#読んだ本
エンジニアの知的生産術 ──効率的に学び、整理し、アウトプットする (WEB+DB PRESS plusシリーズ)
西尾 泰和 (著)
#感想
「エンジニアの」と題されているが、一般的な「学び」についてのわかりやすい手引きだと思う。
「どのようにインプットし」「どうやってアウトプットするか」に関わる基本的な理論を説明し、そのあとで具体的な手法について提示してくれる。
情報の整理の仕方、やる気を出し失わないための考え方、など、今後活かしていきたいと思えるポイントがわかりやすく説明されている。
例示される内容・理論が幅広く、いろいろな観点から語られていて興味深い。
最後に説明される、単なる「学び」から価値を生み出す「知的生産」へのシフトを意識したい。
#ポイントとかキーワードとか気になったところとか
一度読んだだけだとポイントとか忘れてしまうので、実践のために意識するべきポイントとか気になったキーワードとかを以下に抜粋しておきます。
###第1章 新しいことを学ぶには
- 知りたいところから学ぶ
- 「そんなの必要ないよ」YAGNI原則(You Aren't Gonna Need It)
- 今考えないといけないのは「今どうあるべきか」なのに「将来的にはこうかもしれない」と考えるのはミッションから気を散らかしている
- 時間は貴重だ
- 実際に必要にならなかったら、その実装に使った時間と、それを読む人の時間と、その実装が占める空間が無駄になる
- 近いゴール「今、自分のやりたいこと」を目指すのがやる気を高めるコツ
- 知りたいところから学ぶための前提条件
- 目標が明確化されている
- 目標が達成可能である
- 大まかに全体像を把握している
- 大雑把に
- 目次や章タイトルに注目
- ドキュメントの大まかな構造
- 片っ端から -何から学べば効率が良いかを判断する材料さえないのなら、まずは材料を手に入れる
- 時間を区切ろう -「今から25分でできるところまで写経してみる」→25分で得られた具体的な材料で判断できること→得られた感じがしなかったらその本は自分のニーズに合っていないのかも
- 片っ端から始めても、最後までやる必要はない -材料を手に入れたらより効率的な学び方ができる→写経が不要と思ったタイミングでやめていい
- 抽象化 どうやって抽象化するか
- 比較して学ぶ
- 「同じ」と「違う」の間に注目 -「同じ」と「違う」の境目はグラデーションになっている -具体例:電動ドリル=先端の工具部分は「違う」が根元部分は「同じ」
- たとえ話 - 「公開鍵暗号は南京錠のようなもの」 - 「どこが同じで、どこが違うか」を明確にすることが大事
- 違いに注目 - 共通部分を見つけるのはとっつきやすいが、単に情報を集めただけのものにもなりやすい - 違いに注目したり一見矛盾しているように見えるものについて考えると考えが進みやすい
- 歴史から学ぶ
- パターン本から学ぶ
- 比較して学ぶ
- 理解の検証 - 箱が床に置かれたのか、ちゃんと積み上げられたのか
- 自分の言葉で説明できるか?
- 自分の経験に基づいた具体例を挙げることができるか?
- 自分の目的を達成するためにその知識を使えるか?
- 「そんなの必要ないよ」YAGNI原則(You Aren't Gonna Need It)
###第2章 やる気を出すには
- やる気が出ない人の65%はタスクを1つに絞れていない
- Getting Things Done:まずすべて集める
- 「気になること」を全部1か所に集める
- ToDoリストは「これはToDoか?」の判断が必要だが、その判断を後回しにして気になるものはとにかくすべて集める
- 全部集めて、そのあとで処理をする
- 収集したものに対してまず「これは何か?」「自分はこれに対して行動を起こす必要があるか?」と問う
- 「行動を起こす必要がある」ものに対して「どういう結果を求めているのか?」と問う
- そのあとで「次にとるべき具体的な行動は?」と問う →ToDoリスト
- 「行動を起こす必要がないもの」をゴミ・資料・保留の3つに分類する
- 「次にとるべき具体的な行動」が複数なら、「プロジェクト」にする
- 「次にとるべき具体的な行動」が2分以内でできるなら、今やる
- 「次にとるべき具体的な行動」をやるのが自分でないなら、他人に任せて連絡待ちリストにいれる
- 「次にとるべき具体的な行動」をやるのが特定の日時なら、カレンダーに書く
- どれにも当てはまらなかったものが「次にとるべき行動」のリストに入る
- どうやってタスクを1つ選ぶのか
- GTDの処理フェーズでは緊急度など考えずに上から1件ずつ処理する - 完了まで時間がかかる
- 部屋の片づけと似ている - とにかく片っ端から捨てろ
- まず基地を作る - 全体を片付けるのは高コストなので、まず領域を区切り、その場所だけは片付いている状態にする→達成感
- タスクが多すぎる
- 今日できることは限られている - 「本当に今日中にやらないといけないこと」だけをピックアップ
- 「気になること」を全部1か所に集める
- 「優先順位付け」はそれ自体が難しいタスク
- ソートの計算量
- 1次元でないと大小比較ができない
- 不確定要素がある場合の大小関係は?
