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COVID-19と社会とあなた — データサイエンスの視点から

Last updated at Posted at 2020-03-15

この投稿は"Covid-19, your community, and you — a data science perspective"を日本語に翻訳したものです。レヴュワー及びMachine Learning Tokyoのご協力に感謝します。

著:ジェレミー・ハワード & レイチェル・トーマス、2020年3月9日
原文:https://www.fast.ai/2020/03/09/coronavirus/
日本語訳(2020年3月14日時点の原文に基づく):神沢 雄大 @yutakanzawa
日本語訳レヴュー:森 浩貴 @hrkmr_tech(2020年3月17日)

私たちはデータサイエンティストである — それはつまり、私たちの仕事はデータを分析し解釈する方法を理解することです。私たちは新型コロナ、COVID-19に関するデータを分析し、その結果を非常に懸念しています。高齢者や貧困層といった社会の最も脆い部分が最も危険にさらされていますが、この疾病の広がりと影響をコントロールするには私たち全員が行動を変えることが必要です。しっかりと繰り返し手を洗い、集団や人混みを避け、イベントをキャンセルし、そして顔を触らないようにしないといけません。この投稿では、私たちが懸念している理由と、あなたもそうすべき理由を説明します。あなたが知るべき重要な情報を非常によくまとめたものとして、イーサン・アレイ(パンデミックによるリスクを低減させる技術を開発しているNPOの代表)による『新型コロナの概要』を読んで下さい。

翻訳

誰でもこの記事を翻訳して、自分の地域の人々が問題を理解するのを助けることができます。適切なクレジットをつけて、元の記事にリンクを貼って下さい。Twitterで知らせてもらえれば以下のリストにあなたの翻訳を加えます。

目次

  • 機能する医療システムが必要
  • インフルエンザとは違う
  • 「パニクるな。落ち着け。」はムダ
  • あなただけの問題ではない
  • 曲線を低くしなければならない
  • 社会の対応が状況を一変させる
  • アメリカには正確な情報がない
  • まとめ

機能する医療システムが必要

2年余り前に、私たちの1人(レイチェル)が脳の感染症に罹りました。その病は、罹患者の4分の1を死に至らしめ、3分の1に恒久的な認知障害を残します。その他の多くの患者には恒久的な視覚と聴覚の障害が残ります。レイチェルは病院の駐車場をのろのろ歩いていた時には意識が混濁した状態でした。幸運にも彼女は迅速な処置と診断と治療を受けることができました。緊急治療室にすぐに入れたことがほぼ間違いなく彼女の命を救いました。

さて、COVID-19と、今後数週間、数ヶ月の間にレイチェルのような状況に陥った人々に何が起こり得るか、を議論しましょう。COVID-19に感染していると判明した人の数は3日から6日ごとに倍増しています。3日で倍になるとすると、感染者数は3週間で100倍になります(実際にはこれほど単純ではないですが、細かい点は脇に置いておきましょう)。感染者の10人に1人が何週間も入院が必要で、その多くが酸素吸入を必要とします。今はこのウィルスの伝染の初期段階ですが、既に、病院が完全に定員を超過している地域があり、必要とする治療を受けられない人々(COVID-19に限らず、レイチェルが必要とした救命処置のような他の全てについても)がいます。例えば、イタリアでは、1週間前には当局者は全て大丈夫だといっていましたが、今や1600万人が封鎖状態に置かれ(アップデート:これを投稿した6時間後にイタリア全土が封鎖状態に置かれました)、患者の流入に対処する手助けとしてこの写真のようなテントが設営されています:

イタリアで使用されている医療テント
イタリアで使用されている医療テント

イタリアの感染拡大が激しい地方の地域危機対応ユニットの長である、アントニオ・ぺゼンティ医師は、「私たちは今や集中治療室を病院の廊下や手術室や回復室に設営せざるを得ません。(中略)世界の中で最も優れた医療システムの1つが、ロンバルディア州においては崩壊の瀬戸際にあります。」と述べました

