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Python3の...(Ellipsisオブジェクト)について

Last updated at Posted at 2014-10-21

Ellipsisオブジェクトとは

Python3のREPLで ... と入力してみる。

Python3
>>> ...
Ellipsis

これがEllipsisオブジェクト。

Ellipsis または ... で表されるシングルトンオブジェクトである。

公式リファレンスでは「主に拡張スライス構文やユーザ定義のコンテナデータ型において使われる特殊な値」とあるのみで、明確に用途を定義していない。

英語のellipsisは「省略」という意味なので、処理や引数を省略したい場合に使うものと考えられる。

Noneやpassとの違い

None

None は「値が存在しない」ことを表すが、Ellipsis は「何らかの値が存在するが省略されている」ことを表す。

bool(Ellipsis) の返り値が True である点から見ても、 EllipsisNone よりも肯定的な意味をもつことがわかる。

Python3
>>> bool(None)
False
>>> bool(Ellipsis)
True

pass

pass は文であるが、... は式である。

つまり ... は引数として関数に与えることができる。

Python3
>>> str(Ellipsis)
'Ellipsis'
>>> str(pass)
  File "<stdin>", line 1
    str(pass)
           ^
SyntaxError: invalid syntax

使いどころ

実行可能な擬似コード

そもそもPythonは元祖「実行可能な擬似コード」と呼ばれる言語である。

これは、Pythonコードが単なる「実行可能なプログラム」ではなく「人間とコンピュータの双方が理解できる処理やアルゴリズムの表現」であるということ。

擬似コードでは処理などの省略部分を ... と表記することがあるが、Python3はこれを「省略」を表す値として認めることにより、より抽象的な表現を可能にしていると言える。

NumPyでの多次元配列のスライス

より具体的な例。

NumPyでは、多次元配列のスライス記法で ... を使用することができる。

この場合、 ... は指定されていない次元のインデクスが任意であることを示す。

Python3-NumPy
>>> import numpy
>>> a = numpy.array([[1, 2],
...                  [3, 4]]) # 2x2の多次元配列
>>> a[0, ...] # 0行目の任意の列の要素からなる配列
array([1, 2])
>>> a[1, ...] # 1行目の任意の列の要素からなる配列
array([3, 4])
>>> a[..., 0] # 任意の行の0列目の要素からなる配列
array([1, 3])
>>> a[..., 1] # 任意の行の1列目の要素からなる配列
array([2, 4])
>>> a[...] # 任意の行の任意の列の要素からなる配列
array([[1, 2],
       [3, 4]])

スライス記法なら : を使っても同じことができると思うかもしれない。

Python3-NumPy
>>> a[0, :]
array([1, 2])

しかし、3次元以上の配列では :... の動作が異なる。

: はあくまで特定のひとつの次元が任意であることを示すが、 ... は指定されていない全ての次元について、インデックスが任意であることを示す。

>>> b = numpy.array([[[1, 2],
...                   [3, 4]],
...                  [[5, 6],
...                   [7, 8]]]) # 2x2x2の多次元配列
>>> b[..., 0] # 第1, 2次元は任意、第3次元のインデックスは0 ---(1)
array([[1, 3],
       [5, 7]])
>>> b[:, :, 0] # (1)と同義
array([[1, 3],
       [5, 7]])
>>> b[:, 0] # 第1次元は任意、第2次元のインデックスは0、第3次元のインデックスは任意 ---(2)
array([[1, 2],
       [5, 6]])
>>> b[:, 0, :] # (2)と同義
array([[1, 2],
       [5, 6]])

参考

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