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NATゲートウェイが高いのでNATインスタンスを立てる

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前書き

AWSを使用してシステム構築する多くの場合、プライベートサブネットを作成しインターネットから隔離することでアタックサーフェスの減少させます。
その場合は、パブリックサブネットでNATゲートウェイを作成しプライベートサブネットに紐づいたルートテーブルを変更することで、プライベートサブネットからパブリックサブネットを介してインターネット接続します。
しかしながら、小規模な開発環境でNATゲートウェイを使用するには高価である可能性があります。この記事では、一般的なVPC構成でNATゲートウェイの代わりにNATインスタンスを構築する方法を解説します。

構築

NATインスタンスを構築するVPCとして、一般的なマルチAZ構成で各AZにパブリックサブネットとプライベートサブネットがあり、インターネットゲートウェイがVPCに既にアタッチされている想定です。
その上で、
1. NATインスタンスを起動する
2. ネットワークルーティングの設定をする
3. nftablesの設定をする
を行います。(記事に記載のないパラメータはデフォルト値を使用しています。)

image.png

NATインスタンスを起動する

アプリケーションおよび OS イメージ (Amazon マシンイメージ)

AMIは、AWSより提供されている最新OSのAmazon Linux 2022で、パッケージが最小構成の下記AMIを使用します。

AMI
AMI Name : al2022-ami-minimal-2022.0.20220928.0-kernel-5.15-arm64
AMI ID   : ami-0db1acc60b0d6baf2
Description : Amazon Linux 2022 AMI 2022.0.20220928.0 arm64 Minimal HVM kernel-5.15

2022年10月時点で、Amazon Linux 2022はRelease Candidateですが、2022年末にリリースされる予定です。1

OS サポート終了期日 ステータス
Amazon Linux 2020年12月31日 メンテナンスサポート中
Amazon Linux 2 2024年6月30日 サポート中
Amazon Linux 2022 2027年 Release Candidate

インスタンスタイプ

インスタンスタイプは、バースト可能なタイプで最新最小のt4g.nanoを使用します。

インスタンス名 時間料金 月料金 vCPU メモリ ネットワーク
t4g.nano 0.0054 USD 3.942 USD 2 0.5 GiB ~5Gbps
t4g.micro 0.0108 USD 7.884 USD 2 1 GiB ~5Gbps

キーペア

セッションマネージャーを利用するため、キーペアなしで続行します。

ネットワーク設定

パブリックサブネットを選択し、パブリックIPの自動割り当ては有効化します。
また、セキュリティグループは各インバウンドルールが設定されたものを新規作成または既存利用します。

タイプ プロトコル ポート範囲 ソースタイプ ソース
すべてのトラフィック ソースタイプ すべて すべて プライベートサブネットのCIDR

高度な詳細

インスタンスプロファイルは、セッションマネージャーを利用してEC2内部の設定を行うため、AWSマネージドポリシーAmazonSSMManagedInstanceCoreを使用したインスタンスプロファイルを作成します。
ユーザーメタデータは、セッションマネージャーの接続のため、SSM Agentを起動時にインストールするスクリプトを設定します。

#!/bin/bash
cd /tmp
sudo dnf install -y https://s3.amazonaws.com/ec2-downloads-windows/SSMAgent/latest/linux_arm64/amazon-ssm-agent.rpm
sudo systemctl enable amazon-ssm-agent
sudo systemctl start amazon-ssm-agent

以上の設定でEC2を起動します。セッションマネージャーから接続するのに3分ほどかかります。

ネットワークルーティングの設定をする

ソース/宛先チェック

EC2はトラフィックの送信元、送信先のIPはどちらもENIのIPアドレスではない場合、自分自身と関係ないと判断しパケットが破棄されます。
NATインスタンスを選択し、ソース/宛先チェックを変更して、送信元/送信先チェック中を停止にします。
image.png

ルートテーブル

プライベートサブネットからのインターネット宛て(0.0.0.0/0)のパケットについて、NATインスタンスのENI(eni-id-a/b/c)をターゲットとしルートテーブルを修正します。
最終的には下図のルートテーブル設定になります。

image.png

nftablesの設定をする

iptablesでNAT設定可能ですが、より高性能なnftablesがリリースされ、iptalesよりnftablesを使用することが推奨されています。2
そのため、nftablesをインストールし、Red Hatのドキュメントを参考に設定を行います。3

