はじめに
科学論文や解析ノートで数値と誤差を並べた表を書くことはよくありますが、そのときに 符号と誤差が混在するパターン に出会い、対応方法を考えたので共有します。
具体的には、次のようなケースです:
- 対称誤差(±)と非対称誤差(上下付き)が混ざる
- 正負の符号が混ざる
- 桁数が少し違うと列がずれて読みにくい
たとえば、こんな結果が並んでいるとき:
- $10 \pm 5$
- $-10^{+5}_{-3}$
- $10^{+5}_{-3}$
これらを1つの表に入れると、符号や誤差の表記がバラバラになり、視線で追うのに少しストレスを感じてしまいます。
よくある選択肢と課題
調べてみると、siunitx
などのパッケージを使えば、数値や ± 記号、小数点をきれいに揃えてくれる便利機能があります。
ただ、科学的な現場では次のような事情があり、設定が複雑になりがちです:
- 誤差が対称のときもあれば非対称のときもある
- ± と上下付きが同じ表に混ざる
- 一番大きい方の誤差に合わせて桁数をそろえたい場合がある
また、パッケージ依存で環境によってはエラーになることもあります。
そこで、できるだけ環境依存を避け、無理のないシンプルな方法を考えたいと思いました。
シンプルな解決策
科学の文脈では誤差はもちろん大切ですが、まずは「パッと見で数値が追いやすいこと」を優先したほうが表としては親切だと考えました。
そこで色々と試した結果、次のような方法に落ち着きました:
- 有効数字の悪い方で桁数をそろえる
-
tabular
の列を左揃え(l
)にする - 正の数値の先頭に
\phantom{+}
を入れて負の数値と桁をそろえる
コード例
\documentclass{article}
\begin{document}
\begin{tabular}{c|l}
\hline
Item & Value \\
\hline
A & $\phantom{+}10^{+5}_{-3}$ \\
B & $-10^{+5}_{-3}$ \\
C & $\phantom{+}10 \pm 5$ \\
D & $-10 \pm 5$ \\
\hline
\end{tabular}
\end{document}
出力イメージ
Item | Value |
---|---|
A | $\phantom{+}10^{+5}_{-3}$ |
B | $-10^{+5}_{-3}$ |
C | $\phantom{+}10 \pm 5$ |
D | $-10 \pm 5$ |
※正の行は実際には先頭に「見えない +」が入っていますが、出力では非表示になります。
その結果、正負で主要な数値の位置がそろって見えます。
こだわりポイント
-
\phantom{+}
は見えない+
を出力するため、正負で位置がずれない - 左揃えにすることで ± と上下付き誤差が混ざっても数値の並びが揃い、スッと読める
- 空白で代用するとフォント幅の違いで微妙にずれることがありますが、
\phantom{+}
なら常に同じ幅になりきれいにそろう(今回も単純な空白では揃わず、フォントによるスペースの取り方が原因かもしれません)
Tips:なぜ +
を隠すのか?
スペースを作る方法はいくつかあり、手前味噌ですが こちらの記事 で紹介しています。今回のケースでは \phantom{-}
でも同じ幅のスペースは作れますが、以下の理由からあえて +
を選んでいます。
-
\phantom
が外れて見えてしまっても、+
なら意味がほぼ変わらず安全(-
が残ると符号が逆転してしまう) - ソースコードを見たときに正の数値を扱っているという意図が伝わりやすい
-
+
と-
は同じ幅のフォントで出力されるため位置合わせに使いやすい(ただしすべてのフォントで保証されているわけではないかもしれません)
メリットと使いどころ
- パッケージ不要:どんな環境でも動く
- 混在に強い:± と上下付き誤差、正負が混ざっても OK
- シンプル:桁数をあらかじめそろえるだけでよい
使いどころは、論文の結果表やスライドなど、数値の見やすさを重視したいときにおすすめです。
おわりに
科学的な表では ± と非対称誤差が混在するのはよくあることですが、そのままだと数値が読み取りにくくなるため、工夫が必要だと感じました。
今回紹介した左揃え + \phantom{+}
はその一つの解決策ですが、見やすい表を作るにはまだ課題が残っています。特に、± と上下付き誤差の位置や、誤差数値そのものをそろえる方法があるとさらに視認性が上がるはずです。今後もっと良い見せ方を見つけたら、また共有したいと思います。