このところ、*「Houdiniどんな感じ?」*という会話をする事が多かったので、何人かに解説したHoudiniの将来性の話を文章にまとめました。
僕自身はゲームのコンシューマ系で仕事をしている背景グラフィック出身のTAです。
Houdini歴半年ぐらいですが、ポテンシャルの高さを感じてHoudiniにズブズブです。将来性があり、知れば知るほど結果として表れていくので学ぶのが非常に楽しいです。
主にこれからの技術との親和性の観点からの文章であり、ただの僕個人の妄想です。
基礎知識
Houdiniについて(偏見含む)
SideEffectsが提供している3DCGソフトウェア。無料版もあります。
大量のデータの扱いや物理演算への機能によるサポートが手厚く、映像業界では液体表現や破壊、煙などの特殊効果を中心に利用されてきました。
ゲーム系CGでもグラフィックを重視したAAAタイトルなどではエフェクトに使われているという話を聞くことがあります。
でも2Dの合成などもできるかと思えば、最高のパフォーマンスで機能を使うにはノードベースのシステム構築に加えて3つのスクリプト言語を覚えなければならない等もういろいろマシマシ過ぎなソフトウェア。
その特徴からデザイナーに嫌われプログラマーに好かれたりする。
UE4でもノードコネクトと言語一つなのにね。たぶん、これが流行るのに歯止めをかけている最大の原因。なんなんだろうね本当。
有名なHoudiniの手引書はプログラマーの方が書いたものだったりします。
プロシージャルモデリングとは
プロシージャルモデリングとは数値に合わせてモデリングする仕組みを作り、利用するモデリングのことを言います。
ランダムに木を生成する、パスを引いたらそこに橋ができる、などが想定し易いでしょう。この動画とかイメージしやすいと思います。
houdiniは特殊効果やモデリングを作成していくにあたり、パイプラインを作成していくツールです。自分で調整できる部分をふやしつつ作成にむけての流れを構築していく。
その特徴から同じ特徴を持ちつつ、微調整をした大量のものを作成するのに向いています。
これが昨今、Houdiniの特徴を生かしたプロシージャルモデリングとして広まっているものです。
プロシージャルモデリングを始めるべき3つの理由
理由その1:拡張現実によるオープンワールドの需要
ソードアートオンラインご存知でしょうか。
ゲーム系、映像系の人で知らない人はもう極々少数派でしょう。VRAR系の没入型コンテンツの将来の形としてあげられる作品ですね。
将来的なVRARコンテンツを語るとき、第2の現実世界を作り上げるような話は多いと思います。
でもあれ、キャラクターはともかくどうやって無限に広がるようなオープンワールドを作り上げるのでしょう。1年くらい前までの僕は現実感の無い話として感じ取っていました。でもHoudiniに触れてからはその考えは変わりました。
Houdiniがあれば現在、超大規模の開発規模の特権であるオープンワールドを少しずつミニマムな開発規模で生み出すことを可能にしていくでしょう。
そしてARVRコンテンツの拡大で、オープンで広大な世界の需要はおそらくやってきます。
理由その2:人口減少による人手不足
これはhoudiniのメリットとして取り上げられる内容、ワークフローの効率化の観点の話です。
houdiniのネットワークにパーツとなるモデルを入力できる形にして、地形や天候、文化力など形状の補正となる数値入力をして、乱数によるモデリング生成。
これで家が建ちます。町ができます。
とはいえ具体的に言わないと伝わりにくいと思うのでより具体的に時間と目標で比較すると、
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背景アーティスト2人で1ヶ月作業すると家が4軒建つ
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背景アーティスト1人とHoudiniを使うアーティスト1人で作業すると1ヶ月で家が100万軒建つ
くらいの差を出せます。
入力情報に対する結果への流れさえ作れば最後まで完成するのでこの数字は夢見がちな数字ではありません。
この話をするとたいてい、自動生成だとクオリティ低くなっちゃうんじゃないの?という質問をされるのですが昨年度驚異的な売り上げを上げたゲーム、PUBGレベルのクオリティの建築物なら間違いなく、この1ヶ月という機関で、量産体制への準備が整うだろうと考えています。
もちろん、最終的には作るものによってきますけどね。
理由その3:3Dプリントとの親和性
3Dプリント技術が発展していけば今と大きくモノづくりの仕組みは変わっていくと思います。生産の設計図ともいえる3Dモデルの需要は爆発的に増えるでしょう。グラフィックにかかわっている人間としては非常に楽しみです。ゲーム業界や映像業界にとっては新たな分野への挑戦となると思います。
プロシージャルモデリングで作成したものは微調整をしつつ大量に作成することができます。複数のパーツの調整量を関連付けさせれば、複数のパーツを一度に完成形に合わせた変形をすることができます。
車のサイズを調整すれば中に詰まってる部品のサイズもすべて自動で変更、3Dプリントすればできちゃう…そんな未来がプロシージャルモデリングで実現できると考えています。
以上が、僕が考えている、いまこそHoudiniを学ぶべき理由です。
ここから下は主にメリット以外の話とより妄想に近い話。
余談
クオリティについての話
すべてプロシージャルなつくりをしていったら1個1個丁寧に作ったものと差が出たり似たり寄ったりのものができちゃうんじゃないの?
と言われます。
それに関しては部分的にその通り、使いどころ次第になってしまうと言わざるをおえません。一点物のモデルを作るにはあまり向いていないといえるでしょう。
設定する値を増やしていけばバリエーションは増えていくので、時間をかければ一つの非常に優れたモデルをつくる事も可能です。ですがあまり利益のある話ではないです。
現状、プロシージャルモデリングを導入するならば大量に作る必要のあるもの、バリエーションが必要なものでしょう。
とはいえ数値をモデリングの流れのうちに取り入れることは得意であること、スクリプトとの相性がいいことから、この辺も機械学習が進歩していけば大きく事態が変わるのではないかなーとは思っています。
シミュレーション能力と量子コンピュータ
量子コンピュータの考え方が現実的になり、性能が大幅に上がった時は次に来るのは物理シミュレーションの大幅な拡張でしょう!つまりHoudiniの独壇場!
…とも書いてプロシージャルモデリングを始めるべき4つの理由にしようかとも思いましたが量子コンピュータの具体的な性能予測に関する資料が見つからなかったので止めました。
でもリアルタイムグラフィックで処理速度が上がった時、様々な高品質の物理シミュレーションが導入されていくのはほぼ間違いないでしょう。
その時の基本的なデータを作るのに最適なグラフィックツールがシミュレーションによく用いられるHoudiniであるというのは考えられうる未来です。
最後に
ここまで僕の妄言をご覧くださりありがとうございました。アーティスト畑の人間なのに画像が一切無い長文です。
僕個人の直近での目標は理由1にあるよう、オープンワールドを作ること。
プロシージャルモデリングの将来性を考えれば、Houdiniがあれば開発体制規模に依存しない広大な空間を作り上げる事ができる。そう信じてHoudiniに習熟しようと躍起になっています。
将来を変える可能性を、その変革の理由を考えたうえで学んでいくことはとても励みになり、モチベになると考えています。
すっかりHoudini信者となった僕からは言いたいのは一言だけ。
さぁ、いまこそHoudiniでプロシージャルモデリングを始めるときです!