はじめに
FDM方式の3Dプリンター Prusa i3 MK3s は、標準のコンポーネントとアセンブルで、大変良質な出力が可能ですが、オープンハードウェアの利点を生かして、さらなるカスタマイズが容易です。
MK3sは標準状態でも十分に実用に耐える設計ですが、タイトルにもあるように、簡単・便利・安価で、効果の高いアップグレードを紹介します。アップグレードは本体に対してだけではなく、設置環境などの整備も含みます。
環境ほか
所有している2台のMK3sで実践しています。同機は発売開始後もコミュニティからのフィードバックなどを随時取り入れ、購入時期によって、組み立てマニュアル手順やパーツなどが微妙に異なることがありますが、基本的にどのリビジョンMK3sでも適用可能だと考えています。
簡単・便利・安価
ここで言う簡単・便利・安価とは。以下のような用件を満たすアップグレードは、初心者や導入直後のユーザーに推奨しやすいものと考えます。
- 簡単
- 組み立て部材を切断、加工するなど不可逆的な改造を伴わないもの。また、部品の交換なども難易度が様々ですが、たとえば、エクストルーダーの交換は、分解、組付け、そしてその後の調整など、手数も多くて、ある程度の経験と知識が必要でしょう。そういうものは取り扱いません。また、ちょっとした部品なら3Dプリンター自身で出力できるものもあります。
- 便利
- 劇的な機能改善はしないけれど、造形がしやすくなる、面倒を取り除いて運用しやすくするなどのtips的なアップグレードです。
- 安価
- 10万円未満の本機には、高額なアップグレードは不釣り合いでしょう。明確な線引きはしませんが、せいぜい1万円くらいまでのもの。
1.ホットエンドシリコンカバー
シリコンカバーの基本情報 | |
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メーカー | E3d-Online |
品名 | V6 Silicone Socks (Pack of 3) |
価格 | £3.5 (3個セット;送料別) |
E3DのV6ホットエンドが、Prusa i3 MK3sに採用されています。そのホットエンドカバーということで、純正品といって差し支えないでしょう。そのフィット感は、ゆるすぎず、きつすぎず絶妙です。1個あたり百数十円程度で、費用対効果が高いです。フィラメントがホットエンドにまとわりつくのを防止し、ゆえにblobがべっとり付着するということもなく、清掃性・メインテナンス性が向上します。無味乾燥な見た目のヒートブロックに、ちょっとした視覚的アクセントにもなります。
2.OctoPrint on Raspberry Pi
必要なもの | 例 |
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ラズパイ | Raspberry Pi4 |
マイクロSDカード | OctoPiのイメージが3GB弱、ストレージ容量分を考慮しても8-16GBのもので十分かと。 |
ケース | MK3sでプリントする。空冷のためのファンも用意するのがベター。 ボトム:https://www.prusaprinters.org/prints/16103-raspberry-pi-4-octoprint-prusa-mount-mk3mk3s/files トップ:https://www.prusaprinters.org/prints/16102-hazis-raspberry-pi-4-case-lid-ez-fan-mount-poe-hat |
電源 | ラズパイ用のACアダプタ |
ネジとナット | フレームにケースをマウントするため。M3ヘキサのナットとM3x10ネジをそれぞれ2個。MK3sキットのスペア袋に入っているものを使えば、別途購入不要。 |
USBケーブル | Aオス-Bオスのもの。0.3mとか短いものが配線上ちょうどよい。 |
合計 | 全部で7-8,000円もあれば揃うかな。 |
OctoPrintのPaspberry Pi用ポートであるOctoPiでMK3sをコントロールできます。ネットワーク経由でGcodeを流し込めるし、その他機能も豊富、プラグインでの拡張性、タイムラプス用カメラの制御など、3Dプリンターのコントロールが超絶便利になるmust-haveな装備です。Pi zero Wだと、Einsyボードのケース内に収まりスマートだが、パフォーマンスに不安が残ります。実際、OctoPi的にはzero Wは非推奨と表明されているので、今ならPi4を用意するのがいいでしょう。
3.ゴム足の固定
MK3sのゴム足は外れやすい。thingiverseに色々な固定具のstlが発表されており、MKシリーズオーナーの共通の悩みであることがうかがえます。たとえば、https://www.thingiverse.com/thing:2765399などは、プリントも容易で、使いやすい。固定することで、プリント安定性にも寄与するでしょう。
ちなみに、2019年春に購入したキットでは、外れやすい丸いゴム足でしたが、2020年春に購入した個体は、台形のゴム足が同梱されており、やや外れにくいものになっていました。この台形のゴム足は、公式ショップのスペアパーツとしてリストされているので、改良版ということなのでしょう。
本体をちょっとでも移動したあとは、first layer calibrationをお忘れなく。
4.エンクロージャー
IKEAのLACKというテーブルをベースに作成するエンクロージャーは、Mikolas Zuza氏の考案で大変好評を博しています。なによりIKEAのLACKは999円という手軽さな上に、完成したエンクロージャーは性能も、見た目もすぐれたものです。
3Dプリンターを取り囲むエンクロージャーは、防音だけでなく、庫内環境、特に温度のコントロールを可能にし、プリントクオリティの向上にも貢献するはずです。
5.コンクリート防振台
動作中の振動が造形物に悪影響を与えるのは当然のことです。部品の工作精度、組立・組付の正確性、プリンター架台自体の安定性など考慮すべき要因が多く、振動対策は一筋縄ではいきません。
コンクリート板を敷くだけという振動対策[LINK]が紹介されており、目に見えての効果も報告されています。[LINK]。特別な防振装置というわけでなく、ホームセンターで安く手に入るコンクリート板による防振というシンプルなアイデアが素敵です。
#番外編:要注意なアップグレード
次に、番外編として、避けるべき、あるいは、注意が必要な簡単アップグレードについて記します。
油壷
フィラメントの滑りを良くする目的で、食用油などで湿したスポンジチューブによってホットエンドに送られるフィラメント表面に油を塗布するもの。その装置は油壷(filament oiler)などと呼ばれます。ネット上には、oilerによる成功例も見受けられますが、FDM式3Dプリンター草創期にみられたoilerによる対策は、近年の3Dプリンターには不適であります。メーカー公式に非推奨であることが表明されていたりもします。
再び油壺が原因で故障になる方が多発しています。
— FLASHFORGE JAPAN (@flashforge_jp) January 14, 2020
ブログ記事を参考にしたというお話しをお聞きしますが、ブログ記事は一度書いてからは訂正しない、又は取り消さない方が多いです。
間違った情報もありますのでご注意下さい。😢#FLASHFORGE #3dプリンター https://t.co/Q0OSehbCQy
互換品
Prusa i3 MK3Sはオープンハードウェアですので、部品を自由に組み替えたり、設計を変更したりしながら楽しむことができます。某巨大中華ECサイトなどでも、Prusa互換を謳った部品や、互換キットがたくさん売られています。それらは、安価で、品質も悪くないものですが、純正品と比べて、個々の部品の工作精度はそこそこだが組付けすると全体で歪みが気になるとか、チュービングやゴム部品などの非金属部品は寸法が同じでも色、品質、材質がバラバラだったり、ステッピングモーターは動作電圧が異なりファームウェアの改造なしでは動かないものもある、など細かな点で気苦労が多いことを経験しています。部品の選択には注意が必要です。
#おわりに
- むし歯と歯周病は予防できる病気です。朝、昼、晩、1日3回、歯をみがきましょう。
- 健口は健康の要(かなめ)です。歯科医院に定期的に通って、歯のチェックアップを受けましょう。