はじめに
本記事は、QuEraの論文「Aquila: QuEraの256量子ビット中性原子量子コンピュータ」の概要と専門用語の解説です。
概要
中性原子量子コンピュータ「Aquila」は、QuEra社の最新デバイスであり、Amazon Web Services(AWS)のBraketクラウドサービスを通じて利用可能です。Aquilaは「フィールドプログラマブル量子ビットアレイ(FPQA)」として機能し、ユーザーが構成可能なアーキテクチャ上でアナログハミルトニアンシミュレーターとして動作し、最大256の中性原子量子ビット上でプログラム可能なコヒーレント量子ダイナミクスを実行します。
このホワイトペーパーは、Aquilaの仕組み、主要な性能ベンチマーク、および代表的なアプリケーションを示す例を含む、Aquilaとその機能の概要を提供します。これには、中性原子量子コンピューティングの概要や、Aquila上で実装された単一量子ビットのダイナミクスから組合せ最適化まで、複雑さが増す5つの例が含まれています。
このホワイトペーパーは、中性原子量子コンピューティングについて詳しく知りたい読者、Aquilaの使用を開始する準備ができている方、およびアナログ量子コンピュータとしての性能の参考資料を求める方を対象としています。
用語の解説
- 中性原子量子コンピュータ: 電気的に中性な原子を個々に捕捉し、量子ビット(qubit)として利用する量子コンピュータの一種。中性原子は相互作用が制御しやすく、高いスケーラビリティを持つとされる。
- フィールドプログラマブル量子ビットアレイ(FPQA): ユーザーが構成可能な量子ビットの配列を指し、従来のFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)の量子版とも言える。量子ビットの配置や相互作用をプログラムによって柔軟に設定できる。
- アナログハミルトニアンシミュレーター: 物理系のハミルトニアン(エネルギー演算子)を直接模倣することで、量子システムの時間発展をシミュレーションする装置。デジタル方式と異なり、連続的な量子状態の変化を再現する。
- コヒーレント量子ダイナミクス: 量子ビット間の相互作用や外部操作によって、量子状態が時間的に一貫性を保ちながら変化する現象。コヒーレンスが保たれることで、量子計算の精度や効率が向上する。
- 組合せ最適化: 複数の組み合わせの中から最適な解を見つけ出す問題。量子コンピュータは、特定の組合せ最適化問題に対して高速に解を求められる可能性があり、物流やネットワーク設計など多岐にわたる分野での応用が期待されている。