新人エンジニアは「デーモン」がわからない ~ 3. Pythonでデーモンを作るとどんな感じ？~

はじめに

やっとPythonでデーモンを作るところまで来ました〜。
サクッと行ってみましょ〜。

Pythonでデーモンを書く

✅ Pythonでデーモンを作る「要点」

項目	内容
1. forkで親子分離	プロセスを2つに分けて親を終了し、端末との関係を切る
2. セッションの切り離し	setsid() により新しいセッションを開始（独立）
3. 標準出力・入力・エラーの切断	/dev/null などにリダイレクトする
4. 作業ディレクトリとumaskの変更	安全な初期化（例：/に移動、umask=0など）
5. 無限ループで処理待機	常駐動作の実装
6. PIDファイルやログ出力	状態を確認しやすくする

手順と解説

最小構成のデーモン

pydaemon.py

import os
import sys
import time

def daemonize():
    # 1回目のforkで親プロセスを終了
    if os.fork() > 0:
        sys.exit(0)

    # セッションを切り離す
    os.setsid()

    # 2回目のfork（セッションリーダーを回避）
    if os.fork() > 0:
        sys.exit(0)

    # カレントディレクトリをルートに変更
    os.chdir("/")
    os.umask(0)

    # 標準入出力を /dev/null に向ける
    sys.stdout.flush()
    sys.stderr.flush()
    with open('/dev/null', 'rb', 0) as f:
        os.dup2(f.fileno(), sys.stdin.fileno())
    with open('/dev/null', 'ab', 0) as f:
        os.dup2(f.fileno(), sys.stdout.fileno())
        os.dup2(f.fileno(), sys.stderr.fileno())

def main():
    # 無限ループ
    while True:
        with open("/tmp/pydaemon.log", "a") as f:
            f.write(f"{time.ctime()}: I'm alive!\n")
        time.sleep(60)

if __name__ == "__main__":
    daemonize()
    main()

解説

ステップ	処理内容	解説
os.fork()	子プロセスを作る	親を終了して端末との関係を切る
os.setsid()	新しいセッションを作る	親セッションから完全に切り離す
2回目の os.fork()	再び親を終了	セッションリーダーをやめるため（安全策）
os.chdir("/")	ルートに移動	カレントディレクトリをアンマウントから守る
os.umask(0)	umaskの初期化	セキュアなファイル作成を保証
os.dup2	標準入出力の切断	ターミナルがなくても動けるように
main()	無限ループで動作	デーモンとして常駐する処理

実行方法

python3 pydaemon.py
→ 端末には何も出ませんが、/tmp/pydaemon.log に1分ごとにログが記録されていきます。

補足：停止方法

ps aux | grep pydaemon.py
kill <PID>

あるいは pidファイル を作るようにすれば kill $(cat /var/run/pydaemon.pid) のように扱えます。

まとめ：Pythonでデーモンを作るには

必須の処理	理由
fork() → setsid() → fork()	完全な独立プロセス化
chdir("/"), umask(0)	安全な実行環境に初期化
/dev/null への入出力切断	端末切断時にも落ちないように
無限ループで処理継続	常駐プロセスとしての基本動作

PIDファイルを出力して管理できるようにする

PIDファイルを出力して kill $(cat ～.pid) で管理できるようにする方法について。

目標：

• デーモンが起動したときに 自分のプロセスID（PID）をファイルに書き出す
• 終了するときに自動でそのPIDファイルを削除する
• kill $(cat /var/run/pydaemon.pid) で簡単に停止できる

改良版：PIDファイル付き pydaemon.py

import os
import sys
import time
import atexit

# PIDファイルのパス（通常は /var/run）
PIDFILE = "/tmp/pydaemon.pid"

def daemonize():
    if os.fork() > 0:
        sys.exit(0)

    os.setsid()

    if os.fork() > 0:
        sys.exit(0)

    os.chdir("/")
    os.umask(0)

    sys.stdout.flush()
    sys.stderr.flush()
    with open('/dev/null', 'rb', 0) as f:
        os.dup2(f.fileno(), sys.stdin.fileno())
    with open('/dev/null', 'ab', 0) as f:
        os.dup2(f.fileno(), sys.stdout.fileno())
        os.dup2(f.fileno(), sys.stderr.fileno())

    # PIDファイルの作成
    with open(PIDFILE, 'w') as f:
        f.write(str(os.getpid()) + '\n')

    # 終了時にPIDファイルを削除する
    atexit.register(lambda: os.remove(PIDFILE))

def main():
    while True:
        with open("/tmp/pydaemon.log", "a") as f:
            f.write(f"{time.ctime()}: I'm alive!\n")
        time.sleep(60)

if __name__ == "__main__":
    daemonize()
    main()

実行手順

python3 pydaemon.py
→ /tmp/pydaemon.pid にプロセスIDが書き込まれます。

停止方法

kill $(cat /tmp/pydaemon.pid)

→ 終了すると、自動的に .pid ファイルも削除されます（atexit のおかげ）。

補足：パーミッションの注意

• 実際の運用では PIDファイルは /var/run/pydaemon.pid に置くのが慣習ですが、書き込みに root 権限が必要です。
• 一般ユーザーでテストする場合は /tmp/pydaemon.pid でOK。

まとめ

機能	実現方法
PIDを保存する	with open(PIDFILE, 'w') で自プロセスIDを書き出す
終了時に削除	atexit.register() でクリーンに削除
kill管理	kill $(cat PIDFILE) で確実に終了できる

systemd で本格的に運用してみよう！

ではいよいよ Pythonデーモンを systemd に登録して、Linuxのサービスとして起動(start)・停止(stop)・自動起動(enable)管理できるようにしましょう！

ゴール：

• Pythonデーモン（pydaemon.py）を systemd サービスとして登録
• systemctl start pydaemon で起動
• systemctl enable pydaemon で自動起動
• systemctl stop pydaemon で安全に停止

① スクリプトの準備

たとえば以下のように設置：

/home/youruser/pydaemon.py

忘れずに実行権限を付けておきます：

chmod +x /home/youruser/pydaemon.py

② systemd ユニットファイルの作成

sudo nano /etc/systemd/system/pydaemon.service

中身は以下のようにします：

[Unit]
Description=Python Daemon Example
After=network.target

[Service]
ExecStart=/usr/bin/python3 /home/youruser/pydaemon.py
Restart=always
User=youruser
Group=youruser

[Install]
WantedBy=multi-user.target

youruser は自分のユーザー名に置き換えてください
ExecStart は python3 のフルパス（ which python3 で確認）

③ systemd に反映

sudo systemctl daemon-reload

④ 起動してみる！

sudo systemctl start pydaemon.service

状態確認：

sudo systemctl status pydaemon.service

ログの確認（Python側がログ出力している場合）：

cat /tmp/pydaemon.log

• 自動起動設定（再起動後も常駐）

sudo systemctl enable pydaemon.service

• 停止方法

sudo systemctl stop pydaemon.service

補足：ログを journal に流したいとき

Pythonスクリプト内の標準出力／標準エラーを journald に直接出したいなら、以下のように systemd 側で設定します：

StandardOutput=journal
StandardError=journal

ただし、スクリプト側が /dev/null に dup2 していると journal に流れないので、そちらの調整が必要です。

まとめ

操作	コマンド
サービス起動	sudo systemctl start pydaemon
停止	sudo systemctl stop pydaemon
自動起動ON	sudo systemctl enable pydaemon
状態確認	sudo systemctl status pydaemon