BCN Conference 2019 夏
2019/8/23@目黒
概要
週刊BCNでおなじみのBCNの年次イベント。
「DX時代を生き抜くパートナーエコシステム戦略」のサブタイトル通り、
- 「DX時代」をどのように理解し、対応するか?
- そのためのサービスやプロダクトは?
といった面にフォーカスした内容であった。
基調講演では政府のDXレポート策定やDX戦略会議などで活躍されている山本教授の講演で、序盤に熱がこもりすぎて終盤はほとんどの内容が飛ばされてしまったものの(笑)、非常に興味深い話が多かった。
特に、「DXは目的ではなく手段であり、DXを用いてどこへ向かい、何を目指すのか?を明確にしない限り何も変わることできない」という言葉は肝に銘じたい。
その後の各企業セッションと合わせ、BCN編集長、本多氏のDXに関する考察も非常に参考になり、今まであいまいだった「DX」という概念が少しずつ分かりかけてきたように思う。
今回得た知識をベースに、「DX」とはなにか?今後技術者として、IT企業として、どのように進んでいくべきかをより深く考えたい。
開会挨拶:「週刊BCN」編集長 本多 和幸
- メディア事業のDX
- 紙+WEB
- 単純にメディア化されただけでよいのか?
- 視認性・一覧性:紙媒体の良いところ
基調講演:デジタルトランスフォーメーションの展開
Speaker:名古屋大学 大学院 情報学研究科 教授 山本 修一郎 氏
- DXの定義:海外ではすでに定義がしっかり固まっており、その定義をベースにそれぞれが必要な対応を実施している
- 定義があいまいなのは勉強不足:海外の文献に少し目を通せばわかる
- 日本は数年、10年近く遅れている
- DXレポートの概要
- 8割以上の企業が老朽システムを抱えている
- そのうちの約7割の企業がその老朽システム(レガシーシステム)がDXの足かせと感じている
- IT人材の所属
- 日本はITベンダー企業が7割、ユーザ企業には3割しかいない
- アメリカではユーザ企業に65%所属
- かつては日本の割合でよかった:ユーザ企業でやりたいことを、ITベンダーが時間をかけて実現
- 現在は細かくいろいろな取り組みをすばやく行わなくてはいけない
- 日本のITベンダーの人間がユーザ企業のニーズをくみ取るためにITもビジネスも理解できなければいけない
- 少なくとも今のITベンダー所属のIT人材の半分はIT、ビジネス両面を理解している必要がある
- 日本のユーザー企業の人間がデジタル技術の理解をしなくてはいけない
- 日本のITベンダーの人間がユーザ企業のニーズをくみ取るためにITもビジネスも理解できなければいけない
- DXレポートで2025年の崖を読み解く
- 老朽化システムの全容が行方不明
- →経験者が定年退職
- →若手のモチベーションがわかない
- →老朽システムの維持管理人材が不足
- →老朽システムがブラックボックス化
- →維持管理費が高騰
- →トラブルリスクが上昇
- →年間12兆円の経済的損失が発生する(今は年間4兆円と言われている)
- 2025年:
- 世界人口の3倍の200億個のデバイスが接続
- グローバル経済の1/3がエコシステムに
- →DXによる変革がなければこの市場に参入できない
- オーストラリアや中国などでは2025年に向けたDXへの取り組みが政府レベルで実施されている
- 大阪万博
- 民間のデジタルベンチャーによる万博に向けた取り組みは始まっている→連携・サポートすべきでは
- 8割以上の企業が老朽システムを抱えている
- 必要な対応策
- DX推進システムガイドライン
- 見える化指標、診断スキームの構築
- ITシステム構築におけるコストリスク低減策
- ユーザ、ベンダ企業の目指すべき姿と関係
- DX人材の育成・確保
- ITシステム刷新の見通し明確化
- 経営戦略におけるDXの位置づけ
- DXが、自社の経営戦略を実現するものとして位置づけられているか
- 経営戦略とDXの関係
- どの事業分野でどういった戦略でどのような価値を生み出すことを目指すか
- どのようなデータを収集・活用し、どのようなデジタル技術を使って、何の仕組みを実現するか
- スピーディな変化への対応力
- DXの目指すべきものが明確になっているか
- DXは動詞であり、手段→何のためにそれを行うのかが明確でなければ使いようがない
- DXの目指すべきものが明確になっているか
- ITシステム構築のコスト・リスク低減策
- 刷新後のシステムが実現すべきゴールイメージの共有
- 不要機能の廃棄による規模と複雑殿低減
- 「不要かどうかわからないから取り組まない、現状維持」はNG!とにかく始めないと何も変わらず、手遅れになる
- 刷新におけるマイクロサービス等の活用
- NetFlix:最初からうまく行ったわけではないが、5年以上かけて完全マイクロサービスアーキテクチャ化→苦労しなければうまくいくわけない
- ITベンダーがマイクロサービス前提で考え、提案すべき
- 協調領域における共通プラットフォームの構築
- オープン技術
