この記事は後から、「ProtoPedia Advent Calendar 2024」の 8日目の記事としても登録しました(記事は 11月の終わりに書いたものです)。
はじめに
個人としてやっているモノ作り活動の中で使っている、「ダイソーの空気ポンプを入力インタフェースに使った仕組み」の話です。
記事執筆時点での直近では、大垣での展示イベント「Ogaki Mini Maker Faire 2024」の展示に使っていて、その前の展示イベント(DGであそぼ、ゆるメカトロ展示)でも活用している仕組みです。
こちらは、2020年のメーカーフェア東京での状況・そこで見た展示を発端に、細く長く考えてきた内容が、当初の方向とは少し違う形で具現化したものになります。
その過程でいくつかの方の作品や発想を見て、この形にいたったのですが、その経緯を記録としてメモしておきたく記事を書きました。
(発想をくださった、界隈の作者の皆さまに、多大な感謝をしつつ)
事の発端
当初、やろうとしていたことは「手で触らず楽しめる、足踏みを使った何か」でした。
背景のうちの 1つ
それをやろうとした背景が 2つあり、1つは 2020年のメーカーフェア東京で見た、サイボウズさんブースの展示でした。
そこでフットペダルを使った体験型の展示を見た、というのが背景となった内容のうちの 1つです。
上記のポストの写真で、以下の部分にフットペダルが使われているのが分かります。
この年は、4月に初めての緊急事態宣言が出てた時で、秋ごろは展示会開催などが再開はされていたものの、コロナ対策をかなり厳重に行いつつという感じでした。
それで、手で触れなくて対応できるフットペダルを使った展示を、展示の中の 1つに組み入れられていたのだと思われます。
背景のうちの 2つ目
そして、この時のメーカーフェア東京は自分も出展者として参加していました(toio のユーザーコミュニティで出展してました)。
この時の展示物については、「基本的に来場者の方は手を触れないようにしてもらい、もし触れられた場合は、都度消毒をする」という対応が求められていた時でした。
そのような環境で展示作品を作り、その後も似た状況がある程度続くかもしれないと思っていたため、手で触れなくて体験できる作品も作れたら良いな、と考えました。
それを実現するための 1つの方向としては、この時に同じブースで出展されていた作品でも使われていた、体の動きをセンシングする方向がありました(この作品のように、カメラ+機械学習だったり、他にセンサーだったりで)。
そして、サイボウズさんの展示作品で使われていた仕組みの「足で踏む入力」というのが他の候補として頭に浮かんでいました。
実現したかった仕様
それで、足踏みの入力を考えていこうと思ったのですが、それをやるにあたって必須要件としたいことがありました。
小さい子が体験するとした前提での仕様
それは、「お子さんに体験してもらっても大丈夫な仕様にすること」でした。
その背景としては、自分が作品を作る時には『基本的に「2〜3歳くらいの子から大人まで、幅広い年代の方が楽しめる体験」というのをコンセプトにして作る』というのがあるためです。
それで、お子さん向けの対応を必須条件に考えたいというのがありました。
小さいお子さん向けの展示
そのように「小さなお子さんから体験して楽しめる」という作品作りをしてきたため、それをよく知っていただいている方から、「子ども向けに、技術を使った楽しい体験ができる展示をやってほしい」という依頼を個人宛にいただくことがちょこちょこあります。
そういう時にも活用できるものができると良いな、というのもありました(例えば今年の 4月にも、北海道の美唄での展示を依頼いただいた話があったりしました ← 以下のポストのもの)。
無茶な踏まれ方をする前提での対応
お子さんが体験する、という前提での考慮事項として、安全面ヘの配慮というのもありますが、それと別に「無茶な踏まれ方をしても、1日や 2日の展示を継続できる」というのも考慮すべき事項かなと思ったところでした。
(過去、様々な場所でお子さん向け展示をやってきた事例からも、楽しくてテンションが上がってとか、友達と体験していて盛りあがって、といった要因で作品の入力インターフェースについて無茶な使い方をされた、という事例は数えきれずw)
そのための対応を考えた時の方向性の 1つで「どんなに無茶な踏まれ方をしても壊れない(壊れにくい)」というのは挙げられますが、それを実現するやり方・製品は思いつけませんでした。それ以外の方向として、「壊されても容易に安価に交換可能」というのができないか、と考えていくことにしました。
例えば 1つの事例として、ダンボールにアルミ箔を貼ったもので作る、というものを試そうとしたりしました(以下のような事例で見かける仕組み)。
●micro:bit用子供向けスターターキットC2【MB-ST-SET-C2】 - TFabWorks(ティーファブワークス)
https://tfabworks.com/product/mb-st-set-c2/
しかし、「耐久性の観点」とか、「踏まれれた時の反応をきれいにとる」というところで難しいかな、と思われたのがあり、別の方向を考えることにしました。
いったん寄り道した話
そんな流れがありつつ、2022年に上記の仕様を完全には満たせないものですが、足踏みを展示作品に取り入れたことがありました。