インフルエンザとは違う

インフルエンザの死亡率は感染者の約0.1%です。ハーバード大学感染症力学センターの長であるマーク・リプシッチは、COVID-19については1-2%になると推定しています最新の疫学モデルでは中国において2月に1.6%となり、これはインフルエンザの16倍高い値です 1(しかし、これは非常に控えめな数字かも知れません。なぜなら医療システムが対処しきれなくなると、値が大幅に上昇するからです)。現時点の最も正確な推定では、COVID-19はインフルエンザの10倍の人々を今年死に至らしめると想定されています(そして、Airbnbの元データサイエンスディレクターであるエレナ・グリーワルによるモデル化では最悪の場合インフルエンザの100倍になり得ることが示されています)。これは、上で述べたような医療システムへの大きな影響を考慮する前の値です。COVID-19は新しいものではなくインフルエンザによく似た病気だと自分を納得させようとしている人がいることは理解できます。なぜなら、全く未知のものだという現実を受け入れることは非常に心地良くないからです。

感染者数の指数関数的な増加を直感的に理解しようとすることは、私たちの頭に本来備わった機能で対処できることではありません。だから、私たちは直感を使うのではなく、科学者として分析しなければなりません。

今後2週間でどうなる?2ヶ月では?
今後2週間でどうなる?2ヶ月では?

平均して、インフルエンザに感染している人は、他の1.3人に感染させます。それがインフルエンザの「R0」と呼ばれる値です。もしR0が1.0未満なら、感染は拡大が止まり終息します。もしそれが1.0超なら、感染が拡大します。中国以外におけるCOVID-19のR0は現在2から3です。差は小さいように聞こえますが、20“世代”にわたり感染者が他の人を感染させていった後では、R0が1.3なら感染者数は146人ですが、R0が2.5なら3600万人に達し得ます!(これは、もちろん、大雑把なもので現実世界の影響を無視しています。しかし、他の条件が同じだとした場合のCOVID-19とインフルエンザとの相対的な違いの合理的な説明です。)

R0は疾病の基本的特性ではないということに注意して下さい。R0は疾病への対応に大きく左右されますし、時間とともに変化する可能性があります2。最も特筆すべきことに、中国におけるCOVID-19のR0は大幅に低下していて、今や1.0に近づいています!どうやって?と疑問になるでしょう。アメリカのような国においては想像しがたい規模で対策を講ずることによってです。例えば、多くの大都市を完全に閉鎖することや、1週間に100万人以上が検査を受けられる検査プロセスを開発することです。

ソーシャルメディア(イーロン・マスクのようなフォロワーの多いアカウントを含む)に大量に出てくるのが、ロジスティック関数的な増加と指数関数的な増加の違いについての誤解です。「ロジスティック関数的」な増加とは実際の感染拡大の「S字型」の増加パターンを指します。明らかに、指数関数的な増加は永久には続きません。なぜなら、もし指数関数的な増加が止まらなければ、感染者数が世界の人口を超えることになってしまうからです!だから、最終的には、感染率は必ず減少し、時間とともにS字型(シグモイドと呼ばれます)の増加をします。しかしながら、増加の鈍化は原因があって起こります — 魔法ではありません。主な原因は次の通りです:

  • 大規模かつ効果的な社会的対応、または
  • 人口の大半が感染していて、疾病が拡大する先の非感染者がほとんどいない。

だから、パンデミックを「コントロール」する方法としてロジスティック関数的な増加パターンに頼るのは論理的に全く意味をなしません。

他に、あなたの地域におけるCOVID-19の影響を直感的に理解するのを難しくしているのは、感染と入院との間に非常に大きな時間差があることです — 大まかには約11日です。これは長い期間だとは思わないかも知れません。しかし、その期間に感染する人々の数に例えると、病院のベッドが満員だと気づく頃には既に処置が必要な人が5〜10倍いるレベルで地域の感染が拡大していることを意味します。

