#前置き
Bluemix Infrastructureのバックアップソリューションとして提供されているR1Soft社のServer Backup Manager。無停止でのバックアップが可能で、ファイル単位でのリストアもでき、DC間のレプリケーションもすることが出来るという夢のようなツールです。
しかし、いざ自社のシステムに導入しようとなると、ネットワーク、仮想環境での利用、ライセンスなど様々な懸念点も出てくると思います。
この記事では、それらの懸念点を事前に払拭すべく、事前に考えておくべき事項をまとめましたのでご活用ください。
ちなみに、Server Backup Managerの使い方、設定方法が知りたい場合はこちらの記事を御覧ください。
SoftLayerのR1Soft Server Backup Manager(Idera)を使って、遠隔2地点におけるバックアップを実現する
#インターネット経由で、ライセンスサーバーと疎通している必要がある
Server Backup Managerのライセンス体系には大きく5つの種類が存在し、「永続ライセンス」「ハートビートライセンス」「トライアルライセンス」「プールライセンス」「フリーライセンス」に分けることができます。
SoftLayerから購入して利用できるのは「プールライセンス」なのですが、このタイプのライセンスの場合、ライセンスサーバーとの定期的な接続が必要であり、SBMサーバーが24時間以上連続でライセンスサーバーとの接続が確認できなかった場合、SBMサーバーは機能しなくなります。
そのため、SBMを運用する際はインターネット経由で、ライセンスサーバーと疎通しておかなければなりません。
具体的には以下の通りです。
- 注文時には、Public側のネットワークを有効化したサーバーしか選べないようになっている
- 注文後は、Public側を切断し、Private側のみの構成をとり、NATでPublicに出てライセンス認証させる構成をとることが可能
もしファイアウォールなどを設定している場合は、activation.r1soft.comへのポート443へのアクセスを許可する必要があります。
#対応OSについて
Manager、Agent共に物理サーバー上のOSだけでなく、仮想化ソリューション上のゲストOSにも導入することができます。
##Manager
Server Backup ManagerのSBMサーバーのOSは、Windows版が2016/10/12でEOSを迎えたため、現在はLinux版のみを利用できます。
なお、仮想サーバーにもインストール可能ですが、パフォーマンスを最大化するためには物理サーバーに直接導入することが推奨されています。
###Linuxの対応OS
カーネルのバージョン: 2.6.9 から 3.13.x
ハイパーバイザー: Hyper-V, Xen Server, Xen Source Hypervisor
ディストリビューション(64bitのみ): RedHat Enterprise, CentOS, Ubuntu, Debian, Novell SUSE Enterprise Server
##Agent
次は、Agentを導入可能なOSを見ていきます。つまり、下記に記載のあるOSがSBMでバックアップを取得可能なサーバーということになります。
###Linuxの対応OS
カーネルのバージョン: 2.6.9 から 3.11.x, 3.19, 4.4
ハイパーバイザー: Citrix XenServer, VMWare, Linux KVM, Parallels Virtuozzo, Parallels Cloud Server
ディストリビューション(32, 64bitに対応可能): RedHat Enterprise, CentOS, Oracle Enterprise Linux, Ubuntu, Fedora, Debian, Novell SUSE Enterprise, Open SUSE, Mandriva, Cloud Linux, Virtuozzo, OpenVZ
###Windowsの対応OS
プロダクト: XP, Vista, 7, 8, 2003R2, 2008, 2008R2, 2012, 2012R2, 2016
ハイパーバイザー: Hyper-V, Citrix XenServer, Xen Source Hypervisor, VMWare
上記から、例えばVMware上のゲストOSであるLinuxやWindowsに対してもAgentを導入することで、バックアップすることが可能です。仮想化環境も物理環境もバックアップできるのは便利ですね!
ちなみに、仮想サーバーをバックアップする場合は、基本的にゲストOS1つに対して1つのAgentを導入する必要があります。しかしHyper-V上でWindows OSを利用する場合に限り、VSSのHyper-V Writerと連動することによってペアレントOSに対する1つのAgentでHyper-V上の全てのチャイルドOSに対してバックアップを実行することが可能です。
#ストレージの選択
Bluemix Infrastructureではいくつかのストレージソリューションを選択できますが、バックアップ先のストレージにはどのストレージを利用するのが良いのでしょうか。
Disk Safe(バックアップデータ)の置き場所として、SBMでは下記の種類のストレージがサポートされています。
- IDE
- SATA
- SCSI
- SAS
- ISCSI
- Fibre Channel
- Dynamic Disks (Software RAID)
- Hardware RAID
- Solid State Drives (SSD)
- NFS
上記から、Bluemix上で利用できるストレージの中で、SBMのバックアップ先として指定できるのは下記になります。
- サーバーのローカルストレージ
- ブロックストレージ(Endurance/Performance)
- ファイルストレージ(Endurance/Performance)
- FTP/NFS
ほぼ全てのストレージが利用可能ですが、残念ながらFUSE Filesystemのサポートはないため、Object Storageにバックアップを保管することはできません。
#高可用性設計、災害対策
バックアップを保管するにあたり、高可用性や災害を想定したDRの対策がどうしても必要になってくると思います。ここではいくつかのユースケースと共に、SBMでどのような高可用性の設計が可能かを考えていきます。
##1. 保管ストレージの論理障害、物理障害に対応する
ここではバックアップを保管する先のストレージに障害が発生するケースを想定します。その場合、別のストレージにバックアップデータをレプリケーションする必要があります。
このケースでは、Disk Safe Replicaitonと呼ばれる機能を利用します。
SBMサーバーに複数のストレージをマウントすることで、ストレージの障害が起きた際にもレプリケーション先のストレージからリストアを行うことが可能です。
しかし、この方法ではSBMサーバー自体がダウンした際にはバックアップ、リストアを行うことはできなくなります。
##2. SBMサーバーの障害、データセンターの障害に対応する
ここではバックアップを管理するSBMサーバー自体の障害、もしくはSBMをデプロイしているデータセンターに障害が発生するケースを想定します。その場合、セカンダリーのSBMサーバーを設置し、そちらにデータをレプリケーションします。
このケースでは、リモートレプリケーションと呼ばれる機能を利用します。サーバーをまたぐだけで、技術的にはDisk Safe Replicationと同じことをやっている気がします。
細かい設定の方法などは以前の記事をご確認ください。
SoftLayerのR1Soft Server Backup Manager(Idera)を使って、遠隔2地点におけるバックアップを実現する
上図のようにSBMサーバーを冗長化することで、PrimaryのSBMサーバーがダウンしても、Secondry側のSBMサーバーから直接リストアすることが可能です。また、SecondryのSBMサーバーをBluemix Infrastructureの他のDCに設定すれば、DC全体がダウンした時にもデータを保持することができます。
また、Primaryのダウン時にSecondryのSBM側から直接各ゲストOSのバックアップを取得するように設定すれば、リストアだけでなく、バックアップも継続して行うことが可能になります。設定は基本的には手動になりますが、APIが提供されているため、あらかじめスクリプトを用意しておけば自動化することもできます。
上記のように、どの程度の可用性を担保したいかという要件を明確にし、それに沿って設計することが必要となってきます。
#まとめ
この記事ではBluemix Infrastructureで利用できるバックアップソリューション、Server Backup Managerを導入する上での考慮事項についてまとめました。
Bluemixから提供されているものの、全ての機能を利用できるため、あらゆる要件に対応できるソリューションだと思いますので、これを機にぜひご利用いただければ幸いです。