ChatGPTなどのチャットAIを最大限に活用するため方法として「プロンプトエンジニアリング」という分野が爆発的スピードで発展しています。プロンプトのパターンを整理して、名前を付けてカテゴリ分けするといったカタログ化も進んでいるところですが、ちょっと圧倒されてしまいませんか?
そこで、どこから手を付けようか迷っているという方や、そもそもチャットAIの活用法が良くわからないという人のために、簡単な一つの原則を提案したいと思います。それは以下のようになります。
「人間だったら嫌がるだろうことをやらせる」
多くのプロンプトエンジニアリングの手法はこの一文に該当すると思います。原則というより、マインドセットとか態度と表した方がいいのかもしれません。
チャットAIとは機械を「チャットの向こう側」に配置して、人間が得意とする自然言語(日本人にとっては日本語)をインターフェースとして利用する、一種の「擬人化」です。あたかも「人っぽいもの」がチャットというコミュニケーションチャンネルの向こう側にいるように工夫してある仕組みということです。
この擬人化がとても自然なのでつい「人と関わるときと同じような作法」を用いるべきなのかと思ってしまうかもしれませんが、そんなことは全くありません。「人間だったら嫌がること=AIにやらせるべきこと」なので、AIに最大限に活用するためにやらせるべきことは「人間だったら嫌がること」を考えればすぐにわかります。
人間だったら嫌がること
- 同じことを何度も聞かれる
- 話や作業を途中で遮られる
- 乱暴な言葉で話しかけられる
- 面倒くさいことをやらされる
- 単純作業を強いられる
- 細かく注文をされる
- 今やったばかりのことを少しだけ変えて何度もやらされる
以下、それぞれの項目に対してもう少し解説します。
同じことを何度も聞かれる
人間は同じことを何度も聞かれると「なんども言わせんな!」とか「一度しか言わないからな!」などと言ってキレます。でも、チャットAIには同じことでも何度聞いても大丈夫です。
チャットAIの向こう側にいるのは「機械」です。なにも気にすることなく何度でも同じ質問をしてもいいし、昨日聞いたけど忘れた内容なら今日また聞けばいい。同じ質問でも返答のアングルとかアプローチが不満なら、再度少しだけ聞き方を変えつつ質問すればいいです。
話や作業を途中で遮られる
人間は話や作業の途中に割って入られるとキレる人が多いです。特に作業なんかはもうすぐ終わりそうになったら「終わらせることがゴール」になっちゃって、とりあえず終わるまで待とうと思ったりもします。でも、AIとのチャットで、望んだ返答や結果が出なさそうだとわかったら、即で遮ってキャンセルしましょう。
チャットの向こう側にいるのは「機械」です。AIの返答を中止して遮っても、それから生まれる感情エネルギーはゼロですから、一切気にしなくいいです。むしろ人間の時間を1秒でも無駄にしないために、望ましい結果にならないと感じたら即でキャンセルでいいです。
乱暴な言葉で話しかけられる
人間は自尊心とかプライドとかいろいろ面倒な感情を持っていますから、私たち(特に日本人)は相手の機嫌を損なわないように言葉使いに気を付ける習慣が出来上がっています。そういうマインドセットを文化として持っています。決して悪いことではないですね・・・人間相手なら。でもチャットAIには丁寧な言葉を使わないようにしましょう。
チャットの向こう側にいるのは「機械」です。自尊心とかプライドとかは一切ありません。AIが丁寧語とか謙譲語を使ってくるとつい「情が移ってしまう」かもしれませんが、相手はそんな感情は一切持ち合わせていません。幻想です。「です・ます」口調にするための余分なキーボード操作はエネルギーの無駄です。「せよ」という命令口調でいいです。それでも「人としてこちらも丁寧に・・・」と思う人はそれはそれでそうしてもいいともいますが、自己満足にとどまることになります。
面倒くさいことをやらされる
とにかく人間とは面倒くさがり屋ですから、あたらめて説明は不要でしょう。一方、
チャットAIにはできるだけ面倒くさいことをやらせることで生産性と効率をアップできます。
前世紀までに起こった産業革命では、紡績機ができたので人は糸車を使わなくなくなったし、電車ができたので石炭をせっせと窯にくべることはやめました。同様に、ごちゃごちゃした文章から何かを抜き出す仕事とか、バラバラのものを時系列に並べるとか、いろんな種類のものを分類分けするとか、とにかく考えただけでも面倒な仕事があるとしたら、それはチャットAI活用のチャンスです。
単純作業を強いられる
これは面倒くさいことのより具体例かもしれません。人間は単純作業は嫌がるのはもちろん、エラーを起こしやすくなります。同じ作業を繰り返すとエラーが起こったことを認知することすらできなくなります。同じものをずっと見続けてゲシュタルト崩壊が起こって人間はポンコツになってしまいます。でも、AIには単純作業をやらせるべきです。
AIは文句を言わないばかりか、エラーが人間に比べてずっと少なく済みます。仮にエラーがあったとしても、それを指摘してやり直させることもできるし、そもそもエラーをAIに見つけさせるという使い方に発展させることもあるでしょう。
細かく注文をされる
人間は仕事を注文されたとき、さまざまな反応をします。細かいことをあまりいうと「俺の自由にやらせてくれ」となったり(逆にきちんと細かく要求を出さないと「もっと具体的に言って」となる場合もありますが)。いずれにしろ、細かい注文=面倒くさい、という風にとらえる人は少なくありません。でもチャットAIには細かい注文をしてもいいし、むしろした方がよいです。
これはプロンプトエンジニアリングに一歩近づいていくマインドセットで、要はAIはその知識が広いことが逆に作用して「的外れ」な結果を出すことがあります。そこで、注文をより具体的にするこで的(まと)を絞り込むようにします。プロンプトエンジニアリングを簡単に表すとそういうことなのです。
今やったばかりのことを少しだけ変えてまたやらせる
これも、ここまで解説した内容と同じようなことですが、人間は、たった今やった仕事を再度やらされるのを嫌がります。すこし要求を変更してやらせようものなら「なんで最初からそう言わないんだ!」といってキレます。でもAIはそんなことは気にしません。
「少しだけ変えて」という部分は、「少しづつパートに分けて」と言い換えてもいいです。パーツに分けてチャットAIに仕事をさせることは、チャットAIに望んだ結果を出させるための重要なテクニックでもあります。
まとめ
ということで、次にChatGPTの画面に向いて、何をやらせようかなと思ったら「このチャットの向こう側にいるのが人間だったら、めっちゃ嫌がるだろな~」と思うことをやらせることが実は「チャットAI使い」への道だったりすると思います。