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熱溶解積層方式 3D Printerを使いこなすTips

Last updated at Posted at 2023-05-15

はじめに

  • 本記事はとあるプロジェクトのメンバー向けに、共用の3Dプリンタをより活用してもらうためのTipsをまとめたものです。
    • あくまで筆者も素人なので、記事の内容を参考にしつつ自身で設定をいじり、より良い印刷方法を模索してみてください。
  • FlashForge製のAdventurer3でより良い印刷のために、スライスソフトであるFlashPrintのおすすめ設定とその理由を説明します。
    • 筆者が2020年8月にAdventurer3を買ってから約3年、印刷のクオリティを上げるために行ってきた試行錯誤の集大成です。
    • Adventurer3以外の3Dプリンタについても応用可能な内容だと思います。
    • この価格帯で買える熱溶解積層方式3Dプリンタとしてはずば抜けて性能が使い勝手もいいので、使ってみて気に入ったら購入をお勧めします。
  • より良い印刷部品のためには機械設計に関する知識や経験も大切ですが、そのような基本的事項については本記事では扱いません。

CAD側の設定

溝や曲線を多用した設計

他の加工機と比較したときの3Dプリンタの特徴として、複雑形状であっても製造コストが高くならないというのがあります。皆さん半楕円体を切削で作って欲しいと言われたらブチギレると思いますが、3Dプリンタであれば簡単です。

切削で作るようなシンプルな形状の部品(よくあるのは直方体のブロックを組み合わせて穴をあけたものとか)を3Dプリンタで印刷しようとする人を見かけることが良くあります。本当にその設計が最適でしょうか?
確かにその形状で部品の最低限の要求は満たせるかもしれません。しかし、もう少し最適化を図ってはどうでしょうか?ちょっと工夫すればもっと軽く、もっと強く、もっと美しいハードができると思います。
「簡単な形状の方がCADが早く描き終わるので良い」という意見があるかもしれませんが、設計変更し部品の体積を減らすことで部品の印刷時間が減り、トータルでの製作時間が短縮できる場面も多々あります。

これは3Dプリンタに限った話ではないですが、ぱっと思いつく必要な形状を適当に組み合わせて設計終了!ではなく、どうしたら全体としてより良いものができるか考え続けることで、「最低限動く設計」の先の設計ができるようになりますし、そもそもそういう姿勢が無いと最低限動くものを作ること自体が結構難しいと思います。

サポート材が不要な設計

3Dプリンタがほぼ任意の形状を印刷できるのは、サポート材の存在のおかげです。
しかし、熱溶解積層方式の家庭用3Dプリンタでは、サポート材を使うといくつかのデメリットが生じるというのが実態です。以下にデメリットを記載します

  • サポート除去の手間がかかる
  • 印刷時間が伸びる
  • サポート面の印刷の精度低下
  • 印刷乱れに伴う強度低下

そんなサポート材ですが、筆者はほとんど使いません。以下の工夫でほとんどの場合はサポート不要なため、積極的にサポート材を使わずに印刷しましょう。

  • 印刷向きを変えてサポート材を不要に
  • サポートが必要な形状をサポート不要な部品の組み合わせで実現
    • PLA樹脂同士を接着する場合は、アクリル樹脂用接着剤で溶かして接着できます(アロンアルファとかでもなんとかなりますが...)
  • サポート材が不要な形状にする
    • 傾斜面で補完する
      • デフォルトでは55°以上傾いた面にサポート材が付きますが、もう少し傾いた面でもサポート材無しで十分印刷可能です。
      • ちなみにサポート材をつける面の角度の閾値はFlashPrintで「サポート材→オーバーハングスレッシュ」から変更可能です
      • 積層ピッチ等の印刷パラメータによりますが、基本的に60°は余裕、印刷設定を詰めれば75°くらいまではきれいに印刷可能です

最後の「傾斜面で補完する」について、ボルトを通すバカ穴を例に工夫例を載せておきます。指定角度の傾斜は、SolidWorksではスケッチ以外に面取りから製作することも可能です。
スクリーンショット (280).png

寸法に0.4 mm(0.8 mm)の倍数を多用

Adventurer3のノズル径はデフォルトだとφ 0.4 mmであり、幅0.4 mmの溶かしたフィラメントを積層することで部品を印刷しています。
例えば幅1.0 mmの部品を印刷する場合は両端の0.4 mmずつはラインで印刷されますが、残りである中央の0.2 mmは設定した充填率に従いスカスカで印刷されます。このスカスカな部分が狭いと、印刷精度や強度の低下が起きやすくなるため、より細い幅0.8 mmの方が印刷が上手くいく場合が多いです。
従って特に幅が狭い場合は、0.4 mm の倍数(実際にはノズルが往復できるために0.8 mm の倍数)に各種寸法を設定することをおススメします。

