今年春頃から興味本位でAlibaba Cloudに触れ始めて、仕事で使おう、なんて話にもなかなか出会えないまま2024年が暮れようとしている。
そんな12月の初め頃、たまたま見かけた次の画像で「アリババ意外と上位じゃん」と思い、いろいろと調べ始めたところ、知らなかった情報がいくつもあったので、調べたことをまとめ記事にしてみた。
アメリカの調査会社Forresterが2024年第4四半期に発表したパブリッククラウドの評価レポートで、Alibaba Cloudは中国の企業として唯一のリーダーに選ばれた。同レポートはクラウドサービス業界での競争力を示すものとして注目に値する。
The Forrester Wave™: Public Cloud Platforms, Q4 2024
https://reprint.forrester.com/reports/the-forrester-wave-tm-public-cloud-platforms-q4-2024-9c26c6b4/index.html
このレポートにおいてAlibaba CloudはAWSに次ぐ2番目に高い評価を受けており、まさしく業界を牽引するリーダーの位置付けとなる。
イノベーション戦略とコミュニティ戦略
同レポートの評価ポイントは主に、提供されている製品やベンダー戦略など30項目にわたり、Alibaba Cloudはそのうち17項目で満点評価の5.00をマークしていることがわかる。
戦略面ではイノベーションとコミュニティの項目で評価されており、特にコミュニティ戦略で満点評価を得たのはAlibaba Cloud1社のみ。
これらは今年5月に公開された株主向けのメッセージにも表れており、同社の成長はこの戦略上の方針が大きく寄与しているものと思われる。
書簡では、アリババの戦略的方向性として 「ユーザーファースト」と「AIへの注力」 が掲げられた。ユーザーファーストのアプローチでは、プラットフォームのユーザーエクスペリエンスを最優先とし、ユーザーインターフェースからアルゴリズムのマッチング、カスタマーサービスに至るまで、あらゆるビジネス運営においてユーザーを中心に据えている。これにより、ユーザーのリテンション率やリピート購入を促進することを目指している。
AIへの注力については、AIがビジネスの成長を加速させる最も強力な要素であると強調。AIの応用により、各ビジネスのユーザー体験とビジネスモデルが大きく変革される可能性があると述べている。
引用元: アリババ、株主向けの書簡で戦略的転換点を説明 AIとクラウドを2大成長エンジンとして見据える | Ledge.ai
(株主向けメッセージの原文はこちら)
教育への貢献とグローバル展開
さらに、Alibaba Cloudは教育分野との連携を強化し、デジタルスキルの向上を目指した環境づくりを進めているようだ。
2024年5月23日にパリで開催されたAlibaba Cloud Global Summitでは、次の新たな教育プログラムが発表された。
Digital Training with Global Education Institutes
グローバル教育機関によるデジタルトレーニングAlibaba Cloud は、ヨーロッパの大手企業トレーニングプロバイダーであるDemos Groupとの新たなパートナーシップを発表しました。両社は、クラウドコンピューティング、データ分析、AIに焦点を当てたAlibaba Cloudのオンラインコーススイートを開始し、Demosの法人顧客のデジタルコンピテンシーを強化することを目的としています。Alibaba Cloud は、オックスフォード大学のディープテックベンチャーであるOxValue.AIとも提携し、AI を活用した評価サービスなど、エンドユーザーに提供される Alibaba Cloud の機能スイートを拡大しています。
さらに、Alibaba Cloudは、レディング大学、シンガポール社会科学大学、キングモンクット工科大学トンブリ校、アロヴィ大学、セントトーマス大学モザンビークなど、いくつかの国際大学とのコラボレーションを開始し、新世代のAI専門家を育成することを目的として、クラウドコンピューティングとAIコースを導入しています。
引用元(原文): Alibaba Cloud Announces New Availability Zones and Global Investment to Fuel AI Innovation
また、Alibaba Cloudは中南米や東南アジアなどの新市場への進出も積極的に進めており、地域ごとの需要に応じたサービス展開が加速している。このイベントではメキシコ新リージョンの立ち上げとマレーシア、フィリピン、タイ、韓国でのデータセンター増強が発表された。その他、アフリカ地域においては、現地パートナー企業を通じてローカルパブリッククラウドを提供し、イベント開催や学習機会の提供に力を入れているようだ。
2024年時点のリージョン一覧(スクリーンショット: Alibaba Cloud 公式)
現在の市場シェアと課題
2024年現在、Alibaba Cloudは中国国内で約36%の市場シェアを誇っていますが、国際的には第4位。競争激化の一途をたどるクラウド市場において、成長を維持するためには引き続き戦略的な取り組みが必要となる。
日本市場への期待
日本でAlibaba Cloudの知名度はまだ低いものの、同社の提供するサービスは技術力だけでなくコストパフォーマンスの面でもビジネスで強力な武器となる。Alibaba Cloudでは、すでに日本の流通・小売業界への協力・支援体制構築に取り組んでいるようだ。
アリババクラウド、パートナー企業とともに日本でDXラボを開設し、 ビジネスイノベーションを促進 - AlibabaNews Japanese - アリババニュース
アリババクラウド、日本でDXラボ開設--参画企業とのイノベーション図る - ZDNET Japan
次の記事では国産LLMを開発する日本のベンチャー企業に対して、Alibaba CloudがクラウドGPUリソースの支援するといった話に触れられている。
Llama3を超えた?4兆円超予算のアリババの研究所が開発したオープンソースLLM「Qwen」 - Alibaba Cloud Community
これに伴ってか、アリババクラウド・ジャパンサービス株式会社の24年3月期決算は好調。
アリババクラウド・ジャパンサービス、24年3月期決算は売上高18%増の87億円、営業利益16%増の4億円と2ケタ増収増益 | gamebiz
今後、日本国内においてもAlibaba Cloudがより多くの企業と協業し、イノベーションを加速させていくことに期待が高まる。