前層の第一の定義から第二の定義が導けることについて、本では詳細が割愛されていたのでそれを証明します。 (p.14)
第一の定義によって前層が定義されていると仮定して、第二の定義による前層を導きます。
第一の定義による前層の仮定
p.13~ の定義より次が仮定できます。
A : Set\\
E : A \to \mathfrak{O}(U)\\
\neg : A \times \mathfrak{O}(U) \to A\\
そして、第一の定義の4つの性質が成り立つものと仮定できます。
Fとrを具体的に構成する
ここで、 $F$ と $r_{UV}$ を次で与えます。
F: A \to A\\
F(U) := \left\{f \in A \mid Ef=U \right\} ~~ (つまりEの逆像)\\
U\subset V のとき、
r_{UV} : F(V) \to F(U) を次で与える\\
f\in F(V)について、 r_{UV}(f) := f\neg U ~~(\in F(U))
この作り方で関数 $r_{UV}$ が $F(V) \to F(U)$ に本当になっているかですが、今 $U\subset V$ であって、$Ef = V$ なので、 $E(f\neg U) = V \cap U = U$ となって大丈夫です。
第二の定義の性質を満たすことを示す
これから $F, r_{UV}$ が前層の第二の定義に従うことを示します。それは次の3つの項目でした。
- $F(\emptyset)$ が単一集合
- $r_{UU}$ が恒等写像
- $U\subset V \subset W$ ならば $r_{UW} = r_{UV} \circ r_{VW}$
順番に示します。
1. について
$\forall f, g\in F(\emptyset)$ について $f = g$ を示すという方針で示します。
今、 $F$の与え方から次が成り立ちます。
F(\emptyset) = \left\{ f \mid Ef = \emptyset \right\}
なので $Ef = Eg = \emptyset$ が成り立ちます、ここで前層の第一の定義より $f\neg Ef = f$ も成り立つので、 $f\neg \emptyset = f$ となります。
同様に $g\neg \emptyset = g$ ともなります。
前層の第一の定義より $f\neg \emptyset = g\neg \emptyset$ となるため、 $f=g$ となるわけです。
($F(\emptyset)$ が空になることはありえない...?)
2. について
任意の $f \in F(U)$ について
\begin{eqnarray}
r_{UU}(f) &=& f\neg U\\
&=& (f\neg Ef)\neg U\\
&=& f \neg (U \cap U)\\
&=& f \neg U\\
&=& f
\end{eqnarray}
よって恒等写像になります。
3. について
$U \subset V \subset W$のとき、任意の $f \in F(W)$ について、 $r_{UW}(f) = r_{UV}(r_{VW}(f))$ を示します。
\begin{eqnarray}
(右辺) &=& r_{UV}(r_{VW}(f))\\
&=& r_{UV}(f \neg V)\\
&=& (f\neg V) \neg U\\
&=& f \neg (V\cap U)\\
&=& f \neg U\\
&=& (左辺)
\end{eqnarray}
以上です。