LinuxはUbuntu派、その理由
私はLinuxではUbuntu派です。その理由の一つとして、Red Hat Linuxが有償版のみになったという認識がありました。
私が若かりし頃、まだWindows Meや2000が現役だった時代、雑誌の付録CDやDVDとしてRed Hat LinuxやVine Linuxがよく付いてきました。それらをインストールしては、ドライバがなかったり、ウィンドウマネージャが動作せず、結局元のWindowsに戻してしまうことを繰り返していました。
Red Hat Linuxの変遷とUbuntuへの移行
それから数年後、Red Hat Linuxはエンタープライズ向けの有償モデルに移行し、Fedora CoreやCentOSといった後継プロジェクトが登場しました。一方で、互換性が高く使いやすいUbuntuが普及し始め、知らぬ間に私もDebian系Linuxを主に使うようになっていました。
一時期、Linux教科書で有名なLPI(Linux Professional Institute)がCentOSを採用していたこともあり、CentOSに戻ることを検討したこともありました。しかし、Ubuntuに慣れてしまった私にとって、yumベースのパッケージマネージャはどうにも使いにくく、結局Ubuntuを使い続けています。
CentOSの終了と新たなディストリビューション
2021年にCentOSの開発が終了し、後継となるCentOS 9がリリースされないと発表されたとき、コミュニティが大いに議論を巻き起こしました。このニュースは記憶に新しいです。新たにAlmaLinuxやRocky Linuxといったディストリビューションが誕生し、大変な状況だなと外野から眺めていました。
RHEL(Red Hat Enterprise Linux)が個人向け無償提供と知る
そんな中、Red Hatの公式X(旧Twitter)アカウントの投稿で、RHELが個人利用の場合無償で利用できることを知りました。まったく知らなかった事実です。同じくBroadcomに買収されて無償化されたVMware Fusionと合わせて試してみようと思い、今回の記事を書くきっかけになりました。
RHELをインストールする手順
まず、Red Hatのアカウントを作成、または既存のアカウントでログインします。
次に、以下のリンクにアクセスしてRHELをダウンロードします。
今回は、RHEL 9.5のArm版をダウンロードしました。ちなみに、10.0のβ版もアップロードされています。
注意点:インストールファイルのサイズ
DVDデータは約10GBと大容量のため、ネットワーク環境が整っている場合はboot.iso
をダウンロードすることをお勧めします。
boot.iso
は約1GBと軽量で、現在のネット環境では問題なく使用できるでしょう。
今回はM3のMacBookAirにVMWare FusionProを使用。
RedHatEnterpriseLinux9(64ビット)ARMを選択
私のMacはUS配列なのでキーボード設定はUSを選択しました。
また RedHatの接続設定を済ませておくとインストール完了後にRedHatのレポジトリやyum・dnfが直ぐに使えるので設定しておくと良いです。
勿論、後からアクティブに出来ますが。
余談ですがyumコマンドは将来廃止になるのでdnfに移行しましょう。
軽く触ってみた感じUbuntuとそれ程変わらないかなと思っています。
RHELとUbuntuの比較
RHELのメリットと、商用利用におけるUbuntuとの違いを整理しました。
RHELのメリット
1. 安定性と長期サポート
- 商用利用を念頭に設計され、安定性を最優先
- 通常10年の長期サポートが提供され、企業システムの運用に安心感を提供
- 大規模なパッチやアップデートは徹底的にテストされ、安定した環境が求められる現場で信頼される
2. 優れたサポートとエコシステム
- Red Hatから直接提供されるプロフェッショナルな有償サポートが利用可能
- Red Hat Partner NetworkやRed Hat Academyなどを通じて、豊富なリソースが利用可能
- 公式リポジトリには検証済みのパッケージが含まれ、セキュリティアップデートも迅速
3. 商用利用での実績
- 多くの企業や政府機関で標準採用
- 金融、医療、通信業界などで利用され、「動作保証されるLinuxディストリビューション」として認知
- 認証や規制要件がある場合にも適している
4. SELinux(Security-Enhanced Linux)
- 標準でSELinuxを採用し、高度なセキュリティを提供
- 厳密なアクセス制御が可能で、サイバーセキュリティ対策に寄与
5. コンテナとクラウド環境に最適化
- Kubernetesの商用版であるOpenShiftとシームレスに連携
- コンテナ化やクラウドインフラに強力なエコシステムを提供
6. Red Hat Insights
- サーバーの状態をプロアクティブに監視
- パフォーマンスやセキュリティの問題を未然に検出するツールを利用可能
Ubuntuとの違い:商用利用において
1. サポートの質と信頼性
- Ubuntu(Canonical提供)はLTS版でも最大5年のサポート
- RHELのような10年規模のサポートや商用サポートの質ではRHELに一歩譲る
- Canonicalも商用サポートを提供しているが、Red Hatの業界内での信頼度には及ばないことが多い
2. エコシステムと互換性
- 商用ソフトウェア(Oracle、SAPなど)は、RHEL向けに最適化されたものが多い
- 特に認証や規制要件が厳しい場合、RHELのほうが選ばれやすい
3. パッケージ管理と安定性
- **Ubuntuはapt(Debian系)**を採用し、最新技術をいち早く取り入れる傾向
- **RHELはyum/dnf(RPM系)**を採用し、保守性と安定性を重視
4. セキュリティ
- UbuntuのAppArmorもセキュリティ向上に寄与するが、RHELのSELinuxは企業環境でより高く評価される
5. 価格とライセンス
- RHELは商用サポート付きでは有償だが、個人利用では無料のDeveloper Subscriptionが利用可能
- Ubuntuは基本無償だが、商用サポートを追加すると料金が発生
感想
実際にインストールして軽く使い始めてみましたが、使用感はUbuntuとそれほど大きく変わりませんでした。ターミナル操作も特に違和感はありません。
ただ、個人利用でさまざまな用途に使用する場合、Ubuntuのほうがメリットが大きいと感じました。一方で、サーバー用途で商用利用並みのサービスを構築したい場合には、RHELは非常に良い選択肢だと思います。特に、豊富なドキュメントや安定動作を期待できる点では、RHELが優れていると感じます。
いずれにせよ、20年ぶりにRHELを使ってみたのは、なんだか感慨深い体験でした。