- 不確かな時は楽観的に
- 重要事項を優先する
- 「緊急」-「すぐに対応しなければいけないように見えるもの」-なっている電話
- 「重要」-「あなたのミッション、価値観、優先順位の高い目標の達成に結びついているもの」-個人の目指す方向性によって決まる
- 「通知された」は「緊急」ではない
- まず考えるべきは「これは自分にとって重要なのか?」
- 1つのタスクのやる気を出す
- タスクが大きすぎる
- タイムボックス - 時間で切る
- ポモドーロテクニック - 25分=「1ポモドーロ」
- 今日1日分のタスクリストを作る
- タスクの大きさをポモドーロの個数で見積もる
- 1ポモドーロの間はタスクの変更をせずに1つのことに集中する
- もし自分または他人による割込みが発生したらそれを記録する
- 1ポモドーロ集中した状態を継続できたら、立ち上がって数歩歩くなどして視点を切り替える
- タスクが大きすぎる
###第3章 記憶を鍛えるには
- 記憶の仕組み
- 記憶は1種類ではない - 言葉にできる記憶と、手をどう動かすかの運動技能の記憶は別物
- シナプスの長期増強 - まず消えやすい方法で作り、徐々に長持ちする方法に変える
- まずはすぐに作れてすぐに消える記憶を作る → その記憶が消えるまでの間に同じ刺激が来ると、もうひと手間かけてもっと長持ちする記憶を作る
- 繰り返し使うことで徐々に強くなる - 筋肉のトレーニングに近い
- アウトプットが記憶を鍛える
###第4章 効率的に読むには
- 「読む」とは何か?
- 本を読むことの目的 3つ
- 娯楽
- 情報を見つけること
- 理解を組み立てること
- 「情報を見つける」=単なるインプット - 本から得た材料と自分の経験などを組み合わせて構造化していく「理解を組み立てる」が重要
- 本を読むことの目的 3つ
- 読む速度
- 速読の苦しみ - 情報入力量を増やしても、理解の量は増えない
- 続けられるペースを把握する
- 1ページ2秒以下の「見つける」読み方
- Whole Mind System
- 準備:目的の明確化とリラックス
- プレビュー:調査とキーワード探し(1冊に5分程度)
- 調査:表紙・裏表紙・目次などからの情報収集
- キーワード探し:本を20ページごとに開いて、目についたキーワードをメモ
- フォトリーディング:目のフォーカスをぼかして、ページ全体を眺める
- 見開きを1~2秒で読む=300ページの本で3~5分
- 読めた気はしないが、脳には取り込まれている?(※著者は懐疑的)
- 質問を作る
- 本の内容についての具体的な質問文を作る(例:「アクティベーションって、具体的に何をするんだ?」)
- ポストビュー:具体的な質問を作るために、再度5~15分程度、本を読む - 文章を大きな塊ごとにざっと見て、必要そうだと思ったところを2~3文だけつまみ食いする読み方
- この段階ではまだ答えを見つけようとせず、質問を作ることに集中する
- 熟成させる:少なくとも10~20分、可能なら一晩時間を置く
- 答えを探す:4のポストビューと同様、ざっくり読んでつまみ食い - 質問の答えを見つけることが目的
- マインドマップを作る:学んだことをノートに書く
- 高速リーディング:自分が適切だと思う速度で、止まらずに最初から最後まで一気に読む
- Whole Mind System
- 1ページ3分以上の「組み立てる」読み方
- 予備調査と選書
- 棚を見る
- 通読
- 読書ノートに書きながら読む
- 章の小見出しをノートに先に記入
- わからないことは何でも記録する
- 何度も出現する単語を記録する
- 概念の間の関係や理由と結論の関係などを矢印でつなぐ
- 読書ノートに書きながら読む
- 詳細読み
- わからないことを解消するために読む
- 用語の理解が不十分
- 論理の筋道の理解が不十分
- 問題意識の理解が不十分
- 図解する必要がある