2022年の大垣のミニメーカーフェア出展
それは、2022年の大垣のミニメーカーフェアに、toio のコミュニティで出展した時の作品に関するものです。
以下の製品を使って、iPad にキー入力を送る、という構成です。
受け側は、iPadの toio Do(toio用のビジュアルプログラミング開発環境)で、キー入力に反応する処理を入れていました。フットスイッチが踏まれると、それがキー入力として toio Do に伝わり、toio Do で toio を動かす処理を実行させる、という流れになります。
この時は、無茶な踏まれ方をしないように横で対応していたのもあり、2日間の展示期間を(機器の破損が発生することなく)無事に過ごせました。
しかしこのデバイスを使うやり方は、無茶な踏まれ方をし続けられたらデバイスが壊れそうなところなので、壊れた場合の損害金額も考えると別のやり方を模索せねば、と思ったところでした。
ダイソーの空気ポンプを使う発想をもらった作品
そして、とある作品を見た時に、ダイソーの空気ポンプを入力に使うという発想をもらえました。
それが以下の作品です。100円で入手、交換できるパーツというのが最高でした。
●うちのペットが、すみません。 | ProtoPedia
https://protopedia.net/prototype/3511
この作品では、距離センサーでポンプが押されたことをセンシングする、というものでした。
とりあえず、それを自分でもやってみようと、2022年の 11月に、↓こんなことをやっていました。
空気ポンプのセンシングにマイクを使うようにしたきっかけ
上記も試してみたものの、不安が残るところでした。
それは、「お子さんが力一杯踏み抜いたら、ある程度の年齢の子の力・勢いでやった場合など、センシングしてるセンサーを故障させるような踏み方をされるのでは?」というものでした。
それで、踏まれる部分やその付近には、センサーなどのデバイスを配置したくないな...という思いがありました。
マイクでセンシングするという発想をもらった作品
そんな中、この2年後の 2024年に、Facebook のポストで以下の作品・説明を見かけました。
上の 1つ目は動画だったのですが、その動画を見た感じと(+ 上記の一番下のコメントでの説明から)、「押しつぶすと音がなる鳥のおもちゃに、押しつぶして鳴らす(音が鳴る部分へ空気を流す)のではなく、音が鳴る部分へと空気ポンプで空気を吹き込んで音を鳴らす」、そして「マイクで音をセンシングする」という仕組みのようでした。
とりあえず、その鳥のおもちゃと、それと別で似た仕組みでセンシングできそうかなと思ったピコピコハンマーを、ダイソーに買いに走ったというw
(空気ポンプは、上に書いていた流れで穴をあけたやつがありつつ、それの予備として買っていた別の 2つが既に家にあったので、穴を空けてなかった予備に置いていたもの利用)
あと、当初はマイクは Amazon で買った以下で試し始めていました(2000円はしないものの、1000円は超えてしまうくらいの品)。
マイクに空気を直接あてた時の音をセンシングするという発想をもらった作品
NT京都で展示されていた作品では、「空気ポンプで、音が鳴る箇所に空気を送り込んで、その音をマイクでひろう」ということをやっているようでした。
その部分に関して、メディアアート系の展示作品や、マイクを使った工作の例で見かけたことがあった「マイクに空気を直接あてた時の音をセンシングする」というやり方にすると、構成がシンプルにできそうかなと思いました。
(アート系の作品だと、マイクに息を吹きかけると、PC上に表示されたタンポポの綿毛が飛ぶというものを見たことがあったり、また工作系のものだと、息をマイクに吹きかけると、PC上のろうそくや電子工作で作った LED のろうそくが消える、というものなどを見たことがあります)
●Make: Japan | [MAKE: PROJECTS] Arduinoで作る息で吹き消せるLEDキャンドル
https://makezine.jp/blog/2016/11/make-an-led-candle-you-can-blow-out.html
マイクを 100円のものにする
その後、自分の生活圏にあるダイソーで、100円のイヤホンマイクを見かけたため、それを使うようにしました。
※ 上記の 1000円台のマイクを Amazon で買ってみていた時は、生活圏のダイソーに行っても、ちょうどよいマイク/イヤホンマイクが売っていない状況でした
これで、空気ポンプもマイク部分も 100円ずつの、総額 200円の仕組みにすることができました。
マイクの取り付け方を変える
100円のイヤホンマイクを使い始める前と、使い始めた最初の時には、以下の写真のように空気の吹き出し口近くにマイクを置く、という構成にしていました。
そして、上記のやり方を行っていた展示会内で、ふと「100円のイヤホンマイクのマイク部分は、ホースにつきさせるのでは?」(そのほうが、マイクが固定されるし良さそう)と思い、以下のようにしてみました。
幸い、マイク部分の太さよりホースのほうが若干太いというサイズ感だったため、その隙間をうまく空気が通る形になり、直接マイクを差し込むやり方で問題なしとなりました。
結局、足踏みはやってない?