あなたの地域における影響は少なくともある程度は気候により左右されるといういくつかの初期の兆候があることに注意して下さい。『COVID-19の潜在的拡散と季節性の予測のための気温と緯度の分析』という論文は、この疾病がこれまで温暖な気候で広がってきていると指摘しています(私たちにとって不運なことに、私たちの住んでいるサンフランシスコの気温の範囲はちょうどその範囲です。そして、ロンドンを含むヨーロッパの主な人口集中地域もその範囲内です)。

「パニクるな。落ち着け。」はムダ

ソーシャルメディアで見られる、状況を憂慮すべき理由を指摘する人々に対するよくある反応は、「パニクるな」や「落ち着け」です。これは、控えめに言って、ムダです。パニックが適切な反応だと言っている人はいません。しかしながら、どういうわけか、「落ち着け」はある種のグループにおいて非常によくある反応です(しかし絶対に疫学者のグループではありません。こういう疾病を監視するのが彼らの仕事です)。もしかすると「落ち着け」と言われると、自分は何もしないことに自信を持ったり、この状況に右往左往していると思われる人々に対してどことなく優越感を持ったりする人々がいるのかも知れません。

しかし、「落ち着け」は準備と対応の失敗へと容易につながります。今のアメリカの統計値に中国が達した時点では、中国では何千万人もの人々が封鎖状態に置かれて新たに2つの病院が建設されました。イタリアは長く待ち過ぎて、1600万人を封鎖状態に置いたにも関わらず、ちょうど今日(3月8日日曜日)1492人の感染と133人の死亡を新たに発表しました。現段階で私たちが確かめられる最も正確な情報に基づくと、たった2、3週間前のイタリアが、正に今のアメリカとイギリスの状態です(感染の統計値の点で)。

現段階でCOVID-19に関するほぼ全てのことがはっきりしていないということに注意して下さい。その感染スピードや死亡率は正確には分かりませんし、物の表面でどのくらい長く生きていられるのか分かりませんし、暖かい環境下で生存し拡散するのかどうか分かりません。私たちに分かっていることは全て、集められる限りの正確な情報に基づく現時点で最も正確な推測です。そして、その情報の大多数は中国において中国語によるものだということを忘れないで下さい。現時点で、中国の経験を理解する最も良い方法は、賞賛すべき内容の『2019年コロナウィルス症に関するWHOと中国の合同ミッションの報告』を読むことです。それは、中国、ドイツ、日本、韓国、ナイジェリア、ロシア、シンガポール、アメリカ合衆国そして世界保健機関(WHO)といった25ヶ国の専門家の合同ミッションに基づいたものです。

不確実ながらも、この状況が世界的なパンデミックにはならず、そしてもしかしたら医療システムが崩壊せずに全てやり過ごせるかも知れませんが、それは、何もしないことが正しい対応だということは意味しません。何もしないことは、大きな賭けのようなもので脅威対策のどんなシナリオにおいても最適な対応ではあり得ません。また、イタリアや中国のような国が何のまともな理由もなくその経済活動の大部分を実質的に停止するということはほぼあり得ません。更に、何もしないことは感染地域の現場において私たちが目撃している実際の影響とは相入れません。その地域では医療システムが対処しきれていません(例えば、イタリアではテント462張が「事前トリアージ」に使われ、そして更にICU患者を感染地域から移さなければなりません)。

代わりに、思慮深くて合理的な対応とは感染を広めるのを避けるために専門家の勧める手順に従うことです:

  • 大きな集団や人混みを避ける
  • イベントをキャンセルする
  • なるべく在宅勤務をする
  • 帰宅する時と外出する時には手を洗う、そして外出中は頻繁に。
  • 自分の顔を触るのを避ける、特に自宅以外にいる時は(簡単ではないけど!)
  • 物の表面と包装を殺菌する(このウィルスは物の表面で9日間は生きていられる可能性があります。ただし、生きていられるかどうかまだ確実に分かっていませんが)。

