Azureには、仮想マシン(VM)の高可用性を実現するために3つの異なるオプションがあります。これらは、可用性セット、仮想マシンスケールセット、可用性ゾーンです。これらの違いについて説明します。
1. 可用性セット(Availability Set)
可用性セットは、単一のデータセンター内で複数の仮想マシンを論理的にグループ化する仕組みです。これにより、同一の可用性セット内のVMが異なるハードウェアや電源、ネットワークに分散され、ハードウェア障害や計画されたメンテナンスの影響を減らすことができます。
- フォールトドメイン: 仮想マシンを複数のフォールトドメイン(ハードウェア障害のリスクを分散させる)に分散させます。
- 更新ドメイン: OSやホストのメンテナンス時に複数の更新ドメインに分けて順番に更新します。
- 対象シナリオ: 複数の仮想マシンで実行されるアプリケーションに対して高可用性を提供。
- 単一リージョン内での可用性向上。
利用例:
- Webアプリケーションのフロントエンドサーバーなどで、複数VMを異なるフォールトドメインに配置して冗長性を確保する際に使用します。
2. 仮想マシンスケールセット(Virtual Machine Scale Sets)
仮想マシンスケールセットは、仮想マシンを自動でスケールさせるための機能です。単一のアプリケーションの負荷に応じて、自動的にVMの数を増減させることができ、スケーラブルなアプリケーションを構築するのに適しています。
- スケーリング: 負荷に応じて仮想マシンを自動的に増減します。
- 管理性: 大量のVMを自動でデプロイ・管理できる。
- 高可用性: 可用性ゾーンや可用性セットと組み合わせることで、冗長性や可用性を向上できます。
- 対象シナリオ: 大規模アプリケーションやクラウドネイティブアプリケーション、Webサービスなど、スケーラビリティが重要な場合。
- オートスケール: リソースの使用状況に応じて、VMの数を増減させることが可能。
利用例:
- 大量のトラフィックが集中するWebアプリケーションやAPIサービスで、負荷に応じて仮想マシンを自動的にスケールアウト・スケールインするために利用します。
3. 可用性ゾーン(Availability Zones)
可用性ゾーンは、Azureのリージョン内で異なる物理的なデータセンター(ゾーン)に仮想マシンを配置することで、地理的冗長性を提供します。これにより、ゾーン単位での障害が発生しても、他のゾーンで稼働するVMに影響がないようにすることができます。
- 物理的分離: 各ゾーンは独立した電源、冷却、ネットワークを備えており、障害に対して高い耐性を持ちます。
- 高可用性: SLAで99.99%の可用性を保証(複数の可用性ゾーンを使用した場合)。
- データのレプリケーション: ゾーン間でデータのレプリケーションが可能。
- 対象シナリオ: 地理的冗長性が必要な重要なアプリケーション、ゾーン障害からの保護が必要な場合。
利用例:
- 重要な金融アプリケーションや、他の重要なビジネスシステムで、異なるゾーンにVMを配置して、データセンターの障害から保護します。
まとめ
特徴 | 可用性セット | 仮想マシンスケールセット | 可用性ゾーン |
---|---|---|---|
冗長性 | 単一データセンター内のVM冗長性 | 自動スケーリングと冗長性 | リージョン内の複数ゾーン間での冗長性 |
スケーリング | 手動スケーリング | 自動スケーリング | 各ゾーンで個別にスケーリング |
障害の耐性 | ハードウェア障害に対して高い耐性 | 高可用性構成も可能 | ゾーン障害にも耐える |
主な用途 | VMの冗長化やメンテナンスの影響防止 | スケーラブルなWebアプリケーション | 地理的な冗長性を必要とする重要なアプリ |
これらのオプションをうまく組み合わせることで、Azure上でアプリケーションの可用性やスケーラビリティを最大化できます。