当初、足踏みの入力を追い求めていた流れで、2022年に空気ポンプにたどり着き、2024年にマイクを組み合わせる方法にたどり着きました。
しかし結局、足踏み用には使っておらず、冒頭にも動画で示した手で押す(または手で叩いたりなど)というやり方で使っています。
足踏みは「段差がない形のものが使えると、もっと体験しやすくなって良さそう」と思っている中で「necobit さんが使っている足踏みマット(話を聞いたところ、産業用の品で耐久性も高いらしい)」を知ったので、使うならこちらにしようかな、と思っていたりするところです。
おわりに
モノ作り界隈・アート展示界隈など、様々な方の発想・作品から「ダイソーの空気ポンプを入力インタフェースにした」という流れを記事に書いてみました。
これからの応用1
ダイソーの空気ポンプを入力インタフェースにしてみたところ、想定していなかった入力方法もできることが分かりました。
以下、冒頭にも掲載していた動画でも少しやっている「押し込むのではなく叩く」「ポンプ自体を叩きつける」という方法です。
これは上で書いた 100円のイヤホンマイクを入手後、「マイクをホースに差し込む」という形にしたことで実現できたことだと思われます。
⇒ 動画内に出てきている太鼓の達人用コントローラーを、空気ポンプの真横に置いて、それぞれの下に衝撃吸収する何かを置かないままに太鼓を叩いていた時に、机経由での振動が意図せずセンシングされてしまった、という偶然の出来事から気がつきました
あと、ポンプ本体を叩いたりしなくても、ホース部分を叩く・こするなどしても、同じくセンシングができそうでした。
この空気ポンプ・ホースをセンシングデバイスのように使う、という方向も、模索すると面白いかなと思っているところです。
これからの応用2
当初、前に自作していた p5.js のサウンドビジュアライザーと組み合わせてみたものがあります。これにビジュアルだけでなく効果音をつけた構成にして組み合わせた作品にするのも良いかも、と思っています。
というのも、この空気ポンプを使った入力を toio の動きを出力にする、という構成での展示していて、上記の「押し込むか叩く」というのを案内している中、「空気ポンプを押すことや叩くこと自体」を楽しんでもらっている様子が多々見られたためです。
複数のポンプを押したり叩いたりして楽しんでもらう、というようにしようとすると、すぐに短くレスポンスが分かりやすく返せる、ビジュアル表現や音の組み合わせも良いかな、と思ったのがあります。
その他、以下で試した「弱押し、強押しを使い分ける」ということや、それと似た「押し込み方によって出力が何らか異なる」というのをやっても良さそうかな、と思っています。
このあたりは、ゲームとの組み合わせで使うようにすると操作がシビアになって、小さい子に楽しんでもらうのが難しくなりそうです。そのため、上で書いた「ビジュアル表現や音」との組み合わせが、気軽に楽しめるものとしては相性が良いかな、と思ったりしています。
(今の toio と組み合わせたものも、デバッグや状態の把握を兼ねた見てもらう用として、簡易なビジュアライズはつけていたりするのですが、そちらをメインにする感じ)
余談
冒頭にのせていた、2020年のサイボウズさんの展示のポストを探している中、こんな楽しそうな展示もされてたのだな、というのを見つけたのでメモとして掲載。
【2024/12/8追記】
2024/12/7 に開催された #ヒーローズリーグ の展示イベントでも、こちらを展示しました!