あなただけの問題ではない

もしあなたが50歳未満で、かつ、免疫不全、循環器疾患、喫煙歴、その他の慢性疾患といったリスク要因を持っていなければ、その場合にはCOVID-19があなたを死に至らしめる可能性は低いと安心することができます。しかし、あなたがどのように対応するかがそれでもなお重要です。死ぬ可能性は低いとしてもあなたが感染する可能性は高く、そしてもしそうなったら、他の人を感染させる可能性が高いです。平均して、1人の感染者は他の2人以上を感染させますし、その人たちは症状が出るより前に他の人を感染させる状態になります。もしあなたが面倒を見ている親や祖父母がいて、彼らと一緒に過ごすつもりで、後になってあなたが彼らをCOVID-19に感染させてしまったと分かったら、それは一生背負って生きていくには辛いことでしょう。

たとえ、あなたが50歳以上の人に会わないとしても、あなたの同僚や知り合いには慢性疾患を持っている人があなたが知っているよりも多くいる可能性が高いです。ある研究によると、もし避けられるのであれば職場で自分の健康状態を明らかにする人はほとんどいません。それは、差別されるのを恐れるからです。著者の私たち2人ともがリスクの高い健康状態ですが、よく会う人でもそのことを知らないかも知れません。

そしてもちろん、あなたのすぐそばにいる人々だけの問題ではありません。これは非常に重要な倫理的論点です。1人1人がこのウィルスの拡散をコントロールすることにできるだけ貢献することが、社会全体が感染率を鈍化させるのに役立ちます。ゼネップ・テュフェクチがサイエンティフィック・アメリカンに寄稿したように:「ほぼ避けられないこのウィルスの世界的な感染拡大に備えることは(中略)あなたができる最も社会に役立つ利他的なことの1つです」。彼女はこう続けています:

私たちは備えるべきですが、個人的にリスクを感じるかも知れないからではなく、みんなのリスクを下げる手助けをできるようにするためです。私たちは備えるべきですが、コントロールを失って最悪の事態に直面するからではなく、私たちが社会として直面しているこのリスクの全ての局面を自分で変えられるからです。そうです、あなたが備えるべきなのは、あなたが備えることをあなたの近所の人が必要としているからです。特に、高齢の人、病院で働く人、慢性疾患のある人、そして、お金がないか忙しくて準備する手段や時間がない近所の人のために。

これは著者の私たちに自分のこととして響きました。私たちがfast.aiで作ってきた中で最も大きく最も重要な授業、それは私たちにとって何年もの活動の頂点を示すもの、があと1週間でサンフランシスコ大学で開講する予定でした。先週の水曜日(3月4日)、私たちは全てをオンラインに変更することを決めました。私たちはオンラインに変更することにした最初の大きな授業の1つでした。なぜそうしたのでしょうか?理由は、先週初めに、もしこの授業を行えば、密閉された空間に何週間にもわたって何度も集合するよう何百人もの人を暗黙のうちに促していると気づいたからです。集団を密閉された空間に集めることは、ずば抜けて最悪な行いです。少なくともこのケースにおいては、それが起こらないようにしなければならないという倫理的な義務を感じました。断腸の思いで決断しました。学生たちと直接一緒に授業を作り上げた時間は、毎年すごく楽しいことの1つで最も生産的な期間でした。そして、世界中からやってくる学生がいて、彼らを絶対にがっかりさせたくないと思っていました3

しかし、それが正しいことだと分かっていました。なぜなら、そうしなければ私たちの地域でこの病気の拡散を私たちが大きくしてしまう可能性があるからです4

曲線を低くしなければならない

これは大変に重要なことです。なぜなら、もし地域における感染率を鈍化させられれば、感染者と、もともと治療しなければならない一定数の患者の両方に対処する時間をそこの病院に与えることができるからです。その鈍化は「曲線を低くすること」というように言い表されますが、それはこのイメージ図を見れば明らかです:

