はじめに
はじめまして、NPO法人Waffle1でTechnovation Girls2に関わるインターンをしているゆう猫です。普段は大学で情報科学のお勉強をしていたり、SecHack365の思索駆動コース3にいたり、情報科学の達人4の支援を受けて研究をしたりしています。
この記事では、The ACM Symposium on User Interface Software and Technology (UIST) 2024に投稿された「Feminist Interaction Techniques: Social Consent Signals to Deter NCIM Screenshots」という論文を紹介します。
論文紹介
本記事で紹介する論文は以下の論文です。
Li Qiwei, Francesca Lameiro, Shefali Patel, Cristi Isaula-Reyes, Eytan Adar, Eric Gilbert, and Sarita Schoenebeck. 2024. Feminist Interaction Techniques: Social Consent Signals to Deter NCIM Screenshots. In Proceedings of the 37th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (UIST '24). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 28, 1–14. https://doi.org/10.1145/3654777.3676380
一言でまとめると
同意のないスクリーンショットを抑止するメッセージングアプリケーション用のインタラクション技法としてジェスチャーを求めることでスクリーンショットや画像の保存を防ぐUI、Hands-Offとそれを一般化したフェミニストの価値観を体現し、社会的問題に言及するインタラクション技法Feminist Interaction Techniques(FIT)という考え方の提案です。
Hadns-Off
問題意識
この論文で問題にされているのはNon-Consensual Intimate Media(NCIM)、合意のない親密なメディア。論文内でよくあるケースと紹介されているのは、恋愛関係にあるときに共有された親密/性的コンテンツが許可なく複製されて、再共有されるというものだ。一度共有した相手の画面に表示されたものは、そのまま画像で保存できなくてもスクリーンショットなどで保存されてしまう。既存のNCIMに対する対策は、公開されてしまったものを、プラットフォームに報告して削除することだけだったが、ここにインタラクション技法を組み込むことで対策できないかというもの。
事前インタビュー
大学の学部生8人(4人女性、4人男性)にNCIMや親密/性的コンテンツに関わらない無許可のスクリーンショットの共有に関してインタビューをし、Hands-Offのデザインについて検討している。
ここで、文脈に応じたジェスチャーの変更という考えが出ている。送信内容や受信者との関係性、閲覧場所によってどのようなジェスチャーをするかを変更するというものだ。またそれぞれのジェスチャーがどれだけスクリーンショットを抑止するか(物理的にスクリーンショットのできない動作か)、社会的に容認される動作か(その動作をすることが躊躇われるかどうか)という図が出てきた。
使い方(から機能紹介)
合意のないスクリーンショットを防ぐために、行わせるジェスチャーは
- 簡単に実行できて検出可能であること
- ジェスチャーをしていることによって少しでもスクリーンショットを抑止できること
- ジェスチャーが送信内容や受信者との関係性、閲覧場所によって適切であること
を満たす
- Wave(手を振る): 公共の場で行うことが多く、社会的にも受け入れやすい。
- Interlace(手を組み合わせる): 公共でも比較的控えめに行える。
- Frame(フレームを作る): 少し遊び心があり、公共の場では少し奇妙に見えるかもしれません。
- Binoculars(双眼鏡のようにする): 最も奇妙でユーモラスなジェスチャーで、プライベートな場で行うのが適切。
が選ばれた。
メッセージを送信するときに、相手にしてほしいジェスチャーを選び、そのジェスチャーをしているときのみそのメッセージを表示する。
評価のための実験
悪意がない人間として単純に共有されたメッセージを見ることができるかを確認するために、参加者がジェスチャーを実行し、Hand-Offがそのジェスチャーを認識できるかを評価する実験と、共有されたメッセージを保存しようとする人間として、参加者がスクリーンショットを試みてみてロックを解除できるかという実験が行われた。
スクリーンショットの試行のうち67%が失敗し、一番成績が悪かったインターレース(手を組む動作)を除くと抑止率は77%になった。
以下はいろんな方法でHands-Offの抑止を乗り越えようとする人たち。
Feminist Interaction Techniques (FIT)
フェミニストの価値観を体現し、社会的問題に言及するインタラクション技法である「Feminist Interaction Techniques (FIT)」を提案している。
In the case of NCIM, an overarching value is frst that NCIM is a problem worth addressing– it afects millions or billions of people daily and degrades social life online and ofine.
NCIMの場合、第一に、NCIMは毎日何百万人、何十億人もの人々に影響を与え、オンライン上でも日常生活でも社会生活を悪化させる、取り組む価値のある問題であるとするという包括的な価値がある。
さいごに
アドベントカレンダーも論文紹介もやったことがなかったので、拙い文章になってしまいました。よければ、元論文も確認してください。今後も個人的に興味がある、ピックアップしたいと思う論文があれば紹介をしていきたいと思います。
これからもWaffleアドベントカレンダーをお楽しみください。