はじめに
皆さんはじめまして、風庭ゆいと申します。
注意
- この記事はネットワークにわかが書いています
- 「そんなことも知らんのか!」とか「それは間違ってるよ」など思うことがあるかもしれませんが、温かい目で見てください
- (この記事は全体的にポエムじみています)
- (訂正コメント大歓迎です)
◆家に超正確な時計がほしい……
ある日突然、こう思ったのです。
「超正確な時計がほしい……」
──と。
◆定義
- 壁掛け時計のようにすぐ確認が可能な時計であること
- (自分が信頼できる程度に)正確であること
上記2点を重視してある程度正確な時計を家に置こうと思い立ちました。
時刻源の選定
さて、そもそも 「正確な時計」 を家に置くためには 「正確な時刻源」 が必要ですよね。
ということで正確な時刻源となりうるモノをリストアップしました。個人で容易にアクセス可能な時刻源はざっくり以下の通りになるかと思われます。
- NTPサーバー
- GPS
- 長波JJY
- NHK FMラジオ
上記の中で、GPS・長波JJY・NHK FMラジオは家の立地上断念しました。鉄筋コン造で賃貸で窓の外は壁なので……。電波の入りはお察しの通りです。
NTPサーバーはインターネット疎通可能な環境さえあれば簡単に参照できる正確な時刻源です。
NTPサーバーを参照する壁掛け時計はいくつかありますが、調べた限りでは以下の製品が存在します。
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SEIKO製 NTPクロック
価格: 約30,000円前後
引用元: NTPクロック | セイコーソリューションズ [参照: 2025-03-17]
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ノア精密製 LANアナログ掛時計
価格: 7,678円
引用元: MAG無線LANアナログ掛時計シグナルキーパー - (掛時計|アナログ時計):オリジナル時計・名入れ時計ならノア精密 [参照: 2025-03-17]
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ニトリ製 Wi-Fiで時間を合わせる掛け時計
価格: 3,990円
引用元: Wi-Fiで時間を合わせる掛け時計 (SW 009TG)通販 | ニトリネット【公式】 家具・インテリア通販 [参照: 2025-03-17]
た、高え……。
そう、(値段が)高いんですよ。それにこういったNTPサーバーを時刻源とする時計はそれなりに需要があるようで、ニトリやノア精密製の家庭向けに作られた時計は軒並み在庫切れ……。
SEIKO製の時計は企業向けなので個人で導入するには価格が高すぎますし、泣く泣く断念。
自作するという手もありますが、マイコンはあまり触ったことが無く完成させるのは絶望的……。
ということで、
こうなりました。
◆そうだ、NTPサーバーを置こう
こちらはSEIKO製のNTPサーバー、TS-2210という製品です。
ヤフオクに出品されていたのをたまたま見つけ、たまたま競り落とせました。
引用元: [販売終了製品] TS-2210 | タイムサーバー | セイコーソリューションズ [参照: 2025-03-17]
この製品はNTPサーバー本体なので正確な時計と言って差し支えないですし、液晶画面に常時時計が表示されるためこれで十分ニーズを満たせます。
なによりロマンあるよね!
なおこの製品、落とせたは良いもののほぼ博打に近いものになります。
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取り扱い説明書が公開されていない
ホームページにて取説が公開されておらず、資料請求を行わないと入手できない -
時刻源が不明
TS-2210は取得できる時刻源がモデルによって決まっており、GPS・FM・長波JJY・テレホンJJYの4種類のどれかを見極めなければいけない -
最新のファームウェアの入手が困難
ファームウェアが公開されていないため、実機内のファームウェアをそのまま利用する形になる
※ (1.)はSEIKOへ資料請求することで入手可能です
※ (2.)はモデルによって背面のコネクタ類の配置が異なるため、背面の状態が分かれば識別が可能です(この違いは説明書に記載があります)
※ (3.)は今のところ最新は手に入れてられていません(この製品は企業向けということもありサポート込みでの扱いのようで、私のような一般人が使うことを想定していないようです。問い合わせすればワンチャンあるかも?)
上記の理由であまり触ろうとする人はいないようです(今回はそれに助けられたわけですが)
TS-2210はCUIは存在せずすべての設定はGUIで操作する仕様のようです。
(じゃあ正面のRS-232Cはなんなん? 取説によるとサービス用COMコネクタとのことですがコンソールっぽい雰囲気はぷんぷんしますね……)
◆TS-2210を使用するにあたっての課題
さて、今回私が手に入れたTS-2210はテレホンJJYモデルでした。
これは電話回線を使用して情報通信研究機構(NICT)に現在時刻を問い合わせる方式のものです。
ですが、リンク先を見ていただけると分かるように2024年3月31日でサービス終了しているようです。
Q. 詰んだ?
A. いいえ、まだどうにかなります
TS-2210のリリースノートを読んでみると、バージョン4.2010から光テレホンJJYに対応していることが分かります。
今回のTS-2210のバージョンは4.2050のようなので、とりあえず命拾い。
この光テレホンJJYはテレホンJJYの後継サービスであり、光電話を用いて現在時刻を取得できるモノのようです。
光電話を使うということは、当然ながら光電話を利用している必要がありますが、もちろん私は契約しておりません。
Q. 詰んだ?
A. 開通させるしか無かろう……
さて、光電話を開通させるのは良いですがここで憂慮すべき問題があります。
ちょっと脱線
さっきからTS-2210はモデル毎に設定された時刻源からしか同期できないかのような言い方をしていますが、そんなことはありません。
TS-2210はGPS・FM・長波JJY・テレホンJJY(光テレホンJJY)から同期することで、NTPにおけるStratum 1として動作しますが、Stratum 1以下でも良ければ上位NTPサーバーを同期先に指定することで上位NTPサーバーのStratum +1として動作可能なのです。
(IPアドレスで指定する形になるのでntp.nict.jp
などのドメイン解決するNTPサービスは利用できません)
↑ Stratum 2として動作している様子
Q. なぜStratum 1にこだわるのか?
A. ロマン
閑話休題
◆光コラボ回線でデータコネクトは使えるのか?