LinuxではデフォルトでIPv4転送がオフになっているため、IP転送をONにします。
インスタンスが再起動されても転送されるよう、カーネルパラメータ1に永続的に設定します。4

# sysctl -w net.ipv4.ip_forward=1 >> /etc/sysctl.conf

NATに利用するインターフェイス名を確認するためにifconfigコマンドを入力します。
出力されたインターフェイス一覧で(ローカル)IPアドレスが付与されているインターフェイス名を記録します。

# ifconfig
ens5: flags=4163<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST>  mtu 9001
inet 172.16.0.238  netmask 255.255.255.0  broadcast 172.16.0.255
...

nftablesのインストールとマスカレードNATを下記コマンドで設定します。
oifanameについては実際のifconfigで確認したインターフェイス名を入力します。

# dnf install -y nftables

# nft add table ipv4-masquerade
# nft -- add chain ipv4-masquerade prerouting { type nat hook prerouting priority -100 \; }
# nft add chain ipv4-masquerade postrouting { type nat hook postrouting priority 100 \; }
# nft add rule ipv4-masquerade postrouting oifname "ens5" masquerade

nftablesの設定を永続化させるために、設定ファイルを作成し起動時に読み込まれるようincludeします。

# touch /etc/nftables/ipv4-masquerade.nft
# nft list table ipv4-masquerade > /etc/nftables/ipv4-masquerade.nft
# echo include "/etc/nftables/ipv4-masquerade.nft" >> /etc/sysconfig/nftables.conf

nftablesを起動し、自動起動に登録します。

# systemctl start nftables
# systemctl enable nftabels

以上でNATインスタンス構築は完了です。
プライベートサブネットにEC2を立ち上げて、セッションマネージャーより接続することで、インターネット接続の確認できます。

費用

損益分岐

NATゲートウェイを構築した場合は、時間当たりの料金が高価ですが、インターネット転送量は抑えられます。
EC2インスタンスでは時間当たりの料金は安価ですが、インターネット転送費用が高価なため、データ転送量を判断材料とするとよいと思います。

時間費用 転送費用
NATゲートウェイ 0.062 USD 0.062USD
NATインスタンス 0.0054 USD 0.114USD

1AZ構成の場合、損益分岐点はデータ転送量800GB/月あたりです。

image.png

最小コスト

EC2スポットインスタンスで起動することで、EC2の時間費用を更に70%程度削減できます。
NATを利用する状況としては、セッションマネージャー接続、ウイルス定義ファイル更新、セキュリティバッチ取得等、データ転送量がそれほど大きくならないことを考慮し、以下条件で最小コストを算出しました。

・インスタンスタイプ :t4g.nano
・起動タイプ     :スポットインスタンス
・起動台数      :1台
・インスタンス起動時間:730時間/月
・データ転送量    :10GB/月
0.0054(USD/h) \times 730(h) \times 30(\%) + 0.114(USD/GB) \times 10(GB) \
= 1.18(USD) + 1.14(USD) \
= 2.32(USD)

以上より、約300円程度でNATを利用することが可能となります。

不明な点は加筆修正しますので、コメントいただければと思います。
NetCabb@Twitter - https://twitter.com/NetCabb

  1. 【AWS】Amazon Linux 2 のサポートはいつ終了するのですか? https://aws.amazon.com/jp/amazon-linux-2/faqs/

  2. 【Red Hat】iptables から nftables への移行 https://access.redhat.com/documentation/ja-jp/red_hat_enterprise_linux/8/html/securing_networks/getting-started-with-nftables_securing-networks#doc-wrapper

  3. 【Red Hat】nftables を使用したマスカレードの設定 https://access.redhat.com/documentation/ja-jp/red_hat_enterprise_linux/8/html/securing_networks/configuring-masquerading-using-nftables_configuring-nat-using-nftables

  4. 【Red Hat】sysctl でカーネルパラメーターを永続的に設定 https://access.redhat.com/documentation/ja-jp/red_hat_enterprise_linux/8/html/managing_monitoring_and_updating_the_kernel/configuring-kernel-parameters-permanently-with-sysctl_configuring-kernel-parameters-at-runtime

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