- わからないことを解消するために読む
- 予備調査と選書
- 読むというタスクの設計
- 理解は不確実タスク
- 読書は手段、目的は別
- 大雑把な地図の入手 - 必要な時に読み返せるようにすること
- 結合を起こす - 本の内容とそのほかの知識との結合に価値
- 思考の道具を手に入れる - 概念の名前がわかると関連知識を入手しやすくなる - もやもやとした考えに「言葉」という「取っ手」が付き、つかんで操作できるようになる
- 復習のための教材を作る
- レバレッジ・メモ - 重要な部分を抜き出し、濃縮 - 繰り返し読んでさらに濃縮
- Incremental Reading - 抜き書きを作る
- 人に教える
###第5章 考えをまとめるには
- 情報が多すぎる?少なすぎる?
- 書き出し法で情報を確認
- 質を求めてはいけない - 書くかもしれないこと、書くことの助けになるかもしれないこと、ふと思い出したこと - 書くことに対する心のハードルを可能な限り下げる:何を書いてもよい
- 100枚を目標
- 進捗が明確に計測できる - 「レポートを書かなきゃ」だとやる気をなくしがち
- 中断が容易 - 細切れの時間で進められる
- 重複は気にしない
- 50枚出せないのであれば情報が足りない - 再度情報収集
- 多すぎる情報をどうまとめるか?
- 並べて一覧性を高くする
- 並べる過程で思いついたらすぐ記録
- 関係のありそうなものを近くに移動
- KJ法
- ラベルづくり←書き出し法
- グループ編成
- ラベル拡げ
- ラベル集め
- 表札づくり
- グループ編成は客観的ではない - 自分が情報をどう解釈するか=主体的
- グループ編成は階層的分類ではない
- 既存の分類基準を使うデメリット - 新しい構造が生まれない
- 事前に分類基準を作るデメリット - うまく分類できないもの=盲点=新しい枠組みを作るチャンス - 事前に作った分類基準にとらわれ、盲点を軽視しがち
- A型図解化
- 関係とは何だろう
- 類似関係だけではない
- 対立関係
- 包含関係
- 時間変化
- 因果関係
- NM法 - 対立に注目したあと、その対立の解消に役立つかもしれない仮説を立てることを目指す
- なんとなく関係のありそうなものを集めてグループを作り、それからグループの内容を説明してみる
- 話題がつながる関係 - 1枚のスライドに入れて一緒に話せる内容
- 関係とは何だろう
- B型文章化
- 図解をもとに文章での説明を作る
- 2次元の図解から1次元の単語の列に変換
- 文章で書こうとしたときにつながりがあやふやだと気付く=欠けているもの(盲点)に気付く=学びのチャンス
- 図解をもとに文章での説明を作る
- 書き出し法で情報を確認
- 繰り返していくことが大事
- 繰り返すことが記憶を作るうえで重要
- KJ法を繰り返す
- インクリメンタルな改善
- 過去の出力を再度グループ編成
- 繰り返すことが記憶を作るうえで重要
###第6章 アイデアを思い付くには
- 「アイデアを思いつく」はあいまいでおおきなタスク
- アイデアを思いつく3つのフェーズ
- 耕すフェーズ
- 芽生えるフェーズ
- 育てるフェーズ
- Youngのアイデアの作り方
- 資料集め
- 資料の加工
- 努力の放棄
- アイデアの誕生
- アイデアのチェック
- 川喜多二郎の発想法 - W型問題解決モデル
- 問題提起
- 探検
- 観察
- 発送
- 仮説の選択
- 推論
- 実験計画
- 観察
- 検証
- Otto Scharmerの変化のパターン - U曲線モデル
- Downloading:思い込みにとらわれて外界を観察していない状態
- Seeing:外界を観察しているが、自分の既存の枠にしがみついて、他社の視点から情報を感じ取れていない状態
- Sensing:他社の視点から情報を感じ取り、自分の既存の枠が壊れたが、「自分」を手放していない状態