この点線の下に留まることが重要
この点線の下に留まることが重要

元ヘルスIT担当全国調整官であるファザード・モスタシャリはこう説明しました:「渡航歴や既存例との繋がりがない新たな感染例が毎日発見されていて、それらはほんの氷山の一角に過ぎないと分かっています。なぜなら、検査の遅れがあるからです。それが意味するのは、今後2週間のうちに診断が確定した感染例の数が爆発的に増えるだろうということです。(中略)指数関数的な市中感染の拡散がある時に感染を封じ込めようとすることは、家が火事の時に火の粉を消すことに集中するようなものです。そうなると、緩和戦略へ切り替えねばなりません。つまり、拡散を遅らせてピーク時の医療への影響を軽減する防御策を取ることです」。もし病院が負荷に対処できるくらい十分に低く病気の拡散を抑えることができれば、人々が治療を受けることができるのです。しかしもし症例数が早く積み上がると、入院が必要な人が入院できなくなるでしょう。

リズ・スペクトによると、次のように概算できるようです:

アメリカには1000人あたり2.8病床があります。人口を3億3000万人とすると、これは約100万床になります。常に、これらの病床の65%には既に人がいます。すると残り約33万床が全国で利用可能です(もしかするといつものインフルエンザシーズンなどで1年のこの時季にはやや少ないかも知れません)。イタリアの数字を信用することにして、感染例の約10%が入院が必要なほど重篤になると仮定しましょう。(多くの患者にとって入院は何週間も続くということを覚えておきましょう。言い換えると、COVID-19患者で病床が一杯になるにつれて、入れ替わりが非常にゆっくりになるでしょう)。この見積もりによると、5月8日頃までに、アメリカの全ての空き病床が満員になります。(もちろん、これらの病床が非常に感染力のあるウィルスに感染した患者を隔離するのに適しているかどうかについては言及していません)。もし重症例の割合について2倍の範囲で間違えているとしても、病床が満員になるのが6日前後するだけです。もし感染例の20%が入院が必要なら、病床は5月2日頃までに足りなくなります。もし感染例の5%だけが入院が必要なら、5月14日頃まではなんとかなるでしょう。2.5%なら5月20日までです。もちろんこれは、他の(COVID-19以外の)原因による入院が一切増加しないことを仮定していますが、それは心もとない仮定に思われます。医療システムにますます負荷がかかり、処方薬が不足したりなどするにつれて、通常はよく管理されていた慢性疾患のある人々が深刻な医療サービス不足の状態に陥り集中治療と入院が必要になるかも知れません。

社会の対応が状況を一変させる

これまで議論したように、この計算は確実なものではありません — 徹底的な措置を取ることによって拡散を抑えられるということを中国は既に示しています。成功した対応のもう1つの非常に良い例はベトナムです。ベトナムでは、他の措置に加えて、全国規模の広告キャンペーン(覚えやすい歌も!)が即座に社会の反応を引き起こし、人々が行動を適切に調整するのを確実にしました。

これは単に仮想の状況ではありません — 1918年のインフルエンザパンデミックにおいてはっきりと示されました。アメリカにおいて、2つの都市がパンデミックに対して全く異なる対応をとりました:フィラデルフィアは戦費調達(訳注:第1次世界大戦)を支援するための20万人の大パレードを挙行しました。しかしセントルイスは、全ての大きなイベントをキャンセルすると同時に、ウィルスの拡散を抑えるべく人と人の接触を最小限にするよう入念に設計されたプロセスを導入しました。それぞれの都市における死亡数は次の通りで、これは全国科学アカデミー会報に載っているものです:

1918年のインフルエンザパンデミックへの対応の違いによる影響

1918年のインフルエンザパンデミックへの対応の違いによる影響

フィラデルフィアにおける状況は激しく悲惨なものになり、ついには棺おけや遺体安置所が不足してインフルエンザによる非常に多くの死者に対処しきれないところまで達しました。