- ユーザ企業とITベンダ企業の関係:ビジネス価値を提供するパートナーシップ関係
- ユーザ企業:デジタル技術を駆使するデジタル企業となること
- ベンダ企業:
- 最先端のデジタル技術の分野で競争力を維持
- 最先端デジタル技術活用の新規市場を開拓
- アプリケーション提供型ビジネスモデルに転換
- 契約形態:
- ウオーターフォール型からアジャイル型へ
- アジャイル型
- A:内製モデル:IT人材不足
- B:基本/個別契約モデル:契約の個別化、責任範囲の分散化
- C:ジョイント・ベンチャーモデル:収益分配の在り方、責任関係の明確化
- イノベーションの波
- 数年前から比べて技術の種類が極端に増えている:例えばAIだけ取り組めばDX、とは言えない
- 数あるデジタル技術のなかから自らの目指すべきゴールへと向かうための技術をしっかりと選択すること
- 数年前から比べて技術の種類が極端に増えている:例えばAIだけ取り組めばDX、とは言えない
- 新規企業の参入と既存大企業のデジタル化→業界内競争
- デジタル変革の方向性
- 最適化→←価値創造
- デジタル戦略の定義:明確化によって社員を目的に集中させる
- オペレーショナルバックボーンへの投資:自らの現在のビジネスプロセスを変革する
- サービス文化に適応
- DigitalizationとDigitization:「デジタライゼーション」と「デジタリゼーション」
- デジタル変革はDigitarization(「デジタライゼーション」)
- アナログ情報をただデジタル情報に変換するのはDigitization(「デジタリゼーション」):デジタル変革ではなく、従来の情報化に過ぎない
- OPASビジョン:エクソンモービルの事例:アメリカでのDX事例:時間切れで割愛・・・(※後日調査しよう)
A-1 <セキュリティセッション>軽さ、速さ、ランサムウェア対応、フィッシング対応、既知・未知両対応、マルチベクター、一つでも当てはまればウェブルート
Speaker:ウェブルート株式会社 マーケティング部 シニアマーケティングマネージャ 東田 巌秀 氏
- WEBROOT:エンドポイントセキュリティ製品
- クラウド(SaaS)型のサービス
- クライアント側のエージェントは軽く、煩わしい更新や重いファイルスキャンもない
- 高速なクライアントへの配備
- 自動化による容易な管理
- 機械学習により、既知の脅威はもちろん、未知の脅威からも防御
B-2 <クラウドセッション>デジタルトランスフォーメーションに不可欠なクラウドファースト戦略のベストプラクティスとエコシステム
Speaker:シネックスジャパン株式会社 テクノロジーソリューション本部 本部長 清水 章太郎 氏
- Cloud市場の動向
- Office365に代表される通り、SaaS利用増
- IT投資の移行期:クラウドへシフト
- DX
- ビジネスコミュニケーション改革
- ワークスタイル多様化
- 教育改革
- IoT,AI
- ITインフラ改革
- ネットワーク/セキュリティ
- 所有から利用へ
- Synnexのソリューション
- MS Team向け
- Logicool Tap
- Surface Hub 2S
- 教育改革
- 教育におけるIT・・・(文科省)
- 大きな転換点:
- パブリッククラウドの利用を前提
- サーバ・ネットワーク構築方法の整理
- 大きな転換点:
- 教育におけるIT・・・(文科省)
- IoT、AI、Smart Technologies
- HoloLens2:Mixed Reality
- インフラ
- SaaS
- Azure AD:認証基盤を整備することでSaaS利用が促進される
- Hybrid化
- Azure Stack:オンプレ内でAzure化
- クラウドとオンプレで一貫したモダンアプリケーション
- SD-WAN
- SaaS利用で増えたトラフィックを逃がす:信頼性の高いサービスについては社内閉域網を通さず直接接続
- Ofifice365+Barracuda
- 所有から利用へ:DaaS
- Office365など含めて統合パッケージ化したデバイスをSubscriptionで提供
- SaaS
- MS Team向け
C-3 <働き方改革セッション>ビジネスコミュニケーションから見直す働き方改革
Speaker:Chatwork株式会社 事業推進本部 ソリューションセールス部 パートナーセールスチーム チームリーダー 秋國 史裕 氏
- コミュニケーションは改善すべき
- 過去からの慣習を変えるのは難しい
- メール、電話、直接会うが比率高いまま
- 働き方改革が進まない理由
- 働き方改革の3要素
- 文化
- 文化習慣の形成浸透:理念・目標・価値観に基づく
- 制度
- 文化習慣に沿った働き方をサポートする人事制度
- 仕組み
- 生産性を上げるための具体策やテクノロジー
- 文化
- 働き方改革の3要素
- チャットワークの働き方
- 文化
- ワークスタイル:テレワークや時差出勤
