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O'REILLYのExcel本3冊の読書感想文

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ITエンジニアリング系の本を出版されているO'REILLYから意外にもExcelの本が出版されています。
ExcelはそもそもOfficeソフトといわれるものなので、私は技術系よりも事務系ソフトだと思っています。
なので、一般に発売されているExcel本の本来の読者層は事務系の仕事をしている方なのかなと思っています。
でも、ぜんぜんビジネス文書や集計、一覧表管理するにも、どんな業種であれ使えるものではあります。
そんな中、O'REILLYさんから出版されているものに期待するのは、情報技術系のアプローチとしてのExcelの使い方。
また、もともとは洋書として出版されたものが、日本語に翻訳されるというスタイルなので、日本的なExcelの使い方に限らない、グローバルな視点でのExcelの使い方を知ることもできるかもしれません。
その観点にたって、読書感想文を書きたいと思います。
現在、O'REILLYさんが出版しているExcelの本は確認した限り次の3冊です。
* Excelポケットガイド
* EXCEL HACKS
* Excelプロトタイピング
この3冊について、書きたいと思います。

Excelポケットガイド

  • ISBN4-87311-171-4
  • 価格;1000円(外税)
  • 初版発行:2004年2月19日(現在入手困難)

概略

Excel機能のリファレンスハンドブック。
Excel97から2003まで対応。つまりリボンインターフェースになる前。
ただ、機能自体はそれほど変わっていないため、この機能さえ呼び出してしまえれば今でも使えると思う。
機能から、索引から、やりたいことを検索できる。

読書感想

長4封筒くらいの大きさで100ページしかなく、リファレンスブックとして、ハンドブックとしてデスクに置いておくには手軽で置きやすい。
当然、内容もその大きさ通りの情報しかないため、やりたいことが多角的ならば対応は難しいだろう。
ほとんど関数の説明はない。
また、手順は文のみで図がないところも多い。
Excelとは何かから書いてあるものの、はっきり言うと、これで入門書の代わりにならない。
入力時のオートコレクトやオートコンプリートのような、なんかこうなっちゃうけどそういうもんだよねと流してずっと使ってしまいがちなところを、きちんと説明しているので、この情報を知ると知らないでは入力作業に雲泥の差が出ることは間違いない。
1-2と入力したいが1月2日に自動変換されるといった、いわばExcelのおせっかい機能に関してもきちんと対処法が書いてある。
中でも、このボリュームの中でよくぞ紹介してくれたという機能が「シナリオ機能」。
今のExcel本にはほとんど紹介されていない機能だが、数値を使ったシミュレーションをプレゼンテーションするにはとても有効な機能であり、自動車や保険の営業にはぜひ使ってほしい機能である。
もうひとつ力を入れているのがピボットテーブル。
今では操作画面がかなり変わってしまったものの、2003時点のシンプルなピボットテーブル構造で今一度基礎から認識しなおせる。
この本から考察するに、Excelの外国の使い方は、次のようなものではないかと推察した。
* シナリオ機能によるデータのシミュレーション、そのプレゼンテーション
* ピボットテーブルによるデータの集計と分析
日本特有の一覧表管理はあまり力が入っていないように見えた。
あってもフィルターと並べ替え程度。
逆に言うと、一覧表管理はフィルターと並べ替えが重要なファクターなのだろう。
O'REILLYらしく、保存するファイル形式やショートカットもかなり細かいレベルで記載されている。
あと、日本のExcel本に不足しがちな、標準フォルダの概念や、そもそもフォルダやファイルの概念もExcelとしてうまく説明している。

EXCEL HACKS

  • 副題:プロが教える究極のテクニック140選
  • ISBN978-4-87311-347-0
  • 価格;2900円(外税)
  • 初版発行:2007年11月20日(現在入手困難)

概略

HACKという名の通り、機能を便利にする方法を紹介する本。
プロが教える究極のテクニック140選という副題の通りである。
英語から翻訳されたもので、図解も少なく、説明も文だけのところが多いので、よく読む、よく内容を理解する、動作確認をする、というExcel教科書の基礎ができていないと難しいが、この一冊が一通り操作できればExcelとしての知識は初心者を超えられる。
一度、わかりやすいExcelの教科書で勉強した後に、こういう追加機能があると知識を広げるための本。