凸エッジをR 0.2 mmでフィレット

印刷した部品の角の直角が出っ張って歪な形になるなどの経験はありませんか?
これはSTL等の3Dデータから印刷経路のgxコードを計算する処理を考えればわかりますが、溶かしたフィラメントを印刷するノズル径は固定(デフォルトではφ 0.4 mm)であるにもかかわらず、ノズル径よりも細い凸エッジの隅で無理やり印刷するため、印刷が乱れることによるものです。

ほとんどの場合、部品の角が完全な鋭利である必要はないため、STLデータを作成する前に部品の全凸エッジをノズル径と同じ半径でフィレットすることをおすすめします。(完全な鋭利である必要な場合は、印刷後にヤスリやナイフで角を成型してください)
ちなみにSolidWorksであればコマンドで部品の全凸エッジを一括選択し、フィレットをかけることが可能です。

FlashPrint側の設定

エキスパートモードを利用

gxファイルを作成するためにスライスする際、デフォルトでは「基本モード」ですが、より細かいパラメータ調整が可能な「エキスパートモード」の利用をお勧めします。(エキスパートモードのデフォルトのパラメータは、基本モードの「標準」と同じパラメータです)
エキスパートモードで調整可能なパラメータは山のようにありますが、一部重要なものを抜粋して調整方法をまとめます。

プリンター/プラットフォーム温度

部品が反るなどしてプラットフォームから剝がれやすいときにこの温度を60℃とかに上げると、食いつきが良くなり剥がれにくくなります
デフォルトでは50℃

一般的な/積層ピッチ/積層ピッチ

印刷部品の側面の印刷の綺麗さを決めるパラメータです。
積層ピッチを狭くすることで積層痕が見えにくくなり、印刷時間を犠牲に部品側面を綺麗に精度良く印刷できるようになります。
とにかく綺麗に印刷したいときは0.1 mm、そうでもないときは0.2 mm程度をおすすめします。(0.3 mm程度までなら印刷可能です)

一般的な/積層ピッチ/モデル1層目の厚み

積層ピッチと0.2mmの最大値がおすすめ

一般的な/スピード/樹脂を押し出し中の速度

印刷部品全体の印刷の綺麗さを決めるパラメータです。
とにかく綺麗に印刷したいときは20 mm/s、普段は40 mm/s、急いでるときは60 mm/s程度をおすすめします。
印刷時間を短くするために積層ピッチとどっちを変えるか悩むことが多いと思うので、個人的にバランスが良いと思うパラメータを記載しておきます。

積層ピッチ 樹脂を押し出し中の速度 備考
0.1 mm 10 mm/s とにかく綺麗さ優先のとき(模型製作時とか)
0.12 mm 20 mm/s 綺麗さ優先のとき(一晩印刷時間確保できる時とか)
0.16 mm 30 mm/s 時間に余裕があるとき
0.20 mm 40 mm/s 基本(よく使う)
0.20 mm 50 mm/s ちょっと急いでそうな雰囲気を感じる
0.24 mm 60 mm/s これ以上パラメータ攻めると印刷が汚くなる上に印刷時間はあまり縮まらないので、あまりおススメしません

一般的な/スピード/一層目の最大速度

これを遅くすることで底面の印刷がきれいになり、プラットフォームやラフトへの食いつきが良くなる。
全体の印刷時間への影響は小さめなので、とりあえずデフォルトの10 mm/sがおすすめ。

外枠/モデル外層の厚み/シェル・カウント

ラインで印刷する側面の層数です。
基本的にはデフォルトの2でいいですが、強度を上げたいときに3,4に増やすといいです。
特に後で雌ねじを切ったりリーマーをかけたりする場合には、外壁が薄くなるのでシェル・カウントを増やすのをおすすめします。

外枠/印刷開始地点/モード

外壁の印刷開始点の決め方を設定する項目です。
デフォルトの「特定の場所に近い」だと、印刷開始点である部品の側面にラインができるので、それが嫌な場合は「開始地点をランダムに設定」等に設定するといいです。

モデル内の充填率/一般的な/充填率

印刷部品の強度を決めるパラメータです。
内部のフィラメント充填率を上げることで、部品が割れたり凹んだりしにくくなります。
30 %以上に設定してもそこまで強度は上がらず、材と時間が無駄になるだけなので、それ以上の強度が必要となる部品は切削等で作ってください。

外枠/印刷開始地点/モード

Adventurer3側の設定

追記予定

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