LoginSignup
0
0

More than 3 years have passed since last update.

カルマンフィルターその4

Last updated at Posted at 2021-06-13

状態変数のフィルタリング値の直感的な意味

前回のブログでは、t-1期の情報からt期の状態変数の予測値$\hat \beta_{t|t-1}$ と、状態変数の予測値の分散$\hat \Sigma_{t|t-1}$の式展開を説明した。今回はt期の情報からt期の状態変数の推定値、すなわち、フィルタリングを説明する。この状態変数のフィルタリング値を $\beta_{t|t}$ と書くことにするが、この導出は若干、複雑になる。
このため、今回は2変量正規分布の特性からフィルタリング値の直感的な導出を行い、式展開による $\beta_{t|t}$ の導出は、次回以降のブログに譲ることにする。

2変量正規分布

2つの確率変数 $ Z, Y$があり、各々正規分布に従うとする。すなわち、$ Z ~ N(\mu_z, \sigma_z^2)$, $ Y ~ N(\mu_y, \sigma_y^2)$とする。このとき、
* 無条件の期待値は各々、$\mu_z = E(Z)$, $\mu_y = E(Y)$
* 無条件の分散は各々、 $\sigma_z=Var(Z)=E[(Z-\mu_z)^2]$, $\sigma_y=Var(Y)=E[(Y-\mu_y)^2]$
* 無条件の共分散は、$\sigma_{zy}=\sigma_{yz}=Cov(Z,Y)=E[(Z-\mu_z(Y-\mu_y))]$
* 無条件の相関は、$-1\leqq \rho_{zy}=\frac{Cov(Z,Y)}{\sqrt{Var(Z)}\sqrt{Var(Y)}}=\frac{\sigma_{zy}}{\sigma_z \sigma_y}\leqq1$
となる。

条件付き期待値、条件付分散

まず、2変量正規分布に従う確率変数を考える。ある観測値 $Y=y$ が得られたとする。このとき、確率変数Zの期待値は次のようになる。

$E(Z|Y=y)=\mu_{z|Y=y}=\mu_z + K (y-\mu_y) \tag{11}$
$K = \frac{Cov(Z,Y)}{Var(Y)} \tag{12}$

(11)条件付期待値の右辺の意味は$Z$の無条件期待値 $\mu_z$ に実現値$y$ と Yの期待値$\mu_y$との差(新しい情報の価値)から得られている。
(12)の$K$の意味は単回帰係数$\beta$と同じ意味であり、平たく言えば2つの変量間の傾きである。すなわち、新しく得られた情報$Y=y$に基づいて$Z$を推定していることになる。尚、$Cov(Z,Y)=0$、つまり無相関ならば、$K=0$となり、条件付分散 $E(Z|Y=y)=\mu_z$ となる。つまり、無条件期待値と同じになり、変数Zにとっては、Yの情報の価値はないということになる。

次に2変量正規分布に従う、確率変数Zの条件付分散は次のように示すことができる。
$Var(Z|Y=y) = \sigma^2_{z|Y=y}=(1-\rho^2_{zy})\sigma_z$

これは$\rho_{zy}\neq0$であれば、条件付分散$\sigma^2_{z|Y=y}$は無条件分散$\sigma^2_z$よりも小さくなることを意味する。新しい情報$Y=y$を得たことで推定の精度が向上していることを示している。

状態変数のフィルタリング値

上記の例に従い、状態変数と観測変数の関係について述べる。
状態変数$\beta_t$と観測変数$Y_t$の関係も2変量正規分布と同様の関係といえる。唯一の違いは、各変数が時間変化する変数となる点である。すなわち、 次のようになる。

$\hat \beta_{t|t}= \hat \beta_{t|t-1}+ K_t (Y_t - \hat Y_{t|t-1}) \tag{13}$

(13)の右辺の意味は$\beta$の1期前からの期待値 $\hat \beta_{t|t-1}$ に実現値$Y_t$ と Yの1期前の期待値$\hat Y_{t|t-1}$との差(新しい情報の価値)から得られている。また2変量正規分布と同様に$K_t$が2つの変数間の間をつなぐ役割を果たしている。この$K_t$をカルマンゲインといい、後日このブログで解説する。

最後に、状態変数のフィルタリング値の分散を示すと以下のようになる。

$\hat \Sigma_{t|t}= (1 - X_t K_t) \hat \Sigma_{t|t-1}\tag{14}$

カルマンゲインの解説で示すが$0\leqq X_t K_t\leqq1$となるため、$X_t K_t\neq0$であれば、フィルタリング値の分散$\hat \Sigma_{t|t}$は1期前の情報から予測した分散$\hat \Sigma_{t|t-1}$よりも小さくなることを意味する。新しい情報$X_t$を得たことで推定の精度が向上していることを示している。ここで、唐突に$X_t$が出てきたと思われる方もいるかもしれないが、これは第2回のブログの観測方程式(1)の$Y_t$の説明変数$X_t$である。$X_t$が得られたことで推定値の精度がよくなることを意味する。

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0