- 完全テレワークではなく、テレワークできる環境を用意し、オフィスワーク+必要な時にテレワーク
- =一番効率的に働ける手段を選べることが大事
- 完全テレワークではなく、テレワークできる環境を用意し、オフィスワーク+必要な時にテレワーク
- 電話がない
- 社内メールゼロ
- 複合機ゼロ
- 個人ロッカーゼロ
- 完全在宅勤務者(10人/100人中くらい)
- 断捨離が重要=オフィスにいる必要がなくなる
- 働く場所は自由 勤怠はチャットで報告・共有
- ワークスタイル:テレワークや時差出勤
- 制度
- 社員が働きやすいための様々な制度
- 出産立ち合い制度
- 採用紹介制度
- ゴーホーム制度
- 最新デバイス購入支援制度
- ※その他HP参照
- 「制度はあるけど使えない」などは全くない
- 社員が働きやすいための様々な制度
- 仕組み
- 2020年のオリンピック
- 混雑度シミュレーション:出社できるのか怪しい
- →業務を見直す
- 会社じゃないとできないこと - 会社にいなくてもできること
- 電話・メール・会議・移動・紙
- =チャットによるコミュニケーションで代替、効率化
- Botによる効率化
- 2020年のオリンピック
- 文化
- 制度を運用するために、仕組みの提供
- 仕組みが稼働するために、文化を変える支援
- とりあえずチャットを入れてみたけど誰も書き込まない=目的が定まっていない
- 何かしらのゴールを定め、それに向けた設計を行うことが重要
B-4 <主催者講演>「デジタルトランスフォーメーション」の不都合な真実ーあなたはDXを誤解していませんか?-
Speaker:株式会社BCN 週刊BCN編集長 本多 和幸
- 乱立するバズワード
- そもそもDXとは?=曖昧、恣意的な使われ方には注意すべき
- DXの定義:DXはテクノロジーというよりビジネスの話
- 手軽に使いがちだが・・・
- DX、さもなくば崖の下に落ちる?
- ITベンダーによってのビジネスチャンス
- 新領域でのIT化ニーズ
- 既存システムの刷新ニーズ
- 巨大な潜在市場
- ITベンダーによってのビジネスチャンス
- SMBこそDX
- 複雑に作りこまれた負の遺産が少ない中堅・中小企業こそ身軽でDXに取り組みやすい側面も。
- ただし、深刻なIT人材不足:中小企業のIT人材充足度:7割くらいは足りていない印象
- →非IT系の中小企業がIT技術者を確保することが一層困難になる可能性
- 国内中堅企業の一人情シス、ゼロ情シス増加
- 一人情シス:14%(2017)→19%(2019年)
- ゼロ情シス:13%(2017)→19%(2019年)
- 人材不足の裏側で人材流動化が加速
- IT関連の予算は増えている一方で、IT人員は減少
- 複雑に作りこまれた負の遺産が少ない中堅・中小企業こそ身軽でDXに取り組みやすい側面も。
- SMBのITニーズ
- DXを目指し、レガシーの刷新と新ビジネス領域へのIT投資:攻めと守りの両立
- システム構築・運用負荷からの解放・低減
- プロダクトの購入から、サービスの利用へのシフト
- 十分なセキュリティ対策
- ※ITベンダーにはユーザの変革の伴走者としての役割が求められる→難易度高い
- DXを目指し、レガシーの刷新と新ビジネス領域へのIT投資:攻めと守りの両立
- クラウド化の現状
- IBMクラウド:「マルチクラウド」訴求
- 「残り8割のクラウド化で挽回」:ワークロードの8割はクラウド外にある
- 各社とも、マルチクラウド・ハイブリッドクラウドで残り8割を狙う戦略
- 「残り8割のクラウド化で挽回」:ワークロードの8割はクラウド外にある
- IBMクラウド:「マルチクラウド」訴求
- クラウド化等で守りの負荷を下げると
- IT人材の働き甲斐の向上→人材流出の抑止
- 情シスの人員が潤沢でなくてもDXへの体制整備が現実味を帯びる
* まずは守りのITの負荷を下げることが重要
- 攻めのITにおけるニーズ
- 設ける仕組みを、柔軟、迅速に対応しつつ実現したいというユーザ企業のニーズ
- →内製化のトレンド
- Microsoft Power Platform
- ローコードソリューションによって内製化需要へ
- SIerが業務アプリ開発の高速化に活用する事例も出てきている
- Microsoftがユーザー企業とのパートナーシップ:ユーザー企業がベンダー化?→リセラーとしてのベンダーの役割は低減
- 開発者との関係も重要だが、ユーザーにサービスの価値を理解してもらうことのほうがより重要(By Oracle)
- 8割を責めるために、ユーザ企業へのアプローチ強化
- 設ける仕組みを、柔軟、迅速に対応しつつ実現したいというユーザ企業のニーズ
- とはいえ、完全内製化へのハードルは低くない
- 非開発者が扱えるソリューションが増えても、完全内製化はそう簡単ではない
- →aPaaSを活用した定額制SIなど、新しい形のSI
- ユーザと一緒に考えながら共創していくSI
- ※ユーザのビジネスを理解しているかが死活問題に
- DX時代:テクノロジー戦略がビジネス戦略を決める時代