読書感想

この本も、初心者にはハードルが高すぎる。
確かに便利な技がたくさん書いてあって、実現する方法も具体的に紹介されていますが、はじめのうちからVBAを操作することを余儀なくされる。
また、シートの保護ができるという知識がないまま、数式の入力されているセルのみを保護する方法が紹介されていたり、例えばそのケースだと、数式入力されていない何らかの係数を入力しているところは保護されないことになるリスクがある。
また、例えば対処集みたいな形でこの本を捉えると、実際にExcelで困っていることがあったとしてもそのページに行きつけるか難しい。今ある課題はO'REILLYだったらこう表現するだろうと予測し、目次やさくいんを引くということになる。
やはり有効と思われるのは、この本を一通り操作できる状態にすること、その勉強のプロセスの中で自分の仕事の中で解決できる課題がないかどうか考えながら読むこと。
あと、事前に基本のExcel本を理解しておくほかにVBAの本も読んでおくべきである。
この本で思ったのはVBAの利用方法が日本のそれと違うということか。
日本ではVBAは、ボタンを押したらある手順を自動で処理し、自動で印刷物が出てきてそれを郵送するだけという一連の流れを自動化するというExcelの枠を飛び出し、他のプログラムのようにふるまうような使い方だと認識している。
この本で書いてあるVBAの使い方は、ある機能に追加もしくは機能制限したものをワンクリックで呼び出し、作業効率を高めるというExcelの機能拡張するものである。
推測ではあるが、外国ではそのようにVBAを使うことが多いのではと感じた。
あと、テンプレート機能がものすごく詳しくカスタマイズできることが書いてある。これも他のExcel本にない特徴。

Excelプロトタイピング

  • 副題:表計算ソフトで共有するデザインコンセプト・設計・アイデア
  • ISBN978-4-97311-441-5
  • 価格;3200円(外税)
  • 初版発行:2010年3月8日

概略

様々なソフトウェア、WebサイトのUI・UXのプロトタイピングをExcelを使って時短しようという本。
Excelは入力値や設定値によって様々な表示にするような計算式や条件付き書式機能を持っているが、その機能で初期設計しようという本。

読書感想

概略の通りの内容だが、この本は間違いなく
Excel方眼紙を正しく使い倒す本
である。
忌み嫌われがちなExcel方眼紙の使用目的の明らかな一つの正解を出している。
それは、入力シートなら入力しやすいレイアウトを、出力シートなら見やすいレイアウトを、Excel方眼紙は実現できるということだ。
その代わりデータを蓄積するシートではExcel方眼紙は使ってはならない。
もちろんそのためには、データを蓄積するシートからレイアウト通りになるような計算式や条件付き書式の設定、リストから入力できるようにする仕組みを設定するノウハウが必要であり、この本にはその方法が載っている。
この本はExcelシートのレイアウトで困っている人の福音となりえる。
Excelでソフトウェアの試作をする、というとどうしても眉唾に聞こえてしまいがちだが、Excelシートのレイアウトの方法の一つを学ぶ本としては、とても優秀だと思える。
あと、Excel方眼紙という考え方が外国にもあるということに驚いた。

まとめ

O'REILLYさんのExcel本の3つの紹介と読書感想文を書いてみました。
すべてに言えるのは、英語から訳されているので、あまり図示されてないから、最近のExcel本に慣れてると読みにくいよということ。
外国のExcelの使い方ベースだから目の前の課題が解決できるわけではないかもよということです。
外国でExcel使ってる人がどのように使っているかは実際に聞いたことがないので、想像でしかないのですが、日本のExcel文化と外国のExcel文化では、もしかしたら大きな考え方の違いがあるのかなと思いました。
どちらの文化もいい感じで取り込めば最強なのかなって思います。
どちらにしてもExcelは分析が得意で、一覧表管理が得意なソフトではありますので、できることは有効活用しようと、その活用方法は具体的なビジネスの現場にどんどん落とし込めるよう、情報発信をしていきたいと思いました。

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