2009年のH1N1パンデミックの際に疾病管理予防センターの局長代行だったリチャード・ベッサーは、アメリカにおいて「ウィルスにさらされるリスクと自分と家族を守る能力は収入と医療アクセス、そして在留資格、その他の要因で決まる」と述べています。彼は次のように指摘しています:

高齢者と障害者の日常生活や支援システムが破壊されると、彼らは際立った危険にさらされます。地方あるいはネイティヴアメリカンの居留地を含む、たやすく医療へアクセスできない人々は必要な時に恐ろしいギャップに直面するかも知れません。狭苦しい場所 — 公共住宅、介護施設、刑務所、シェルターまたは通りのホームレスさえも — に住む人々は感染の波に苦しむかも知れません。これは既にワシントン州で見られています。そして、非正規雇用の労働者と不安定な労働スケジュールといった低賃金のギグエコノミーの脆弱さがこの危機の間に全て顕在化するでしょう。時間給を受け取っているアメリカの労働者の60%に、必要な時に休みを取るのがどのくらい簡単か聞いてみて下さい。

アメリカ労働統計局は最低賃金帯の労働者の3分の1未満しか有給の病気休暇を得られないと示しています:

最も貧しいアメリカ人は病気休暇を持っていないので、仕事に行くしかない。
最も貧しいアメリカ人は病気休暇を持っていないので、仕事に行くしかない。

アメリカには正確な情報がない

アメリカにおける大きな問題の1つは、ごくわずかの検査しか行われておらず、検査結果が適切に共有されていないということです。それは、実際には何が起きているのか分からないということを意味します。前FDA長官のスコット・ゴットリーブはシアトルでは他より十分に検査が行われていて、感染が観測されていると説明しています:「シアトルでのCOVID-19の大流行を早くに把握できた理由は、独立した科学者によって見張り調査が行われたことです。そのような調査は他の都市では今まで完全には行われませんでした。だから、アメリカの他の流行地域はまだ全部は見つかっていないのかも知れません」。アトランティックによると、マイク・ペンス副大統領は「おおよそ150万件の検査」を今週可能にすると約束しましたが、現時点ではアメリカ全体でこれまで2000人未満しか検査されていません。COVID追跡プロジェクトの成果を利用して、アトランティックのロビンソン・マイヤーとアレクシス・マドリガルは次のように述べています:

私たちが集めた数字は、新型コロナウィルスとそれが引き起こす病気COVID-19へのアメリカの対応は、特に他の先進国の対応に比べて驚くほど遅いものでした。CDCは8日前にウィルスがアメリカにおいて市中感染の状態にあると確認しました — つまり、国外渡航歴もないし渡航歴のある人との接触もないアメリカ人がウィルスに感染しているということです。韓国では、市中感染の最初のケースから1週間以内に66,650人を超える人々が検査され、すぐに1日に1万人を検査できるようになりました。

この問題の一部は、このことが政治的な論点になったということです。とりわけ、ドナルド・トランプ大統領が「数字」(つまり、アメリカにおける感染者数)が低く保たれているのを見たいと明言しました。これは、指標を最適化することが実際には良い結果を得ることを妨げている例です。(この論点について詳しく知りたければ、データサイエンスの倫理に関する論文『指標に関する問題は人工知能にとって根本的問題である』を見て下さい)。グーグルの人工知能部門のトップであるジェフ・ディーンはツイートの中で政治色の濃いデマの問題に懸念を示しました:

