花椒を入れて軽く煎ります。乾燥しているのでこれらはすぐ焦げます。強火でせいぜい30秒くらいの加熱で十分だと思います。加熱されるとむわっと香りが立つのでそこで止めてください。加熱すると辛さが少しマイルドになりますが、黒く焦げると苦味が強くなるので、焦がさないように気をつけてください。
軽く炒めたら、フライパンから取り出して、冷ましてから包丁で唐辛子と花山椒を細かく刻みます。包丁でやるとどうしても飛び散りますが、現状解決策は思いつきません。ミキサーがあれば楽でしょう。一度に使うのは大さじ2杯程度なので、余ったぶんはタッパなどに保管するといいでしょう。冷蔵庫に入れれば半年くらい持つと思います。
中華スープの素の注意書きをよく読んで、200cc程度の水に適量を溶かして加熱してください。実際に使用するのは100ccだけですが、加熱中に蒸発するため、200cc
ほど作ってください。余ったぶんはそのまま中華スープとして飲めるので多めに作っても無駄になりません。コンロが複数あれば同時進行できますが、ない場合は湯沸かし器などを使って、直前まで高温を保ってください。どうしても大変なら、代わりに熱湯を使ってください。味は薄くなりますが。食材を切ります。豆腐、にんにく、生姜、にんにくの芽の順番で切ります。豆腐は1~1.5cm四方になるように切ります。にんにくと生姜は均等に細かく刻むより、粗く切ったほうが食感を楽しめます。最初に紹介したページだと斜めに切るのが良いと書いていますが、にんにくの芽は生だと筋っぽくて、大きく切ると食感がよくないのでみじん切りにすれば断面積が増えていいと思います。肉は挽き肉ですが、塊を包丁でミンチにするのも良いです。その場合、にんにくの芽は生のまま使うので、衛生上の観点から肉を切るのは最後にしたほうがいいと思います。
フライパンに油100ccを投入し、加熱します。10ccの書き間違いではないです。100cc投入してください。サラダ油で大丈夫です。
少し湯気が出てきたら、強火にして肉を投入します。お玉で叩いてほぐしてかきまぜてまんべんなく火が通るようにしてください。全体的に褐色になったらすぐに次に進んでください。強火なのでもたもたしていると焦げてしまいます。
3で作った刀口辣椒を大さじ1杯投入して、かき混ぜます。強火なので、軽く炒めてすぐ次の工程に移ってください。
4の中華スープを100cc投入します。お玉の容積を測っておけば、速やかに適量投入しかき混ぜます。十分に加熱しておき、入れた瞬間ジュワッと音がして激しく湯気が出れば成功です。これはペペロンチーノのソースと同じで、乳化によって油と水をよく混ぜるためです。
中火にして、砂糖と老抽を入れてかき混ぜます。砂糖は好みに応じて量を調整してください。老抽は中国の醤油で、日本で言うたまり醤油に近い製法で甘く、味付けというより色付けの目的が強く、豆板醤と泡辣醤だけでは濃い赤色にならないので醤油を少々加える必要があり、老抽ではなく日本の薄口醤油などでもあまり差はありません。
豆腐を投入します。
かき混ぜて豆腐と油をなじませます。お玉の下で軽く押すようにかき混ぜると崩れにくいです。絹豆腐を使った場合、崩さずにかき混ぜるのと盛り付けるのが難しいので木綿豆腐を使っています。画像は絹豆腐を使った場合です
3分ほど煮込みます。激しく沸騰しすぎないように、火勢を弱めてください。
片栗粉小さじ半分を50ccの水に溶かして投入して、軽くかき混ぜます。火を弱めたままなので、ここで初めて水に溶いても間に合いますが自信がない場合はあらかじめ用意してください。
片栗粉小さじ1杯を50ccの水に溶かして、フライパンを火から離して沸騰しなくなったタイミングで投入して軽くかき混ぜます。これは片栗粉が溶け切らないうちに熱で固まるのを防ぐ意味があります。
片栗粉小さじ大盛りを50ccの水に溶かして、フライパンを火から離して沸騰しなくなったタイミングで投入して軽くかき混ぜます。ここまでで3回に分けたのは、片栗粉がうまく混ざるようにするためです。
皿に盛り付けてから、刀口辣椒を大さじ1杯とニンニクの芽をふりかけます。辛いのが苦手な場合、刀口辣椒を減らして辛さを調節してください。
これで普段食べるあんかけのような麻婆豆腐とは食感も味も異なる中華料理店で出てくるような麻婆豆腐ができるはずです。
市販の麻婆豆腐の素を使った場合と比較してみましょう。
食べ比べるとわかります。市販品だとどうしてもあんかけみたいになって味も辛さばかりで旨味が感じられません。念の為調味料だけ麻婆豆腐の素に置換して今回の方法で作ってみましたがやっぱり旨味が物足りない味でした。今回作った麻婆豆腐は、味が濃厚なので豆臭い木綿豆腐に力負けしていません。
まとめ
いかがでしたか?以上の手順で作ればあなたでも同じ料理ができるはずです。自分なりにチューニングすることで、ニーズに応じて味を好きなように変えることもできたりします。これで料理を通してエンジニアリングを分かっていただけたと思います。ですが課題もあって、この麻婆豆腐は油と辛味が多すぎるので、今回のために食べ続けた結果お腹を壊しました。料理はエンジニアリングですが、料理を医療にするのはまだ難しいようです。なにはともあれ、これを参考にPOCをしていただけると幸いです!