4
1

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

プログラミングは「設計」か「量産」か?~誤解を解き、エンジニアが目指す真の効率化~

Posted at

ビジネスの現場では、「もっと多くの機能を、もっと早く開発してほしい」という期待を耳にすることがあります。
これは、プログラミングを工場での製品製造のような「量産」作業と捉えていることから生じる誤解かもしれません。

一方で、エンジニア自身も「もっと効率的に、質の高いソフトウェアを届けたい」と常に考えています。

この記事では、まずプログラミングがなぜ単純な「量産」ではないのか、その「設計」としての側面を解説します。
そして次に、エンジニアがその「設計」を工夫することで、いかにして「量産しやすい状態」、つまり真の効率化を目指せるのかを掘り下げていきます。

なぜプログラミングは単純な「量産」ではないのか? ~エンジニア以外の方へ~

ソフトウェア開発の現場では、しばしば「人や機械を増やせば生産性が上がる」という工場モデルの発想が当てはまらないことがあります。
それは、プログラミングが本質的に以下の特性を持つ「設計」活動だからです。

思考と創造のプロセス:

プログラミングは、キーボードを叩く単純作業ではありません。
与えられた課題を深く理解し、それを解決するための論理を組み立て、最適な構造を設計し、そして初めてコードという形に落とし込む、一連の思考と創造のプロセスです。
目に見える機能の裏側には、無数の判断と選択が隠されています。

見えない部分の重要性:

ユーザーが直接触れることのない部分、例えば、将来の変更に耐えうる柔軟なアーキテクチャ、効率的なデータ処理、セキュリティの担保、そして他のエンジニアが理解しやすいコードの書き方など、これら「見えない部分」の設計がソフトウェアの品質や寿命を大きく左右します。
安易に「量産」を求めると、この見えない部分が疎かになり、後々大きな問題(技術的負債)となって跳ね返ってくることがあります。

変化への対応:

ビジネス環境やユーザーの要求は常に変化します。ソフトウェアもそれに合わせて進化し続けなければなりません。
そのためには、変更に対して柔軟に対応できる「設計」が不可欠です。場当たり的な修正を繰り返す「量産」的なアプローチでは、すぐに限界を迎え、改修が困難な、いわゆる「塩漬け」のシステムを生み出してしまいます。

つまり、プログラミングにおける「設計」とは、単に見た目や機能を作るだけでなく、将来にわたって価値を提供し続けるための土台作りなのです。

エンジニアが目指す「賢い量産」とは? ~エンジニアの皆さんへ~

プログラミングが「設計」であることは論を俟ちません。
しかし、私たちエンジニアは、その「設計」を工夫することで、開発プロセスを大幅に効率化し、「量産しやすい状態」を作り出すことも可能です。
これは、前述した単純な工場モデルの「量産」とは異なり、知的な工夫に基づいた「賢い量産」と言えるでしょう。

その鍵となるのは、やはり**「設計」**です。

ルール化とパターン化によるスコープの限定:

コーディング規約の整備、共通処理のライブラリ化、デザインパターンの適用など、開発における「ルール」を明確にし、「パターン」を見出すことで、個々のエンジニアが考えるべき範囲(スコープ)を限定します。これにより、判断に迷う時間が減り、個々のタスクに集中しやすくなります。

自動化の徹底:
パターン化された箇所や反復作業は、積極的に自動化の対象とすべきです。

コード生成:
Laravelのようなフレームワークが提供するartisanコマンド(例: php artisan make:controller TaskController --resource --model=Task)は、定型的なコードの雛形を瞬時に生成し、開発の初速を上げます。
※Laravelではbladeを使うことで簡単に自動生成コマンドを作成することができます(別記事で詳細を書きます)

テスト自動化:

パターン化された機能は、テストケースもパターン化しやすくなります。
単体テスト、結合テスト、E2Eテストを自動化することで、品質を担保しつつ、回帰テストの負担を大幅に軽減できます。一般的なテスト観点については、AIの方が網羅的な知識を持っている可能性もあり、将来的にはDevinのようなAIがテスト作成を支援することも期待されます。

CI/CD (継続的インテグレーション/継続的デリバリー):

ビルド、テスト、デプロイのパイプラインを自動化することで、手作業によるミスを防ぎ、迅速かつ安全なリリースを実現します。

生成AIの活用:

単純なコードスニペットの生成、ドキュメント作成の補助、あるいは新たな視点でのアイデア出しなど、生成AIを賢く活用することで、開発の様々なフェーズで効率化を図れます。
これらの取り組みにより、「設計」という創造的な活動の質を維持しつつ、開発プロセス全体を効率化し、ある種の「量産体制」を構築することが可能になります。
これにより、エンジニアは単純作業から解放され、よりドメイン知識が求められる高度な課題解決や、新しい技術の探求といった、本質的な業務に集中できるようになるのです。

まとめ

エンジニア以外の方へ:

プログラミングは、目に見える機能だけでなく、その裏にある複雑な「設計」によって支えられています。
短期的な開発量だけでなく、長期的な視点での品質や保守性をご理解いただけると幸いです。

エンジニアの皆さんへ:

私たちは「設計者」であると同時に、その設計を活かして「賢い量産」を実現する工夫も求められています。
ルール化、パターン化、そして自動化を推進し、より生産性の高い開発を目指しましょう。

プログラミングの「設計」としての側面と、「量産」を可能にする工夫。この両輪を理解し、それぞれの立場から協力し合うことで、私たちはより良いソフトウェアを、より効率的に世に送り出すことができるはずです。


今日の一言

Sentry導入したいなぁ
デバッグの効率が大幅に上がる未来が見える

4
1
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
4
1

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?