私がWHOで働いていた時、HIV/AIDSのパンデミックに世界が立ち向かうのを助けるために創設された世界エイズ計画(今のUNAIDS)の一員でした。そのスタッフは献身的な医師と科学者で、その危機への対処を手助けすることに特に重点を置いていました。危機の時には、全ての人(国や州や地方の政府、企業、NGO、学校、家族、そして個人)が対応策について適切かつ情報に基づいた判断ができるようにするために、明確で正確な情報が必須です。医療と科学の一番の専門家に耳を傾けて正しい情報と政策を整えれば、私たち全員がHIV/AIDSやCOVID-19によって示されるような課題を乗り越えられるでしょう。政治的な利害に基づいたデマがあると、パンデミックが拡大するのに直面しても迅速かつ断固とした行動をとることをせず、そして実際にはより早く病気を広めてしまう行動を促すことにより、状況をずっと、ずっと悪化させてしまう現実的リスクがあります。この状況全体が展開を見守るにはすごく耐えがたいものです。

透明性のことになると、事態を好転させるような政治的意思があるようには思えません。アレックス・アザー保健福祉長官は、Wiredによると、「患者が新型コロナウィルスに感染しているかどうか決定するために医療従事者が使う検査について話し始めました。検査キットがないことは、アメリカにおけるこの病気の広がりと重症度についての疫学情報がない危険な状態を意味していますが、それは政府側の不透明さによって悪化しました。より多くの検査が将来行われるが品質管理は保留にするとアザーは述べました」。しかし、同誌はこう続けています:

その時トランプがアザーに割って入りました。「しかし私が思うに、大事なことですが、誰でも、今すぐにそして昨日、検査が必要な人は検査を受けています。その人たちはそこにいて、検査を受け、そして検査は素晴らしいものです。誰でも検査が必要な人が検査を受けているのです」とトランプは述べました。それは不正確です。ペンス副大統領が木曜日に記者陣に、アメリカには必要とされる数に見合うだけの検査キットがないと述べています。

他の国はアメリカよりもずっと早く大きく対応しています、東南アジアの多くの国が非常に良い結果を示しています。台湾(訳注:正しくは東アジア)ではR0が今や0.3まで下がっていますし、シンガポールはCOVID-19対応のモデルとして提唱されています。しかしアジアだけではありません。フランスでは、例えば、1000人を超えるいかなる集会も禁止され、3つの地域において今や学校が休校しています。

まとめ

COVID-19は重大な社会的問題です。そして私たちはこの病気の拡散を抑えるあらゆる努力をすることができますし、それをすべきです。つまり:

  • 大きな集団や人混みを避ける
  • イベントをキャンセルする
  • なるべく在宅勤務をする
  • 帰宅する時と外出する時には手を洗う、そして外出中は頻繁に
  • 自分の顔を触るのを避ける、特に自宅以外にいる時は

注: 大急ぎでこの記事を発表したので、参照した記事の引用やクレジットを普段ほどは入念にしていません。もし何か漏れがあればお知らせ下さい。

フィードバックとコメントをしてくれたシルヴァン・グッガーとアレクシス・ギャラガーに感謝します。

脚注

(脚注の ↩ をクリックすると元の場所に戻ります。)

  1. 疫学者とは疾病の広がりを研究する人々です。死亡率やR0のようなものを推定するのは実際には非常に難しいことなので、それを専門に行う大きな分野があるのです。単純な比率や統計を使ってCOVID-19の振る舞いを説明する人々には用心して下さい。代わりに、疫学者がモデル化したものに注目して下さい。

  2. ただし、正確には違います。厳密に言えば「R0」は対策が全く取られない場合の感染率を指します。しかし、それは私たちが問題としていることではないので、ここでは定義についてはやや雑なままにしておきます。

  3. この決定により、当初予定された対面授業よりも良いオンライン授業を実施する方策を一生懸命に探し回りました。世界中の誰でも参加できるようにし、毎日オンライン学習とプロジェクトグループを行う予定です。

  4. 他にライフスタイルについてもいくつか小さな変更をしました。ジムに行く代わりに家で運動をしたり、全てのミーティングをオンラインに変更したり、楽しみにしていた夜遊びを欠席したり、などです。

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