- Presensing:自分を手放し、未来の変化の可能性を見ている状態
- Crystallizing:アイデアが結晶化された状態
- Prototyping:試作品(プロトタイプ)が作られた状態
- Performing:アイデアが既存のシステムに組み込まれ、機能している状態
- 芽生えは管理できない
- まずは情報を収集する
- 言語化を促す方法 - 知っているもののうち、言語化されたものは氷山の一角、ごく一部に過ぎない
- 質問によるトリガ
- 「価値仮説シート」(リーンスタートアップ)
- (ユーザー)___は、(欲求)___たいが、(課題)___なので、(製品の特長)___に価値がある。
- 「価値仮説シート」(リーンスタートアップ)
- 創造は主観的
- 客観的な、人々がすでに論理的に納得しているものは創造的ではない
- 周囲から客観的な説明を求められても、耕し、芽生えを待つフェーズではまず主観的に考える必要がある → 芽生えてから、それを育てるフェーズで客観的な説明をひねり出す
- 身体的な感覚は主体的
- 客観的な、人々がすでに論理的に納得しているものは創造的ではない
- 例え話し、メタファー、アナロジー
- NM法とアナロジー
- 課題からキーワードを選ぶ
- キーワードを別の空間(メタファーの空間)に対応づける(アナロジー)
- メタファーの空間で連想する
- 連想したものを課題の空間に引き戻す
- NM法とアナロジー
- まだ言葉になっていないもの
- 暗黙知:解決に近づいている感覚
- 違和感は重要な兆候
- Thinking At the Edge:まだ言葉にならないところ
- 「フェルトセンス」:まだうまく言葉にできていない、しかし重要だと感じる、身体的な感覚
- フェルトセンスを表現するために、思いつく単語を書き出してみたり、その単語を使って短文を作ってみたり、と徐々に言語化を進めていく → 最初から正確には表現できないが、仮に書いてみて、フェルトセンスと照らし合わせることで、違和感がより明確になる
- 「フェルトセンス」:まだうまく言葉にできていない、しかし重要だと感じる、身体的な感覚
- 質問によるトリガ
- 磨き上げる
- 最小限の実現可能な製品
- 誰が顧客かわからなければ、何が品質かもわからない
- 何を検証すべきかは目的によって異なる
- U曲線を登る - Crystallizing→Prototyping→Performing =育てるフェーズ
- 他人の視点が大事
- 誰からでも学ぶことができる
- 分野が異なれば、知識の少ない人からも学ぶことができる
- 意見の違いは盲点に気付くチャンス
- 最小限の実現可能な製品
###第7章 何を学ぶかを決めるには
- 何を学ぶのが正しいのか?
- 科学と数学の正しさの違い
- 意思決定の正しさ
- 意思決定は一回性 - 事後的に決まる有用性
- 過去を振り返って点をつなぐ
- 自分経営戦略
- 学びたい対象を探す探索戦略
- 未知のものを発見するためには幅広く探索
- 知識を利用しての拡大再生産戦略
- 知識を使って時間を得て、その時間を知識獲得に投資する
- 知識を使ってお金を得て、そのお金を知識獲得に投資する
- 知識を使って立場を得て、その立場を使って知識獲得をする
- 卓越を目指す差別化戦略
- 他人からの知識の獲得はコストが安い
- 他人から得た知識は価値が低い
- 卓越性の追求
- かけ合わせによる差別化戦略
- ふたこぶの知識 - 複数の分野にオーバーラップ
- 組織の境界をまたぐ知識の貿易商戦略
- 学びたい対象を探す探索戦略
- 知識を創造する
- 外の知識を取り込んでも、すでに流通している知識では差別化につながりにくい
- 実際の応用の現場で必要に応じて生み出された知識=流通しておらず、現場の状況にフィットした価値の高い知識
- 知識をもっていることではなく、新しい知識を生み出す力が価値の源泉