バックアップの整合性には、「アプリケーション整合性」「ファイルシステム整合性」「クラッシュ整合性」の3つがあり、それぞれデータを回復する際の精度や失われるデータ量が異なります。以下に、それぞれの詳細と、回復時に失われるデータについて説明します。
1. アプリケーション整合性 (Application Consistency)
詳細:
- アプリケーション整合性とは、データベースやメールサーバーなど、アプリケーションの状態も含めてデータをバックアップすることです。
- バックアップ実行時にアプリケーションに一時停止(フリーズ)やスナップショットの作成を指示し、アプリケーションが正常に動作している状態でデータの一貫性を確保します。(※Windows VSSサービス利用すれば、一時停止が不要)
- たとえば、データベースではすべてのトランザクションが完了し、キャッシュに書き込まれていないデータもストレージに反映された状態でバックアップが作成されます。
回復時に失うデータ:
- 通常、データ損失は最小限で、アプリケーションが完全な状態で復元されます。
- ただし、バックアップ後に発生したデータは失われますが、アプリケーションは整合性を保ったまま復元されます。
2. ファイルシステム整合性 (File System Consistency)
詳細:
- ファイルシステム整合性とは、ファイルシステム全体の一貫性を保った状態でバックアップすることを指します。
- これには、ファイルシステムのメタデータやアクセス権が適切に保存され、システムが正常にマウントできる状態でバックアップを取得することが含まれます。
- ファイルシステムの整合性を保つため、スナップショット機能を利用してデータの瞬間コピーを作成することが一般的です。
回復時に失うデータ:
- ファイルシステムの一貫性は保たれますが、アプリケーションのキャッシュやトランザクションの進行中に保存されていないデータは失われる可能性があります。
- 特にデータベースやリアルタイム処理中のアプリケーションでは、一部の未完了データが失われることがあります。
3. クラッシュ整合性 (Crash Consistency)
詳細:
- クラッシュ整合性は、システムが突然停止した際の状態に近い形でデータをバックアップすることです。
- この方法では、ファイルシステムやアプリケーションの整合性が保証されないため、データの断片化や一貫性のない状態が発生する可能性があります。
- クラッシュ整合性は、通常、ファイルのコピーや簡易バックアップで利用されます。
回復時に失うデータ:
- システムがクラッシュした場合と同様に、整合性が取れていない部分があるため、アプリケーションは正常に起動できないことがあります。
- 具体的には、トランザクション処理中のデータや、ファイルの一部が失われる可能性が高く、修復が必要になる場合があります。
まとめ
- アプリケーション整合性:アプリケーションの状態も保たれるため、ほぼ完全な復元が可能。ただし、バックアップ取得後のデータは失われます。
- ファイルシステム整合性:ファイルシステムの整合性は保たれるが、アプリケーション内の一部の進行中のデータは失われる可能性あり。
- クラッシュ整合性:クラッシュした状態でのバックアップのため、データの欠損やアプリケーションの起動に問題が発生することが多い。
それぞれのバックアップ方法は、システムの重要度や許容できるダウンタイム、データ損失のリスクに応じて使い分ける必要があります。