この記事の目的
- 偽基地局(IMSI Catcher)が 具体的に何をする機器か
- それが 一般ユーザー に与える被害とリスクを 2025 年4月時点の最新動向を踏まえて整理します。
1. 偽基地局とは?
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正式名称: IMSI Catcher(国際加入者識別番号捕捉装置)
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目的: 近くのスマホを「より強い電波」でだまし取り、
加入者識別子 (IMSI) / 端末識別子 (IMEI) を収集したり、通信内容を操作すること。
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実現方法
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妨害電波で 4G/5G を一時的に遮断し端末を「圏外」にする。
- 端末は自動で 3G → 2G (GSM) とフォールバック。
- 攻撃者は 2G 偽ネットワークを放射しそこへ端末を誘導。
- 2G の脆弱な一方向認証を突き、SMS 強制送信・盗聴などを行う。
2. 攻撃フロー(Mermaid 図)
3. 手口の特徴
- 強力な妨害電波+2Gフォールバック
- LTE/5G をジャミング → 端末が 2G(GSM)へ自動接続 → 低い認証強度を突いて SMS を自由送信。
- 中国語フィッシング SMS
- 中国銀行名をかたり URL へ誘導する例が多数。訪日観光客が多い繁華街で頻発。
- 可搬型/車載型装置
- バッテリーと冷却ファンを積んだ車が深夜に巡回し、半径数百 m で電波を放射。
4. ユーザーに及ぶ 6 つの主要被害
# |
被害内容 |
説明 |
1 |
SMS フィッシング |
偽銀行・ECを装う URL を強制送信し、ID やクレカ情報を詐取 |
2 |
通話 / メッセージ傍受 |
2G では暗号が弱く、音声や SMS をリアルタイム盗聴・改ざん |
3 |
位置追跡 |
端末 IMSI を捕捉し、複数装置で三角測量して移動経路まで把握 (IMSIキャッチャー - Wikipedia) |
4 |
セッション乗っ取り |
認証ダウングレードを利用し、オンラインバンキングの 2FA を横取り |
5 |
サービス妨害 (DoS) |
決済端末や配車アプリが“圏外”になり業務停止(2025/4 都心で報告) |
6 |
大規模イベント混乱 |
会場周辺の通信品質を落とし、キャッシュレスや避難連絡に影響 |
5. なぜ 2G が狙われるのか?
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4G/5G |
2G (GSM) |
認証方式 |
双方向認証 |
基地局→端末のみ認証 |
暗号強度 |
AES-128 以上 |
A5/1, A5/2(解析済み) |
攻撃コスト |
高 |
数万円で自作可能 |
端末は「最も強い信号」に自動接続するため、強力な 2G 電波を浴びせるだけで
ユーザーが何も操作しなくても攻撃が成立します。
6. 被害を防ぐ 4 つの実践策
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2G をオフ
設定 › ネットワーク › モバイルネットワーク › 2G を許可
→ OFF
(iPhone は個別 OFF 不可のため、海外ローミング時のみ 3G/LTE 固定を推奨)
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怪しい SMS/URL を開かない — 特に中国語・緊急を装う文面は要注意。
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圏外→復帰を繰り返す場所では離脱 or Wi-Fi Calling へ切替。
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不審電波の目撃・被害は総務省「違法電波相談窓口」またはキャリアへ通報。
7. 直近の出来事(2024-2025)
日付 |
主な動き |
2024-10 月ごろ |
中国語 SMS を受信した訪日客の報告が相次ぎ、日本国内で偽基地局(IMSI-catcher)らしき電波が出ているとの情報が SNS で拡散。 |
2024-12月 |
Samsung One UI 7などが「2G/危険 Wi-Fi への自動再接続防止」を追加し、Pixel 系も同様機能を既に提供。 |
2025-04-15 |
総務省会見で「都内周辺で妨害電波を確認」と公表 |
2025-04-18 |
民放報道:東京・大阪で偽基地局電波を計測、SMS フィッシング多数 |
2025-04-21 |
テレビ朝日が渋谷で“アンテナ付き車両”を撮影。強い電波で一時「圏外」にし、中国語フィッシング SMS を一斉送信する手口を紹介。 |
2025-04-25 |
日本スマートフォンセキュリティ協会(JSSEC)が「偽基地局から送られる詐欺 SMS」の仕組みと防御策を公開。主な推奨は “2G を無効化”。 |
8. まとめ
- 偽基地局は “2G フォールバック”+ SMS 強制送信 により、
プライバシー侵害とフィッシングを 低コスト で実現する攻撃手法。
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位置追跡やサービス妨害 といった社会インフラ面の脅威も大きい。
- ユーザー側の即効防御は 2G を切ることと SMS リンクを踏まないこと。
スマホが突然「圏外」になり、中国語 SMS が届いたら――
偽基地局を疑い、まず 2G OFF を確認 してください。
参考リンク・資料
■ 公的ドキュメント
■ Webメディア / ニュース
■ 学術・カンファレンス