NTTのフレッツ光、ひかり電話回線を用意してください。NTTのひかり電話によるデータコネクトサービスを使用します。その他のサービス(回線)ではご利用いただけません。
引用元: 光テレホンJJYの利用法 [参照: 2025-03-17]
NICTの光テレホンJJYの解説ページにあるように、光テレホンJJYを利用するためにはNTTのサービスであるデータコネクトを使用するようで、NTTのひかり電話回線を使う必要があることが分かります。
ここで、NTT東日本のデータコネクトのページを見てみましょう。
「フレッツ光」でご利用の「ひかり電話」もしくは、「フレッツ 光ネクスト」「フレッツ 光ライトプラス」「フレッツ 光ライト」のいずれかでご利用の「ひかり電話オフィスタイプ」「ひかり電話オフィスA(エース)」および「光回線電話」「ひかり電話ネクスト」でご利用いただくことができます。ご利用には、データコネクト対応機器が必要です。
引用元: データコネクト | ひかり電話でできること | サービス内容 | ひかり電話(光IP電話) | フレッツ光公式 | NTT東日本 | 光回線のインターネット接続ならFLET'S光 [参照: 2025-03-17]
憂慮すべき問題というのは、ここ。
私が現在固定光回線として契約しているプロバイダはBIGLOBEで、BIGLOBEはNTTの光コラボレーション事業者ですから回線本体はNTTのものです。
しかし、BIGLOBEの光電話でNTTのデータコネクトは使用できるのか……?
無駄に工事費は払いたくないので、NTT東日本・BIGLOBEのサポートセンターに問い合わせてみました。
BIGLOBE
他社のサービスにつきましてはこちらではお答えできません。お問い合わせのデータコネクトサービスですが、BIGLOBE光電話ではそのようなサービスは展開しておりません。
NTT東日本
データコネクトはフレッツ光で契約されているひかり電話でご利用できます。他社のサービスについてはお答えできません。
八方塞がり
そりゃそうなのですが、光コラボとはいえ細かいところは教えてくれませんでした。
こんなこと言っちゃう始末。
ですがまだ手はあります。
引用元: 光テレホンJJY | NICT-情報通信研究機構 [参照: 2025-03-17]
この図はNICTが公開している光テレホンJJYの構成図なのですが、データコネクトルータとNICT間にNGN網 SIP接続と書かれていますね……。
もしやデータコネクトってただのSIP接続なのでは?
SIPはIP電話の基本プロトコルですよね、そしてBIGLOBE光電話は光コラボのためNTTのONU・HGWを用います。ということは局側もNTTの機材が使用されるはず。
それに、BIGLOBE契約の光回線でNGN網に出られることも確認できています。
これは……もしかすると……。
そうですね、実際にできるかやってみます。
ということで光電話開通。
※ データコネクトでは相手に自分の電話番号を表示する・相手の電話番号を受け取る必要があるため、発信者番号表示等のオプションが必要です
(私はめんどかったので A (エース) というオプション全部入りプランで契約しました)
予想通りRX-600KI
というNTTのHGWが貸与されました。
この時点で固定電話番号が割り当てられているはずなので、それを元にNICTへ光テレホンJJYの利用登録をします。
◆光テレホンJJYへの利用登録
光テレホンJJYを利用するには利用登録が必要です。
(利用登録をせずに勝手に通信しようとすると恐らく弾かれます)
登録方法は少々特殊で、利用登録申請書フォームページで生成した暗号化ファイルをメールに添付して送信するという方式で、なんとも国立研究所らしさが感じられますね。
申請書を送ってから7日ほどで登録完了の旨のメールが返ってきました。
これで光テレホンJJYが使用可能になったはずです。
◆光テレホンJJYへ接続
さて、光テレホンJJYへ接続するにはルーターとNICT間でSIPを利用したトンネル回線を構築する必要があります。
光テレホンJJYの使用例にYAMAHAルーターでの設定例があったので、手持ちの YAMAHA RTX1200 の config をいい感じに弄ります。
そして以下の様に構成。
光回線
│
NTT GE-ONU (ONU)
│
NTT RX-600KI (HGW)
│
YAMAHA RTX1200
│
SEIKO TS-2210
これで RTX1200 に特定のIPアドレスで問い合わせることでSIP通信が確立され、光テレホンJJYシステムからNTPパケットが降ってくるはずです。
TS-2210 側にも設定を済ませ、いざ接続……。
……どうやら無事に成功したようで、 Stratum 1 として稼働し始めました!
◆まとめ
- SEIKO TS-2210 は テレホンJJYモデル でもまだまだ使える
- 光コラボ事業者回線でも NTT の データコネクト は使える (場合によりそうですが、少なくともBIGLOBEはできた)
- 正確な時計が部屋に置けてとても満足
◆おまけ
中身が気になって天板を外してみたの図。
CFカード使ってるとは時代を感じますね……。