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React/TypeScript/Tau Prologで作る論理パズル

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はじめに

私はWebアプリケーション開発を専門とするエンジニアで、今回はReact + TypeScriptとTau Prologを組み合わせた論理パズルソルバーを開発いたしました。このプロジェクトは、制約充足問題(Constraint Satisfaction Problem, CSP)を可視化し、Prologの論理プログラミングパラダイムをWebブラウザ上で体験できる教育的なツールとして設計されています。本記事では、プロジェクトの概要と技術的な背景について詳しく解説いたします。

免責事項: 本記事は開発者個人の技術的見解であり、記載内容の正確性についてはベストエフォートベースでの情報提供となります。実装の詳細や技術的判断については、読者の皆様にて十分にご検討の上ご活用ください。

プロジェクトメインページ

プロジェクトの概要と開発動機

現代のソフトウェア開発において、制約充足問題は非常に重要な位置を占めています。スケジュール最適化、リソース配分、組み合わせ最適化など、我々が日常的に直面する複雑な問題の多くが制約充足問題として定式化できます。しかし、これらの問題を解決するアルゴリズムやアプローチを学習する際、抽象的な理論だけでは理解が困難な場合があります。

そこで私は、論理プログラミング言語であるPrologの推論プロセスを可視化し、インタラクティブに体験できるWebアプリケーションの開発に着手いたしました。本プロジェクトでは、5つの異なる論理パズル(住宅問題、学校クラブ活動、果物市場、オフィスワーカー、レストランメニュー)を通じて、制約条件の設定から解の探索プロセスまでを段階的に表示することで、Prologの論理推論メカニズムを直感的に理解できるよう設計されています。

技術アーキテクチャとスタック選定の理由

フロントエンド技術選定

本プロジェクトのフロントエンドには、React 19とTypeScriptの組み合わせを採用いたしました。この選定の背景には以下の技術的判断があります。

React 19の採用理由:
現在最新のReact 19は、Concurrent FeaturesやSuspenseの改良により、リアルタイムでの論理推論プロセス表示に最適化されています。特に、Prologの推論ステップを段階的に表示する際のレンダリング性能において、従来バージョンと比較して明確な優位性があります。また、新しいuse()フックにより、非同期的なProlog推論処理との統合がより自然に実装できました。

TypeScriptによる型安全性の確保:
Prologの述語や制約条件を扱う際、動的型付けによる予期しないエラーを防ぐため、厳格な型システムが必要でした。特に、パズルの変数ドメインや制約条件を定義するPuzzleProblemインターフェースにおいて、TypeScriptの型チェックが開発効率と品質向上に大きく貢献しています。

Prolog エンジンの統合戦略

Tau Prologの選定: JavaScriptで実装されたProlog処理系として、Tau Prologを採用いたしました。ブラウザ環境での完全な動作保証と、WebAssemblyとの統合が可能な点が決定的な要因でした。

WASM統合による性能最適化: より複雑な制約充足問題に対応するため、SWI-PrologのWebAssembly版との統合も実装しています。フォールバック機構により、WASM が利用できない環境では JavaScript ベースのソルバーに自動的に切り替わります。

論理パズル選択画面

制約充足問題の実装アプローチ

統一的なパズル表現フォーマット

本プロジェクトでは、異なる種類の論理パズルを統一的に扱うため、以下のような構造化されたフォーマットを設計いたしました。

interface PuzzleProblem {
  id: string
  title: string
  description: string
  constraints: string[]
  variables: {
    people: string[]
    attributes: {
      [key: string]: string[]
    }
  }
  prologCode: string
  solution: any
  difficulty: 'easy' | 'medium' | 'hard'
}

この設計により、新しいパズルの追加や既存パズルの変更が容易になり、量産化に適した拡張可能なアーキテクチャを実現しています。

バックトラッキングアルゴリズムの可視化

Prologの核心であるバックトラッキングアルゴリズムを理解しやすくするため、推論プロセスを以下の3段階に分けて可視化しています。

  1. 問題設定フェーズ: 変数とドメインの定義
  2. 制約適用フェーズ: 制約条件の評価と候補の絞り込み
  3. 解探索フェーズ: バックトラッキングによる解の発見

各フェーズにおいて、現在の状態、適用される制約、推論の進行状況をリアルタイムで表示することで、学習者がアルゴリズムの動作を直感的に把握できるよう配慮いたしました。

ビルドツールとデプロイメント戦略

Vite による高速開発環境

開発環境には Vite 4.5.14 を採用いたしました。ES モジュールベースの高速なホットリロードにより、Prolog コードの修正から動作確認までのサイクルを大幅に短縮できました。特に、制約条件の調整や新しいパズルの実装において、この開発効率の向上は顕著でした。

GitHub Pages による自動デプロイ

継続的インテグレーションとして、GitHub Actions を使用した自動デプロイパイプラインを構築いたしました。main ブランチへのプッシュをトリガーに、自動的にビルドとデプロイが実行される構成となっています。

数独ソルバー画面

パフォーマンス最適化と今後の展望

メモリ使用量の最適化

Prolog推論プロセスでは、バックトラッキング時に大量の中間状態が生成される可能性があります。本プロジェクトでは、React の Concurrent Features を活用し、推論プロセスをチャンク単位で処理することで、ブラウザのメインスレッドをブロックすることなく、スムーズなユーザーエクスペリエンスを実現しています。

今後の機能拡張予定

現在、以下の機能拡張を計画しております。

高度なパズル対応: N-クイーン問題やより複雑なゼブラパズル(アインシュタインの謎)への対応を予定しています。これらのパズルでは、より高度な制約伝播アルゴリズムが必要となるため、追加の最適化も検討しております。

カスタムパズル作成機能: ユーザーが独自の制約条件を定義し、オリジナルのパズルを作成できる機能の開発を進めています。これにより、教育現場での活用範囲が大幅に拡大すると期待しています。

パフォーマンス分析ツール: 推論プロセスの実行時間や探索ノード数を分析できるツールの統合を予定しており、アルゴリズムの効率性を定量的に評価できるようになります。

まとめ

本プロジェクトを通じて、Webブラウザ上でProlog の論理プログラミングパラダイムを体験できるプラットフォームを構築いたしました。React + TypeScript による型安全な実装と、Tau Prolog によるブラウザネイティブな論理推論エンジンの組み合わせにより、教育的価値の高いツールが完成したと考えております。

制約充足問題は今後ますます重要性を増す技術領域であり、本プロジェクトが多くの学習者にとって理解の助けとなることを期待しています。また、オープンソースプロジェクトとして公開することで、コミュニティからのフィードバックを得ながら、より良いツールへと発展させていきたいと考えております。

リポジトリ: GitHub - yuis-ice/prolog-logic-puzzle-solver
ライブデモ: GitHub Pages


この記事は、論理パズルソルバーの開発者である私が、技術的な実装内容と開発過程について説明したものです。記載された技術的内容については、個人的な経験と判断に基づくものであり、すべての環境での動作を保証するものではありません。

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